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署名活動強化!深刻な海洋プラスチック問題の原因「ゴーストギア」を無くそう!

この記事のポイント
「ゴーストギア」とは、海に流出した漁網などの漁具のこと。世界の海では、毎年50万~100万トンにのぼるゴーストギアが流出しているといわれ、ウミガメや魚、海鳥など、さまざまな海洋生物を絡め捕え、その命を奪っています。WWFは2020年10月、この問題を解決するための「プラスチック問題解決に向けた国際協定」の発足を求める署名活動を強化しました。ぜひご参加ください。

「ゴーストギア」とは

プラスチック汚染は、最も急速に悪化している国際的な環境問題の一つで、世界的に自然と人類に脅威を与えています。

毎年、海洋に流出しているプラスチックは、推定で1,100万トン (*1)。

この汚染は、プラスチック製品が生産され廃棄されるまでの過程(ライフサイクル)のあらゆるタイミングで発生しています(*2)。

また、生産が急激に拡大している一方、その回収や処理の速度や規模が追いついていません。

こうしたプラスチックは、家庭でも食される魚などの体内にも取り込まれているため、深刻な影響が世界の海底から食卓までさまざまな場面に及んでいます。

この海洋プラスチックごみの中でも、特に生物に特に深刻な被害を与えるのが「ゴーストギア」です。

「ゴーストギア」は、放棄、逸失、もしくは投棄されて、海に流出した漁網などの漁具のこと。

日本語にすると「漁具の幽霊」という意味で、持ち主がいなくなり、海中を延々と漂う漁網を幽霊にたとえた言葉です。

この「ゴーストギア」のほとんどは、プラスチックでできており、海洋プラスチックごみの少なくとも10%を占めています。

しかし、一般的にゴーストギアは、現状の漁業において世界的に発生が避けられない副産物となっています。

そして、ほとんどの人は、これを世界的なプラスチック汚染問題であると認識していないどころか、問題が起きていることにさえ気付いていません。

海洋で活動している漁業者自身も、毎シーズン流出する漁具がどのような悪影響を及ぼしているか、ほとんど把握していないのです。

しかし、ゴーストギアがもたらす被害はすさまじく、毎年多くの海洋生物が犠牲になり、莫大な規模の経済損失が生じています。

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漁網に絡まったウミガメ

その問題の規模と深刻さに、世界の人々がようやく気付き始めたのは、ここ数年のことです。

「ゴーストギア」の現状

毎年、世界の海に流出しているゴーストギアは、推定で50万トンから100万トン(*3, *4)。

韓国では毎年38,525トンの刺し網が紛失し(*5)、中西部太平洋に毎年1,500トンの人工集魚装置(FADs)が放棄される(*6)など、膨大な量の漁具が海洋に流出しています。

© Jürgen Freund WWF

海に流出した漁網は何十年も生物を苦しめ続けます

また、漁業資源の乱獲にもつながっている、違法、無報告、無規制 (IUU) 漁業では、その実態を隠すために漁具を海洋投棄しており、IUU漁業から、かなりの量のゴーストギアが発生しています(*7)。

こういった漁具の流出は、海にあふれる他のプラスチックごみ、ペットボトルやプラスチック容器などに、さらに追加されていきます。

実際、北太平洋旋廻の「太平洋ごみベルト」では、浮遊する45,000~129,000トンのプラスチックの内、漁業等で流出した漁網・紐・ロープが、46%を占めています(*8)。

