環境教育プログラム「においでめぐる動物園 ―くんくんPlanetに出かけよう」

この記事のポイント
行ったことのない森や海、さまざまな自然。その中で生きる、見たことのない野生動物たち… 自然や生物のことに興味を持ち、そのつながりを正しく理解することは、環境問題を考え、解決していく上で、大切な最初のステップです。それでも、見たことも、触れたこともない自然や動物を、どう感じ、理解すればよいのでしょうか? WWFジャパンは、その問いの答えとなる取り組みの一つとして、現在「におい」に着目した環境教育プログラム「においでめぐる動物園―くんくんPlanetに出かけよう」を行なっています。

プログラムが目指すもの

「においでめぐる動物園―くんくんPlanetに出かけよう」は、さまざまな動物を飼育している動物園、そして「におい」をテーマに活動している美術作家と共に行なっているもの。大人、子どもを問わず、生きた動物のにおいを感じ、それを「言葉」にして理解することで、その動物の生態や生息環境、そして絶滅の危機について学ぶ内容です。

「くんくんPlanet」はこんなプログラム

「くんくんPlanet」とは、「におい」の感覚と、それを表現する「言葉」、そして動物の生態に関する「知識」を結び付け、野生動物と環境保全に対する関心と理解を深めるプログラムです。

カギになるのは「うんち」のにおい!

においの素として使うのは、動物園で飼育されている動物のフン、すなわち「うんち」です。

このにおいは、動物によってさまざま。これは、それぞれの動物が食べているものの違いや彼らの生態に由来するものです。
そして、食べているものや生態の違いは、それが生み出される生息環境の違いでもあります。
森か、サバンナか、砂漠か、草食なのか、肉食なのか。
どんなところで、何を食べているのか、その違いをにおいからとらえ、動物とその動物が生きる環境について学びます。

プログラムのステップ

プログラムは基本、ワークショップの形式をとり、次の手順で行なわれます。
また、これを簡易化したスタンプラリー形式での実施も可能です。

  1. 野生動物についてのレクチャー
  2. 「におい」についてのレクチャー
  3. 「におい」を感じ、表現する
  4. 実際に動物を見ながら「におい」を確認
  5. 参加者全員で、まとめを発表

ステップ1:野生動物についてのレクチャー

まず、「うんち」を提供してくれた動物について、参加者に対し事前のレクチャーを行ないます。
ここで選ばれる動物は、実施場所となる動物園で飼育されていて、本物のフンの入手が可能な動物です。その中から、食物や生息環境などに特徴があったり、絶滅の危機にある種などを選びます。
レクチャーでは、その動物が本来、どのような自然環境で生きているか? また、絶滅の危機に瀕している理由は何か?といった概要を説明します。

ステップ2:「におい」についてのレクチャー

「におい」とは何か? 身近な感覚であるこの「におい」についての基礎を、専門家よりレクチャーしてもらいます。

ステップ3:「におい」を感じ、表現する

参加者は4~5名のチームに分かれます。そして各チームに、動物の「うんち」を入れたカップを配布します。動物1種につき1カップ。5種ならば1~5の番号を振ったカップを全チームに配り、一人ずつ順番ににおいをかいでいきます。動物の名前は隠し、カップの中身も空けずに、「におい」だけを体験します。
次に、その「におい」に合った味覚のカードを選び、自分なりの言葉で、そのにおいを表現し、カップの番号と一緒に、それぞれ書き込みます。
このカードに記入した言葉を「うんことば」と呼びます。

<カードの色>
赤:甘(あまい)
黄:辛(からい)
青:酸(すっぱい)
緑:苦(にがい)
白:その他(よくわからない)

ステップ4:実際に動物を見ながら「におい」を確認

次に、実際に動物園にいる動物を見に行きます。チームごとに展示の前で、その動物がどのように飼育され、どんな特徴を持っているか、レクチャーを受けます。
そして、その動物の食べている「えさ」と「うんち」の「におい」をかいで、ステップ3で自分が書いたどのカードと一致するかを考えて選びます。選んだカードは、それぞれの動物BOXに入れます。
また、可能であれば、飼育施設のバックヤードにご案内いただき、実際にどのようにえさを用意し、与えているかなど、飼育係の方にお話をいただきます。

ステップ5:参加者全員で、まとめを発表

レクチャー・ルームに戻ったら、動物BOXごとにカードを出して、それぞれの感想を述べ、グループごとに発表をします。参加者が自分なりの言葉を見つけ、他の人の言葉との共通点や相違点を見出だすことで、「におい」を基点としたコミュニケーションを生み出します。
さらに、可能であれば、それぞれの動物についてのより詳しいレクチャーや、動物のうんちの標本を手に取り、実際の大きさや色、何が混ざっているのかなどを、目で見て、触れながら学びます。

動物たちも人間も同じように、食べて、うんちをして、「生きている」ということを実感し、動物たちが野生で今、置かれている環境について関心を広げてもらえれば、プログラムは終了です。

参加者の皆さんの反応

過去に実施したこのプログラムでは、次のような内容の「うんことば」カードが生まれました。
それぞれの印象、表現で、思いもかけない豊かな言葉が生み出されていることが分かります。

この図は、ワインの香りを表現するアロマホイールをオマージュし、「うんことば」ホイールと呼んでいます。参加してくださった方たちの言葉をイベントの度に追加していきます。結果、会ったことのない人の言葉を知ることができます。
同じもののにおいをかいだはずなのに、引き出される言葉はまさに千差万別。私たちはにおいを表す言葉をたくさん持っているわけではありません。「あまいにおい」「酸味を感じる」「コーヒーのような」「バラの香り」「近所の公園で嗅いだことのある」など、自分が体験したことのある味覚や物の名前、場所に例えて表すことがほとんどです。感じたにおいに正解不正解はなく、においを語ることは自分が生きてきた環境や文化、人とのつながりを無意識にかたるきっかけにもなります。
このうんことばホイールを見て、新たなコミュニケーションをとっていただいたり、会ったことない人との違いや共通点を見つけていただくことも、くんくんPlanetを体験する醍醐味であると考えています。

参加者の皆さまからいただいたアンケートでは、次のようなお答えをいただきました。
動物を「見る」ことが中心であった動物園で、ニュースなどの形で「聞く」情報だった自然や環境問題について、「におい」を一つのポイントとして、それぞれ関心と理解を深めていただくことができました。

<アンケートの結果より>

  • うんちはくさかったけど、いろいろなことが知れて楽しかった
  • うんちのにおいは想像と違ったことが心に残った
  • 思ったより動物のうんこはくさくなかった
  • 思っていたよりも動物たちのふんはくさかった
  • いろんな動物のうんちのにおいで、自分は食べているものの匂いがするかと思ったけど、食べていないものの匂いがする動物もいて、とても楽しかったです。

これまでの実施報告

【開催報告】自然を、動物をニオイで学ぶ!くんくんplanet in ズーラシア

【イベントもやります!】「うんこ数え隊」出動!

「うんことば」ホイールのアーカイブを掲載した特設ページもぜひご覧ください。

「くんくんPlanet」企画協力者のご紹介

photo by Nikolaus Steglich

井上尚子さん
美術作家。環境、文化、歴史を匂いから楽しむワークショップ「くんくんウォーク」を教育機関、美術館、図書館、植物館、企業,公園、空港、島など国内外で開催。異業多種の方とユニバーサルプログラム開発・開催も行なっている。現在、愛知県立芸大学非常勤講師。
「においでめぐる動物園~くんくんPlanetに出かけよう~」には企画から実施まで全面協力している。
HP https://www.facebook.com/hisako.inoue.5

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