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企業のここをチェック

「企業のコミットメント」をどう捉えればいいのか。
公開情報を見ていくと、環境課題にどれだけ本気で向き合っているか、少しずつ違いが見えてきます。
大切なのは、「取り組んでいます」という言葉だけで判断しないこと。どのような目標を掲げ、どう行動しているか。
グローバルな視点で信頼されている第三者からの評価を受けているか。公開情報の中にも、その本気度を見極めるヒントはたくさんあります。
ここでは、まず押さえておきたいポイントを確認してみましょう。

01温室効果ガス排出削減の目標に国際認定があるか

01温室効果ガス排出削減の
目標に国際認定があるか

気候変動の悪影響を最小限に抑えるためには、世界全体で2035年までにCO₂などの温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量を2019年比で60%削減し、2050年までにGHGの排出量と吸収量を均衡させる「ネットゼロ」を達成することが求められています。

こうした潮流を受け、多くの企業も「2030年までに自社のGHG排出量を50%削減します」とか「2050年にカーボンニュートラルを目指します」といった、GHG排出削減目標を発表するようになりました。

一方でこうした目標の中には、一見すると高い目標のように見えても、削減の対象とする範囲が限定的だったり、基準とする年がとても古かったりするケースもあり、比較が難しかったり実際の削減量は実はそんなに多くないというケースもあったりします。

そこで、ぜひチェックしてほしいのが企業のGHG削減目標が、パリ協定の目標達成に必要な水準と整合していることを示す国際的な認定制度「SBT(Science Based Targets)認定」を取得しているかどうかです。SBT認定は、「企業のGHG削減目標が科学的にみて野心的なレベルである」ということを示すもので、独立した国際団体SBTiが企業のGHG削減目標を厳しくチェックして認定するものです。SBT認定を受けている企業は、グローバルスタンダードでレベルの高い目標をもって「本気で」頑張っている企業と言えます。

SBT認定を取得している企業はサステナビリティレポートやプレスリリースで紹介をしていることが多いので、ぜひチェックしてみてください。また、SBTiのウェブサイトにいくとSBT認定を受けている企業を検索することもできます。

豆知識

SBT認定を受けている企業は世界中で既に10000社を超えています。その中でも最も多くの企業が認定を受けている国が日本なんです。

企業事例

  • ソニーグループ株式会社

    多くの企業が2050年ネットゼロを目指す中で、それを10年前倒しして、2040年ネットゼロを目指しているのが、ソニーグループ株式会社です。2015年に日本企業で初めてSBT認定を取得したソニーグループは、さらに2022年に新たに発表されたガイダンスに沿って2040年ネットゼロ目標でSBT認定を取得しています。

    ソニーグループサステナビリティレポート2025 p.99

    ここに注目!

    ソニーグループサステナビリティレポート2025 p.99

  • 豊田通商株式会社

    豊田通商株式会社は、2025年7月に日本の大手総合商社で初めてSBT認定を取得しました。豊田通商は自社のGHG排出削減に取り組んできた従来の目標をさらに進化させ、サプライヤーや取引先を含むバリューチェーン全体で野心的なネットゼロ目標を掲げることで、SBT認定を取得しました。

    豊田通商統合レポート2025(p.60)

    ここに注目!

    豊田通商統合レポート2025(p.60)

02企業の環境取組のスコアを見てみよう!

