渤海・渡り鳥の海を守るために


自然保護室の安村です。
中国・河北省唐山市で、渤海(ぼっかい)の干潟を訪れる渡り鳥の保全を目的にしたイベントに参加してきました。

渤海は、遼東半島と山東半島を境に、黄海につながる内海で、広さはほぼ北海道と同じ。この渤海の湾奥にあるランナン干潟が、今回のイベントの舞台です。

ここは、渡り鳥のコオバシギの重要な休息地ですが、現状では保護区としての指定が一切なされていません。

WWF中国と北京師範大学、そして北京金台芸術館が共催した今回のイベントは、この干潟の貴重性、保全の緊急性を訴えるために企画され、行政関係者、企業、国内外のNGO、研究者など70名と、14社のメディア関係者が参加。

オランダの鳥類学者のトゥニス・プリスマ氏によるコオバシギの生態の話で始まり、国際的に著名な芸術家の袁熙坤氏による環境保全の重要性を訴える講演や、若手アーティストによる歌や踊りのパフォーマンスが披露されました。

また翌日には、実際に干潟を訪問し、休息する数千羽のコオバシギを観察。見渡す限りの見事な景色でしたが、近くには大規模な油田の設備もあり、自然が急激に変わってゆく様子もうかがえました。

実際、ランナン干潟が重要な休息地として認識されるようになったのは、原油採掘や製塩、養殖池の造成などの開発により周辺の干潟が減少し、残されたこの場所に渡り鳥が集中するようになったためです。

ここは、WWFが「黄海エコリージョン保全プログラム」で「優先保全地域」に選んだ場所の一つであり、またWWF中国が生物多様性保全の重要地域の一つとしている場所でもあります。

押し寄せる開発の波の中で、貴重な海の自然を守る取り組みが、今まさにこれから始まろうとしています。

 

コオバシギ。シベリアで繁殖し、越冬のため南半球へ何千キロも飛ぶ渡り鳥です。

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袁熙坤氏が中国人民政治協商会議(CPPCC)の常任委員であることから、たくさんのメディアの取材がありました。保全の一歩は、こうした耳目を集める工夫から始まります。

WWF中国と北京師範大学は干潟の調査を継続中。国境をこえた多様な関係者の協力と連携が進んでいます。

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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