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「学校ではない立場から、考える力を持つ人を育てていきたい。」C&M室普及教育担当インタビュー(前編)


WWFってパンダマークの動物を保護している団体?
いえいえ、もっといろいろやっています。知っているようで知らないWWFのこと。WWFスタッフが語る、仕事のこと、働いている人たちのこと、これからのこと・・・。
なかなかお伝えできていないお話しを、WWFジャパンスタッフへのインタビューという形式でお伝えいたします!

今回は、コミュニケーションズ&マーケティング室・普及啓発教育担当の松浦 麻子です。(前編)

コミュニケーションズ&マーケティング室普及啓発教育担当松浦麻子
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コミュニケーションズ&マーケティング室 普及啓発教育担当
松浦麻子

民間企業→科学館から流れてきた猫&ペンギン好きのコミュニケーター。未来を創る次世代を育てることを使命と思い込んで走り続けるため、ワークダイソンとも呼ばれております。。五感を刺激する楽しい教育プログラムを作ってみなさまにお届けします!

考える力を持つ人を育てたい

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——松浦さんは、コミュニケーションズ&マーケディング室・ブランド事業グループ、普及啓発教育担当という立場ですが、お仕事的にはどんなミッションがあるのでしょうか?

名前の通り、普及啓発と教育を担当しています。学校ではない立場から、考える力を持つ人を育てていきたいと考えています。

——考える力を持っている人?

はい。わたしの考える力の定義は

「今まで」地球で起きてきたことに気づく力
「今」世界中で起きていることを想像する力
「未来」の地球と社会を創造する力

 

という3つの力を持つ人です。

そういう人が育つ教育プログラムを作ることを私のミッションとして掲げています。

——どんなプログラムがあるのでしょうか?

プログラムのカタチはレクチャー、ワークショップ、スタンプラリーとさまざまです。動物園で行うプログラムを中心に、野生生物の生態に興味を持っていただくきっかけを提供したり、WWFジャパンの活動をわかりやすくお伝えしたり、環境保全という仕事ってどんな仕事なのかをお伝えしたりしています。

——環境保全の仕事について伝える仕事。

そうです。社会を変えていく仕事だと思っています。
   
人と自然がバランスを取っていける持続可能な社会のために、小さくても、自分の行動や考え方を変えることを大事にできる人を育てていきたいです。

——そこまで考える力を持つ人を育てたい! と思うようになったきっかけを教えてください。

きっかけは日本科学未来館(未来館)で科学コミュニケーターをしていたときです。未来館は最先端の科学技術をご紹介する場所なので展示の内容が難しめです。

そのため、その科学技術と人をつなぐ役割をすべく、科学コミュニケーターとして来館されている方と話をするわけですが、こちらからの質問に「お姉さんはどう思うんですか?」「どうしたらいいのか分からない」とおっしゃる方が多くて。

——確かに答えづらい質問ではありますが。

最先端の科学技術は、社会をどう変えていくか予想しきれないこともありますから、こちらも答えを持っていないことの方が多いのですが…
でも答えがわからないからこそ、今を生きる私たちが一生懸命考えて判断していかなければならない。

それは科学技術だけでなく、環境問題も同じです。
すぐに答えが見つからないことも多くあります。
WWFも今、きっとこうすれば良くなるだろう、と様々な取り組みをしていますが、長い時間が経たないと答えの見えてこない活動もあります。

だからこそ、答えを導きにくい環境問題について考えたり、自分の行動を振り返って本当にこれでいいのかな?みんなが納得して進める方向はこっちかな?と問い直したりできる人を、育てていきたいと思っています。

——考える力の定義。これは環境問題以外のことにも当てはまる大事な力ではないかと思います。松浦さんが具体的にどんな教育プログラムを作っているのかとても気になります。

においをきっかけに動物の生態を探る

——松浦さんが実際に取り組んでいる教育プログラムについて教えてください。

かたちになるまではとてもとても大変でしたが、これは胸を張っていいかなと思えるのが「においでめぐる動物園―くんくんPlanetに出かけよう―」(以下、くんくんPlanet)です。

“うん”と学ぼう、どうぶつのこと!WWFイベント「においでめぐる動物園―くんくんPlanetに出かけよう―」

プログラムで参加者の方たちは、まず動物のうんちのにおいをかぎ、においを言葉に表します。

それから実際の動物の前に行ってその生態に関するレクチャーを聞いたり、動物たちが野生下でどんな危機に脅かされているのかを学んだりします。

——においを言葉として書くのですね。

においの言葉って自分が体験したことじゃないと言葉にならないので、言葉の一つ一つにオリジナリティが表れます。
体験したことをオリジナルの言葉にすることで体験と知識の両方が参加者の記憶に残っていくといいなと思っています。

