マグロという生物

この記事のポイント
マグロは、スズキ目サバ科に属する大型の回遊魚です。種類によっては、2~3メートルにもなるマグロは、世界の海で見られる魚の中でも、特に大型になる肉食魚です。マグロの仲間にはいくつも種類があります。日本の食卓によくのぼる、大型のマグロ類には、クロマグロ、ミナミマグロ、キハダ、メバチ、ビンナガなどがあります。
目次

マグロという生物

泳ぎが命!

マグロは、泳いで口に海水を入れ、それをエラに通すことで呼吸しているため、泳ぐのをやめると死んでしまいます。このため、生まれたその日から死ぬ時まで、眠っているときですら、一度も止まることなく泳ぎ続けます。

マグロの体は、泳ぐのに適した流線型をしており、時には時速100キロもの早さで泳ぐほどの、高い運動能力を誇ります。自分の体温よりも、少し低い水温の海域を好み、海流にのって夏や冬の季節ごとに、広大な範囲を南北に回遊して暮らします。

大型の肉食魚

種類によっては、2~3メートルにもなるマグロは、世界の海で見られる魚の中でも、特に大型になる肉食魚です。
泳ぎ続けることで生きるマグロは、その体力を維持するために、大量の食物を必要とします。食物は、小型から中型の魚類、甲殻類、イカ類など。マグロは、海の生態系の中でも上位に位置している生きものです。

いろいろなマグロ

マグロの仲間にはいくつも種類があります。日本の食卓によくのぼる、大型のマグロ類には、クロマグロ、ミナミマグロ、キハダ、メバチ、ビンナガなどがあります。ここでは、この5種のマグロについて紹介します。
ちなみに「カジキマグロ」という魚の名前を店でよく見かけますが、カジキはサバ科ではなくカジキ科に属しており、マグロ類とは全く別の魚です。

クロマグロ

「本マグロ」という名でも売られている、マグロの王様。
トロの多いマグロとしても喜ばれ、多くは刺身などで消費されています。

基本情報

和名:クロマグロ
別名:ホンマグロ
英名:bluefin tuna
学名:Thunnus orientalis
大きさ:体長300センチ、体重320キロ

特徴・用途

体の背側は青黒く、胸びれは短く、目が小さいのが特徴です。マグロ類の中でもっとも大型に成長し、3メートルを超える記録もあります[1]。
一般には「本マグロ」という名でも呼ばれ、身は濃い赤身。トロも多く、マグロの中でも最高級品として取引されます。熱帯や亜熱帯に生息するメバチやキハダより脂(トロ)が多いのは、クロマグロが比較的冷たい海に生息しているためです。

生態

寿命

クロマグロは、若齢期に急激に成長して5歳で約160 cmに達し、それ以降は成長速度が遅くなって8歳で約200 cm、12歳で226 cmに達します。
寿命は20年以上と考えられ、最大体長は300 cm以上、体重は320 kg以上に達します[1]。

分布とライフサイクル

クロマグロは主に北緯20~40度の北太平洋温帯域に分布しています(図1)。
いっぽう、大西洋および地中海には別種のタイセイヨウクロマグロ(Thunnus thynnus)が生息しています。
クロマグロの主な産卵場所、時期および主な親魚年齢は、南西諸島周辺(4~7月、8歳以上)、日本海(7~8月、3~6歳)および三陸沖(5~8月、6~8歳)です。
ふ化後は、日本沿岸を、餌を探しながら移動しますが、その一部は、1歳ごろになると太平洋を横断し、アメリカ大陸西岸で数年過ごした後、産卵のために日本周辺へ戻ってきます。
なお、クロマグロが産卵できるようになるまで、3~5年かかります(図2)[1]。

図1 クロマグロの分布・回遊経路と主な産卵場

図2 クロマグロの年齢別の成魚の割合:
3歳魚では約2割しか成熟していないが、5歳魚ではほぼすべての個体が成熟する。

漁業と漁獲量

クロマグロの漁獲量は、ピーク時には3万5千トンを超えていましたが、近年は1万トン強まで低下しています(図3)。
世界の漁獲量(2015-18平均)は、約12,000トンであり、日本、メキシコ、台湾、韓国、アメリカ、台湾の順で多く漁獲しています(図4)。
その中でも日本は、約7500トンという全漁獲量の約6割を漁獲している世界一の漁獲国です。
また、クロマグロ漁は、未成魚の漁獲が多いことが特徴であり、その漁獲は全体の95%に達します。
これら未成魚は、主に、まき網、曳縄、定置網などで漁獲され、「ヨコワ」や「メジマグロ」という名前で販売されていますが、これら大量の未成魚の漁獲は、近年の資源低下の主な原因と考えられています[2]。