海の生きものへの影響

ゴーストギアは、海洋生物にとって最も致命的なプラスチックごみです(*9)。

世界では、7種のウミガメ類全てと、海洋哺乳類の66%の種、海鳥の50%の種が、ゴーストギアを含む海洋プラスチックごみによって被害を受けています(*10)。

しかもゴーストギアの流出後、何十年も経ってから、それに動物が絡まり死亡するケースが複数報告されています(*11,*12,*13,*14) 。

ゴーストギアに絡まると、多くの動物が身動きが取れなくなったり、呼吸ができなくなったりして、長い間苦しみ続けて死んでいくことになります(*15)。

こうした、本来漁具で獲る必要のない生きものを獲ってしまう「混獲」の犠牲になる海の野生生物は、毎年どれくらいいるのか。

その正確な被害の規模は、今も分かっていません。

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漁網の断片が首に絡まったアザラシ

ゴーストギアはまた、微妙なバランスで成り立つ海洋の生態系そのものにもダメージを与えます。

サンゴを破壊したり、イソギンチャクや貝などの付着動物のすむ海底の地形や植生を破壊し、生物の上に堆積して窒息させます。さらに、生物が他の場所へ移動することも妨げます(*16,*17,*18,*19)。

ゴーストギアがもたらす経済的損失

ゴーストギアは、多岐にわたる経済的損失ももたらします。

ある研究では、ゴーストギアで混獲された野生生物の90%以上に経済的価値があると推定しています(*20)。つまり、資源としても価値のある、そうした生きものたちの命が、無駄に失われている、ということです。

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流出した後も生きものを捕獲し続ける漁具。

また、漁業者が被る経済的被害には、漁具自体の損失も含まれます。

さらにゴーストギアは、海洋航海の障害物となり、船舶の推進力や操作性を妨げ、航行を遅延させる、といった経済的な損失をもたらします。
時には、それが事故につながり、船員や乗客に怪我をさせ、命を奪うことさえあります。

観光への悪影響も生じています。海洋ごみは、観光客が魅力を感じる自然景観を損ない、観光資源としての価値が減じることになるためです(*21)。

「ゴーストギア」の原因

一般的に、漁業者は漁具を失いたくありません。漁具は彼らの生計の手段であり、再度手に入れるためには、かなりの投資が必要となるからです。

しかし、世界で最も管理の行き届いた漁業であっても、天候、技術的要因、また人為的ミスにより漁具が放棄、逸失されることがあります。

またその一方で、使えなくなった漁具を意図的に投棄する場合もあります。

主に北半球の情報を用いて実施した最近の調査によると、推定値で全世界で使用される漁網の5.7%、籠や壺などの仕掛けの8.6%、釣り糸の29%が、自然界に放棄、逸失、投棄されています(*22)。

「ゴーストギア」への対策

ゴーストギアの問題は、複雑で、世界の多様な漁業に広がっていますが、同時にその悪影響を減らす効果的な対策も、多く実施されています。

世界中の漁業者や管理者は、ゴーストギアの問題を認識しており、取り組みの始まった例も知られています。

また、漁業者、水産会社、港湾、NGO(非政府組織)、各国政府、FAO(国連食糧農業機関)や国連環境計画(UNEP)、国際海事機関(IMO)などの国際機関をはじめ、多くの組織が、ゴーストギアの問題に取り組むために協力を強化し始めています。

これまでの主要な成果としては、上記の一部を含めたさまざまな主体が参加するGGGI(グローバル・ゴーストギア・イニシアチブ)の設立や、世界的にゴーストギア問題に特化して取り組むための、以下の2つの重要なガイダンス資料が策定されたことが挙げられます。

1)漁具管理のためのGGGIベストプラクティス・フレームワーク(BPF)(*23)
水産物のサプライチェーンにおける10の利害関係者のグループに向けて、海洋へのゴーストギア流出を減らすために取り組むべきことをまとめた、包括的なガイダンス文書。

2)FAO漁具マーキングのための自主的ガイドライン(VGMFG)(*24)
2018年7月にFAOの水産委員会で承認されたガイドライン。どのようにゴーストギアに対処し、削減、根絶するか。そしてどのように流出した漁具を見つけ、回収するのかについて示したもの。

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ゴーストギアは様々な海洋生物にとって脅威となっています。

漁具の流出を防ぐ効果的な戦略を策定するためには、漁具流出の根本的な原因を考慮することが欠かせません。

同様に、漁業者が実践するにあたって考慮すべき、安全性・経済性・環境保全について認識することが重要です。

GGGI、FAO、国連環境計画によると、ゴーストギアに対処するには、「防止」、「改善」、「軽減」の3種類の対策が必要です。

最善の方法として、まず防止策を重視すべきですが、漁具の流出が避けられない場合があるため、軽減と改善の方策も含める必要があります。

包括的に解決するためには、流出の防止を最優先しつつ、適切な漁具設計や漁具回収といった改善策を通じて、流出漁具からの被害を軽減するといった複合的なアプローチが必要です(*25*26,*27)。