企業の環境の取組に関する「成績表」があったらみてみたいなと思いませんか?それを確認できるのが、CDPのスコアリングです。

CDPは企業の気候変動・フォレスト・水セキュリティ分野の情報開示や取組内容を評価し開示している国際団体です。CDPのスコアは8段階(A、A-、B、B-、C、C-、D、D-)で示されており、最高評価であるAスコアは「リーダー企業」という評価になっています。 2025年にA評価を受けた企業は、評価対象約20000社のうち899社、全体の約5%です。さらに、気候・森林・水の3分野でトリプルAを取得した企業は世界でわずか27社、うち6社が日本企業です。

2025年には、22,100を超える企業がCDPを通じて環境情報を開示しました。これらの企業は、世界の時価総額の半分以上に相当します。CDPスコアは世界中の多くの銀行や機関投資家が自身のポートフォリオの環境リスクの管理や投融資先との対話に活用されています。また、企業が自社のサプライヤーの管理・協働をするためにもCDPスコアは広く活用されています。

日経平均株価銘柄を構成する企業225社のCDP評価を見ると、A評価をとっている企業が40%を超えています。A-(15%)と合わせると、実に半数以上。日本のトップ企業であれば、もはやA評価をめざして当然といっても過言ではないかもしれません。

豆知識

CDPはもともと“Carbon Disclosure Project”という名前で、気候変動に関する情報開示を促す団体でした。今は、気候変動だけでなく、森林や水、さらに生物多様性、プラスチック、海洋といった領域にも範囲を広げており、これに伴い、名称も広く認知されていたCDPに変更されています。

企業事例

03再生可能エネルギーの活用

脱炭素のために最も重要なアクションの一つが化石燃料からの脱却再生可能エネルギーの利用拡大です。企業にとっても、再生可能エネルギーの活用は、GHG排出削減やエネルギーの安定供給に資するものです。さらに、たくさんの電気を使う企業が「再生可能エネルギーをもっと活用したい」という声(需要シグナル)を挙げることは再生可能エネルギーを拡大するための政策や投資を後押しする上でも非常に重要です。

RE100は、事業で使う電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを宣言する企業の国際イニシアティブです。RE100に加盟している企業は、自社の再エネ調達に取り組むだけでなく政策提言なども積極的に行っており、「再エネに本気」な企業と言えます。

また、RE100はグローバルに活躍する大企業が中心のイニシアティブですが、日本の中小企業や自治体、教育機関が加盟するイニシアティブ「再エネ100宣言 RE Action」というものもあります!

企業事例

  • 株式会社リコー

    株式会社リコーは、2017年4月に日本企業として初めてRE100に参加した企業です。2040年までに事業活動で使用する電力の再生可能エネルギー比率100%達成を掲げ、脱炭素化の取り組みを強化しています。単純に再エネ調達を増やすだけではなく、有志企業とともに政府に働きかけ、再エネ導入加速に尽力すると同時に、地域社会と共生する責任ある再エネ調達の取り組みを推進しています。

    リコー 気候変動対応

    ここに注目!

    リコー 気候変動対応

04バリューチェーン全体での脱炭素化

企業によるGHGの排出と聞くとまずは自社工場からのGHG排出や電気・熱といったエネルギーの使用に伴うGHG排出を思い浮かべる方も多いかと思います。どちらも企業にとって削減が必要な排出源ですが、実は多くの企業において最も大きな割合を占める排出源は、バリューチェーン上流や下流の排出(原材料の生産・調達段階における排出や、消費者による製品使用や製品の廃棄における排出)にあります。

こうしたバリューチェーン上からの排出は自社工場やオフィスからの排出よりも何倍も多く自社の排出全体の90%以上を占めるという企業も少なくありません。

豆知識

バリューチェーンの上流の原材料の生産・調達段階における排出や、バリューチェーンの下流の消費者の使用や製品の廃棄における排出のことをスコープ3と呼びます。それに対して自社で燃料を燃やすことででる排出をスコープ1、自社の電気や熱利用で排出される排出をスコープ2といいます。企業はバリューチェーン全体(スコープ1~3)で排出を進めることが求められています。

グローバルなルールでは企業にはバリューチェーン全体(スコープ1~3)で排出削減をすることが期待されています。中でも特に排出の多いスコープ3(バリューチェーンの上流や下流)は、削減の必要性が高い一方で、自社の管理外の排出源も多いため、削減が簡単ではない分野です。