図3 クロマグロの漁獲量の推移 (ISC20 plenary report final, Table 11より)

図4 クロマグロの国別漁法別漁獲量(2015-18年平均) (ISC20 ANNEX11 Stock Assessment report for Pacific bluefin tunaより)

養殖について

世界的にクロマグロの需要が高まる一方で、資源枯渇のために減少している天然漁獲を補う形で、クロマグロの養殖が盛んになっています。
クロマグロの養殖は、日本とメキシコで行われていますが、2017年の日本の養殖クロマグロ出荷量は15,858トンと、わずか5年で1.6倍に増加しています。
この値は天然クロマグロ漁獲量の倍以上ということからも、養殖クロマグロがポピュラーな存在になったと言えるでしょう(図5)。
また、希少・高価な部位である「トロ」を、養殖では増やすことができることも、養殖の需要を拡大させています。

養殖は、その方法によって「蓄養(天然種苗養殖)」と「完全養殖」の2種類に分類されます。
蓄養というのは、まき網漁やひき縄漁で漁獲した天然のマグロ(主に未成魚)を、生きたまま生け簀に移し、餌を与えて太らせ、脂(トロ)を乗せて育てた上で売りに出す、という方法です。
日本だけではなく、メキシコでも蓄養は盛んに行われていますが、養殖されたマグロのほとんどは日本で消費されています。
一方、完全養殖というのは、人工の環境下で生まれ成魚まで育ったクロマグロから採った卵を孵化させた人工種苗を生け簀で大きく育てる方法で、天然のマグロを漁獲することなく養殖することができます。
完全養殖は、技術的な難しさなどから、現在は日本でのみ行われている手法ですが、人工種苗が用いられる割合はすでに50%を超えております(図6)。
完全養殖は、クロマグロ資源への影響が無いことから、クロマグロ資源が減少した昨今では大変注目されている技術ですが、持続可能性という点で未だ課題があります。
詳しくはこちらをご覧ください。

図5 日本における養殖クロマグロの出荷量の推移 (水産庁、平成29年における国内のクロマグロ養殖実績について(速報値))より

図6 日本のクロマグロ養殖における人工種苗の比率(完全養殖の比率) (水産庁、平成29年における国内のクロマグロ養殖実績について(速報値))より

消費量

近年、クロマグロの消費量は国内、海外共に増加傾向にあり、2018年は3.7万と2012年に比べて1.5倍に増加しました(図7)。
この消費量の増加は、主に養殖クロマグロの供給によって支えられています。
また、日本は世界のクロマグロ消費の76%を占める世界一のクロマグロ消費国です(図8)。
漁獲量、消費量ともに世界一であり、自国の沿岸に主要な産卵地を抱える日本には、持続可能なクロマグロ漁業を確立する、大きな責任と役割があると言えるでしょう。

図7 クロマグロの消費量の推移 (FAO FISHSTATおよび財務省貿易統計より) ※輸入量、輸出量のエラ、内臓重量は考慮していない。 ※消費量は漁獲から消費までの時間差を考慮しておらず、また在庫量を考慮していない、近似値である。

図8 世界のクロマグロ消費における日本の割合 (FAO FISHSTATおよび財務省貿易統計より) ※輸入量、輸出量のエラ、内臓重量は考慮していない。 ※消費量は漁獲から消費までの時間差を考慮しておらず、また在庫量を考慮していない、近似値である。

資源状況と管理について

漁業の管理機関

クロマグロの管理は、西部太平洋ついては中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、東部太平洋については全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)が行っています(図9)。また、科学データについては、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)とIATTC科学諮問委員会(IATTC SAC)が調査・集約し、WCPFC・IATTCに提供しています。マグロの資源管理を行う国際機関ついて、詳しくはこちらをご覧ください。

