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パリ協定とは?脱炭素社会へ向けた世界の取り組み

この記事のポイント
パリ協定とは、2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みです。世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的としています。この目的のため、パリ協定の下で国際社会は、今世紀後半に世界全体の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすること、つまり「脱炭素化」を目指しています。さらに、気候変動による影響に対応するための適応策の強化や、諸々の対策に必要な資金・技術などの支援を強化する仕組みを持つ包括的な国際協定となっています。

パリ協定の概要

パリ協定は、2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で、世界約200か国が合意して成立しました。

1997年に定まった「京都議定書」の後を継ぎ、国際社会全体で温暖化対策を進めていくための礎となる条約で、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的としています。

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パリ協定が採択されたCOP21

その達成のために、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示す科学的根拠に基づいて、21世紀末のなるべく早期に世界全体の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすること、つまり「脱炭素化」を長期目標として定めています。

IPCCの1.5度特別報告書(2018年発表)によれば、すでに世界の平均気温は、産業革命前に比べて、人間活動によって約1度上昇しており、このままの経済活動が続けば、早ければ2030年には1.5度の上昇に達し、2050年には4度程度の気温上昇が見込まれています。

気温上昇を2度未満に抑えるためには、2075年頃には脱炭素化する必要があり、努力目標である1.5度に抑えるためには、2050年に脱炭素化しなければならないことが分かっています。

すなわち、パリ協定のゴールを達成するには、遅くとも2075年に脱炭素化、できれば2050年までに脱炭素社会を実現させることが必要です。
また、たとえ2度未満に気温上昇を抑えることができたとしても、異常気象や海面上昇などの温暖化の悪影響は避けられないので、こういった悪影響に対応するための適応策の強化や、途上国の持続可能な開発を支援する資金や技術供与の仕組みも、パリ協定の大きな要素として組み込まれています。

パリ協定のルールの概要

【削減目標を5年ごとに深掘りすること】

  • すべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。更新の際には、目標を深掘りすること
  • 5年ごとに世界全体として、2度(1.5度)目標に沿った削減ができているか等についてレビューすること(グローバル・ストックテイク)

【削減実施状況の国際的な「見える化」】

  • すべての国が排出削減の取り組みについて、その実施状況を、原則として共通のルールで国連に報告し、検証を受けること

【適応計画と、途上国への資金・技術支援】 

  • 各国が温暖化の悪影響に対する適応の計画を立て実施すること,その適応報告書を定期的に提出更新すること
  • 途上国の削減や適応を支援するために、緑の気候基金(GCF)が設置された。先進国が資金を提供することになっているが、途上国も自主的に供与する

削減目標を5年ごとに深掘りすること

パリ協定は、30年弱に及ぶ先進国と途上国の深刻な対立を経て合意された協定であるため、特に目標の設定の仕方、そしてそれを守らせるための制度に工夫がされています。

具体的にはパリ協定では、各国が国内で自ら最大限の努力だと思える目標を設定し、それを国連の場において世界各国からのレビューを受けて提出することになっています。その一方で、目標未達の時の厳しい罰則は設定されていません。これによって、各国はパリ協定に自発的な目標をもって参加しやすくなっています。

しかし、2度未満達成に必要な削減量を各国に割り当てているわけではないため、各国の削減目標を足し合わせても2度未満達成のために必要とされる削減量には届いていないのが現状です。

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石炭火力発電からの脱却は喫緊の課題


残念ながら、2020年時点での世界各国の2030年に向けた削減目標では、世界の平均気温は3度程度上昇してしまうと予測されています。

これを解消するため、パリ協定では、もう一つの工夫として、5年ごとに、各国が目標を再提出することを定めています。

そして、再提出の際には、以前の目標を深掘りしていくことが義務化されているのです。

すなわち世界200か国が5年ごとに、それぞれ最大の努力でできる削減目標を再提出していくうちに、削減量が上積みされ、いつか排出量はゼロに近づく日が来るはず、という希望を後の世につなぐ協定なのです。

