© WWF Indonesia – Zulfahmi

【動画あり】一本の川が隔てる景色 熱帯林保全の最前線


新たに森林グループの一員になりました岩渕です。
さっそくインドネシア・スマトラ島のテッソ・ニロ国立公園とその周辺地域を訪問してきたので、新鮮な目で見て感じてきたことをブログに書くことにしました。

今回最も印象に残ったのは、森林伐採の最前線を目にしたことです。下の動画はその時ドローンで撮影したものです。

テッソ・ニロ国立公園の森林伐採の現場(インドネシア・スマトラ島)

素晴らしい熱帯林が広がっているように見えますが、カメラが引いていくと状況が一変します。
一本の川をはさんで豊かな森林と皆伐地が異様なコントラストをなしています。
このような状況が作られたのは、川が保護区の境界線になっていて、一方が守られているからではありません。

実は両岸とも国立公園の中なのです。
たまたまそこに川があり、一時的な防波堤となってくれたに過ぎません。
川は船で渡ることもできるし、乾季には徒歩で渡れるほど水量が減ることもあり、対岸の森も安泰とは言えません。

テッソ・ニロ国立公園の内部を流れる川。両岸には豊かな森が広がっており、私たちが目指す公園の姿です。
©WWFジャパン

テッソ・ニロ国立公園の内部を流れる川。両岸には豊かな森が広がっており、私たちが目指す公園の姿です。

違法伐採の現場。農地にするために皆伐され、野焼きされています。
©WWFジャパン

違法伐採の現場。農地にするために皆伐され、野焼きされています。

国立公園の設立は、森や自然を守る方法の一つです。
しかし、国立公園を作ることはゴールではなく、むしろスタートに過ぎないということを、この目で見て実感することができました。

WWFが、国立公園設立後も違法伐採のパトロールなど、さまざまな活動を継続してきたのもそのためです。

植林から数年が経ち、大きく育った樹木。
©WWFジャパン

植林から数年が経ち、大きく育った樹木。

現在は、地域住民が森林を破壊せず収入を得られるように、エコツアーやハチミツ生産の支援などの活動も行なっています。
しかし近い将来、森林破壊が止まったとしても、いつまた再開するか分かりません。

公園ではゾウにも出会えます。エコツアーだけでなく、森林パトロールでも活躍しています。
©WWFジャパン

公園ではゾウにも出会えます。エコツアーだけでなく、森林パトロールでも活躍しています。

状況を常に見極めながら、粘り強く活動を続けていくことが重要です。
私も、継続は力なり、をモットーに取り組んでいきます。

引き続き、この活動にご注目・ご支援頂きますようよろしくお願い致します。

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自然保護室(森林)
岩渕 翼

博士(生命科学・東北大学)
カリフォルニア州立大学卒業。学位取得後、大学のポスドクや助教として生物と環境の相互作用や、生物多様性の保全や評価手法の開発、企業緑地の生物多様性配慮等に関する研究を行う。研究の傍ら、栃木県環境審議会専門委員として行政支援を行うほか、東日本大震災後には人と自然の復興を目指すグリーン復興の活動に関わる。その後、環境保全NGOに勤務し森林や湿地の保全プロジェクトを担当。WWFジャパンでは東南アジアを中心に、森林や野生生物の科学的なモニタリングから天然ゴムなどの森林コモディティの持続可能な生産の推進など、多角的な活動を展開。

小学生の頃にファーブル昆虫記を読んで感激し、その頃から将来は生き物に関わる仕事をすると心に決めていました。さらに中学生の頃に「沈黙の春」を読み衝撃を受け、環境保全を意識するようになりました。そのあと生態系の仕組みを調べる研究者になり、科学に基づいた保全を追求するために保全の現場に関わるようになりました。森林保全プロジェクトと同時に子育てプロジェクトも進行中。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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