声明:沖縄県浄化槽取扱要綱の一部改正に伴うサンゴ礁生態系への悪影響に対する懸念


沖縄県浄化槽取扱要綱が一部改正され、令和5年6月1日よりこれが施行されました。
この要綱の改正により、沖縄県内のサンゴ礁をはじめとした海洋環境に、悪影響がおよぶ可能性が指摘されています。浄化槽からの排水について規制が一部緩められたことで、土壌を介した十分な水質の浄化がなされず、地下水を富栄養化させ、さらにはサンゴ礁などの生物多様性の豊かな海域に流出するおそれが出てきたためです。

国際的にも貴重なサンゴ群集が現在ものこる沿岸海域を擁した、同県石垣市の白保地区の漁業者ならびにサンゴを利用する海の観光事業者からは、県議会に対し、同規制の見直しを求める声も上がっており、こうした地元の憂慮・懸念と生物多様性の保全のため、WWFは沖縄県に対し、南西諸島のサンゴ礁の保全につながる諸政策の推進を期待すると共に、適正な基準の策定を外部専門家も含めて行なうことを求めます。

改正された沖縄県浄化槽取扱要綱の課題について

沖縄県浄化槽取扱要綱の改正では、下記の2つの点について、大きな変更が加えられました。

  1. 排水を認める土質について、地下の水脈に短絡する土質条件の基準が撤廃されたこと
  2. 排水の土壌への透水速度の上限値が撤廃されたこと

前者については、旧要綱では「地表面下2m以上の土壌の厚さが、砂質土又は粘着度であり、透水性の過大な礫層などの地下の水脈に短絡するような土質ではないこと。」という基準が準用され、水の浸透性が高い石灰岩質に直接排水することを規制し、土壌を通じた十分な濾過がなされない地下水が、海域に流れ込むのを防いでいましたが、これが無くなりました。
後者についても同様で、旧要綱では「浸透速度の上限は1,500mm/時、下限は1.2mm/時とする」という基準が準用されていましたが、これがなくなることで、いくら浸透可能の速い土地であっても地下浸透による排水ができることとなり、サンゴ礁のある海域に、浄化が不十分な地下水が大量に流入してしまう可能性につながっています。

今回の改定に伴う問題について

こうした水質の変化は、自然破壊を伴う開発や、過剰な観光利用、また近年の気候変動に伴う海水温の上昇などにより、深刻な被害に晒されているサンゴに、さらなるストレスをもたらす、懸念すべき要因となるものです。そして、サンゴの海により生計を立てている県内の多くの地域の人々の暮らしの危機にもつながります。
一度損なわれた自然環境の姿と機能を再現することは、限りなく困難であり、それに伴い生態系や地域社会にどのような影響が及ぶのかは、容易には予測できません。
「昆明モントリオール生物多様性枠組」が合意され、貴重な自然環境の保全・回復が、国際的にも強く求められる中、生物多様性の損失につながる可能性のある規制の緩和については、外部有識者の意見を踏まえた判断が必要と考えます。今回の改定で生じる諸課題の解決のために、沖縄県による適正な基準の策定が、外部有識者の関与のもと、行なわれることを期待します。

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP