© David Lawson / WWF-UK

カワウソを守るために「かわいい」の先にある課題と私たちができること

この記事のポイント
コツメカワウソ、その愛くるしい姿から日本でも人気が高く、「ペット」として飼育している人もいます。しかし、このペットとしての需要の高まりが、乱獲や密猟を呼び、数が減少。2019年にワシントン条約で国際取引が禁止となりました。2020年は5月27日が「世界カワウソの日」です。「かわいい」ともてはやすのではなく、ペットの先にある野生の世界へのつながりに目を向けて、カワウソ保全のために何ができるのか考えてみませんか。
目次

カワウソはペットに向いている?

日本ではすっかり人気者になったコツメカワウソ(Anoyx cinereus)。

しかし、生息国の東南アジアでは現在、絶滅が心配される野生動物の1種です。

しかも、野生動物としてのコツメカワウソのことは、日本ではそれほどよく知られていません。


コツメカワウソはそもそも、肉食獣であるイタチ科の野生動物。自然界では、カニの甲羅を砕いて食べるような強力なあごと歯を持ち、人間も噛まれれば重症を負う危険があります。

また、自分の「縄張り」を主張するためにも使われるカワウソの糞は、強烈な臭いを発するため、カフェや一般家庭で適切に飼育するのは非常に困難。

©Gerald S. Cubitt / WWF
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何より、熱帯の水中と陸地、両方の自然を利用して生きるコツメカワウソの複雑な生息環境を、日本の家庭のような場所で再現することが難しいのは明らかです。

こうした点は、IUCNのカワウソ専門家グループ(OSG)の研究者も指摘している問題です。

実際、飼育についての専門知識をもった獣医師も限られており、結果的に、運動や栄養不足になったり、腎臓結石などの病気のため、野生のカワウソと比較して早死にしてしまうペットの個体が一定数いると、OSGの専門家は言っています。

さらに、世話の大変さから飼いきれなくなり、手放すことを希望する飼い主も出始めています。
引き取り手を探しても見つからない場合、野外に放してしまうようなケースが生じるかもしれません。

もし、野外に放たれたカワウソが日本の自然界に定着するようなことがあれば、本来その場所に生息していた魚やカエルなど在来の生物を捕食したり、新たな感染症のような病気を広めてしまう可能性も出てきます。

それは、身勝手な人間の都合で、日本の国内にまた1種「外来生物」が増えてしまう、ということを物語っています。

絶滅の危機にあるコツメカワウソ

飼育することで、さまざまな危険や問題を引き起こす可能性のあるコツメカワウソが、生息する東南アジアの国々では、絶滅が心配されている、というのは皮肉な現実です。

大きな原因の一つは、生息環境である熱帯の森や水辺が、広く失われてきたこと。

過去30年間で野生のコツメカワウソの個体数は、およそ30%減少したと推定され、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「危急種(VU)」に指定されています。

コツメカワウソが生息するインドネシアの森。こうした自然も、開発などによって豊かさが失われています。
© WWF-Indonesia/Jimmy Syahirsyah

コツメカワウソが生息するインドネシアの森。こうした自然も、開発などによって豊かさが失われています。

この危機にさらに、拍車をかけているのが、主にペットなど愛玩動物としての利用を目的とした、密猟や密輸です。

実際、カワウソ類が生息するタイやインドネシアなどの国々では、オンライン取引が活発に行なわれ、違法取引が頻発していることがTRAFFICの調査から明らかになりました。

©Gomez.L / TRAFFIC

コツメカワウソの密輸と日本の関わり

このコツメカワウソの違法取引、日本の市場も深く関係しています。

東南アジアでは、2015年~2017年に59頭もの生きたカワウソが、密輸される途中で押収されました。

そのうち、少なくとも32頭は日本に向けられたものであることがわかっています。
日本がこのカワウソ類の最大の密輸先であるとの指摘もなされている所以です。

こうした報告を受け、TRAFFICでは、日本国内でのペット需要と取引の実態について緊急調査を実施。2018年10月に報告書を発表しました。

調査からは、人気テレビ番組などマスメディアやSNSの投稿が需要の引き金となっていること、また、国内取引に規制がなく、流通が極めて不透明であることから、密輸個体のロンダリングが行なわれている実態が明らかとなりました。

