© Chris Johnson / WWF-Aus
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WWFジャパン1年間の活動報告(2021年7月~2022年6月)

皆さまからお寄せいただいた会費やご寄付をもとに、2022年度(FY2022)もさまざまな活動を進めることができました。この場を借りて、心より厚く御礼申し上げます。自然環境の悪化をくいとめ、危機にある野生生物を守ることへ、確実につながるような変化を起こすには、何年にもわたる取り組みが必要です。その中から、この1年の間に達成できたことや、進捗したことを中心に、ご報告いたします。


生物多様性の保全への理解と 対策の広がりをめざして

国際目標の重要性

2021年10月、中国の昆明で、国連生物多様性条約第15回締約国会議(以下「CBD・COP15」)の「第1部」が開催されました。もとは2020年10月の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期され、さらに2部構成に変更されています。

CBD・COP15は「2030年に向けた新たな国際目標」を決める重要な節目の会議。ここで意欲的な目標が合意されれば、各国の政府や産業界が取り組む生物多様性の保全対策も強化される可能性が高まります。

そのためWWFは、意欲的で実効性のある目標の合意を促すための活動を展開。そのひとつが、『生きている地球レポート2020』の発行です。

このレポートは、世界の研究者と協力し、2100年までの生物多様性の保全と回復のシナリオを、さまざまなモデルと組み合わせて分析したもの。その結果として、生態系の保全だけでなく、消費活動と生産活動の見直しも同時に必要であることを示しました。

ネイチャー・ポジティブ という方向性を示す

CBD・COP15第1部は、各国の声明発表や意見交換が中心で、国際目標を議論する際の指針となる「昆明宣言」を採択し、閉幕しました。

会議終了後、WWFは声明を発表。『生きている地球レポート2020』の結果を基に、日本政府と産業界に対して、2030年までに「ネイチャー・ポジティブ(生物多様性の劣化を止め、回復に転じさせること)」の実現をめざすよう呼びかけ、それに向けて、陸域・海域それぞれの30%を保護・保全すること、サステナブル(持続可能)な生産と消費への転換を確実に進めること、経済のしくみの中に生物多様性の価値の評価や保全対策を組み込んでいくことなどを求めました。

国際目標を決める実質的な交渉は、CBD・COP15第2部で行なわれます。第2部は延期に次ぐ延期の末、2022年12月にカナダのモントリオールで行なわれる予定となりました。

さまざまな切り口で 理解を広げる

生物多様性条約は、気候変動枠組条約とともに1992年に採択されました。以来30年を経て、日本の政府や産業界、そして市民の間でも、気候変動(地球温暖化)については、その対策の必要性が意識されるようになりつつあります。一方、生物多様性の保全については、まだ理解そのものが進んでいない状況です。

そこでWWFでは、2022年1月からオンラインセミナー「生物多様性スクール」を4回にわたって開催。「ビジネス」「金融」「食」など多様な切り口で、生物多様性への理解促進を図っています。

緊急支援活動

大規模森林火災

自然環境や野生生物に大きな影響が及ぶ災害が発生した場合、WWFでは、その地域に暮らす人々の暮らしも含めた緊急支援活動を行なっています。

2021年夏、トルコ、ギリシャの各地で大規模な山火事が発生。WWFジャパンは緊急支援金を募り、約230万円をWWFトルコとWWFギリシャに送って、消火活動や野生動物の救護、自然回復などを支援しました。

また、2021年5月から9月にかけて、ロシアのシベリアで発生し、21世紀最大の規模となった森林火災に対するWWFロシアの活動についても支援しています(ロシアへの経済制裁が始まる前)。

