”かわいい”の裏にある、アニマルカフェが抱える問題
2025/11/26
カワウソやフクロウ、ヘビなどさまざまな野生動物と触れ合える「アニマルカフェ」が人気を集めています。
「かわいい」や「癒される」といった理由で訪れるだけでなく、SNSで“映える”スポットとしても注目され、インバウンド客にも人気が広がっています。
アニマルカフェは、動物を間近で見たり、触れたりすることができ、利用者の動物への興味や関心を高める可能性もある一方で、野生動物を扱うという特性から、適切な動物福祉の確保や衛生管理が難しいという課題も指摘されています。

アニマルカフェでも人気のカピバラ(Hydrochoerus hydrochaeris)。アニマルカフェでは動物と触れ合えるだけでなく、個体の販売、写真撮影サービス、さらには飲食物の提供など、施設で提供されるサービスが多様化しています。
2025年10月に日本獣医生命科学大学の田中亜紀特任教授らが発表した調査では、全国79店舗のアニマルカフェに展示されている動物231個体を対象に、飼育環境・栄養管理・行動の自由など動物福祉の観点から評価を行ないました。
【調査結果の概要】
調査対象となったすべての分類群(哺乳類・鳥類・爬虫類)で良好な動物福祉が十分に確保されておらず、特にフクロウ類などの鳥類で最も低い水準にあることがわかりました。
また、フクロウ類の多くが拘束され、飛ぶことも隠れることもできず、カワウソなどの哺乳類も狭い空間の中で人にさらされ、自然な行動が制限されていることがわかりました。

フクロウ類は一般的に人を避ける傾向が強く、人との接触はフクロウ類にとって大きなストレスになると考えられます。さらに、逃げ場のない状況によりストレスが悪化するとされています。
一般的に、動物福祉が損なわれると、個体の健康にも深刻な影響が出ることが知られています。
拘束により、自然な行動や摂水が制限されるだけでなく、不適切なリードの着用により、動物が怪我をすることがあります。
さらに、触れ合いなどによる過度なストレスは動物の常同行動(同じ動きを繰り返す)、自傷行為(毛や羽をむしる、体を噛む・つつく)を招くだけでなく、免疫力を低下させて病気にかかるリスクを高め、動物から人に病気がうつる人獣共通感染症を引き起こす可能性もあるのです。
WWFジャパンが行なった調査でも、実際に数店舗のアニマルカフェから人獣共通感染症の原因となる細菌が複数検出され、衛生管理が不十分である可能性が示されました。
動物福祉や衛生管理の問題など、アニマルカフェにおける問題が浮き彫りとなった今、日本でも政府による規制や事業者による管理体制の改善が求められます。
“動物が好き”だからこそ、動物の「かわいい」や「癒し」の裏にある現実や問題にも目を向け、野生動物との関わり方について考えていくことが大切です。
(野生生物グループ・橋本)