それでも、ゴーストギア対策における究極的な目標は、あくまで「漁具の流出を防ぐこと」です。

流出の防止には、教育や規制措置など、水産関係者に対応が可能なさまざまな方策が含まれます。

また、政府や国際機関は、漁具の流出を防ぎ、使用後に適切に廃棄やリサイクルできるような政策や規制を、率先して導入すべきです。

どうしても流出してしまう一部の漁具を管理するためには、流出漁具の影響を軽減する手法を導入することが必要です。

生分解性のプラスチックを部材として組込むことで、流出した漁具がやがて分解され、混獲が続かないようにすることも、効果的です(*28,*29,*30,*31,*32)。

また、ゴーストギアを回収することで、その問題を除去・改善することができます。ゴーストギアによる混獲などの長期間続く問題を根絶するために唯一の確実な方法は、流出後に回収することです。

早急な「拘束力のある国際協定」の発足を!

ゴーストギアやその他のプラスチック汚染は、世界的な問題ですが、現在、この問題解決に特化した国際協定は存在しません。

海洋プラスチック汚染やゴーストギア問題の解決を含む既存の法的枠組みが分散した状態になっており、十分な効果が得られていないのが現状です。

しかし、国境に関係なく大洋をめぐるプラスチックごみの問題は、各国や地域がそれぞれ取り組むだけでは、解決のできない問題であり、しかも、法的拘束力のない自主的な取り組みに頼るだけでは、とても解決できないことは明らかです。

そこで現在、世界50か国以上のリーダーや、約190万人にのぼる人々が、海洋プラスチック汚染を根絶するための「新たな国際協定」の締結を求め始めています。

しかし、日本などの政府は、未だ「新たな国際協定」の発足への支持を公的に表明していません。

そこで重要となるのは、この「国際協定」の早期発足を、日本政府をはじめとした各国政府に対して、働きかけることです。

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あなたのお力をお貸しください!

そのために、WWFでは2020年10月、協定の発足にご賛同いただくための署名活動を開始しました。
こちらの署名サイトより、簡単にご署名いただけます。

集まった皆さまからの声は、日本政府に「国際協定」発足への支持を働きかける際、また、国際会議で各国政府に同様の働きかけを行なう際に、活用させていただきます。

社会からの声は、各国政府がこの国際協定を発足させるための、大きな原動力となります。

ぜひ、日本政府をはじめとした各国政府に、この国際協定の早期発足を働きかける署名に、ご参加をお願いいたします。

参考情報

*1. The Pew Charitable Trusts (2020)
*2. Carlini and Kleine (2018)
*3. Jambeck et al. (2015)
*4. Macfadyen et al. (2009)
*5. Kim et al. (2014)
*6. Escalle et al. (2019)
*7. Richardson et al. (2018)
*8. Lebreton et al (2018)
*9. Wilcox et al. (2016)
*10. Kühn et al (2015)
*11. Baeta et al. (2009)
*12. Erzini et al.(1997)
*13.Good et al. (2010)
*14. Tschernij et al. (2003)
*15.University of Exeter (2019)
*16. Balderson and Martin (2015)
*17. Consoli et al.(2019)
*18.Good et al. (2010)
*19.Valderrama et al. (2018)
*20. Al-Masroori et al. (2004)
*21. Bear Peak Economics et al. (2019)
*22. Richardson et al. (2019)
*23.Huntington (2017)
*24. FAO (2018)
*25. Donohue and Brainard (2000)
*26. Huntington (2017)
*27. Scheld et al. (2016)
*28. Barnard (2008)
*29. Bilkovic et al. (2012)
*30. Escalle et al. (2019)
*31. Gilman et al. (2018)
*32. Lopez et al. (2016)

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