海への油流出

2022年1月、南太平洋のトンガ沖で起きた海底火山噴火の影響で、南米のペルー沿岸を高波が襲い、破損した船舶から、原油が周辺の海域に流出。

WWFジャパンは、国内で募った約74万円の寄付金を含む総額1万ドル(137万6,400円)を送り、WWFペルーの緊急対策活動を支えました。

FORESTS:自然度の高い森と、 野生生物を守る

2021年1月、WWFは報告書『森林破壊の最前線』を発表しました。生物多様性の豊かな森が特に激しく減少しているのはラテンアメリカ、アフリカ、東南アジア、オセアニア。主要な原因となっているのが、産業用の植林地や農園への転換です。

WWFジャパンは、日本の消費と関係が深いアジア地域を中心に、木材、紙、パーム油、天然ゴムなどの生産を持続可能なものに改善し、森と野生生物を守ることをめざしています。

天然ゴムの責任ある生産と調達に向けて

東南アジアの熱帯地域で多く植えられるパラゴムノキから採取される天然ゴム。その生産拡大に伴う自然林の減少や、労働者・地域住民の人権問題などの解決をめざして、タイヤ業界の主導で設立されたGPSNR(持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム)の第3回総会が、2021年12月、オンラインで開催されました。

参加する企業数が、創設当初の2倍以上に増え、世界の天然ゴム流通量の約半分をカバーするまでになったGPSNR。その創設にはWWFもかかわり、現在は運営委員会のメンバーとなっています。

第3回総会では、前回の総会で採択された「持続可能な天然ゴムの生産・利用のための8つの要素」に基づいて、しっかりと取り組みを進められているのかどうかを確認するためには、参加企業・団体には具体的にどのような内容の報告を求めればいいのか、その情報や項目が議論され、合意に至りました。

WWFは、今回の合意を「進展」として評価する一方で、現状の採択内容では、企業の調達する天然ゴムの生産が森林破壊と本当に関連がないかを確認するには、まだ不十分であると考えます。残された多くの改善点をしっかりと共有しつつ、今後もGPSNRの議論に積極的に参加していきます。

© Tsubasa Iwabuchi / WWF Japan

パラゴムノキの表面近くを削ると出てくる白い樹液。これを集めて凝固、加工したものが天然ゴム

2年ぶりにタイの保全現場を訪問

新型コロナウイルス感染症の影響により、以前のように頻繁に訪れることが難しくなっている海外の保全現場。そのひとつであり、絶滅寸前となっているインドシナトラやアジアゾウの貴重な生息地となっているタイ西部の現場を、WWFジャパンスタッフが2年ぶりに訪問しました。

現地では、2つの国立公園に足を運び、保護区で密猟や違法伐採の防止などを行なうレンジャー(自然保護官) の活動状況や、野生生物の生息環境の改善状況を、直接確認することができました。

その一方で、連携している野生生物保護施設の運営資金や、レンジャーの活動資金が足りていないことが確認されるなど、新たな課題も浮き彫りに。現地のニーズを確認しながら、的確な支援を継続して行なっていくことが、ますます重要となっています。

© Elizabeth Kemf / WWF

インドシナトラ

パーム油農家を知るイベントを開催

パーム油の主な生産地であるインドネシアとマレーシアでは、長年、深刻な森林破壊や人権侵害が指摘されてきました。その事実は、今や国内で使われる植物油の約4分の1(約70万トン)をパーム油が占める日本にとっても、かかわりの深い重要な問題です。

2022年6月、WWFジャパンは、支援を行なっているインドネシアのアブラヤシ小規模農家プロジェクトの現場を紹介しながら、日本人が普段、何気なく口にしている食べ物の裏側で何が起きているのか知ってもらうための、オンライン・バーチャルツアーを開催しました。

イベントでは、インドネシアと生中継する形で、プロジェクトの中心メンバーであるWWFインドネシアのスタッフが、実際のアブラヤシ農園の様子や、農家の方の実際の暮らしぶりなどを詳しく紹介。約100名の参加者との間では、質疑応答なども含めた活発な意見交換が行なわれました。こうした現地チームとの密な連携を活かした情報発信は、今後も積極的に続けていきたいと考えています。