図9 世界の海のマグロ類の資源管理にかかわる国際機関

資源状況

ISCによる2020年の報告では、2018年のクロマグロの全資源量は82,212トン、産卵可能な親魚の資源量(産卵親魚量)は28,228トン、これから漁獲対象となる幼魚数(加入量)が約466万尾であることがわかりました(図10)[2]。
2010年には、産卵親魚量が2018年の半分以下の10,837トンという歴史的な低水準まで低下したということを考えると、クロマグロの資源量は、着実に回復してきているとは言えます。しかし、依然として初期資源量(漁業が開始される以前の推定資源量)のわずか4.5%という低水準にあるため、余談を許せない状況です。また、水産庁は、数種のマグロについて、資源状態を3段階(高、中、低)にわけて評価していますが、クロマグロは依然として「低位」と評価されています[1]。

図10 クロマグロの全資源量、産卵親魚量、加入量の推移
2010年には歴史的低水準を記録したが、その後の管理措置強化により回復傾向にある(ISC20 plenary report finalより)

保全管理措置

WCPFCでは、近年のクロマグロの資源低下をうけ、2034年までに初期資源量の20%まで回復することを目標に、2015年より「未成魚漁獲量を50%削減する」という実効的な保全管理措置(CMM; Conservation Management Measure)を実施しています(表1)[3]。また、2018年には漁獲戦略(ハーベスト・ストラテジー)が導入され、資源の回復目標の設定や、その目標の達成確率が60%を下回る場合に管理措置の厳格化を実施すること、またそれら措置についての実効性を検証することになりました[4]。
これら保全管理措置の成果によって、未成魚の漁獲圧が減少し、その結果、一時は初期資源量の2.6%以下まで減少していたクロマグロ資源は、わずか8年で4.5%まで回復しました。しかし、世界的には、初期資源量の20%を下回ると禁漁を検討しなければならない危険水準であることを考えると、持続可能なクロマグロ漁業のためには、漁獲可能量(TAC)を増やすことなく、早期に目標まで資源を回復させることが必要です。

表1 WCPFCにおける保全管理措置および日本国内での対応 (水産庁「国際漁業資源の現況」をもとにWWFが作成)

課題

保全管理措置や漁獲戦略の導入などによって、資源が回復し始めたクロマグロですが、まだ漁獲証明制度(CDS; Catch Document Scheme)が導入されていないという、大きな課題が残っています。漁獲証明制度とは、漁獲された水産物が違法でないことを示すための制度で、漁獲物に対し、いつ、どこで、だれが、どのように漁獲したかを記録することを義務づける制度です。大西洋クロマグロやミナミマグロでは、すでに漁獲証明制度が導入されていますが、クロマグロについては、導入することに合意はされたものの未導入の状態です[5]。いっぽう、タイセイヨウクロマグロにおいては、漁獲証明制度が導入されていたにもかかわらず、2018年には違法な過剰漁獲が発覚しました(詳しくはこちら)。したがって、クロマグロに対しては、早急に漁獲証明制度を導入することだけでなく、電子化の徹底などによって、不正行為をしっかりと防ぐことができるようなシステムの導入が求められています。
また、上記以外の課題として、漁獲対象以外の魚やウミガメ、海鳥などの野生生物を漁獲する「混獲」の問題や、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の問題など、まだまだ解決すべき問題は多くあります。詳しくはこちらをご覧ください。

タイセイヨウクロマグロ

© Scandinavian Fishing Yearbook / WWF

大西洋に分布しているクロマグロで、以前は太平洋のクロマグロと同種と考えられていました。クロマグロと同様にトロが多く、市場では高値で取引されています。

基本情報

和名:タイセイヨウクロマグロ
別名:本マグロ
英名:Atlanticbluefin tuna
学名:Thunnus thynnus
大きさ:体長約330センチ、体重725キロ

特徴・用途

クロマグロと同様、体の背側は青黒く、胸びれは短く、目が小さいのが特徴です。マグロ類の中でもっとも大型に成長し、3メートルを超える記録もあります。
一般には「本マグロ」という名でも呼ばれ、身は濃い赤身。トロも多く、マグロの中でも最高級品として取引されます。

生態

寿命

タイセイヨウクロマグロは、東大西洋と西大西洋で系群が異なり、西系群は11歳、東系群は4~5歳で成熟すると考えられています。寿命はなんと40年で、最大体長は330 cm、体重は725 kgに達します。

