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生物多様性条約COP17に向けた重要交渉が始動、補助機関会合(SBSTTA-28・SBI-7)開幕へ

この記事のポイント
2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを目指す世界の目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」。その中間評価となる初の「グローバルレビュー」が2026年10月に開催される生物多様性条約の締約国会議(COP17)で実施されます。これに先立ち、7月27日からケニアのナイロビで開催される補助機関会合(SBSTTA-28・SBI-7)では、グローバルレビューの基礎となる評価や勧告が取りまとめられ、COP17での議論の方向性が実質的に形づくられます。世界が依然として目標達成の軌道から外れている中、各国は実効性ある取り組みの道筋を示せるのか。WWFジャパンも現地で交渉の行方を追います。
目次

生物多様性条約(CBD)2026年会議の予定

  • 2026年7月27日~8月1日:科学技術助言補助機関第28回会合(SBSTTA-28)(ケニア・ナイロビ)
  • 2026年8月4日~12日:実施補助機関第7回会合(SBI-7)(ケニア・ナイロビ)
  • 2026年9月7日~9日:KM-GBFの実施における集団的進捗に関する昆明対話(グローバルレビューに向けた非公式技術対話)(中国・昆明*)
  • 2026年10月19日~30日:生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)(アルメニア・エレバン)ーカルタヘナ議定書第12回締約国会合(COP-MOP12)および名古屋議定書第6回締約国会合(COP-MOP6)同時開催

    (出典:https://www.cbd.int/meetings
    CBD通知2026-051(2026年6月12日付)。開催地は最終確定前。

COP15で誕生したKM-GBF

2022年に生物多様性条約(CBD)のもと採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」は、生物多様性分野における史上最も野心的な国際目標です。

生物多様性の損失は過去50年で急速に進み、約100万種が絶滅の危機にある中、KM-GBFは2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に載せる「ネイチャーポジティブ」をミッションに掲げ、23のターゲットを定めました。

また、前身である愛知目標の反省を踏まえ、世界全体の進捗を定期的に評価する「グローバルレビュー」の仕組みが導入されました。

2026年10月にアルメニアで開催されるCOP17では、その初回レビューが実施される予定です。

その準備プロセスとして、2026年7~8月には補助機関会合(SBSTTA-28・SBI-7)、9月には「昆明対話」(2026年7月時点で暫定)が予定されており、COP17に向けた議論が本格化します。

© Denis-Huot / naturepl.com / WWF

前回COP16の主な成果と課題

KM-GBFの採択後初めてのCOPとなったCOP16は、2024年10から11月にかけて、コロンビア・カリで開催されました。

KM-GBF の実施に関わる重要な議論が行なわれましたが、資金動員を中心に締約国間の対立が続き、一部の重要議題で合意に至らないまま閉幕するという異例の事態となりました。残された議題は、2025年2月にローマで開催された再開会合で協議され、最終的に合意されました。

COP16の主な成果として、KM-GBFの進捗を測るための指標体系を定めた「モニタリング枠組み」が最終化され、世界共通の評価基準が整いました。

また、デジタル配列情報(DSI)の利益配分メカニズムと、その資金メカニズムである「カリ基金」の立ち上げにも合意しました。

一方、資金動員をめぐっては、既存基金の強化を主張する先進国と、新たな専用基金を求める途上国との間で立場の隔たりが残されており、引き続きCOP17に向けた主要な争点となる見通しです。

2025年2月にローマで再開された生物多様性条約COP16の様子
© IISD/ENB | Mike Muzurakis

2025年2月にローマで再開された生物多様性条約COP16の様子

COP17の「グローバルレビュー」とSBSTTA-28・SBI-7のポイント

KM-GBFの採択から4年余りが経過し、COP17では2030年目標に向けた初の「グローバルレビュー」が実施されます。

グローバルレビューは、KM-GBF実施における世界全体の集団的進捗(collective progress)を評価し、その結果を今後の行動強化に活用するプロセスです。