ますます広がるESDの取り組み

パーム油や天然ゴムなどの生産を目的とした農地開発によって熱帯林の減少が続き、深刻な危機にさらされているインドネシア。こうした問題の解決手段のひとつとして、WWFジャパンはWWFインドネシアと協力し、スマトラ島のランプン州やボルネオ島の北カリマンタン州で、それぞれの地域に特化した、ESD(持続可能な開発のための教育)のプログラム支援を続けてきました。

2022年5月には、新たにスマトラ島のリアウ州で、県政府と共に中学生向けのESD教材を開発。今後は、教える側となる教員へのトレーニングや、実際に教材を使った子どもたちへの授業を実施しつつ、最終的にはこのプログラムが県の教育政策として広く普及していくよう、サポートを行なっていく予定です。

© WWF Japan

ESDプログラム実施校で学ぶ子どもたち

OCEANS:乱獲や汚染から海の生態系を守る

水産物の獲りすぎや、漁業対象でない生きものまで網にかかってしまう混獲、沿岸や浅海域の環境を大きく損なうような開発、プラスチックごみの流入、そして、IUU(違法・無報告・無規制)漁業の横行など、海の危機が続いています。
WWFジャパンは、日本が主要な消費国となっている水産物のサステナブルな利用を推進すること、プラスチックの海洋流出を防ぐことなどを通して、海の生態系保全に取り組んでいます。

黄海のアサリ漁業がMSC取得

中国大陸と朝鮮半島に囲まれた黄海には、鯨類などの海棲哺乳類、300種以上の魚類、100種以上の軟体動物(貝類、イカ、タコなど)が生息。沿岸域には、鴨緑江、黄河、長江などの大河川が運んだ砂泥によって、2万平方キロに及ぶ広大な干潟が形成され、毎年春には、シギ・チドリ類を中心に、数十万羽もの渡り鳥が飛来します。

豊かな生物多様性に恵まれた黄海。そこは、豊かな漁場でもあります。中でも多く生産されているもののひとつが、日本も輸入しているアサリです。WWFは2016年、黄海の海洋環境に配慮し、適切に管理された形で生産されるようになることをめざして、MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)漁業認証規格に基づいた、アサリの漁業改善プロジェクトを開始しました。

現地で生産に携わる中国の企業、輸入や加工、販売に携わる日本の企業、WWF中国、WWFジャパンを中心に、幅広い関係者が連携して取り組んだ結果、2021年9月21日、ついに、サステナブルな水産物であることが国際的に認められたことを示す「MSC漁業認証」の取得が実現。翌年の3月には、黄海産のMSC認証アサリを使った製品が、日本の店頭にも並ぶこととなりました

© WWF Japan

鴨緑江河口干潟で羽を休めるさまざまな種類のシギ・チドリ類

プラごみ削減に向け、新しい枠組みが発足

2022年2月、WWFジャパンは、容器包装や使い捨てプラを大量に扱う業界を対象に「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」を発足。参加企業は、2025年までにリデュース、リユース、リサイクルの優先順位で包括的に対策を推進する5つの意欲的な社会公約を掲げるよう求められます。発足の時点で、10社の参加を得ることができました。

2022年6月には、企業、行政、専門家、大学生による対話型イベント「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ みらいダイアログ」も開催しています。

またWWFでは、海洋プラスチック汚染の解決に向けて、法的拘束力のある国際協定の早期発足を求める活動を続けてきましたが、2022年3月、第5回国連環境総会(UNEA5.2)において「法的拘束力のある国際約束に向けて」政府間の交渉を開始することが合意されました。

© WWF Japan

プラスチック・サーキュラー・チャレンジ みらいダイアログ

IUU漁業の根絶をめざして

IUU漁業(違法・無報告・無規制の漁業)は、海の環境を損なう大きな要因であり、日本にもかかわりの深い問題ですが、国内での対策はまだ不十分です。

WWFジャパンはIUU対策として「水産流通適正化法」を重視。対象となる魚種の拡大や運用方法の改善などについて、国への提言を重ねてきました。2022年12月の施行に向けて、WWFが求めてきた内容の多くが採用されてきていますが、IUU漁業を根絶するには、この法律のさらなる強化が欠かせません。