分布

北緯35度以北の大西洋および地中海、ビスケー湾などといった、比較的冷たい海に分布しています。

ライフサイクル

東系群と西系群でライフサイクルも異なります。東系群のタイセイヨウクロマグロは、3歳で一部のメスが産卵を開始し、5歳ですべてのメスが地中海及び地中海東部で産卵すると考えられています。孵化した稚魚は成長しながら地中海に広く分散し、一部はビスケー湾などの東太平洋まで分散、西系群のものと混ざって広く回遊しています。いっぽう、西系群のタイセイヨウクロマグロの産卵場はメキシコ湾であり、東系群よりも成熟には時間を要すると考えられていますが、正確には未だ不明です。

漁獲量

タイセイヨウクロマグロの漁獲量は、ピーク時には5万トンを超えていましたが、その後、乱獲により約1万トン(2011年)まで激減。絶滅の危機も心配されましたが、その後の厳しい保全管理措置を導入した結果、現在は約3万トンまで回復しました。日本は、スペイン、フランス、イタリアに次いで4番目に多く漁獲し、その量は世界の8%を占めます。

図AB-1. タイセイヨウクロマグロの漁獲量の推移

• データ:FAO FISHSTAT

図AB-2. タイセイヨウクロマグロの国別漁獲割合(2017年)

• データ:FAO FISHSTAT

養殖について

世界的にクロマグロの需要が高まる一方で、資源枯渇のために減少している天然漁獲を補う形で、クロマグロの養殖が盛んになっています。また、希少・高価な部位である「トロ」を、養殖では増やすことができることも、養殖の需要を拡大させています。
タイセイヨウクロマグロの養殖は、漁獲した天然のマグロ(主に未成魚)を、生きたまま生け簀に移し、餌を与えて太らせ、脂(トロ)を乗せて育てた上で売りに出す「蓄養(天然種苗養殖)」という方法です。天然魚に頼った養殖であるため、しっかりとした資源管理が必須です。また、蓄養マグロの体重を1キロ増やすためには、餌となるイワシなどの小魚が10~20キロも必要になるといわれており、大量の餌魚が消費されています。これらの多くは、本来人間が食べていた魚であったこともあり、養殖が盛んなアドリア海などでは様々な問題が起きています。詳しくはこちらをご覧ください。

消費量

タイセイヨウクロマグロの漁獲量回復にともない、世界の消費量は年々増加しています。いっぽう、日本の消費量は3000トン前後でほぼ一定であるため、世界の消費量における日本の割合は20%から8%まで低下しています。

図AB-3. タイセイヨウクロマグロの消費量の推移

• データ:FAO FISHSTAT
• 輸入量、輸出量のエラ、内臓重量は考慮していない。
• 消費量は漁獲から消費までの時間差を考慮しておらず、また在庫量を考慮していない、近似値である。

資源状況

水産庁は、主なマグロ類について、資源状態を3段階(高、中、低)にわけて評価しています。タイセイヨウクロマグロの資源量は、厳しい保全管理措置導入の結果、東大西洋は高位、西太平洋は中位まで回復しています。

東部大西洋
高位
西部大西洋
中位

ミナミマグロ

クロマグロよりも少し小型ですが、クロマグロと同様にトロが多く、市場ではクロマグロの次に高値で取引されています。南半球に生息していることからミナミマグロ、またインドマグロと呼ばれています。世界の中では、日本がダントツの消費国。

基本情報

和名:ミナミマグロ
別名:インドマグロ、ゴウシュウマグロ
英名:southern bluefin tuna
学名:Thunnus maccoyii
大きさ:体長約200センチ、体重150キロ

特徴・用途

クロマグロの次に体が大きくて肉質が良く、トロも多いことから、市場では高級品として出回っています。インド洋産のものが最初に出回ったことからインドマグロと呼ばれたり、オーストラリアからの輸入が多いため、ゴウシュウマグロと呼ばれることもあります。クロマグロと同様に、比較的冷たい海に生息するため、身体に脂(トロ)が多く乗ります。なお、北半球に生息するクロマグロとは、分布海域は重なっていません。

生態

寿命

ミナミマグロの成熟開始は約8歳であり、産卵魚の多くは15~25歳が占めます。ただし、成熟魚は必ずしも毎年産卵するわけでは無いと考えられています。寿命は少なくとも25歳以上と考えられており、耳石より推定される最高齢はなんと45歳です。

分布

南半球の海にすみ、主に南緯50~30度付近の、冷たい海に分布しています。アルゼンチン東部の沖合から南アフリカ沖、インド洋南部、オーストラリア、ニュージーランド、チリ近海に生息します。

