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史上最強のエルニーニョ現象がもたらすもの

この記事のポイント
2026年は観測史上最も強い「スーパーエルニーニョ」の発生が予測されており、世界各地で異常高温や干ばつ、森林火災などの深刻な影響が懸念されています。エルニーニョ現象は気候メカニズムにおける自然なものですが、温暖化によってその影響が増幅される可能性も指摘されています。すでに欧州では記録的な熱波や大規模火災が発生し、農作物の減産や価格高騰への懸念も広がっています。気候危機のリスクが高まるなか、国や自治体、企業による温室効果ガス削減の取り組みや、自然を活用した対策による緩和・適応の取り組みがこれまで以上に必要となっています。
目次

エルニーニョ現象とは

エルニーニョ現象は、地球の平常な気候メカニズムの中で数年おきに発生する現象で、太平洋熱帯域の東から西に向かって吹く貿易風が弱まることで発生します。

その結果、インドネシア近海の暖水が東に張り出すとともに、南米沖の海水温が上昇。太平洋赤道域で積乱雲が発生する海域が、平常時よりも東へ移ります。

このエルニーニョ現象は1年程度続くことが多く、発生時には太平洋熱帯域に限らず、世界の多くの場所で通常とは異なる降雨パターンや熱波や寒波をもたらします。

例えば、日本では西日本を中心に夏は気温が平年よりも低くなり、冬は暖かくなる傾向が生じます。

また、インドネシアでは雨季でも雨が降らず、高温で乾燥することが多くなり、少雨や干ばつの影響で森林火災のリスクが高まります。こうした影響は、南米のアマゾンでも同様に発生します。

エルニーニョ現象に伴う太平洋熱帯域の大気と海洋の変動(出典)気象庁

エルニーニョ現象に伴う太平洋熱帯域の大気と海洋の変動(出典)気象庁

地球温暖化とエルニーニョ現象

エルニーニョ現象は、もともと存在した地球の気候メカニズムの中に組み込まれたもので、地球温暖化が直接的な原因となって発生するわけではありません。

気象庁も、地球温暖化がエルニーニョ現象にどのような影響を及ぼしているのか(発生頻度や強度など)については、まだ科学的な結論は出ていない、としています。

しかし、最新の国立環境研究所や海洋研究開発機構の研究結果では、「温暖化が比較的緩やかな場合にはENSO(注:エルニ−ニョ/ラニーニャ現象とそれに連動して発生する太平洋熱帯域の海面気圧の変動)が強まる一方、温暖化が非常に進行すると現象は弱まり、発生周期が短くなる」とされています。

【関連サイト】国立環境研究所のサイト

また、温暖化によってエルニーニョ現象の影響が弱くなるかというと必ずしもそういう訳ではありません。むしろ、地球温暖化が進むと熱帯域の降水変動と大気大循環の変動が大きくなり、世界各地の天候への影響も大きくなることがあるとされています。

史上最強の「スーパーエルニーニョ」現象の発生

2026年はエルニーニョ現象が、歴史上で最も強くなることが科学的に予測されています。

気象庁によると、今後、冬にかけてエルニーニョ現象が続く見込み(100%)とされており、2026年8月から2027年2月までのエルニーニョ監視海域の海面水温は冬にかけて上昇し、ピークの値が最も大きかった1997年に匹敵する値になると予測されています。

また、アメリカ海洋大気庁も、10月~12 月には、1950 年以降の記録で最大級のエルニーニョ現象となる非常に強いエルニーニョ現象が発生する確率が 81%と予測しており、こうしたことから2026年のエルニーニョは「スーパーエルニーニョ」とも呼ばれています。

こうした状況の中、世界気象機関は、8月から10月にかけて、世界のほとんどの陸地で気温が平年を上回る可能性が非常に高いという予測を発表しました。

また、降雨パターンは典型的な強いエルニーニョ現象を示しており、アフリカの角(ソマリアを中心とした地域)やブラジル南東部では平年より降水量が多くなると予想される一方で、インドネシア・マレーシアや、ブラジルのアマゾン地域、インドでは平年より降水量が少なくなる可能性が高いと予想されます。

基準期間(1993年~2009年)と比較した、2026年8月~10月期の気温と降水量の平均値の傾向。【上】地表の気温が基準期間と比較して、高い(赤)/低い(青)確率を示す。【下】降水量が基準期間と比較して、多い(緑)/少ない(褐色)確率を示す。
出所)World Meteorological Organization “GLOBAL SEASONAL CLIMATE UPDATE TARGET SEASON: August-September-October 2026”

エルニーニョ現象の影響

こうした影響は既に世界で現れはじめており、ヨーロッパの熱波や森林火災は日本でも大きなニュースになっています。

6月には、ドイツで41.7度、チェコで41.9度、ハンガリーで42度と各国の最高気温記録を更新しました。

また、スペインとフランスでは大規模な森林火災が発生。イギリスの新聞ガーディアンによると、それぞれの国で2006~2025年の間に起きた、年平均の森林焼失面積(スペイン:9万5,000ヘクタール、フランス:1万5,000ヘクタール)を大きく上回る、20万7,000ヘクタールと9万1,000ヘクタールが、7月までに既に焼失しています。