そこで、日本国内でのIUU漁業への認知と関心を広め、根絶を望む世論を高めることを目的にキャンペーンを展開。

IUU漁業による深刻な人権侵害を告発した映画「ゴースト・フリート」の日本への誘致に尽力したほか、メディア向けの試写会や、若い世代を対象にしたトークイベント付きの試写会などを行ないました。また、IUU漁業の現場を日本のメディアに取材してもらうため、タイへのメディアツアーも実施。

平行して、時事ネタ動画が人気のお笑い芸人「せやろがいおじさん」と共にIUU漁業解説動画を制作・公開。水産流通適正化法で全魚種を対象とすることを求める署名活動も行なっています。

サステナブルな生産・流通・消費へ

WWFジャパンでは、日本でも多く消費されている水産物に関して、その利用がサステナブル(持続可能)なものとなるよう、法律や漁業管理、資源管理の面からの改善も図っています。

2022年度も、太平洋クロマグロや熱帯マグロ(カツオ、メバチ、キハダ)の資源管理を行なう国際的な機関の会合にオブザーバーとして参加。日本企業と共にサステナブルな漁業管理を求める要望書を議長に提出するなど、改善のための働きかけを継続して行なっています。

また、メディアや関係企業を対象に、「シラスウナギの違法な漁獲と流通」(21.7、他団体と共催)、「持続可能なカツオ漁業」(21.11)、「イカ類の持続可能な消費と生産」(22.5)などをテーマにオンライン・セミナーを実施。サステナブルな漁業を実現する上での企業の役割や、先進的な事例を紹介し、関係者間で意見交換を行なう場づくりにも取り組みました。

FRESHWATER:持続可能な水環境と淡水生態系を守る

大小さまざまな河川、湖、池、沼、湿地帯など、「淡水」をたたえた環境はとても多様です。しかしその総面積は、地球上のわずか1%しかありません。さらに、水資源の過剰な利用や開発などによって、多くが危機にさらされています。
WWFジャパンは、日本を代表する水環境である水田の生態系の保全を推進。また、特に淡水の大量利用や排水の課題に深いかかわりを持つ繊維業界との協力を図り、水環境の改善をめざしています。

生物多様性に配慮した米づくりプロジェクト

2021年8月、WWFジャパンは、佐賀県で渡り鳥などの保全に配慮した米づくりに取り組む「シギの恩返し米推進協議会」、お米に焦点を当てたライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO」と共に、生物多様性に配慮した米づくりプロジェクトを開始

これは、WWFが2017 年から九州の有明海沿岸域で進めてきた「水田・水路の生物多様性と農業の共生」をめざす取り組みの新たなステップです。

プロジェクトがめざすのは、農業の安全性や効率性を向上させつつ、水田や周辺の水路などに生息する鳥類や淡水魚類の保全も図っていこうとする米づくりの現場と、こうした取り組みに関心を持つ消費者や小売業とを結びつけること。日本の生物多様性を守る上で欠かせない水田生態系の保全を、生産者だけに背負わせるのではなく、企業や消費者も加わって推進していくことが狙いです。

10月には、このプロジェクトで生産された2021年の新米の販売が「AKOMEYA TOKYO」の店舗でスタート。2022年6月には、一般向けのオンラインツアー「コメ農家が魚を救う!?」も開催。お米と淡水魚のつながり、水田の役割などについて解説するとともに、現地と中継をつないで、「オンライン生きもの観察会」も試みました。