ライフサイクル

産卵場は、インド洋東部のインドネシア南岸とオーストラリア北西岸で囲まれた扇型水域(東経100~125度、南緯10~20度)であると考えられています。3~4年は南オーストラリア沿岸で過ごし、成長につれて徐々に沖合へ分布を広げます。

漁獲量

ミナミマグロの漁獲量は、ピーク時の1960年頃には8万トンを超え、そのほとんどを日本が漁獲していました。しかしその後の乱獲により90年代には1万トン前後までに激減、絶滅の危機に陥りました。その結果、1999年にはオーストラリア・ニュージーランドが、日本を国際海洋法裁判に提訴、大きな国際問題に発展しました。それを受け、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)は、第18回年次会合(2011年10月)において、科学委員会が開発した管理方式(MP)の採用に合意し、運用を開始しました。その成果もあり、近年は想定より早く資源が回復、漁獲量も約1万5千トンまで回復しています。なお日本の漁獲量は、オーストラリアに次いで2番目に多く、その量は世界の36%を占めます。

図SB-1. ミナミマグロの漁獲量の推移

図SB-2. ミナミマグロの国別漁獲割合(2017年)

養殖について

世界的にクロマグロの需要が高まる一方で、資源枯渇のために減少している天然漁獲を補う形で、クロマグロの養殖が盛んになっています。また、希少・高価な部位である「トロ」を、養殖では増やすことができることも、養殖の需要を拡大させています。
ミナミマグロの養殖は、漁獲した天然のマグロ(主に未成魚)を、生きたまま生け簀に移し、餌を与えて太らせ、脂(トロ)を乗せて育てた上で売りに出す「蓄養(天然種苗養殖)」という方法で、オーストラリアで行われています。適切な資源管理のためには、「どのサイズのミナミマグロをどれだけ漁獲したか」の情報が必須であり、タイセイヨウクロマグロの畜養では生け簀にステレオビデオカメラを設置して、それら情報を取得しています。ミナミマグロ畜養においても、同様にステレオビデオカメラを導入することが科学委員会から求められていますが、立案から10年以上立っているにも関わらず未だ導入されておらず問題となっています。その他養殖に関する問題について、詳しくはこちらをご覧ください。

消費量

ミナミマグロの漁獲量回復にともない、世界の消費量も増加傾向にあります。日本の消費量も16000トンまで増加しており、世界の消費量の約7割を占めています。

図SB-3. ミナミマグロにおける消費量の推移

• データ:FAO FISHSTAT
• 輸入量、輸出量のエラ、内臓重量は考慮していない。
• 消費量は漁獲から消費までの時間差を考慮しておらず、また在庫量を考慮していない、近似値である。

資源状況

水産庁は、数種のマグロについて、資源状態を3段階(高、中、低)にわけて評価しています。CCSBTによる厳格な保全管理措置により、当初は「2035年までに親魚資源量を漁業が開始される前の水準の20%まで回復させる」という暫定目標はほぼ達成されました。現在は、「2035年までに親魚資源量を漁業が開始される前の水準の30%まで回復させる」というより高い目標を目指し、引き続き厳格な管理がされています。

全海域
低位

メバチ

© Scandinavian Fishing Yearbook / WWF

目が大きいメバチは、刺身や寿司ネタとして、日本では人気のある種です。赤身が多く、手ごろな値段で手に入るため、スーパーマーケットなどでもよく売られており、日本で最も多く消費されているマグロです。

基本情報

和名:メバチ
別名: バチ、ダルマ、デルマシビ、メブト、シビ、ソマガツオ、ヒラシビ、メッパ
英名: Bigeye tuna
学名:Thunnus obesus
大きさ:体長約200センチ、体重150キロ

特徴・用途

メバチは、非常に人気の高いマグロで、とくに早春から晩夏にかけて日本近海で漁獲されたメバチの赤身は、クロマグロの赤身と比べてほとんど遜色がないといわれています。価格はクロマグロに比べれば安価であるため、日本の刺身用マグロとして最も多く消費されているマグロです。また、まき網漁業で漁獲されたメバチ幼魚の多くは、刺身材料として適さないため、缶詰など加工用として利用されますが、他のツナ缶材料よりも安価で取引されています。

