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【COP27】国連がネットゼロを定義


エジプトで開催されている国連の気候変動会議COP27の会場には数多くのパビリオンが並び、国連機関や国だけでなく、自治体、企業や金融機関、NGOなどの非国家アクターも自らの取り組みを発信しています。

パリ協定が成立し、2050年ネットゼロが世界共通の目標になったことを受け、世界の温室効果ガスのおよそ80%は、国や自治体、企業の元などでネットゼロを約束・宣言する脱炭素目標にカバーされるようになりました。ネットゼロをめざすさまざまな産業などのイニシアチブやプラットフォームが設立され、独自にネットゼロを宣言する非国家アクターも相次いでいます。

しかし、その内容は玉石混交で、グリーンウオッシング(見せかけの環境対策)も少なくないといわれています。安易なネットゼロ宣言は、本来の目的である1.5℃目標の達成を妨げかねません。そのため、真のネットゼロにつながる世界共通の基準が求められていました。

これに対して国連では、グテーレス事務総長自らが委員を任命し、普遍的なネットゼロを明確に定義する「非国家アクターによるネットゼロ排出宣言に関するハイレベル専門家グループ」を昨年のCOP26会議で設立。今回COP27会議始まってすぐの11月8日に、そのネットゼロの提言書が発表され、グテーレス事務総長自身が登壇しました。

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国連のグテーレス事務総長は報告書を評価し、1.5℃目標の確実な達成を訴えた

グテーレス事務総長は1.5℃目標を実現する必要性を強調し、「グリーンウオッシュングを容認することはできない。すべてのイニシアチブは2023年前半までにこの指針に従って改定しなければならない」と訴えました。

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このイベントに参加するには事前申込とチケットが必要だったにもかかわらず、長い行列ができた

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委員のひとり、ドイツの研究所、クラ−メート・アナリテイクスのヘア代表

いわば国連によるお墨付きのネットゼロの定義が出されたわけで、この基準は特に世界の機関投資家による企業に対する評価に大きく影響を与えるでしょう。というのは、ネットゼロの定義が定まると、その脱炭素へ向かう移行(トランジション)の経路もおのずと決まってきます。すぐに脱炭素ができない産業にとっては、何をもって脱炭素へ移行しているとみなされるかは、大きな関心事です。特に日本は、脱炭素化に出遅れたためもあって、このトランジションに対するファイナンスに強い関心があります。
報告書は10の大きな提言からなりますが、特に日本の企業に影響があるのは以下の3点でしょう。

 ・ネットゼロに向かう科学に沿った削減目標を5年ごとなどの短期、中期、長期に出すこと
 ・政府などに対して、自社のみならず業界団体を通じても野心的な温暖化政策に反対してはならず、政策を推進すること
 ・自社の削減目標達成にカーボンクレジットを利用することはできない。ただし高品質クレジットに限って自社のバリューチェーン外で利用してもよい

COP27では、世界最大の機関投資家のネットワークGFANZ(ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟)も、金融機関を対象にした同様のガイダンスに関する3つの報告書を発表しました。

こうした取り組みを通して形ばかりのネットゼロ宣言が淘汰され、企業など様々な非国家アクターが科学に基づいた排出削減の道を歩むことが、1.5℃目標の達成に近づくことになるのです。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005年に国際NGOのWWFジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び環境・エネルギー政策。2002年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会持続可能性委員会委員、環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書「地球温暖化は解決できるのか~パリ協定から未来へ!~」(岩波ジュニア新書2016)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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