© WWF Japan

佐賀県東与賀地区の水田

トルコにおける河川の流域保全

世界では、さまざまなモノの生産に大量の水が使われ、汚れなどを含む排水が流されています。こうした「淡水環境に与える負荷」が特に大きい産品のひとつに、コットン(綿)があります。

コットンは、原料となる綿花の栽培に多くの水が必要。糸や布、服に加工する過程でも多くの水が使われ、排水による汚染も生じています。その影響は、淡水域に暮らす生きものはもちろん、人間の生活用水をも脅かしかねません。

コットン製品の生産の多くを海外に頼る日本。WWFジャパンは2021年度から、WWFトルコが推進している「ウォータースチュワードシップ・プロジェクト」への支援を開始。上流域に染色工場が多数存在し、下流域に綿花畑の広がるブユック・メンデレス川の流域で、民間企業、自治体、農家にも協力を呼びかけながら、課題の解決をめざしています。

© WWF Turkey

綿花などの畑の中をぬうように流れるブユック・メンデレス川

淡水魚やツル類の生息環境の保全

水田・水路の生物多様性と農業の共生をめざす取り組みの一環として、佐賀県東与賀町で行なっている「責任ある農業推進プロジェクト」では、九州大学と共同で、環境 DNAを使った調査に着手しました。

この調査手法は、水中に含まれる動物由来のDNAを分析することで、特定の動物の存在や量(いる・いない・たくさんいる、など)を確認するというもの。この調査方法を、生産者や自治体担当者など地域の方々が、絶滅のおそれのある淡水魚の生息状況を科学的にモニタリングする際に使える手法として確立することをめざしています。

また、九州を中心とする日本の水田地帯に、越冬のため飛来するナベヅルの保全を図るため、同じくツル類の保全に取り組む海外のWWF との連携を開始。日本からも海外の保全活動の支援などを行なっていく予定です。

© WWF Japan

手前がナベヅル、奥はマナヅル

水路でつなぐ生物多様性

福岡県の大木町は、町の総面積の14%を「掘」と呼ばれる農業用水路が占める田園地帯。2022年3月、この水路の改修計画において、淡水生態系の保全に向けた、画期的な工事手順と工法が採用されることとなりました。

まず工事前に、対象地域全域で環境DNAを用いて希少種の生息状況を確認。そして、2020年にWWFジャパンが作成した『水田・水路でつなぐ生物多様性ポイントブック』を参考に、自然を残す形で水路を整備する工法を選定。特に希少な淡水魚が確認された場所では、水底に棲む水生生物や水生植物を保全する工夫も盛り込まれます。

自治体が取り組む環境配慮の先駆的な例となる大木町の挑戦に、WWFは今後も協力していきます。

WILDLIFE:乱獲や違法取引を防ぎ 生息環境を守る

ゾウの牙やトラの骨、ペット利用に至るまで、人間による利用が多くの野生生物を危機に追い込んでいます。捕獲や取引(売買など)を規制する法律や条約に違反する密猟・違法取引も後を絶ちません。
WWFジャパンは、日本が関係する野生生物の過剰利用や、違法取引の防止をめざしています。また、ペット利用や生息地の開発などの危機にさらされている南西諸島(奄美や沖縄の島々)の野生生物の保全にも取り組んでいます。

© Andre Dib / WWF-Brazil

ブラジルの固有種で絶滅の危機にあるスミレコンゴウインコ。ペット目的の乱獲も減少の一因に

野生生物のペット利用問題への取り組み

近年、「珍しい生きもの」を飼う人が増えており、中には、絶滅のおそれのある野生動物が対象となる場合も。しかし、野生動物のペット利用は、絶滅の危機を加速するおそれがあるだけでなく、密猟・密輸・外来種問題の誘発、動物福祉上の問題、感染症の媒介など、多くのリスクがあります。

