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WCPFC2025年次会合結果報告 南太平洋のビンナガについて管理方式(MP)の合意に成功も、メバチ、キハダについての議論は進展せず

この記事のポイント
2025年12月1日から5日間にわたりフィリピンのマニラで開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合が閉幕しました。この第22回WCPFC年次会合では、長年議論されてきた南太平洋のビンチョウマグロ(ビンナガ)の管理方式(MP)が合意されたことが注目すべき成果です。さらに、海鳥の混獲回避措置の強化も合意され、全体として一定の進捗がみられた会合となりました。一方で、資源の減少が続くメバチとキハダの漁獲戦略の合意は見送られ、次年度に向けた早急な検討課題が示される結果となりました。
目次

2025年12月1日から5日まで、フィリピンのマニラにて中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の第22回年次会合が開催されました。

26の加盟国・地域が参加したこの会議では、マグロ類を中心とした漁業資源の保全と利用について話し合いが行なわれました。

2025年の年次会合は南太平洋のビンナガの漁獲戦略に必須である管理方式が合意されるかが一番の注目事項でした。

フィリピンのマニラで開かれた2025年のWCPFC会議の会場
© Kyoko Okuyama / WWF-Japan

フィリピンのマニラで開かれた2025年のWCPFC会議の会場

持続可能な漁業の鍵 漁獲戦略、管理戦略評価(MSE)、管理方式(MP)

持続可能な漁業を実現するためには、乱獲や資源枯渇を防ぐ中長期的な漁獲戦略が欠かせません。

どの漁獲国も乱獲を望みませんが、資源の減少が著しい中、自国の短期的利益を守ろうとして漁獲を減らせず、結果的に乱獲に至るケースがあります。特に複数国が漁獲する資源については、全会一致の合意が難しく、問題が深刻です。

そこで資源状況に応じて漁獲可能量(TAC: Total Allowable Catch)を自動的に算出するルール(漁獲制御ルール)や基準値を事前に決め、合意する手法(漁獲戦略)が国際的にとられています。

ただし、資源量推定には魚の生存率など不確実な情報を使用することも多く、これが原因で誤った管理につながるリスクもあります。

こうした不確実性を考慮した多様なシナリオをシミュレーションし、管理戦略を評価するのが管理戦略評価(MSE:Management Strategy Evaluation)です。そして、このシミュレーション上で、資源の状態に応じて漁獲量(TAC)を調節するために、予め合意しておくガイドラインが管理方式(MP: Management Procedure)です。
MSEは、安定的で持続可能な漁業の鍵となるため、中西部太平洋のカツオや北太平洋のビンナガですでに導入され、その他マグロ類への導入も検討されています。

WWFジャパンは、漁獲戦略を早期に導入し、安定的かつ持続可能な漁業を実現するため、水産庁とWCPFC議長に対し、多数企業と共同で漁獲戦略の導入を求める要望書をWCPFC年次会合の開始前に提出しました

【関連情報】中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)におけるマグロ類への漁獲戦略導入を求める要望書

南太平洋ビンナガの管理方式(MP)に合意

2025年の年次会合において、漁獲戦略やMSE、MPの議論で最も時間が割かれたのが、南太平洋のビンナガです。

ビンナガは世界中に広く分布し、日本では回転寿司の「ビントロ」や高級ツナ缶「ホワイトツナ」として親しまれています。胸ビレが長い「鬢(びん、もみあげ)」のように見える外観が名前の由来です。

WCPFC管理海域の南太平洋のビンナガの漁獲量は、1990年代後半より急増し、2023年には約6.8万トンまで増加しました。資源は乱獲状態ではありませんが、WCPFCの科学委員会による勧告において、資源が危機水準(限界管理基準値)を下回るリスクを回避し、経済学的に持続可能な漁獲率を維持するためには、はえ縄漁業の努力量(漁獲に投入される労働量を示し、具体的には漁船隻数、漁具数、操業回数や日数等を指します)と漁獲量を削減することが必要とされていることもあり、漁獲戦略の導入がもとめられていました。

約10年間、南太平洋のビンナガの漁獲戦略について議論されてきましたが、2025年のWCPFC年次会合において、ようやくMPに正式合意することに成功しました。

ビンナガ Albacore (Thunnus alalunga)
© Scandinavian Fishing Yearbook / WWF

ビンナガ Albacore (Thunnus alalunga)

