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COP26閉幕!「グラスゴー気候合意」採択とパリ協定のルールブックが完成

この記事のポイント
新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受け、1年の延期を経て、2021年10月31日からイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が、会期を1日延長して、11月13日に閉幕しました。アメリカのバイデン大統領をはじめ、約130カ国の首脳や政府代表が参加したこの会議では、最終的に、世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるための削減強化を各国に求める「グラスゴー気候合意」が採択され、パリ協定のルールブックも完成。また、市民組織や企業、自治体などの非国家アクターによる、パリ協定の実現に向けた強い意志が示された会議となりました。
目次

COP26に求められた2つの成果

今回のCOP26では、大きく分けて2つの成果が求められていました。

1つ目は、温室効果ガスの排出削減の強化。「パリ協定」が目指す目標、つまり、世界の平均気温の上昇を「2度より充分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」ことに向けて、明らかに足りていない各国の取組み強化を打ち出せるかどうか、です。

2つ目は、パリ協定の「ルールブック」議論の中で、最後まで積み残された、「市場メカニズムのルール」などの議論について結論を得ることです。

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イギリスのグラスゴーで開催された国連の温暖化防止会議COP26

「1.5℃」を目指したさらなる野心強化に向けて

COP26の会議直前に発表された国連報告書においては、各国が、それぞれ掲げる2030年削減目標を達成したとしても、世界全体の排出量は2030年に2010年比で13.7%も排出量は増加し、このままでは、世界の平均気温は2.7度上昇してしまう、という警鐘が鳴らされました。

高まる危機感の中で開催されたCOP26では、会期中に各種の研究機関が、もし各国が長期で掲げているネットゼロ目標に真剣に取り組めば、気温上昇を1.8~1.9度に抑えることが可能になるという試算を出す一方、現状の政策や2030年目標は全くそれに合致していないことも示しました。

このため、会議参加者、そして会議をさまざまな場所から見守る人々は、今回のCOP26という会議が、温室効果ガス排出削減強化に向けて明確なメッセージを出せるかどうかに注目していました。

COP26において採択された諸決定のうち、議題全体に関わる重要な決定は、表紙になるような決定という意味で、「カバー決定」と呼ばれています。このカバー決定において、COP26は、削減目標の強化にかかわり、大きく2つのメッセージを出しています。

1つ目のメッセージは、世界の目標としての「1.5度」の強調です。

2015年に採択されたパリ協定はその第2条において、世界全体の目標を「平均気温を2度より充分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」と定めています。

しかし、その後の科学的知見の積み重ねを受けて、気候危機の被害を最小限に抑えるためには、1.5度に抑えることがより重要であるという認識に移りつつあります。今回は、その世界的潮流を反映し、カバー決定もこの1.5度に抑えることの重要性を「認識」した決定となりました。

これは、世界の気候変動対策の基準が、事実上「1.5度」にシフトしたことを示しています。

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合意を求めて会場内を行進する市民とユースの行進

2つ目のメッセージは、継続的な「2030年目標の見直し」です。

今回のCOP26に合わせて、多くの国が、既存の2030年目標の見直しを行ない、強化してきました。日本もそのうちの1つです。

しかし、まだそれができていない国もあることに加え、強化された目標を反映したとしても、「1.5度」に抑えるという目標には届かないことが分かっています。

このため、カバー決定は、2022年末までに、2030年目標を「再度見直し、強化すること」を各国に要請する内容となりました。次回のCOPの場では、そのための閣僚級会合を開催することも同時に決め、世界のリーダーたちに、今一度、削減目標の強化を求めていく流れとなりました。

もちろん、「1.5度」の強調や「削減目標の再強化」は、実施されなければ何も現状を変えることにつながりません。

COP26のカバー決定が出すこのメッセージに、各国がどこまで真剣に答えるか、会議の後の今後の各国の動きが重要となってきます。

今回のカバー決定において、もう一つ特筆すべき、異例の措置となったのが「対策のされていない石炭火力を減らし、非効率な化石燃料補助金の廃止すること」を呼びかけたことです。

両者とも、これまでのG7やG20の際の文言を踏襲しつつ、途上国の事情を考慮したものではありますが、各国の個別の政策に関わる事項は避けたがる国連の場で、こうした特定の燃料の廃止を呼びかけることは異例であり、それだけ、これらの廃止が気候変動対策にとって必須の条件であることの認識が世界的に広がったといえます。

また、カバー決定から少し離れたところで、少し残念な結果に終わってしまったのが、約束期間の長さについての決定です。

2025年に各国が提出する目標が、2035年目標になるのか、2040年目標になるのかを決めることが予定されていました。

仮に低い目標になってしまった場合、2040年までそれが固定されてしまうこと避ける意味では、2035年目標でそろえていくことが望ましいと環境NGOは考えていましたが、2035年目標とすることを「奨励する」という表現にとどまりました。

