© Anton Vorauer / WWF

トラにも朗報!? タイのメーワン国立公園でバンテンが復活


バンテンという動物をご存じでしょうか?
家畜の「牛」と同じウシ科ウシ属の野生動物で、インドネシアなどではバリ牛として家畜化もされています。
見た目もほぼ牛ですね。

しかし野生のバンテンは、IUCNのレッドリストではトラと同じ絶滅危惧種(EN)に選定されています。

バンテンはかつて、インドなどの南アジアから、インドネシアなどの東南アジアまで広く分布していました。

しかしインド、バングラデシュ、半島マレーシア、ブルネイではすでに絶滅。

タイでは1970年代には2500頭ほど生息していましたが、1990年代には約500頭にまで激減しました。

そんなバンテンについて、嬉しいニュースが入ってきました。
一度は姿を消してしまったタイ北部のメーワン国立公園で、バンテンが再び見られるようになり、繁殖していることが確認されたのです!

メーワン国立公園の地図

このことは、トラにとっても重要な意味を持ちます。
というのも、バンテンはトラの主要な獲物となる草食動物の一つだからです。

メーワン国立公園では、1987年に国立公園に指定されるまで、森林開発や野生生物の乱獲によって、バンテンをはじめ多くの草食動物が激減してしまいました。

実はこうした草食動物の少なさが、この国立公園でトラの数が増えない原因の一つと考えられているのです。

さらに国立公園指定後も、密猟は発生しており、トラや草食動物の脅威となり続けています。

そこでWWFは、レンジャーによるパトロール活動の支援や、地域住民への啓蒙など、さまざまな活動を続けてきました。

メーワン国立公園での活動動画

今回のニュースは、そんな努力の賜物と言えるかもしれません。

トラとバンテンがともに数を増やし、メーワン国立公園に豊かな森林生態系が回復するよう、今後も活動を続けてまいります。

© WWF-Greater Mekong / Wayuphong Jitvijak

オスのバンテン。バンテンは熱帯雨林よりも、落葉樹林や二次林のような明るい森を好み、開けた場所で主食の草を食べます。胴長は2メートル以上、体重は900キロを超えることも。

発表された論文
Phoonjampa R, Steinmetz R, Phumanee W, et al. Recolonization of Former Range by Endangered Banteng Bos javanicus in Mae Wong National Park, Thailand. Tropical Conservation Science. January 2021. doi:10.1177/19400829211065359

この記事をシェアする

森林・野生生物室 森林グループ
岩渕 翼

博士(生命科学・東北大学)
カリフォルニア州立大学卒業。学位取得後、大学のポスドクや助教として生物と環境の相互作用や、生物多様性の保全や評価手法の開発、企業緑地の生物多様性配慮等に関する研究を行う。研究の傍ら、栃木県環境審議会専門委員として行政支援を行うほか、東日本大震災後には人と自然の復興を目指すグリーン復興の活動に関わる。その後、環境保全NGOに勤務し森林や湿地の保全プロジェクトを担当。WWFジャパンでは東南アジアを中心に、森林や野生生物の科学的なモニタリングから天然ゴムなどの森林コモディティの持続可能な生産の推進など、多角的な活動を展開。

小学生の頃にファーブル昆虫記を読んで感激し、その頃から将来は生き物に関わる仕事をすると心に決めていました。さらに中学生の頃に「沈黙の春」を読み衝撃を受け、環境保全を意識するようになりました。そのあと生態系の仕組みを調べる研究者になり、科学に基づいた保全を追求するために保全の現場に関わるようになりました。森林保全プロジェクトと同時に子育てプロジェクトも進行中。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP