© Y.Sato/WWF Japan

COP28現地発信:日本が「化石賞」を受賞しました


アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されている国連の気候変動会議「COP28」の会場では、首脳級会合を終えた12月3日から、「化石賞」の授賞式が始まります。
その初日に、日本は化石賞を受賞しました。

© Y.Sato/WWF Japan

日本はCOP28で初めての化石賞の受賞国になりました

化石賞は、気候変動に取り組む130か国の1800を超える世界最大のNGOのネットーワーク「CANインターナショナル」が、その日の交渉において気候変動対策を後退させる言動を行なった国に与える不名誉な賞です。
夕方に行われる授賞式には、多くの参加者が詰めかけ、国際メディアを通して世界中に発信されます。

日本の受賞理由は、首脳級会合に登壇した岸田首相の演説でした。
COP28では、「パリ協定」の1.5度目標を実現するために、すべての化石燃料の廃止に合意できるかどうかが問われています。そのため、国連のグテーレス事務総長は、ドバイに参集した各国の首脳に対して、「化石燃料の削減ではなく廃止を、そして排出削減対策を講じてればよいわけでなく、全ての化石燃料を廃止していかなければならない(WWF意訳)」と強く訴えました。

そのわずか数時間後に、同じ演台に立ったG7議長国、日本の首相が、「排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了していきます」と述べたのです。この発言は、既存の石炭火力発電を維持するだけでなく、排出削減対策を講じている石炭火力は新設すると受け取られてもしかたがありません。日本政府は、火力発電に対して、まだ実証段階の水素・アンモニア混焼を2030年に20%程度混焼する計画を立てており、それをもって「排出削減対策を講じている」と言い訳して、石炭火力を温存しようとしているのです。

そのうえ、「アジアゼロエミッション共同体」の名の下に、アジア諸国においても石炭火力にこれらのアンモニアや水素の混焼がいずれ可能だからという言い訳の元に石炭火力発電を拡大しようとしているのです。その日本政府の意図に、世界のNGOはノーをつきつけたといえます。

12月2日には、アメリカが脱石炭世界連盟(PPCA)に加盟することを発表。これによって、G7でPPCAに加盟していない国は日本だけになりました。

温暖化を超えて「沸騰化する」地球に必要なのは、化石燃料ではなく再生可能エネルギーです。化石賞の受賞は、豊かな再エネ資源と高い技術力をもつ日本に、真の脱炭素化を求める期待ともいえます。

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自然保護室(気候・エネルギー)
田中 健

修士(理学・九州大学)
福岡県庁、経済産業省で廃棄物管理やリサイクルなどの環境保全行政に従事、日本のリサイクル企業の海外ビジネス展開を支援。その後、日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして、国内外の科学館、企業、研究機関などと連携し、科学技術や研究者と一般市民をつなぐ様々なプロジェクトを担当。2018年8月から現職。気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)等、企業や自治体など非国家アクターの気候変動対策の強化に取り組む。

子どもの頃から、自然や生き物の「なぜ?」を探るのが好きでした。自治体や国で環境保全に10年取り組むも、「もっとたくさんの人に環境問題を伝えたい!」と思い、一念発起。科学館スタッフとして環境・社会・教育など様々な分野のプロジェクトを通じて科学コミュニケーションの経験を積み、WWFへ。これまでの経験をまとめて生かし、地球温暖化という大きな課題にチャレンジ精神で取り組みます。

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