その基礎となるのが、各締約国が提出する生物多様性国家戦略(NBSAP)や第7回国別報告書などをもとに作成される「グローバルレポート」です。

グローバルレポート案は、今回の補助機関会合(SBSTTA-28・SBI-7)に向けて公開されており、会合ではその内容をもとに、グローバルレビューに向けた勧告が検討される予定です。

このため、今回の補助機関会合は、COP17における議論の方向性を左右する重要な準備交渉の場となります。

KM-GBFのレビューメカニズム(COP15決定(Decision 15/6)および COP16決定(Decision16/32)をもとにWWFジャパン作成)

KM-GBFのレビューメカニズム(COP15決定(Decision 15/6)およびCOP16決定(Decision16/32) をもとにWWFジャパン作成)

なお、SBSTTAとSBIはいずれもCOPと同様に締約国による政府間会合ですが、それぞれ異なる役割を担っています。グローバルレビューのプロセスにおいてもそれぞれ付託事項(マンデート)が与えられています。

  • SBSTTA(科学技術助言補助機関):グローバルレポートの作成に向け、科学・技術的助言を行なう 
     
  • SBI(実施補助機関):グローバルレビューの実施・手続きに関する検討を行なう

今回の補助機関会合の最大の焦点は、グローバルレビューに向けた交渉です。

これに加えて、SBSTTA-28では、モニタリング枠組みや指標など進捗評価の基盤に関する議論が行なわれ、SBI-7では、資金動員、DSI利益配分メカニズムとカリ基金の運用、生物多様性の主流化など、KM-GBFの実施を支える制度や手段に関する議論も注目されます。

© Pete Oxford / naturepl.com / WWF

グローバルレポート案、「KM-GBFは達成軌道に乗っていない」と評価

補助機関会合での検討に先立ち、グローバルレポート案(CBD/SBSTTA/28/2/Add.1)が2026年6月に公開され、締約国やオブザーバー団体などを対象としたピアレビュー(意見募集)が実施されました。

現在は、寄せられたコメントを踏まえた改訂版が準備されており、今回の補助機関会合で検討が行なわれる予定です。

グローバルレポート案では、次のような明確な「包括的メッセージ」が掲げられています。

本枠組みは、これまでにない世界的な関与とコミットメントを生み出してきた。しかし、世界は依然として、2030年目標やミッション、さらには2050年ゴールやビジョンの達成軌道に乗っていない。

グローバルレポートでは、各国が提出したNBSAPや国別目標を積み上げても、KM-GBFが掲げる2030年の目標達成にはなお不十分であると評価しています。

また、全体として実施は目標達成の軌道に乗っておらず、とりわけ自然損失の要因(ドライバー)への対応や、資金動員を含む実施手段において進捗の遅れが目立つことが示されています。

23のターゲットの進捗を示したスコアカード(グロ―バルレポート案(CBD/SBSTTA/28/2/Add.1)から抜粋)

23のターゲットの進捗を示したスコアカード(グロ―バルレポート案(CBD/SBSTTA/28/2/Add.1)から抜粋)

このような状況の中、グローバルレビューが単なる現状評価や既存の目標の再確認に終われば、KM-GBFへの信頼を損ないかねません。

このためCOP17では、実施の遅れを正面から認識し、KM-GBFを2030年目標の達成軌道に戻すための明確な政治的なメッセージを打ち出せるかどうかが大きな焦点となります。

そのためには、各国の野心の引き上げに加え、生物多様性の主流化、補助金など公的資金の見直し、資金動員の前進などについて、具体的かつ実効性のある追加的行動に合意することが求められます。

SBSTTA-28・SBI-7、そして9月に予定される対話を含むCOP17までの一連の議論は、この方向性を左右する重要な機会となります。

WWFも各国のスタッフを派遣し、各国政府への働きかけや交渉の支援を行なうとともに、現地からの最新の議論や交渉の動向を発信していきます。

© Andy Rouse / naturepl.com / WWF

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