報告書「Otter Alert :日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要に緊急評価」

報告書「Otter Alert :日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要に緊急評価」

こうした調査をきっかけに、世界的にもカワウソの問題が注目され、国際会議で取り上げられるようになったのです。

ワシントン条約で国際取引禁止に

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)は、野生生物の保護を目的に国際取引を規制する国際条約です。

2~3年に一度、締約国が一同に会し、国際取引の規制対象種の追加や削除、条約の運用方法などについて話し合います。

そのワシントン条約の第18回締約国会議(CITES-CoP18)が、2019年8月に開催され、コツメカワウソの原則取引禁止(附属書Ⅰ掲載)が決定しました。

ワシントン条約では、規制対象種を附属書と呼ばれるリストに掲載します。附属書はⅠ~Ⅲに分類され、規制が最も厳しい附属書Ⅰに掲載された動物種は国際取引禁止となります。
©TRAFFIC

ワシントン条約では、規制対象種を附属書と呼ばれるリストに掲載します。附属書はⅠ~Ⅲに分類され、規制が最も厳しい附属書Ⅰに掲載された動物種は国際取引禁止となります。

ビロードカワウソLutrogale perspicilata CoP18では、ビロードカワウソも附属書Ⅰに掲載されました。
© Mikaail Kavanagh / WWF

ビロードカワウソLutrogale perspicilata
CoP18では、ビロードカワウソも附属書Ⅰに掲載されました。

この決定が施行された2019年11月26日以降、日本はコツメカワウソの商業目的での輸入が原則できなくなりました。

また、それ以前に日本に輸入されたコツメカワウソについても、国内での販売や譲渡が厳しく制限されることになりました。

日本の国内取引の課題

コツメカワウソの国内販売は現在、日本の法律「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づき、原則禁止されています。

ただし、この規制にも例外があります。
個体ごとに、合法に入手したことを証明し、環境省から登録票を付与すれば、国内での取引が許可されるのです。

しかし、現行基準や運用には抜け穴があり、密輸されてきた個体にも、登録票が付与されてしまう可能性があります。
これらを実質的に取り締まる手段が、現状ではないのです。

WWFジャパンは、密輸されて個体に登録票が付与されない仕組みの導入と、その確認を徹底するよう、環境省に要望。

環境省はこの要望に対し、「国内繁殖」として登録申請される個体については、繁殖施設の現地確認を実施するなど、厳しい対応を取る方針を示しました。

WWFジャパンでは、引き続き国内の取引状況に注目し、登録手続きが適切に実施されているかどうか監視しています。

カワウソカフェで展示されるカワウソ
©TRAFFIC

カワウソカフェで展示されるカワウソ

カワウソだけではない、野生動物のペット問題

ワシントン条約などの取り決めにより、コツメカワウソの日本国内外での取引が原則、全面禁止となることは、絶滅が危惧される野生のコツメカワウソを保全する上で、大きな転機といえます。

しかし、こうした取り組みを推進するためには、法制度の改善などと同時に、コツメカワウソを「かわいい」愛玩物ともてはやす、今の日本の社会的な意識も変えていかねばなりません。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で明らかになったように、人の健康を守るという点からも、野生動物との関わりを見つめ直す必要があります。

珍しいペットを求める風潮に支えられた野生動物の取引や、何の検査もなくそれらを国内に持ち込む密輸などの犯罪が、新たな病気を持ち込んでしまう、恐ろしい原因の一つになる可能性があるからです。

WWFでは、野生生物の取引管理や規制の徹底を、国際社会に対して働きかけながら、法律の改善を求め、野生動物との新しい関係性を構築する提案をこれからも続けていきます。

動物由来感染症を拡大させる懸念のあるアジアの野生動物市場
© Michèle Dépraz / WWF

動物由来感染症を拡大させる懸念のあるアジアの野生動物市場

WWFの野生生物を守る取り組み

密猟や生息地の破壊などによって追い詰められていく生物を絶滅から救うために、WWFは長い経験と国際的なネットワークを活かし、さまざまな保護プロジェクトを行っています。



【寄付のお願い】好きだからこそ 違法な取引から野生動物を守りたい



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