スコープ3の削減のための取り組みとしては、販売する自社商品の省エネ性能を高めることで商品使用時の排出を削減するなどの他に、調達先企業と連携してGHGがどれくらい排出されているのかを見える化したり、具体的な排出削減の取り組みを支援する企業もいます。

スコープ3を含むバリューチェーン全体で重要な排出源をしっかり特定し、どのように削減に取り組んでいるかを見ることは、企業の本気度をチェックする一つのヒントになります。

05森林破壊ゼロ
約束をしているか

国連の報告によると、2015年以降毎年失われる天然林の面積は、約10万平方キロメートル(※1)。これは、東京都と同じくらいの大きさの森が、今も1週間ごとに失われ続けているということになります。森林の消失は、多くの野生生物を絶滅の危機に追いやる大きな原因となっていることに加え、気候変動を悪化させる要因にもなっています。気候変動の悪影響を軽減するには、遅くとも2030年までに全世界で森林破壊をゼロにすることが必要です。

日本にいると、森林破壊は遠い海外の国で起きているようにも感じますが、日本にも輸入され消費されるパーム油や紙、ゴム、木材を含む農畜産物が実は森林破壊の原因のひとつになっています。こうしたコモディティを扱う企業は「森林破壊ゼロ」の約束を掲げ、自社のバリューチェーン全体で森林破壊が起きないよう取組を進める必要があります。

企業が森林破壊ゼロ目標を掲げているか、ぜひチェックしてみてください。

※1:FAO Forest Resource Assessment 2025

企業事例

  • 株式会社ブリヂストン

    株式会社ブリヂストンは、タイヤ業界を牽引する企業として他社に先駆けて森林破壊ゼロを宣言した企業です。同社は調達・生産活動における森林破壊ゼロを目標とし、サプライヤーやビジネスパートナーなどのステークホルダーと協働して目標達成に取り組んでいます。タイヤの主原料となる天然ゴムの生産地は東南アジアの熱帯雨林に集中しており、多くの小規模農家によって支えられています。小規模農家が、新たな開拓をせずに既存の農地でより多くの収穫を得られるよう、生産能力向上を目的とした支援を強化していくために、2026年までに30,000軒の小規模農家支援を行うことをグローバル戦略の中期目標として設定し、森林保全に向けて支援活動を強化しています。

    ブリヂストン環境長期目標:生物多様性ノーネットロス

06責任ある水利用管理
できているか

地球上に存在する水のうち、9割以上を海水が占め、「淡水」はわずか2.48%。さらに飲料水や農業・工業に利用できる水(アクセス可能で、かつ再生可能な淡水)となると、0.19%しかありません。この貴重な淡水が作り出す川や湖といった生態系には、たくさんの生き物たちが暮らしていますが、現在、淡水生態系の消失は世界中で深刻な問題になっています。また淡水は企業活動にとっても重要な資源ですが、近年、干ばつや洪水で企業のサプライチェーンは大きな被害を受けています。

こうしたことから企業は、将来の水リスクを分析・評価し、重要な拠点を特定し、責任ある水利用管理を上流から下流までの「流域」という視野の中で、他の水利用者や公的機関、科学者、NGOなど関連ステークホルダーと協働して進めていく必要があります。

こうした責任ある水利用管理の指針のひとつとなるのが「AWS認証」です。AWS認証は、水利用者(企業)が自らの水の使い方を理解し、その利用が周囲の環境や人々にどのような影響を及ぼしているかを把握するための枠組みです。認証取得には、水資源だけでなく、関連して気候変動や淡水の生物多様性など多角的な情報収集や取り組みも求められます。

水の使用量や経済的影響、他社への影響力から優先的に水リスクに取り組むべきセクターとして、WWFは特に以下の9つのセクターに着目しています。こうしたセクターに属する企業については、自社の水リスクをどのように分析しているか、ぜひチェックしてみてください。

