©Y.Sato/WWF Japan

COP28開幕 損失と損害の基金運用について合意!


11月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が開幕しました。

今回のCOPでは、パリ協定がめざす1.5度目標を達成するために、世界の気候変動対策の取り組みの進捗を評価する「グローバル・ストックテイク」が初めて行われます。

そして、その内容を受けて、各国の対策の強化を促す化石燃料の段階的廃止や再生可能エネルギーの拡大に合意できるかが注目されます。

また、気候変動が引き起こす途上国の「損失と損害」に対する基金の運用も議論されることになっていました。

COP28開会の様子。
© Y.Sato/WWF Japan

初日の今日、この損失と損害に関して、大きな成果がありました。損失と損害の基金の運用に関する議案が採択されたのです。

そもそもこの問題は途上国が30年以上にわたって求めてきた歴史があります。しかし、あらたな資金負担を避けようとする先進国が反対してきたため、COPの議案になったのは、昨年エジプトで開催されたCOP27のことでした。しかも、基金を創設するという合意にこぎつけたのは、会期を延長した最終日のことでした。

しかし、基金の創設は決まったものの、どの国が資金を拠出するのか、どの国が基金を受け取るのかなど、運用のしくみまでは決まっていませんでした。COP28では基金の運用をめぐって、ふたたび先進国と途上国が激しい応酬を展開するのではないかと予想されていたのです。

その予想をくつがえし、主要議題のひとつが1日目に合意したことは、この会議の前途を明るく照らすことになりました。この合意を受けて、さっそく議長国であるUAEみずから1億ドルの拠出を発表すると、ドイツをはじめ先進国からの資金拠出の発表が相次いだのです。

©Y.Sato/WWF Japan

COP28の議長に選出されたUAEのジャベル議長は、開会初日に主要議題で損失と損害の基金の運用を採択。議長国みずから1億ドル(約148億円)と最大の資金拠出を表明しました。日本政府の発表はUAEの10分の1の1000万ドル(約14億8000万円)でした。

主要議題のひとつである損失と損害の議論が合意をみたことで、今後は1.5度目標の達成に向けた緩和や適応の議論についても前進することが期待できます。

WWFでは、会議の成功をめざして2週間の会期中にさまざまな活動を行っていきます。今後の発信にぜひ関心をお寄せください。

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自然保護室(気候・エネルギー)
田中 健

修士(理学・九州大学)
福岡県庁、経済産業省で廃棄物管理やリサイクルなどの環境保全行政に従事、日本のリサイクル企業の海外ビジネス展開を支援。その後、日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして、国内外の科学館、企業、研究機関などと連携し、科学技術や研究者と一般市民をつなぐ様々なプロジェクトを担当。2018年8月から現職。気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)等、企業や自治体など非国家アクターの気候変動対策の強化に取り組む。

子どもの頃から、自然や生き物の「なぜ?」を探るのが好きでした。自治体や国で環境保全に10年取り組むも、「もっとたくさんの人に環境問題を伝えたい!」と思い、一念発起。科学館スタッフとして環境・社会・教育など様々な分野のプロジェクトを通じて科学コミュニケーションの経験を積み、WWFへ。これまでの経験をまとめて生かし、地球温暖化という大きな課題にチャレンジ精神で取り組みます。

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環境保全団体です。

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