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RSPOについて

この記事のポイント
パーム油のためのアプラヤシ農園開発による熱帯林破壊の問題が叫ばれるようになってから、すでに20年近くが過ぎました。近年では、環境への影響だけではなく、マレーシアやインドネシアなど生産国の地域住民や農園労働者への深刻な人権労働問題も指摘されています。パーム油に対する需要の伸びはとどまることを知らず、解決すべき環境・社会課題も多く存在する中で、日本の企業は何をすべきでしょうか。

はじめに

日本では、トイレタリー企業を中心に持続可能なパーム油の調達への取り組みが始まっており、先進国の中では遅れているものの、ここ数年で、流通小売企業へと取り組みが広がり、徐々に食品業界へも波及してきました。2020年の東京大会では、世界で初めてパーム油の調達コードが策定され、持続可能な原料調達に注目が集まる中、今後も更にこの動きは拡大していくことが予想されます。

この記事は、パーム油をめぐる問題と、持続可能なパーム油の生産・利用を目指す国際的な認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」に関する基本的な情報を整理したものです。日本企業が持続可能なパーム油の調達に向けた取り組みを検討する際に、参考として活用いただくことを期待します。

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世界に広がるRSPO認証農園

世界に広がるRSPO認証農園

I パーム油の何が問題か

1.パーム油とは

1)アブラヤシ

パーム油は西アフリカ原産のアプラヤシの果実から得られる植物油です。カップ麺、お菓子、パンなどの加工食品や、化粧品・パーソナルケア用品、洗剤、医薬品などの消費生活用製品からバイオ燃料に至るまで幅広く利用されています。パーム油といっても厳密には、果肉の部分からはパーム原油、種子部分からはパーム核油が得られ、含まれる成分の違いから用途が異なります。本記事では特に断らない限り、「パーム油」にはパーム原油と核油を含むものとします。

パーム油は多用途に使われるだけでなく、単位面積当たりの収量が他の植物油脂に比べて非常に高く、またより安価です。そのため、1990年代から急速に需要が伸び、今では大豆を抜いて世界で生産される植物油脂のトップとなっています。

世界の油脂別生産量

世界の油脂別生産量

2)生産地

パーム油はどこでも生産できるものではありません。アブラヤシには十分な日照と高温湿潤な気候が必要なため、農園の適地は赤道を挟む湿潤な熱帯地域に限られます。生産国としては、インドネシアとマレーシアが突出しており、両国だけで世界のパーム油生産量の85%近くを占めるほどです。しかし近年、その他の東南アジア、アフリカ、中南米の諸国においても、アブラヤシ農園の開発が広がっています。

3)需要

パーム油の主な消費国はインドネシア、インド、EU27カ国、中国です。日本は80.5万トン(2019年推計値)で世界第17位ですが、年々微増傾向にあります。今後、世界の人口増加、アジア諸国の所得水準の上昇などを考えると、パーム油に対する需要がさらに伸び続けることは避けられません。

パーム油国内生産量・消費量上位10ヵ国(1,000トン)

パーム油国内生産量・消費量上位10ヵ国(1,000トン)

2.パーム油生産に伴う諸問題

急速なアブラヤシ農園の拡大と不適切な農園経営などにより、環境や地域社会に次のような問題が生じています。

インドネシア・スマトラ島における森林破壊

インドネシア・スマトラ島における森林破壊

1)熱帯林、泥炭湿地林などの伐採

保護価値の高い自然林や泥炭湿地林などが伐採され、完全に失われる。

2)森林火災・泥炭火災

農園造成を目的として森林伐採の前後に「火入れ」をすることは禁止されている。しかし実際は違反が横行し、乾季になると泥炭にまで延焼するため多量の温室効果ガスの排出と共に、煙害(ヘイズ)が国際問題化している。

3)生物多様性の損失

東南アジアの熱帯林は、絶滅の危機に瀕しているオランウータン、トラ、アジアゾウなどの大型哺乳類を筆頭に貴重な野生動植物の宝庫である。熱帯林を農園に転換することで、生物多様性に致命的な影響を与える。