先送りされたメバチ、キハダの管理強化

日本で主に刺身として消費されるメバチや、刺身だけでなく缶詰材料としても使われるキハダについても、漁獲戦略を導入する方向となっていますが、残念ながらその議論は大幅に遅延している状況です。

2025年の年次会合においても議論されましたが、メバチとキハダが同時に漁獲されることによる管理の複雑さや、両種の管理目標を同時に実現することはできないなどの理由もあり、議論が難航。残念ながら、今年も合意は先送りとなりました。また、これら議論のほとんどが非公開の協議中心で行われたこともあり、会議の透明性についても課題となりました。

そこでWWFジャパンは、加盟国に対し、2026年中に最低2回の追加会議を実施し、加盟国内の議論を深めることを提案。日本など多くの国が賛同を得た結果、採用されました。今後、追加会議の開催によって議論が加速し、早期にメバチとキハダの漁獲戦略が合意されることを期待します。

© Frédéric BASSEMAYOUSSE / WWF-Mediterranean

海鳥混獲回避措置の強化に合意

混獲とは、漁業の操業中に対象としていない海洋生物を捕獲してしまうことを言います。WCPFC年次会合では混獲について、ウミガメ、サメと海鳥など複数種についての議論がされましたが、特に進展があったのは海鳥の回避措置の強化です。

海鳥は年間32万羽(はえ縄漁による)、年間40万羽(刺し網に漁による)混獲されているとの推計がありますが、WCPFCでは、マグロ漁業で使用されるはえ縄漁業での混獲を減らすため、以前からトリラインや加重枝縄などの回避措置を義務付けていました。しかし、それら措置では不十分であるとの報告もあり、効果向上へさらなる強化が求められていました。

2025年WCPFC年次会合では、海鳥混獲の高リスク海域を南緯30度以南から南緯25度以南に拡大するとともに、この海域で操業する船舶に対し、加重枝縄、夜間投縄、トリラインの三つのうち二つを組み合わせるか、またはフックシールド装置などの代替措置を義務付ける内容が採択されました。

© Wim van Passel / WWF

IUU漁業を防ぐ 洋上転載の管理について議論

洋上転載とは、海上で漁獲物の積み替えすることを指します。しかし、監視のない洋上での積み替えは、密漁船との取引を行いやすくしてしまうことから、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)の温床となっている、という認識が広がっています。WCPFCの管理海域では洋上転載は原則禁止され、例外的にオブザーバー監視のある場合にのみ許可されています。

2025年の年次会合では、許可を受けていない洋上転載の実態やオブザーバー監視の効果が問われ、現行制度が抱えるIUUリスクに関する課題が議論されました。一部加盟国は洋上転載の全面禁止を提案し、すべての漁獲物を港での陸上転載にすべきとの提案も出されました。また、監視体制の強化や管理措置の実効性向上に向けた提案も検討されましたが、最終的な合意には至らず、この議題は継続して協議されることとなりました。

ステークホルダーや加盟国間の連携の強化を

会合に出席したWWFジャパン海洋水産グループ漁業政策シニアマネージャーの植松周平は、今回の結果について以下のように述べています。

「今回の南太平洋ビンナガのMPの合意は、マーケットからの強い要望により実現しました。マーケットなどのステークホルダーが連携し、水産資源管理を自己の問題と認識し関与することが、課題解決のための議論を加速させると考えられます。

また、今回合意された、はえ縄漁業における海鳥の混獲回避策強化案についても、はえ縄漁業を多く有する日本と、海鳥の混獲被害を受けているニュージーランドが連携して作成したものでした。多くの議論が自国の利益追求のみに終始するなか、生態系の保全を目指し、加盟国と連携してひとつの解決案を導き出した好例となりました。

WCPFCには、まだ多くの課題が山積していますが、より一層ステークホルダーや加盟国間の連携を深め、課題解決に取り組む必要があります」。

WWFは、持続可能な漁業実現に向けて、引き続き、世界中のステークホルダーと連携し、課題解決への働きかけを行なっていきます。

WWFの情報発信と連携

WWFは国内外のステークホルダーと連携し、課題解決に取り組んでいます。会合中、WWF Pacificとともに、動画を作成し、日本語版もSNSで公開中です。

会議に参加したWWFのスタッフ。日本、フィリピン、フィジーから参加しました。
© Kyoko Okuyama / WWF-Japan

会議に参加したWWFのスタッフ。日本、フィリピン、フィジーから参加しました。

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