環境サステナ就活ナビ:先輩たちの就活ストーリー 【環境サステナ就活ナビ】先輩たちの就活ストーリー Vol.3:「環境問題を“経営課題”として解決したい」柴 真緒さん(ベイン・アンド・カンパニー)
2026/06/19
- この記事のポイント
- WWFジャパンが2024年5月に実施した調査では、「環境」を企業選びの大切な軸として就活をしている学生の約8割が、その思いとは裏腹に、どのように企業の環境の取り組みを調べ、評価すればよいかわからないと感じていることが判明しました。そこで、WWFジャパンは、環境を大切な軸として就活をしている学生を応援するWebサイト「環境サステナ就活ナビ」を公開。そのコンテンツのひとつとして、「先輩たちの就活ストーリー」と題し、環境を大切な軸として就活をした若手社会人の方々に、当時の就活の様子、悩みや工夫、これから就活する学生へのメッセージ等をうかがいました。
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド アソシエイトコンサルタント(2025年入社)
東京大学大学院 農学生命科学研究科 修了
環境課題に、経営の視点で向き合う
────まず、環境を大切な軸として就職活動をしようと思ったきっかけを教えてください。
幼い頃から自然や博物館が好きだったのですが、環境について真剣に考えるようになったのは、東日本大震災がきっかけでした。
震災であらゆるものが壊されていく様子に大きな衝撃を受け、「自分も何か行動しなければならないのではないか」と考えるようになったんです。
大学では生物学を専攻し、学生団体でも環境問題に対する提言活動を行っていました。そうした中で、自然科学の知見を企業や社会の意思決定につなげるような仕事がしたいという想いが強まっていきました。
──企業選びでは、どのように情報収集をしていましたか?
まずは自分でできる限りの情報収集をしようと思い、IR資料や統合報告書を読み、開示されている場合は中期経営計画も見ていました。
特に重視していたのは、サステナビリティの取り組みが、どこまで経営の中核に組み込まれているかという点です。たとえば生物多様性やScope3(※1)について、どれだけ定量的に取り組んでいるのかを見ることで、企業ごとの違いが見えてくると感じていました。
TCFD(※2)やTNFD(※3)などの開示情報にも目を通していました。ただ、当時の私が十分に読み解けていたかというと、まだ理解が浅い部分もあったと思います。
今振り返ると、第三者機関が出しているレポートなど、その企業自身の発信だけではない視点も、もう少し深く見ておけばよかったと感じます。
そしてやはり、社員の方に直接話を聞くことも大切です。就活中は、環境への取り組みが誰の言葉で語られているのかも意識して見ていました。
専門部署による発信に加えて、CEOや経営陣、現場の社員の方々もそれぞれの立場で語っている企業は、サステナビリティが経営や事業により深く接続されているように感じました。
(※1)Scope3…企業活動における温室効果ガス排出量のうち、自社での直接排出(Scope1)・購入した電力などによる間接排出(Scope2)以外の排出量を指す。原材料の調達、物流、販売後の製品使用・廃棄など、サプライチェーン全体を含む広範な排出が対象となる。詳しくはコチラ。
(※2)TCFD…正式にはTask Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)。企業に対し、気候変動が事業へ与えるリスクや機会について、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」などの観点から情報開示を推奨している国際的な枠組み。
(※3)TNFD…正式にはTaskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)。気候変動だけでなく、生物多様性や自然資本に関するリスク・機会を企業が把握・開示するための国際的な枠組み。企業活動が自然環境へ与える影響や、自然環境の変化が事業へ与える影響の可視化を目的としている。
──企業の「本気度」はどのように見ていましたか?