適応や資金支援などの強化のメッセージも

「削減目標の強化」は、気候危機への対応として必須のものではありますが、必要な対策はそれだけではありません。

すでに顕在化している気候危機の影響へどう「適応」していくのか、そして、削減対策(「緩和」対策)や適応対策に必要な資金を、特に途上国に対してどう支援していくのかという課題があります。

今回、多くの途上国は、これらの問題も、「削減目標強化」と同じくらい重要な課題であるとして、会議終盤まで強く主張しました。

その結果、カバー決定およびそれに連なる諸決定において、「適応」分野については、現状の資金支援金額を、2025年に向けて倍増していくことや、世界全体での適応対策を進めるための「グローバルな適応目標」について検討していく計画が採択されました。

また、資金支援については、約10年前に作られた約束として、先進国から途上国への資金支援が2020年までに官民合わせて1000億ドルとなることを目指すという目標がありましたが、その目標が達成できていないことへの反省やその点検をCOPの場で行なうこと、そして今後、新しい目標を2024年までに作っていくことなどが合意されました。

もう一つ、今回、気候変動の影響に特に脆弱な島嶼国や後発開発途上国がこだわった問題がありました。それが「損失と被害(loss and damage)」と呼ばれる争点で、これは、気候危機の影響の中で、すでに適応しきれず、被害が発生してしまった事象への支援をどのように行っていくのかという論点です。

パリ協定採択の時から、この「損失と被害」という課題の重要性は認識されてはいましたが、ともすれば気候変動の被害に関する「補償」を問う問題となることを恐れる先進国が強く反発し、これまでは議論を行なうこと自体に忌避感がありました。

しかし、今回は、気候危機がすでにそこにある危機である認識が広まったためか、少なくとも議論をすることについてはこれまでほどはタブー視されず、会議冒頭でも、スコットランド政府が初めて「損失と被害」向けの自主的な支援を発表するなどの動きがありました。

気候変動影響に脆弱な途上国が求めていたのは、具体的な支援につながる可能性がある何らかの機関・基金の創設でしたが、今回、そこまでは合意が到達せず、このための特別な「対話」の場を設立して議論を深めていくことになりました。

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参加できない途上国の人たちの声を聞け、と訴えるアクション

パリ協定のルールブックがいよいよ完成!

2015年にパリ協定が採択されてから、本来は実施のために必要なすべての詳細なルールブック(実施指針)は2018年に合意されるはずでした。しかしいくつかのルールが紛糾して持ち越され、すでに6年がたちました。

中でも最も主要なものは、パリ協定6条市場メカニズムでした。今回は議長国イギリスの強いリーダーシップもあり、残ったルールもすべて合意され、パリ協定はとうとう完成しました。

パリ協定6条の市場メカニズムについて

パリ協定第6条とは、CO2の排出枠を「クレジット」として市場で取引する仕組みが主で、2国間で取引するもの(6条2項)と、国連主導型で取引するもの(6条4項)の2つがあります。

日本が途上国との間で進めている2国間クレジット制度(日本と対象国の2国間で削減プロジェクトを実施し、CO2削減量を2国間で分け合う制度)はこの6条2項に含まれることになるため、日本としてもぜひ合意にこぎ着けたいところでした。

主な争点は3つありました。それぞれの説明と今回の妥協点を報告します。

1)6条4項において、ダブルカウンティング(二重計上)を防ぐこと
2)6条4項において、京都議定書時代の古いクレジットをパリ協定へ持ち越すことを防ぐこと
3)6条2項において、利益の一部を途上国への適応支援のために拠出する仕組みを作ること

1)6条4項において、ダブルカウンティング(二重計上)を防ぐこと
6条は基本的のオフセットの仕組みであるため、削減を進めるために最も重要なことは、排出量のダブルカウンティング(二重計上)を防ぐことです。そうでないと地球全体で見た場合に排出量が増えてしまうからです。そのために一つの削減量を各国の削減目標(NDC)に2回計上しない仕組み(相当調整と呼ばれる)が必要です。

パリ協定の6条2項には「相当調整をすること」が入っているのですが、6条4項には明示的には「相当調整」という文言がないことを悪用して、ブラジルが6条4項ではダブルカウンティングをしてよいんだという主張を繰り広げてきました。

これを許すと、6条によってむしろ世界の削減に大きな抜け穴が出来てしまうことになるので、島嶼国をはじめとしたその他の途上国や先進国は強く反対してきました。

交渉は紆余曲折を経て、結果として基本的に国のNDCやその他の国際部門間でクレジット取引をする場合には相当調整をしなければならないことになり、なんとか環境十全性を保つ仕組みが出来上がりました。

交渉中にはさまざまな妥協案が出され、たとえば「NDCに含まれない部門からの削減量の場合には相当調整を適用しない」「削減プロジェクトのホスト国が認証したクレジット以外には相当調整を適用しない」などといった提案がなされました。いずれも大きな抜け穴となる可能性があり、議論は紛糾しました。

しかし結果として、これらの妥協案は消えて、なんとかダブルカウンティングを防ぐことを前提とする仕組みが立ち上がったのです!

