ゾウ・パトロール隊の犠牲
2015/09/30
自然保護室の川江です。
先日、私たちのフィールドである、インドネシア・スマトラ島のブキ・バリサン・セラタン国立公園に行った折、非常にショッキングな事件に遭遇しました。
ゾウ・パトロール隊に所属するゾウが、象牙を狙った密猟者の手にかかり殺されたのです。
犠牲になったのは「ヨンギ」と名付けられた34歳のオスで、1996年に同地で保護され、2009年からゾウ・パトロール隊の一員として活躍していました。
ゾウ・パトロールは、集落などに出没する野生のゾウを、森に静かに追い返すために組織された、ゾウ使いと使役ゾウによるチームで、これまで幾度も人とゾウの間のトラブルを防ぎ、国立公園の保全に貢献してきました。
残念ながら、ブキ・バリサン・セラタンでも野生のスマトラゾウの密猟が毎年少数ながら続いており、ここ数年はまたそれが増加傾向にあります。
それでも、パトロール隊で飼育されていたゾウが殺された例は、過去に一度もありませんでした。
大切な「仲間」だったヨンギ。
その死は、国立公園の森を守るため共に働いてきたスタッフたちに、大きな衝撃と悲しみをもたらしました。許せない気持ちでいっぱいです。
今も続く、保護されているはずの森林の伐採、野生動物の密猟、そして違法取引。
このスマトラに限りませんが、自然を損なうこうした犯罪行為は、全て絡み合い、つながっています。
ですが、どれほどに大きな問題であろうと、私たちはそれに立ち向かい、いつか解決できる日を信じて、活動を続けていかねばと強く思います。
ヨンギの犠牲を、無駄にしないためにも。