©Martin Harvey / WWF

新型コロナウィルスと野生植物


世界中でさまざまな影響が報告されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。

こうした感染症拡大の原因として今、土地利用の転換や森林破壊による、人と野生動物との接触機会が増えたことが挙げられています。

そんな中、新型コロナウイルス感染症の蔓延が、野生植物を脅かしている、という報告がありました。

この感染症の治療を目的とした、植物の利用が増加しているというのです。

野生植物は、薬用を中心に世界中で広く伝統利用されています。

ところが、新型コロナウイルス感染症の治療効果や免疫強化に効能がある、とされる植物の需要が、中国、タイ、インド、ボリビア、マダガスカルなどで増加。中には政府が推奨している例もあるそう。

2020年6月に世界の野生生物取引を調査・監視するTRAFFICが発表した報告書『The Invisible Trade:Wild Plants and You』。薬用植物利用に関する最新の動向や野生植物に関する認証制度について紹介しています。

現在、知られている世界の野生植物は約39万種。そのうち、6万種が医療目的に使われていると推定されています。

約3,000種は国際的にも取引されており、その60~90%が野生由来であるとの試算もあります。

また、野生植物の採集に携わるのは、他の収入手段を持たない農村地域の人々で、子どもや高齢者、多くが女性。さらに、どの植物のどの部分を、いつどれくらい採集すべきか、といった術は、伝統的な知識に基づいています。

©Patrick Bentley / WWF-US

関節炎やリウマチの治療に使用されるデビルズクロー。約90%を供給するナミビアでは、3,000~5,000人が、この収穫に収入を頼っています。

©Helena Telkänranta / WWF

ネパールのSamjhanaコミュニティで薬用植物を栽培する女性。野生動物による農作物への被害が多発しているこの地域では、重要な収入源となっています。

野生植物の持続可能な利用は、環境や貧困の問題を考える上で大切な課題。
ですが一方で、効果が不確かな場合もあり、そのまま、野生の薬用植物を過剰に採集してよいわけがありません。

人々が追い込まれている事態の深刻さゆえに、こうした植物たちがさらなる危機に追い込まれてしまうのは、避けねばならない事態です。

人と自然の新たな関わり方が問われている「ポスト・コロナ」の今、私たちもこうした野生の動植物の持続可能な利用の促進を、これまで以上に進めてゆかねばと思います。

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森林・野生生物室 野生生物グループ TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

人と自然が調和して
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環境保全団体です。

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