WWFジャパンは2021年2月と12月に、一般的なペット(イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、金魚、セキセイインコ、カブトムシ、クワガタなど)以外の動物の飼育に関する日本人の意識調査を実施。その結果、主に外国産の動物や、野生由来の動物を飼いたいという意向は若い世代ほど高く、テレビの動物番組やSNSの視聴から、珍しい動物の飼育への関心が広がり、さらにSNSが飼育に関する情報源として活用されている状況が見えてきました。

また、ペットの販売や展示を行なっている企業を対象に、野生動物をペットやふれあいなどの商業目的で利用することに伴うリスクや企業の責任を指摘。求められる対策を示し、行動の変容を求めています。

2022年8月からは、珍しい動物の飼育に関心を持つ個人を対象に、野生動物をペットにすることのリスクを伝え、再考を促すキャンペーンを開始しました。

ゴルフリゾート開発計画に見直しを要請

西表島のイリオモテヤマネコ、宮古島のミヤコカナヘビ、石垣島のカンムリワシなど、絶滅危惧種が生息できる自然環境を守る活動を各地で行なっています。

石垣島の「名蔵アンパル」は、湿地の保全を目的とするラムサール条約の登録地です。その上流で大規模なゴルフリゾート開発計画が進んでおり、カンムリワシ、セマルハコガメ、キバラヨシノボリなど、希少な野生生物への影響が懸念されています。

WWFジャパンは複数の団体と共に沖縄県、石垣市、開発事業者、関連省庁に対して、計画の見直しを要請。担当部局を訪問し、生物多様性に十分配慮するよう求めました。

2022年6月には、日本魚類学会や沖縄美ら海水族館など4団体と共同で、計画地周辺に生息する希少な淡水魚の生息調査と保全を行なう緊急プロジェクトを開始しています。

© WWF Japan

マングローブ林と干潟が広がる名蔵アンパル

両生類の取引の現状を調査

カエルやイモリなどの両生類は現在、約8,000種が知られていますが、その4割が絶滅の危機に瀕しています。生息地の破壊に加え、大きな要因となったのがカエルツボカビ症と呼ばれる感染症の世界的な拡大です。

その背景には、両生類の取引(売買など)があります。特に、ペット目的で野生から捕獲された両生類が、国際的にも活発に取り引きされたことが、急速な感染症の拡大につながったといえます。

しかし、現在、ワシントン条約によって国際取引が規制されている両生類は、わずか2%あまり。そこでWWFとTRAFFIC*は、輸入統計や市場調査から得られた情報と、レッドリストのデータを用いて、特にリスクの高い両生類の評価を実施。また、日本が関係する両生類取引の分析や、日本に生息する両生類の取引状況調査も推進。

これらの結果をもとに、ワシントン条約による国際取引規制の導入や、国内法の整備、事業者による自主的改善などを求める活動を継続しています。

TRAFFIC:WWFとIUCN(国際自然保護連合)が共同で設立した、野生生物の取引を調査・監視するNGO

© Wild Wonders of Europe / Konrad Wothe / WWF

ヨーロッパに生息するファイアサラマンダー。感染症の影響でほぼ絶滅した地域もある

金融の側面から違法取引防止を

野生生物の違法取引は今や、マネー・ローンダリングや詐欺、汚職などとも密接に関連する、国際犯罪のひとつとなっています。特に、犯罪行為で得たお金を正当な取引で得たかのように見せかけるマネー・ローンダリングは、野生生物の違法取引で得た収益で違法取引業者や犯罪組織が潤い、さらなる犯罪行為につながる構造を生み出しています。

そこでWWFは、金融犯罪対策の国際専門組織「ACAMS」との協働を開始。2021年9月には、ACAMSジャパンの年次イベントで、野生生物の違法取引が初めてテーマのひとつに取り上げられ、WWFジャパンが講師を務めました。また、ACAMSと共同開発した金融セクター向けトレーニングコースの日本語版作成支援などの取り組みも進めています。