インドネシアでも8月中旬以降、森林火災が急増しました。
インドネシアでは、2015年にスーパーエルニーニョが発生した際に、雨季に雨が降らず、大規模な森林火災と泥炭地火災が発生し、長期間にわたって延焼を続けました。

その結果、森林火災による温室効果ガスの排出量がCO2換算で17億5,000万トンにのぼり、日本やドイツの1年間の総排出量を上回るまでになりました。

また、火災にともなって、ヘイズと呼ばれる煙害が近隣諸国にまで広がり、広範な大気汚染と健康被害をもたらしました。

【参考情報】インドネシアの煙害(ヘイズ)問題、乾季に多発する泥炭火災について

森林火災発生時に実施した消火活動。1997年~1998年のエルニーニョ現象発生時を含め、インドネシアでは繰り返し大規模な火災が発生してきました。
© WWF Indonesia

森林火災発生時に実施した消火活動。1997年~1998年のエルニーニョ現象発生時を含め、インドネシアでは繰り返し大規模な火災が発生してきました。

さらに、エルニーニョによる高温や干ばつは世界の農作物生産にも大きな被害をもたらします。

例えば、インドの綿花や砂糖、オーストラリアの小麦、西アフリカのガーナやコートジボワールのカカオなどが、その代表です。

これらの農産物の生産の減少は、国際市場での価格の上昇につながることが懸念されています。

実際に、ガーナ・カカオ協会(通称COCOBOD)は、2026年5~6月の過剰降雨とエルニーニョの影響の可能性により2026年から2027年にかけてのカカオの生産量が16%減少することを予測。カカオの先物価格も2024~2025年の歴史的高騰時の5~6割ほどにまで再上昇しています。

エルニーニョ現象は11月から2月頃にピークを迎え、発生後1年間は地球の気温に最も強い影響を与えるため、世界各地でさまざまな被害が本格的に発生するのは、2026年秋以降になると予想されます。

国連のアントニオ・グテーレス国連事務総長は、このようなエルニーニョ現象について次のように述べています。

「エルニーニョ現象は勢いを増し、灼熱のドーム、壊滅的な山火事、記録的な高温の海水など、すでに燃え盛っている地球に燃料を注ぎ込んでいます。化石燃料はこの危機の火種を煽っています。拡大は止めなければなりません。人々を守り、危機の根本原因に対処するために行動を起こさなければ、危機はさらに致命的になるでしょう。準備期間は終わりです。本番を待つ余裕はありません」

アマゾンの森林火災。地球の肺ともいわれる世界最大の熱帯林も近年は異常気象による干ばつや、それに伴う火災の多発、降雨や流域の水量の激減など、深刻な環境の変化に曝されています。
© Andre Dib / WWF-Brazil

アマゾンの森林火災。地球の肺ともいわれる世界最大の熱帯林も近年は異常気象による干ばつや、それに伴う火災の多発、降雨や流域の水量の激減など、深刻な環境の変化に曝されています。

気候危機を緩和するためのWWFの活動

エルニーニョ現象自体は地球の気候メカニズムに元来備わっているものですが、温暖化によりその影響や被害が増幅する可能性があり、温暖化を止めることができるかは社会の決断と行動にかかっています。

WWFでは温暖化を防止するために、国際社会でのルール作りや実施・モニタリングのための提言活動、日本の排出削減の目標や制度設計のための政府審議会や検討会への参加、また企業に対する削減目標策定の働きかけや専門的知見に基づいた提言などを行なっています。

また、フィールドにおいてNature-based Solutions(NbS:自然のプロセスや生態系を活用して、環境問題や社会的課題に対処する方法)を用いて、温暖化の緩和や、災害などへの適応を目的としたプロジェクトを実施しています。

  • 生物多様性保全と治水・防災の推進
    九州では気候変動により激甚化・頻発化する河川氾濫や土砂災害を軽減・防止するために、「流域治水」の考え方を取り入れ、河川や水田の健全な生態系を維持しつつ、治水や防災に資することを目指しています。

  • 森林の保全による防災の実現
    宮城県南三陸町では手入れされていない放置林を集約化して持続可能な森林管理をおこなうことで、生物多様性の回復に資するとともに、森林の土壌保全・水源涵養機能を強化し、土砂災害や水害を防止することを目指しています。

  • マングローブの保全を通じた炭素の蓄積促進と防災の実施
    インドネシアにおいてマングローブ林の保全・再生をおこなうことで、大気中の二酸化炭素を吸収し炭素蓄積を増やすとともに、高潮被害防止や沿岸生態系の回復に貢献することを目指しています。

このように、WWFでは国際会議や国内での政策提言、企業に対する持続可能なビジネスのための働きかけ、フィールドでのNbSを進めてきました。

日本でも気候災害が頻発するようになった現代、地球温暖化の緩和・適応は、喫緊の社会的、経済的、環境的な課題となっています。

その解決は、多様な自然や野生生物の保全のみならず、未来の世代に引き継ぐ地球の環境を守る上でも欠かせない取り組みです。

WWFはこれからもその実現に向けた活動を継続していきます。

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