報告書『失われる自然とパンデミックの増加』


今も世界中で感染者を出し続けている新型コロナウイルス。

私たちの暮らしに大きな変化をもたらしているこの問題が、そもそもなぜ発生したのか?

疑問に思われたことはありませんか?

2020年3月、WWFは報告書『失われる自然とパンデミックの増加』の中で、感染症拡大の原因として、深刻な環境破壊があることを指摘しました。

WWFイタリアが3月に発表したレポート『The Loss of Nature and the Rise of Pandemics(失われる自然とパンデミックの増加-人と地球の健康をまもるために)』(翻訳版)

ここでいう環境問題とは、森林破壊をともなう道路や農地、放牧地の開発や、資源の採掘といった、人間によるさまざまな活動によるもの。

報告書ではこうした行為が、自然界に存在していた未知の病原体、すなわちウイルスや細菌などをもつ野生動物との新たな接点を作りだし、実際それらに触れる機会を増やしているとしています。

©Brent Stirton / Getty Images

ペルーのアマゾンで森林が伐採された現場は、手つかずの森に比べ、マラリアを媒介する蚊の密度が高い。またこうした生きものは、地球温暖化の進行により、生息域を拡大するおそれもある。

SARSやエボラウイルス病など、近年発生している感染症の4分の3は、この動物から感染が広がる「動物由来感染症」。

生息環境の破壊はもとより、こうした動物を密猟したり、直接取引する行為も、感染症の拡大につながりかねない大きな脅威となります。

©Martin Harvey

途上国の貧しい山間部や農村では、今も野生動物の肉(ブッシュミートと呼ばれる)が、重要な栄養源となっている。一方、近年はこうした肉が違法に取引され、都市部で高級食材として珍重される例も多い。

感染症と環境破壊の関係は、見えにくいものかもしれませんが、こうしたつながりが理解できると、パンデミックが生態系の健全性を損なうことで生じる「生物多様性の問題」であることが分かります。

これを解決するには、環境のことだけでも、医療のことだけでもなく、貧困や経済など、さまざまな分野に携わる人々が、国境を越えて協力していくことが大切です。

パンデミックの発生は、決して偶然の出来事ではありません。

人の健康が、他の動物や環境の健康でもある、という「ワンヘルス」という考え方のもと、他分野の専門家や関係者の皆さまとも協力しながら、自然破壊をともなわずに暮らしていける「持続可能な社会」をめざす活動を進めていきたいと思います。

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森林・野生生物室 野生生物グループ TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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