4)気候変動

熱帯林や泥炭湿地林の伐採、火入れによる泥炭火災など直接的な影響に加え、搾油工場においても廃液由来のメタンガスなど様々な段階で温室効果ガスを大量に排出する。

5)土地をめぐる先住民などとの紛争

代々土地を利用している先住民や地域住民の同意を得ず一方的に開発を進め、生活の糧である森や土地を奪ってしまう例が多く報告されている。

6)土壌侵食・汚染など

熱帯林伐採により土壌侵食が進み、表土の流失を招く。また、農園で使用する有害性の強い農薬や化学肥料などによる周辺の汚染、搾油工場からの有機物に富む排水による河川の富栄養化も問題となっている。

7)労働と安全問題

農園においては健康や労働安全への配慮が乏しい劣悪な労働環境や低賃金、移民労働者の不当な扱い、児童労働など様々な社会的公正を欠く労使問題が指摘されている。

これらは、生産国の法規制が適切に整備され、遵守されていれば、大きな問題にはなりません。しかし、実際には、原生林の伐採や火入れの禁止、希少野生生物の保護といった規制はあっても、取り締まり体制が十分ではなく、違反は後を絶ちません。また、事業者と管理当局との癒着による不適切な開発もたびたび指摘されています。国が直接管理する国立公園でさえ、面積の半分近くがアプラヤシ農園に転換された例もあり、法規制によるアプローチだけでは対処できないのが実情です。

3.パーム油はボイコットすべきか

問題は、パーム油自体ではなく、栽培方法にあります。

環境・社会課題を多く抱えているパーム油に対する批判から、「パーム油を止めて他の植物油脂に切り替えるべき」という主張がまだ根強く残っています。現にパーム油製品のボイコットキャンペーンやパームフリー(パーム油を含まない)製品の販売も行われています。このような行動は単純で分かりやすいのですが、問題解決にはほとんど寄与しないどころか、時にはマイナスとなることさえあります。

単位収量は大豆の約10倍

世界で利用される植物油脂の中で最大の生産量となったパーム油を、他の植物油脂の増産によって代替することは、そのために新たに必要となる耕作面積などを考えれば非現実的です。パーム油は他の植物油脂と比べ単位面積当たり5~8倍の油が収穫できるため、今後さらに世界の植物油脂需要が増大することも考えれば議論の余地はありません。

1トンの植物油の生産に必要な面積
©WWF Japan

1トンの植物油の生産に必要な面積

代替油にも問題が?

パーム油の需要を抑制する目的で、部分的に代替したとしても、代替油脂となる大豆油や菜種油などの栽培がより持続可能である保証はありません。現に南米では大豆プランテーション開発において同様の問題を抱えており、持続可能な大豆の認証制度(RTRS)が設立されています。

基幹産業としてのパーム油

パーム油生産国のほとんどは途上国であり、今やそれらの国の社会・経済発展の主要な柱のーつとなっています。パーム油産業に関わる何百万人もの雇用をどうするのでしょうか。また、全ての生産者が問題を引き起こしている訳ではありません。ボイコットは法規制を守り地域社会にも受け入れられている生産者も区別することなく、一律に不利益を与えることになります。

「非」持続可能性へのインセンティブ

もし一定の企業が他の植物油脂に代替する場合、持続可能性に関心がない国や企業だけがパーム油を使い続けることになります。そうすると、生産者には持続可能な生産に力を入れるインセンティブがなくなり、環境破壊をしていても気にしない企業だけを相手に非持続可能な生産が拡大していくことになります。

パーム油自体に問題があるのではありません。パーム油の栽培方法に問題があるのです。今後もパーム油を使い続けるために、持続可能なパーム油の調達がいま必要です。

II 持続可能なパーム油へ

1.RSPOの成り立ち

RSPOは、正式名称を「持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil)といい、パーム油に関わる7つのステークホルダーによって構成される非営利組織です。

国際認証制度RSPO

国際認証制度RSPO

RSPOは2002年に、WWFの呼びかけに応じたパーム油産業に関わるAarhus United UK Ltd.(英油脂企業)、Migros(スイス小売)、マレーシアパーム油協会、ユニリーバが一堂に会し、持続可能なパーム油に関する議論を始めたことから発展しました。その後広く参加メンバーを募りながら協議を重ね、2004年4月に「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」として設立されました。本部はマレーシア、クアラルンプールにあります。