CLIMATE:地球温暖化を くいとめる

世界中の気候が今までと大きく違ってきていることを、誰もが肌で感じるようになりました。温暖化(気候変動)は、人間社会はもちろん、野生生物の暮らしにも大きな影響を与えます。
WWFジャパンは、国、自治体、企業を対象に、温室効果ガスの排出量を大幅に削減するよう促す活動に注力しています。また、自然環境や地域の文化などに配慮しながら、自然エネルギーの導入が進むようにするための活動にも取り組んでいます。

パリ協定実現に向けて大きく前進したCOP26

2021年10月31日から11月13日まで、イギリス・グラスゴーでCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催され、WWFジャパンからもスタッフ3名が参加しました。

今回の会議では、「世界の平均気温の上昇を+1.5度」に抑えるための、温室効果ガスの削減強化を各国に求める「グラスゴー気候合意」が採択されたほか、パリ協定のルールブックも完成。長年にわたってWWFが求めてきた内容の多くが形となり、確かな手ごたえを感じた会議となりました。

「非国家アクター」と呼ばれる、企業や投資家、自治体や市民団体といった「政府以外の団体」の上げる声や意見が、政府間の話し合いや決定にも少なからず影響を与えるようになってきた近年のCOP。民間も脱炭素社会を求めており、すでにその実現に向けた具体的な動きが始まっていることを政府に示すために、今回の会議では、WWFジャパンも、日本の非国家アクター団体「気候変動イニシアティブ(JCI)」を通じて日本の取り組みやメッセージを発信し、積極的な温暖化防止政策を呼びかけました。

官民の垣根を越え、1.5度目標の実現に向け各国が交わした新たな合意を、どう達成し、実現するか。WWFとしてもパリ協定の実現に向けた取り組みを強化していきます。

© UN Climate Change / Kiara Worth

COP26の会議ではリアルとリモートが併用され、約130カ国の政府代表が参加した

脱炭素社会へ、具体策を提言

「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」、そして「2030年までに温室効果ガス46%削減、さらに50%削減に向けて挑戦を続ける」という目標を掲げた日本政府。しかし、政府が進める「エネルギー基本計画」などの内容は、目標達成のための具体策として、まだまだ不十分であると言わざるを得ません。

そこでWWFジャパンは2021年9月、これらの計画における課題や懸念点を指摘する声明を発表。同時に、2050年に自然エネルギー100%を実現するための道筋を示す「エネルギーシナリオ(2021年9月改訂版)」を用いて、目標達成を可能とするエネルギーのあり方についても積極的な提言を行ないました。

脱炭素に向けた日本政府の取り組みが確実に実を結ぶものとなるよう、引き続き政府の動向を注視しつつ、提言活動を行なっていきます。

© naturepl.com / Steven Kazlowski / WWF

自治体の取り組みを後押し

各地で毎年のように深刻な気象災害が発生し、温暖化の影響を身近に感じるようになってきた昨今。多くの自治体で、2050年までの脱炭素化の実現に向けたさまざまな取り組みが加速しています。 

WWFジャパンは2022年3月、こうした各自治体の脱炭素施策の先進事例を取材してウェブサイト上にまとめた、「シリーズ自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集」を公開しました。各事例では、実施前後の課題や工夫点、おすすめポイントなどが、自治体担当者からのメッセージとともに紹介されています。

このような事例紹介を通じて、これから新たに脱炭素施策に取り組もうとしている自治体を後押ししていけるよう、今後も継続的に情報を発信していきます。

© 庄内町

第1回目の紹介事例となった山形県庄内町の水田地帯に建つ風車群

JCIの活動をサポート

WWFジャパンが共同事務局を務める形で2018年に設立され、700以上の団体が参加する、非国家アクターのネットワーク、気候変動イニシアティブ(JCI)。

2021年8月のオンラインイベントでは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新報告書と脱炭素化をテーマに、専門家による解説や、参加者による意見交換が行なわれ、JCI全体の知識の底上げや連携強化が図られました。