生態

寿命

メバチは、海域・系群によりことなりますが、90~100cm、14~20 kg(2~3歳)に達すると成熟がはじまり、50%の個体が成熟すると考えられています。寿命も海域・系群によりことなりますが、10~17年と考えられています。

分布

メバチは、世界の熱帯・温帯域に広く分布しており、若齢で小型のものは、似たような大きさのカツオやキハダと群れを作ることがあり、水深の浅い層を遊泳しています。その後成長するにつれて、メバチのみの群れになり、より水深の深い層にも分布するようになります。産卵は、熱帯・亜熱帯域では水温24℃以上の海域で周年おこなわれると考えられています。

漁獲量

漁獲量の推移

世界のメバチの漁獲量は、2004年に50万トン弱まで増加しましたが、その後、資源量の減少にともない漁獲量も減少、現在は40万トン前後で推移しています。日本の漁獲量は、1990年にピークの17.5万トンに達しましたが、その後、刺身用メバチを漁獲するはえ縄漁を中心に激減。現在はピーク時の約5分の1の3.6万トンまで減少していますが、依然として世界第3位、世界の9%の漁獲量を占めています。

図B-1. メバチの漁獲量の推移

図B-2. メバチの国別漁獲割合(2017年)

消費量

世界のメバチ消費量はほぼ横ばいであるのに対し、日本の消費量はほぼ微減傾向にあり、約11万トン、世界の消費量の29%を占めています。

図B-3. メバチにおける消費量の推移

• データ:FAO FISHSTAT
• 輸入量、輸出量のエラ、内臓重量は考慮していない。
• 消費量は漁獲から消費までの時間差を考慮しておらず、また在庫量を考慮していない、近似値である。

資源状況

水産庁は、数種のマグロについて、資源状態を3段階(高、中、低)にわけて評価しています。メバチの資源量は中位~低位であり、獲りすぎによる減少が懸念されています。したがって、管理基準値をともなった漁獲戦略をいち早く導入し、資源回復を急ぐ必要があります。

東部太平洋
低位
中西部太平洋
中位
インド洋
中位  
大西洋
低位

キハダ

© Scandinavian Fishing Yearbook / WWF

背ビレ、尾ビレ、体色が黄色いのでキハダと呼ばれています。キハダは、メバチと同様、主に熱帯海域に広く分布しており熱帯マグロと言われていますが、メバチとは異なり、水深が浅い層で遊泳しているため、脂は少なくあっさりとした味わいで、比較的安価で取引されます。

基本情報

和名:キハダ
別名:キハダマグロ、キワダ、ヒレナガ、キメジ(幼魚)、イトシビ、キンビレ、シビ、バシ、ハツ、ホンバツ、マシビ、チューナガシビ
英名:Yellowfin tuna
学名:Thunnus albacares
大きさ:体長約200センチ、体重200キロ

特徴・用途

キハダは、非常に人気の高いマグロで、日本で消費されるマグロの約3割を占めています。他のマグロにくらべ脂肪分が少なくあっさりした肉は、淡赤色をしていて、寿司や刺身をはじめ、山かけ、照り焼き、酢味噌和え、角煮などでも利用されます。また、キハダは缶詰材料としても人気が高く、ヘルシーで安価なタンパク源として世界の需要が増加しています。

生態

寿命

キハダの寿命は、海域・系群によりことなりますが、100cm前後に達すると50%の個体が成熟すると考えられています。寿命は7~10年と考えられていますが、18歳という研究例もあります。

分布

キハダは、世界の熱帯・温帯域に広く分布しており、若齢で小型のものは、似たような大きさのカツオやメバチと群れを作ることがあり、水深の浅い層を遊泳しています。南緯および北緯25度前後の赤道を中心とした海域で水揚げされることが多く、地中海には分布していません。日本近海にも生息していますが、あまり広く移動していないと見られています。

漁獲量

漁獲量の推移

世界のキハダ漁獲量は、まき網漁の増加に伴い、1980年代半ばより急激に増加し、2017年は約150万トンに達しました。一方、日本の漁獲量は徐々に減少しており、現在の漁獲量は世界第8位の6万トン、世界の4%を占めています。

図Y-1. キハダの漁獲量の推移

図Y-2. キハダの国別漁獲割合(2017年)