——映像を見ていると、子どもたちの楽しさが伝わってきます。

特筆すべきは子どもたちの顔で。むっちゃ楽しそうで、そして真剣なんです。最初はふざけていた子も、途中からぐっと考えている目をしています。

——「くんくんPlanet」を作ったきっかけを教えてください。

WWFジャパンとWWFチリが取り組む、チリ沿岸の海洋保全活動現場に出張した時 、海で出会ったオタリア(*1)が、すごいインパクトのあるにおいを放っていて。そのにおいを嗅いだ時、直感的に、自然で生きるってこういうことだなと 、わたし自身が納得したんです。

この納得感を子供たちにも伝えたい。じゃあやっぱりにおいだ! と思ってこのプログラムを考え始めました。

——「くんくんPlanet 」はどこで体験できますか?

関東域を中心に、全国の動物園で体験できるよう、じわじわと展開中です。今年の実施で確定しているのは関東域1園と関西域1園、かな。参加したい方は、WWFジャパンのSNSをチェックしていてください!笑

——松浦さんが今後作ってみたいプログラムはありますか?

五感を刺激する、体験型のプログラムはもう少し作りたいと思っています。WWFが保全活動に取り組む現場に、多くの方をご案内するのは難しいですから、行かなくても体験できる自然体験を提供していきたいと思っています。


——「くんくんPlanet」に参加している子どもたちの嬉しそうな顔! きらきらしていますね。子どもたちの好奇心を刺激しながら記憶に残ることを目指したプログラム。すてきです。


*1 オタリアは南米沿岸に生息するアシカの一種 。

バランスを取って情報を提供したい

——松浦さんがこの仕事をやっていてよかった!と思う瞬間はありますか?

プログラムを受けてくださった方たちから小さくてもリアクションがあると嬉しいですね。
ある女の子からはいつかはWWFで働くような人になりたいとメッセージが送られてきて。

——おお〜!

お返事を差し上げたところ、彼女のお母さんからも娘にとってかけがえのない言葉になりましたとメールをいただいて。嬉しくて、危うくオフィスで泣きそうになりました(笑)。

——いい話ですね。

あと、同じプログラムを受けてくださった男の子で、ある動物園にお手紙を送った子もいましたね。海外の動物園のように絶滅危惧種についてのアピールをもっとしっかりやってほしい、と。

その手紙をご覧になったその動物園の園長さんは、私たちもやれることはやらないとね、とおっしゃっていました。園内の展示などできるところから、少しずつ改善していくとのことです。

——園長さんもすてきです。

こういう自分が水を撒いた所にちょっと芽が出たなという瞬間を知ることができると報われますね。

そして、子どもたちのいい顔が見られた時もよしっ! と思います。最高ですよ。トラのうんちのにおいをかいだ後の子供たちの顔って(笑)。

くんくんPlanetスタンプラリーを周った参加者の感想。実は、子どもだけではなく、大人からも大好評!

くんくんPlanetスタンプラリーを周った参加者の感想。実は、子どもだけではなく、大人からも大好評!

——この仕事で苦労とはどんなことでしょうか?

正しく伝えようとすると話が難しくなってしまうんです。環境問題って。

でも話が難しくなると耳を傾けてくださる方が少なくなるので、正しさと分かりやすさのバランスをどう取っていくかは、がんばらなきゃいけないところかと。

——伝える相手が大勢か少数かでもバランスは変わってきますよね。
   
はい。だからイベントでは「ここまでは参加者に伝わってほしい」というラインを作って考えていますが、自分の中で常にせめぎ合う問題です。

わたしは、情報は“濃度”を持っていて大勢にお伝えすると、情報の濃度が薄くなると思っているんです。

——情報の濃度

たくさんの方が参加してくださる大きなイベントでは、情報の濃度が薄くなるけれど、たくさんの方にWWFの活動を体験して知っていただくには必要です。一方、小さなイベントでは少人数の方としかお会いできませんが、濃度の濃い対話をすることができます。どちらも大切ですから、情報の提供の仕方は日々スキルを磨いていくところだと感じます。

——正しさと難しさと分かりやすさのバランスを考えることは、“伝える”仕事においては重要なことではないかと思います。環境問題と同じように答えがあるわけではないけれど、自分も伝える仕事に関わるひとりとして、松浦さんのように情報の提供の仕方のスキルを磨きたいです。


(文:島田零子)

C&M室
松浦 麻子

普及啓発教育担当。

民間企業→科学館から流れてきた猫&ペンギン好きのコミュニケーター。未来を創る次世代を育てることを使命と思い込んで走り続けるため、ワークダイソンとも呼ばれております。。五感を刺激する楽しい教育プログラムを作ってみなさまにお届けします!

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