あくまで就活生としての印象ですが、環境への取り組みを大きく掲げていても、経営計画などを見ると、実際にどこまで事業に組み込まれているのかが見えにくいケースもありました。
もちろん外からすべてを判断することはできませんが、発信している内容と実際の取り組みにどれだけ一貫性があるかは、ひとつの判断材料になると思います。

──コンサルティング業界を選んだのは、どのような経緯だったのでしょうか。
最初からコンサルティング業界に絞っていたわけではなく、メーカー、省庁、NGOなど、幅広く見ていましたが、より大きな変革に関わるには、さまざまな産業に横断的に関われる仕事がいいのではないかと考えるようになっていきました。
また、学生時代の私は、環境問題を社会に実装するためのビジネス視点が不足していると感じていました。そうした視点を身につけるには、企業の意思決定に近い場所で経験を積む必要があると考えたんです。
コンサルティングであれば、まさに経営層と伴走しながら、複数の業界の脱炭素や自然資本対応に関われる。そこに魅力を感じ、最終的にこの道を選びました。
──環境やサステナビリティへの関心を、就活でどう伝えるか悩む学生も多いと思います。
私もかなり悩みました。理想論のように聞こえてしまわないか不安でしたし、環境領域への関心だけが先行しているように受け取られないかという心配もありました。
実際、就活初期にはうまく伝えられなかった経験もあります。自分のやりたいことを伝えることに必死になってしまい、自分の関心領域と企業の事業内容や職務との関連性を十分に伝えることができませんでした。
そこで、環境分野に対する自分の問題意識と、なぜコンサルティングという仕事を通じてその解決に貢献したいのかを改めて整理しました。
それを言葉にしていくうちに、自分の関心を一方的に語るのではなく、相手に伝わる形で表現できるようになっていきました。
結果として、志望動機にも一貫性が生まれ、納得感を持って受け取ってもらえるようになったと感じています。
──最終的に、ベイン・アンド・カンパニーを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
ベイン・アンド・カンパニーには、「A Bainie never lets another Bainie fail(ベインの社員は、仲間を決して見捨てない)」という言葉があります。社員同士が支え合うカルチャーを表した言葉なのですが、それが単なるスローガンではなく、実際の行動として根づいていると感じました。
インターンでも、「自分だけが成果を出すのではなく、周囲を助けることが大切」という姿勢を実際に感じ、ここで働きたいと思うようになりました。
私自身、環境問題のような複雑なテーマにおいては、ひとつの専門性や立場だけで答えを出すことは難しく、さまざまな視点を持ち寄りながら、現実的な解をつくっていくことが重要だと考えています。
ベインのカルチャーには、個人の成果だけではなく、チームとしてよりよいアウトプットを出すことを重視する姿勢があり、その点が自分の向き合いたい課題とも重なると感じました。

ビジネスの成果と環境保全は、両立できる
──現在のお仕事について教えてください。
食品や不動産など幅広い業界のプロジェクトに関わっているほか、専門知識やスキルを活かしてNPO・NGOを支援する「プロボノ」プロジェクトにも携わっています。
社内では「ESGチャンピオン」としての活動にも取り組んでいます。「ESGチャンピオン」は、ベイン・アンド・カンパニーがグローバルで推進している取り組みで、各プロジェクトに担当者が配置され、通常のプロジェクト推進の中にサステナビリティの視点をどのように組み込むかを考える役割を担います。
たとえば、CO2排出や生物多様性、サプライチェーンリスクといったESG課題をクライアントの事業とどう結びつけて捉えるかをチームで議論したり、サステナビリティに関するミーティングをファシリテートしたりしています。
たとえば、オペレーションの効率化を目的に支援しているプロジェクトでも、原材料の廃棄削減や輸送ルートの見直しが、結果的にCO2排出量の削減につながるケースがあります。
ビジネス上の成果を追求しながら、同時に成果だけにとどまらない可能性を追求していく。その役割を担えていることに、大きなやりがいを感じています。
──コンサルティングという立場から見て、企業が環境経営に取り組む必要性をどう考えていますか?
環境経営の重要性そのものは、多くの企業で認識されつつありますが、それを開示や目標設定だけで終わらせず、事業戦略や日々の意思決定にどう組み込むかが難しいところと感じています。
たとえば脱炭素は、原料調達から製造・物流・商品設計まで、バリューチェーン全体で取り組む必要があります。また、自然資本や生物多様性も、サプライチェーンの安定性や将来の事業リスクと密接に関わっています。
だからこそ環境経営は、単なる環境負荷の低減ではなく、中長期的な競争力や事業の持続性を左右する経営課題として捉える必要があると考えています。
──今後の目標を教えてください。
今後は、気候変動や自然資本の課題を、企業の意思決定により深く組み込んでいくことに関わりたいと考えています。
脱炭素については、多くの企業が目標を掲げる段階から、それを事業戦略や投資判断、サプライチェーン、商品・サービス設計にどう落とし込むかが問われる段階に移ってきていると感じています。
また、生物多様性や自然資本についても、自身の生物学のバックグラウンドを活かしながら、企業が自然への影響や依存を正しく把握し、それを事業上のリスクや機会として捉えられるような支援に携わっていきたいです。
──最後に、環境を軸に就活を考えている学生にメッセージをお願いします。
「この会社に行きたい」「この仕事がしたい」とこだわってしまうこともあると思いますが、環境への関わり方は決してひとつではありません。
だからこそ、一度立ち止まって、その志望の裏にある想いを深掘りしてみてほしいです。「なぜこの仕事をしたいのか」「どのような形で社会に関わりたいのか」を見つめ直すことで、思いがけない選択肢が見えてくることもあります。
ご自身の専門性や環境への想いを誇りに持って、納得できる場所を見つけてみてください。