企業事例

07国際的な認証品の活用

企業が自社の環境負荷を軽減するために最も重要なアクションの一つが、持続可能な原料調達です。そして、そのために有効な手段が、国際的に信頼されている認証制度を活用して、原材料を生産したり調達・販売することです。

こうした認証には、木材や紙製品などの林産物につけられるFSC®︎認証や、持続可能なパーム由来原料・製品につけられるRSPO認証、持続可能で環境に配慮した漁業・養殖業を対象にしたMSC認証、ASC認証、環境や社会に配慮したオーガニック繊維製品のGOTS認証などがあります。

こうしたコモディティを扱う企業にとって、調達方針や数値目標を掲げ認証制度を積極的に活用していくことは、自社の環境負荷を着実に低減するとともに持続可能な生産方法を支援することにもなるアクションです。企業がどれくらい国際的な認証制度を活用しようとしているのか、ぜひチェックしてみてください。

国際認証の例

  • FSC認証

    FSC®︎認証

    適切に管理された森林から生産された木材や紙製品につく認証。森の動植物、地域の人々や労働者の権利に配慮し、将来的にも豊かな森を維持できるように計画されたサステナブルな森の木材が使われていることを証明するものです。

    www.fsc.orgライセンス番号:FSC-N002174

  • RSPO認証

    RSPO認証

    持続可能なアブラヤシ由来原料を使用した、あるいはその生産に貢献した製品であることを示すRSPOは、パーム油の生産が熱帯林やそこに棲息する生物の多様性、森林に依存する人々の生活に深刻な悪影響を及ぼすことのないようにすることを目指しています。

  • MSC認証/ASC認証

    MSC認証/ASC認証

    持続可能な漁業のための原則・要件を満たした漁業に与えられるMSC認証と、環境と社会に配慮した責任ある養殖のための原則・要件をクリアした水産物に与えられるASC認証。どちらも商品にラベルを付与するには、厳しい流通管理の認証を取得する必要があります。

  • オーガニックテキスタイル世界基準(GOTS)

    GOTS認証

    オーガニック繊維製品の製造加工に対する国際的な第三者認証です。オーガニックコットンなどの有機栽培・飼育による原料繊維を70%以上使用し、環境・社会・人権に関する厳格な基準を、バリューチェーンのすべての段階で満たしていることを示します。

08カーボン・オフセット
ご用心!

カーボン・オフセットという言葉を聞いたことがありますか?カーボン・オフセットとは一般に、第三者が再エネや省エネ、植林などを実施することで排出削減やCO2を吸収した成果をカーボン・クレジットとして購入し、自社の排出量と相殺をすることを言います。一見すると、環境によいことをやっていようにも見えるカーボン・オフセットですが、実はとても注意が必要なんです。

カーボン・オフセットをすることにより本来取り組むべき脱炭素への投資を遅らせてしまう懸念や、実は購入したカーボン・クレジットがきちんとした削減実態の伴わない質の悪いクレジットだったため大きな問題になったケースも近年報告されています。このため、多くの国際的ルールでは企業によるカーボン・オフセットは認められていません。

カーボン・クレジットのように市場のメカニズムを活用した脱炭素の仕組みそのものは必ずしも悪いものではありませんが、使い方には細心の注意が必要。カーボン・オフセットを自社の脱炭素戦略として大々的にPRしている企業には、ちょっと注意をしてほうがいいかもしれません。

豆知識

カーボン・クレジットは質の高いクレジットを正しい使い方で使えば、気候変動対策や生物多様性保全に資することもあります。また企業がネットゼロとなる際にも炭素の「除去」というアクションが必要になり、そこでカーボン・クレジットが活用されることもあります。しかしちょっと専門的でややこしいので、少なくとも現時点で、企業が「カーボン・オフセット」を大々的に宣伝していたら、ちょっと気を付けたほうがよいかも、と覚えておいてください。