2)6条4項において、京都議定書時代の古いクレジットをパリ協定へ持ち越すことを防ぐこと

もう一つ大きな問題であったのが、京都議定書時代の使われなかった古い削減クレジットを、パリ協定に持ち越したい、というブラジル・インド・中国の強い要求でした。

これらの国々では数多くの京都議定書クレジットが残っており、それらの参入を許すと、2020年以降のパリ協定における各国の削減量が事実上減ってしまうことになります。そのため多くの途上国も先進国も強く反対してきました。

結果として妥協案として、条件付きで古いクレジットを使っていいことになりました。会場ではだれともなくこれらの古いクレジットを「ゾンビクレジット」と呼ぶようになっていましたが、当初は「すべて使いたい」とするインドや絶対に折れないブラジルなどと鋭い対立が繰り広げられましたが、最後は2013年以降に登録されたゾンビクレジットのみ使ってよい、ということで妥協が図られました。

IGES(地球環境戦略研究機関)などの研究報告によると2013年以降登録のクレジットは大体3億3,000万CO2トンにのぼるということで、望ましくはありませんが、第一回目のNDCに限り使えるという条件も付いて、パリ協定への影響をなるべく抑える方向で妥協が図られました。

3)6条2項において、利益の一部を途上国への適応支援のために拠出する仕組みを作ること

京都議定書では、クレジット取引の際にその利益の2%を途上国のための適応基金に拠出することが決まっていました。パリ協定6条4項でもその仕組みを踏襲して、今回はさらに5%と引き上げられて温暖化の影響に脆弱な国々に対する適応を支援することになりました。

ところが6条2項にはこの仕組みを導入することはパリ協定で決まっていませんでした。その中で、途上国側は、6条4項のみならず6条2項のクレジット取引にもこの利益の一部を拠出する仕組みを取り入れるようにと強く要求。しかしこれにはアメリカをはじめとした日本やオーストラリアなどの先進国が強く反対して、議論は膠着していました。

結果として、利益の一部を自動的に拠出する仕組みは6条2項には入りませんでしたが、その代わりに「適応基金に拠出することを強く促す」「その拠出額などを報告する」という条件で決着を見ました。

長引いてきたパリ協定の残されたルールもこれですべて合意されて、パリ協定は完成です!

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COP26の開催期間中に行なわれた「気候マーチ」と呼ばれる世界的なイベント。地元グラスゴーでも数万人の市民が集まり、政府首脳たちに声を届けました。

▼現地でCOP26に参加したWWFジャパンスタッフのコメント

小西雅子
WWFジャパン 専門ディレクター(環境・エネルギー)

「COP26で、2度未満の長期目標から1.5度をメインにすることが鮮明になりました。そのために2030年に45%削減(2010年比)、2050年にゼロにすることも明記。これはパリ協定が最新の科学にしたがって新しい進化を遂げたことを意味しており、今後の世界経済が2050年脱炭素社会に向かうことが規定されたと言っても過言ではありません。パリ協定採択時(2015年)には考えられなかった展開です!残された市場メカニズムなどのルールも決まって、パリ協定は完成しましたが、これはまだ国内の温暖化政策の乏しい日本に大きな課題を突き付けています。まだ明示的なカーボンプライスが存在しない日本、世界共通のカーボン取引市場が立ち上がる中、遅れているカーボンプライシングの導入を早急に実施し、電力の脱炭素化を現実的なタイムラインで進める必要があります。1.5度の世界に向かって日本は大きな宿題を抱えています」

田中健
WWFジャパン 気候・エネルギーグループ・オフィサー

「今回のCOP26では、企業、投資家、自治体、市民団体、ユース団体など政府以外のあらゆるステークホルダー、非国家アクターの存在感が一層増しただけでなく、その一体感を強く感じたように思います。日本の非国家アクターのネットワーク「気候変動イニシアティブ」に参加する企業、投資家、ユース団体も、ここグラスゴーで世界に向けて取組みや声を発信しました。こうした非国家アクターの重要性もまた、今回の決定文書の中に書かれています。完成したパリ協定のルールブックのもとで、世界の政府と非国家アクターが一丸となって1.5度目標の実現に向かう準備が整いました」

山岸尚之
WWFジャパン 気候エネルギー・海洋水産室長

「今回のCOP26へ向けて、日本も含めた多くの国々が、削減目標を強化して臨みました。この事実は、6年前、パリ協定採択によって作られた「削減目標強化」に向けた仕組みが徐々に機能し始めていると言えます。でも、世界の気温上昇を「1.5度」に抑えるためには、まだまだ不十分。その意味で、今回のCOP26が再び、削減強化のメッセージを打ち出したことは非常に意義深いと感じています」

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