2.ビジョンと使命

RSPOの到達目標とその実現を目指し、どのように取り組むかを簡潔に示したのが、ビジョンと使命です。

ビジョン
RSPOは持続可能なパーム油が標準となるよう市場を変革する

使命
・持続可能なパーム油製品の生産・購買・融資・利用を促進する
・持続可能なパームのサプライチェーン全体にわたり信頼される国際的標準の策定、実施、検証、保証、および定期的見直しを行う
・市場での持続可能なパーム油の取引による経済・環境・社会への影響を見守り、評価する
・政府、消費者を含むサプライチェーンを通じた全てのステークホルダーと積極的に関与する

3.ガバナンス

RSPOの運営は7つのステークホルダーからそれぞれ総会(General Assembly)で選出された16名の理事により構成される理事会(Board of Governors)が担い、理事の任期は2年です。その下に4つの常任委員会とテーマごとのワーキンググループ、タスクフォースが置かれ、重要な決定は正会員が集う総会において採択されます。

4.原則と基準(P&C)

RSPOが考える持続可能なパーム油の生産には、関連する法制度に違反していないだけでなく、経済的に存続可能であること、環境的に適切かつ社会的に有益であることが求められます。それらの要件を具体的に示したのが、「RSPOの原則と基準(The RSPO Principles and Criteria、P&C)」です。7つの原則の下に40項目の基準が定められ、個々の基準ごとに、具体的指標とガイダンスが示されています。原則と基準の内容は、状況の変化に対応できるように、5年おきに見直しが行われます。

2018年版P&Cはこちら

5.会員制度

RSPOはビジョンと使命に賛同する団体、個人からなる会員により支えられています。会員にはパーム油との関わりの度合いにより3つの区分があります。会員区分により年会費や権利・義務が異なりますので、自社の状況を確認した上で選択してください。

※ルール詳細は「RSPOマーケットコミュニケーションと主張に関する規則(RSPO Rules on Market Communications & Claims)」をご参照ください。

※認証油購入費用とは別に、サプライチェーン認証の取得が別途必要となる場合があります。認証取得費用については、認証機関にお問い合わせください

III RSPO認証システムの概要

1.生産と流通、2つの認証

アブラヤシ農園から始まり、最終製品ができるまでの各工程を認証することにより、全工程にわたる管理の連鎖(chain of custody)がつながり、最終製品中のパーム油の追跡が可能となります。RSPOでは各工程の認証制度として、生産段階で「原則と基準(P&C)」に則って持続可能な生産がおこなわれていることの認証(P&C認証)と、認証パーム油がサプライチェーンの全段階を通じ間違いなく受け渡されるシステムが確立されていることの認証(SC認証)という、2つの制度を設けています。
いずれもRSPOは直接、審査・認証業務は行わず、第三者である国際認定サービス(ASI、認証機関を認定する組織)認定の認証機関が実施します。審査結果はRSPO事務局に送られ、その要約はホームページ上で公開され30日のパブリックコメントにかけられます。認証の有効期聞は5年ですが、毎年遵守状祝がチェックされ、場合によっては期間内であっても取り消されることもあります。

1)生産段階での認証(P&C認証)

生産現場での基本的認証単位は、搾油工場とそこに果房を供給する全ての直営農園、契約農園が含まれます。審査は認証機闘が「7つの原則と40の基準」を中心に最低3人の審査員によって、2回にわたり実施されます。最初の審査では基準とのギャップが特定され、2回目にそれらの改善状況を中心にチェックされます。

2)サプライチェーン認証(SC認証)

サプライチェーン認証(Supply Chain Certification System、SC認証)とは、製造・加工・流通過程における認証制度です。認証パーム油(Certified Palm Oil)を使用して作られた製品を取り扱う各工程でSC認証の要求事項を満たしていることを認証する制度です。最終製品が出来上がるまでの各工程でSC認証製品の所有権を持つ組織は、認証取得の対象となります。