消費量

世界のキハダ消費量は増加傾向にあるいっぽう、日本の消費量はほぼ一定であり、約12万トン、世界の消費量の8%を占めています。

図Y-3. キハダにおける消費量の推移

• データ:FAO FISHSTAT
• 輸入量、輸出量のエラ、内臓重量は考慮していない。
• 消費量は漁獲から消費までの時間差を考慮しておらず、また在庫量を考慮していない、近似値である。

資源状況

水産庁は、数種のマグロについて、資源状態を3段階(高、中、低)にわけて評価しています。キハダの資源量は、多くの海域で低位まで減少しており、その原因は獲りすぎによるものです。したがって、管理基準値をともなった漁獲戦略をいち早く導入し、資源回復を急ぐ必要があります。

東部太平洋
低位
中西部太平洋
中位
インド洋
低位
大西洋
低位

ビンナガ

胸ビレが長く、長い鬢(=もみあげ)のように見えることからビンナガという名前になりました。一般にはビンチョウマグロと呼ばれることが多いです。身が、薄いピンク色で柔らかいのが特徴です。

基本情報

和名:ビンナガ
別名: ビンチョウ、トンボ、ヒレナガなど
英名: Albacore
学名:Thunnus alalunga
大きさ:体長約120センチ、体重40キロ

特徴・用途

ビンナガは、その身が薄いピンク色で柔らかく、刺し身としては高価ではありませんが、脂ののった身は「ビントロ」という名で売られ、安価なトロとして回転寿司などで人気があります。一方、ツナ缶材料としては最高級で、「ホワイトツナ」として流通しています。

生態

寿命

ビンナガは、海域・系群によりことなりますが、80~90cmに達すると成熟がはじまると考えられています。寿命も海域・系群によりことなりますが、少なくとも10年以上と考えられています。

分布

ビンナガは、全世界の温暖な水域に広く分布します。太平洋、大西洋、インド洋において赤道海域から極地付近まで広く分布し、地中海にも生息しています。なお、太平洋および大西洋については、赤道付近を挟んで北系群と南系群に分かれており、別々に資源管理が行われています。
産卵は、比較的温暖な場所・時期で産卵が行われます。北太平洋群では24℃以上の水域で周年(4~6 月が盛期)であるのに対し、産卵場が南半球に位置する南太平洋群、南大西洋群、インド洋群は春~夏季に産卵が行われます。

漁獲量

漁獲量の推移

世界のビンナガの漁獲量は、増減を繰り返しながら微増傾向にあり、2017年は23万トンまで増加しています。一方、日本の漁獲量は、1965年の約13万トンをピークに減少、1990年代には回復傾向にありましたが再び減少し、2017年はピーク時の半分以下の5万トンまで減少しています。しかしながら、依然として世界第3位、世界の19%の漁獲量を占めています。

図A-1. ビンナガの漁獲量の推移

図A-2. ビンナガの国別漁獲割合(2017年)

消費量

世界のビンナガ消費量は、増減を繰り返しながら微増傾向あるのに対し、日本の消費量は微減傾向にあり、現在は5.7万トンまで減少していますが、世界の消費量の24%と、約1/4を占めるビンナガ消費大国です。

図A-3. ビンナガにおける消費量の推移

• データ:FAO FISHSTAT
• 輸入量、輸出量のエラ、内臓重量は考慮していない。
• 消費量は漁獲から消費までの時間差を考慮しておらず、また在庫量を考慮していない、近似値である。

資源状況

水産庁は、数種のマグロについて、資源状態を3段階(高、中、低)にわけて評価しています。ビンナガの資源量は中位~高位であり、マグロ類の中では比較的良好です。他のマグロ類のように、資源が減少してしまう前に適切な漁獲戦略を導入し、乱獲を防ぐことが重要です。

北部太平洋
中位
南部太平洋
高位
インド洋
中位
北部大西洋
中位
南部大西洋
中位

参考文献
1. 水産庁&国立研究開発法人水産研究・教育機構, 2020, 令和2年度国際漁業資源の現況
2. ISC, 2020, ISC Plenary Report
3. WCPFC, 2014, Conservation and Management Measure to establish a multi-annual rebuilding plan for Pacific bluefin tuna, WCPFC CMM 2014-04
4. WCPFC, 2017, Conservation and Management Measure for Pacific Bluefin Tuna, WCPFC CMM 2017-08
5. WCPFC, 2019, Conservation and Management Measure for Pacific Bluefin Tuna, WCPFC CMM 2019-02

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