朝日SDGs ACTION!ウェビナー「WWFと考える SDGsの実践セミナー」第4回を開催 持続可能なサプライチェーンへ ~インドネシア・エビ養殖の事例から

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2024年6月27日、WWFジャパンは朝日新聞SDGs ACTION!編集部とウェビナー「WWFと考える SDGsの実践セミナー」の第4回「持続可能なサプライチェーンへ ~インドネシア・エビ養殖の事例から」を開催しました。登壇したのは、サステナブルなエビの調達を手掛ける、日本生活協同組合連合会のブランド戦略本部サステナビリティ戦略室の松本哲氏、そしてWWFジャパンで漁業・養殖の改善を通じた海洋保全活動を担当する吉田誠です。今回のウェビナーでは、日本生協連とWWFが取り組んできた、持続可能な養殖の国際認証「ASC認証」、その取得までの軌跡を紹介しました。
目次

生物多様性の問題にどう取り組む? ビジネスが問われる新たな課題

今、あらゆる業種のビジネスにおいて、サステナビリティの確立が求められています。

その中で、企業のSDGs担当者や、気候変動・エネルギーにかかわる部署、CSR部門の関係者たちは、どのようなテーマで、どのような取り組みを行なう必要があるのか。

WWFジャパンと朝日新聞SDGs ACTION!編集部は、そのヒントとして、企業の先進的な取り組み事例や、国際潮流の最先端を紹介する連載企画のウェビナー「WWFと考える~SDGsの実践」を実施してきました。

2024年6月27日に開催した、その第4回目のテーマは、持続可能な養殖の国際認証「ASC認証」を取得した、インドネシアのエビ養殖業の改善。

これをサプライヤーの立場から推進してきた、日本生活協同組合連合会(日本生協連)の取り組みを紹介しました。

ご登壇いただいたのは、日本生協連のブランド戦略本部で、主に水産分野のサステナビリティ戦略をご担当されている、松本哲氏。

WWFジャパンからも、インドネシアのエビ(ブラックタイガー)養殖業改善プロジェクトを長年担当している、海洋水産グループの吉田誠が登壇しました。

「現場」の生物多様性の保全に、どう貢献する? サプライチェーンを通じた取り組みの可能性

インドネシアでは、長年にわたり、エビなどの養殖池をつくるためマングローブの伐採が繰り返され、沿岸域の生態系が広く失われてきました。

また、こうした養殖池ではエビの病気や水質悪化なども発生。生産性の低下と生産者の生計への影響などもが問題となっていました。

このような形で生産されるエビは、日本が多く輸入している重要な水産物でもあります。日本は、その消費を通じて、海外の生物多様性を損なっている、ということです。

インドネシアのエビの養殖池
© WWF Japan

インドネシアのエビの養殖池

インドネシアでのエビ養殖業の改善プロジェクト

今回のウェビナーでは、2名の登壇者より、世界の水産物と海の生物多様性の危機について概要をご説明しつつ、その状況を改善する手立ての一つである、持続可能な養殖の国際認証「ASC認証」について説明。

日本で人気の高い重要なエビの一種であるブラックタイガーの養殖業改善プロジェクトを、インドネシアで2018年7月に開始し、このエビを調達しているサプライヤーである日本生協連と共に、これを推進してきた経緯をお話ししました。

このプロジェクトには、WWFジャパンと日本生協連だけでなく、WWFインドネシアと、現地の水産加工会社も参加。

さまざまな困難を乗り越え、2024年3月、ジャワ島での取り組みでついにこのエビ養殖業で「ASC認証」の取得が実現し、この成果に至るまで、こうしたステークホルダーによる協力があったことをお伝えしました。

ASC認証の取得が実現したジャワ島の現場にて。多くの関係者の努力と協力が実を結びました。日本生協連の松本氏も、幾度も現地に足を運び、関係者との協議を重ねられました。
© WWF Indonesia

ASC認証の取得が実現したジャワ島の現場にて。多くの関係者の努力と協力が実を結びました。日本生協連の松本氏も、幾度も現地に足を運び、関係者との協議を重ねられました。

「持続可能な社会の実現」と「責任ある調達」をめざして

日本生協連では、特に、地域、環境、社会、人々の4つの視点でエシカル消費に対応する取り組みをすすめています。

松本氏は日本生協連がこれらの取り組みを進める上で、ASCの認証の取得は有効であると判断したこと、またWWFからも環境だけでなく、労働環境などへの配慮について同認証が厳しいルールを設けており、これに対応することが、ビジネスとしてのサステナビリティの確立につながることをお話ししました。

日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室 松本哲氏

日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室 松本哲氏

実際、このインドネシアのASC認証の取得事例では、マングローブの再生を含む自然環境の回復と保全だけでなく、生産性の改善を通じ、生産者の生計向上にもつながることが、期待できる結果が得られました。

そのために、日本生協連がサプライヤーとしてどのように関わり、WWFは現地の関係者の巻き込みをどう実現していったのか、今回のウェビナーでは双方が果たしたそれぞれの役割と、認証までの道のりを阻んだ多くの課題に、どのような連携のもとで取り組んできたのか、具体的に紹介しました。

WWFジャパン 海洋水産グループ 吉田誠

WWFジャパン 海洋水産グループ 吉田誠

生産の現場と海外の消費国をつないだトレーサビリティと、国際的なサプライチェーンの関係者の協働が、サステナビリティの実現につながった点は、ビジネスの持続可能性においても重要な意味を持ちます。

今回のウェビナーでは、このサプライチェーンの関係者の協働が、生産現場の生物多様性の回復と保全に寄与し、貢献すること。また、その信頼のある取り組みの一つの形として、「ASC認証」という国際認証の活用があることを紹介しました。

そして、こうした取り組みを支えていくためには、生産、流通、消費、それぞれの段階で、かかわる人たちの理解と協力が欠かせません。

WWFは今後も、こうしたサプライチェーンの関係者の協働を通じた、水産物の持続可能な生産、調達、消費の広がりを目指し、そのためのパートナーシップ活動を展開していきます。

*本ウェビナーについては、2024年7月以降に、朝日新聞SDGs ACTION!のウェブサイトに採録記事が掲載される予定です。

今回ご登壇いただいた、日本生協連の松本氏(中央)とWWFジャパンの吉田(左)、司会の朝日新聞SDGs ACTION! 編集長の竹山栄太郎氏(右)

今回ご登壇いただいた、日本生協連の松本氏(中央)とWWFジャパンの吉田(左)、司会の朝日新聞SDGs ACTION! 編集長の竹山栄太郎氏(右)

イベント概要:WWFと考える SDGsの実践セミナー『持続可能なサプライチェーンへ ~インドネシア・エビ養殖の事例から』

開催日:2024年6月27日
会場:オンライン開催
参加者:約100名
登壇(敬称略):
日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室 松本哲
WWFジャパン 海洋水産グループ 吉田誠
朝日新聞SDGs ACTION! 編集長 竹山栄太郎
主催:朝日新聞SDGs ACTION!編集部、WWFジャパン

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