2.4つのサプライチェーンモデル

パーム油の複雑なサプライチェーンを反映して、3つの認証モデルと1つのクレジットモデルがあります。

1)アイデンティティ・プリザーブド(ldentity Preserved、IP)

認証された単独の農園から最終製品製造者に至るまで完全に他のパーム油と隔離され、受け渡される認証モデルです。そのため認証油を生産した農園を特定することができます。

2)セグリゲーション(Segregation、SG)

複数の認証農園から得られた認証油からなり、非認証油とは混ぜ合わされることなく、認証油が最終製品製造者まで受け渡される認証モデルです。生産農園を1つに特定できませんが、認証農園から生産された原料のみであることが保証されます。

3)マスバランス(Mass Balance、MB)

製造過程で、認証油と非認証油が混合される認証モデルです。物理的には非認証油も含んではいますが、購入した認証油の数量は保証されています。

4)ブック・アンド・クレーム(Book& Claim、B&C)

物理的な認証油の取扱いが伴う3つの方式とは異なり、認証油のクレジットが生産者と最終製品製造者・販売者との間でオンライン取引されるモデルで、グリーン電力類似の方式と言えます。これにより、認証油のサプライチェーンが未整備で調達困難な場合でも、認証生産者を直接的に支援することが可能になります。

3.サプライチェーンモデルの比較

複数あるサプライチェーンモデルの中で、トレーサビリティのより確かなIPもしくはSG方式を採用することが最も望まれますが、日本市場においてはサプライチェーンがまだ整っていない原材料が多くあります。そのような場合は、認証油の入手をサプライヤーに働きかけると共に、生産者を直接支援できるクレジットの購入も有効です。
なお、採用するモデルにより、使用できるロゴマークやそれに付記する表記などが異なりますので、以下を参照ください。

IV 持続可能な世界を目指して

国別のRSPO加盟推移

国内RSPOメンバー企業リスト(2019年8月末時点、入会年月日順)

1.企業がRSPOに参加する意義

RSPO認証を取得したパーム油が初めて取り引きされたのは2008年。認証制度としてはまだ若く、改善すべき点も指摘されています。しかし、多様なステークホルダーが問題点を指摘しながら、改善を続けることに意味があります。持続可能なパーム油を調達するためには複数の選択肢があり、RSPOはその1つです。それでも、RSPO加盟数は増加を続けており、世界共通の国際認証制度となりました。それでは、企業はなぜRSPOに参加するのでしょうか。

リスクへの対応:近年パーム油の生産に伴う環境面・社会面での多くの問題は、解決されるべき世界的な課題であり消費側である利用企業にもその責任があると考えられています。その中で、日本企業が何の配慮も無く調達をしている、もしくはサプライチェーン上の問題の有無を把握しないまま調達をしているということだけで、ブランドへのリスクが生じかねません。

国際競争の基礎:日本の人口は今後減少していくことが予測されており、企業は今後更に海外展開の可能性が大きくなります。海外市場で競争をするためには、国際認証制度の導入が必要不可欠となります。またESG投資においても、持続可能な調達への取り組みを重視し始めています。

小規模農家の支援:パーム油はプランテーションだけで生産されているのではなく、生産量の4割近くを家族経営などの小規模農家が支えています。しかし知識不足や経済的な理由から、生産現場の問題が多々指摘されています。RSPOは小規模農家支援プログラムを、また企業とNGOが連携し認証取得支援も実施しています。B&Cの購入も生産者への直接支援に繋がるシステムです。

パーム油の使用量が少量であるということは、この問題を黙殺する理由にはなりません。
パーム油が他の植物油脂と比較して安い理由の一端には、生産現場にのみ負わされた環境面・社会面での「負の影響」があります。
消費国である日本をはじめとした国々が持続可能な調達をすることが、パーム油の持続可能な生産に繋がります。2025年、2030年に向け、皆さまと力を合わせながら取り組みを加速させていきたいと考えています。

※WWFジャパンはRSPOの運営自体には一切関わっていません。RSPOのシステム等についてのお問合せは直接RSPO事務局へお願いいたします。

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