また、5年ごとの世界各国の削減努力を足し合わせて、パリ協定の目標に沿っているかを科学的に検証する報告書が作成されることになっており、各国はこれを受けて、次の削減目標の深掘りを検討することになっています。

削減実施状況の国際的な「見える化」

パリ協定では、各国が削減目標を達成しなくても罰則がないために、削減目標を立てても実施されない可能性があります。

そのために、各国は原則として共通のルールで排出量を算定し、国連に報告して、それを世界各国がお互いに検証しあうことになっています。

共通のルールで算定・報告するならば、一目瞭然に各国の実施状況がわかり、それらの努力程度を比較できるようになります。

そもそも世界全体の排出量の7割は世界30か国くらいで占めています。それらの国々は基本的に経済大国であるため、国際的な信用を重視します。

排出削減の実施状況が国連において一目瞭然に見える化されれば、否応なくきちんと削減努力をしようというプレッシャーが働きます。

そうした心理的な遵守の仕組みを作り出しているのがパリ協定なのです。

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適応計画と、途上国への資金・技術支援

パリ協定は、削減の取り組みだけではなく、温暖化に関するあらゆる論題を含む包括的な国際協定です。

削減と並んで重要なのが、深刻化する温暖化の悪影響に備える「適応策」の強化です。

たとえパリ協定の目標である2度未満に気温上昇を抑えることができたとしても、異常気象や海面上昇は、相当深刻な悪影響をもたらすと予測されています。

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© Richard Barrett / WWF-UK

そこで各国は、5年ごとに提出する取り組みの一つとして、適応計画も策定して、実施していくことになっています。

また、そういった温暖化の悪影響は、特に技術力や資金力を持たない途上国ほど強く受けてしまうという現実が温暖化にはあります。

そういった途上国の適応策やその持続可能な開発を支援するための資金と技術支援の仕組みを作ることも温暖化対策の国際協定の重要な役割なのです。

そのためパリ協定には「緑の気候基金」という資金支援の仕組みが新しく作られており、先進国及び有志の途上国が資金を提供し、途上国の適応策や持続可能な開発を後押しすることになっています。

パリ協定の今後は、各国の積極性にかかる

このようにパリ協定は、科学に沿った目標を持ち、先進国と途上国を合わせてすべての国が参加する道を開いた画期的な国際協定なのですが、その実効性は、各国の積極性に依拠しています。

すなわち、それぞれの国がいかに科学に基づいて、2度未満目標を満たす削減目標を掲げ、その削減計画を実施していくか。さらに5年ごとにいかに前の目標を深掘りしていくか、にかかっているのです。

世界各国が人類共通の危機に向かって、それぞれ最大限の努力をいかにはかっていけるか。自国の経済だけがよければよい、とする内向きのリーダーが大国で見られる時代に、パリ協定は、その実効性を問われています。

一方で、希望もあります。パリ協定を担うのは、今や政治だけではありません。都市や自治体、グローバル企業、中小企業までもが、積極的に国を超える温暖化対策を掲げており、こうした新たな担い手たちも、人類共通の課題に立ち向かっています。

温暖化は世界の人すべてが被害者であり、加害者です。

すべての人が参加する温暖化対策の時代に、パリ協定は世界共通の温暖化対策のルールを提供する、ゆるぎない基盤となっているのです。

パリ協定についてもっと知りたい方は、動画「20分でわかるパリ協定」、小西雅子著「地球温暖化は解決できるのか ~パリ協定から未来へ~(岩波ジュニア新書)」もご覧ください。

【動画】20分でわかる!パリ協定 2016

パリ協定に沿って実施される世界の温暖化対策について、WWFは専門家を国連のCOP会議(締約国会議)などに送って、最新情報を提供していますので、引き続きご覧ください。
また、研究者と一緒に政府への政策提言を実施したり、企業や都市や自治体などの新たな担い手たちの温暖化対策の支援、地域での再生可能エネルギー支援、メディアへの情報提供など幅広く国内外の温暖化対策の推進を図っています。

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