また、2022年6月には、政府が策定を進める「クリーンエネルギー戦略」に対して、再生可能エネルギーの導入加速を進めるようメッセージを発表。こうした活動を積極的にサポートすることで、日本国内でのJCIの存在感と重要性をますます高めていけるよう取り組んでいます。

NETWORK:WWFネットワークの活動

WWFは、スイスにあるWWFインターナショナルを中心に約80カ国に事務局を置き、100カ国以上で保全活動を行なっています。いわゆる本部-支部という関係ではなく、通常は各国のWWFが、それぞれに立てた計画に基づいて活動していますが、グローバルな課題には、世界のWWFが協力して取り組みます。
ここでは、FY2022年に進展が見られた各国の活動の中から、いくつかをピックアップしてご紹介します。

カザフスタン東部での5年ぶりの確認

WWFが2015年から展開している、カザフスタン東部におけるユキヒョウ保護プロジェクト。2年ごとに、研究者らによる大規模なユキヒョウの生息調査が行なわれていますが、2017~2018年の調査で足跡が発見されて以降は有力な生息情報が得られておらず、地域的な絶滅も心配されていました。

そんな中、実に約5年ぶりに、調査用の自動撮影カメラがユキヒョウの姿を捉えました。しかも、複数のカメラによって計4頭の撮影に成功。さらには、ユキヒョウのえものとなる大型草食動物の群れも確認されました。

今回の発見を足がかりとして、現地では生息域のさらなる調査と個体数の確認が進められる見込みです。

© WWF-Russia

自動撮影カメラに捉えられたユキヒョウの姿

コロンビアのピカチョス国立公園で初の調査

コロンビアのピカチョス国立公園に広がる森は、数十年にわたる反政府ゲリラと軍の武力衝突の舞台となり、実際にどのような生態系が広がっているかについては、これまで謎に包まれてきました。

WWFは、ゲリラと軍の和平協定締結から5年目となる2021年4月、地元の農民や元ゲリラ兵、研究者、WWFコロンビアのスタッフなどからなる総勢23名の調査隊を組織。民間人として初めてこの森に足を踏み入れ、わずか数日間の調査で1,000種を超える野生の動物や植物を確認することができました。

地域住民を巻き込んで行なわれた今回の調査は、国立公園の周辺で暮らす地元の人々が、周囲の自然の豊かさについて改めて知り、それを守り育てる意識を育む上でも重要な機会となりました。

© Pablo Mejía / WWF Colombia

IUCNのレッドリストで危急種(VU)に指定されるコモンウーリーモンキーも、数多く目撃された

ヨーロッパ5カ国にまたがる自然保護区が誕生

ヨーロッパの5つの国(オーストリア、スロベニア、クロアチア、ハンガリー、セルビア)を流れるムラ川、ドラバ川、ドナウ川が形成する大湿原、通称「ヨーロッパのアマゾン」。豊かな水環境は、飲み水として周辺に暮らす90万人の生活を支え、さらに大雨などの災害時には、広大な湿地が河川の氾濫を防いでくれるなど、周辺の地域の人々の暮らしを守る上で重要な役割を担っています。

同時に、絶滅危惧種のチョウザメやカワウソをはじめとする貴重な野生生物の生息地でもあることから、WWFは20年にわたり、このエリアの保全活動に携わってきました。

2021年9月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、約 100 万ヘクタールにも及ぶこの「ヨーロッパのアマゾン」を、生物圏保存地域に指定しました。生物圏保存地域とは、豊かな生態系を守りながら、地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域のこと。

今後この保護区内で行なわれる水路や堤防の建設、砂利の採取、新しい水力発電の開発といった事業は、地域コミュニティと連携しながら、景観や生物多様性の維持にこれまで以上に配慮した方法で進めるよう、求められることとなります。

さまざまな生きものが絶滅の危機にさらされ、さらに地球温暖化による気象災害も年々深刻化する中、こうした貴重な自然地域を保全することは、今や私たちの生存にも直結する重要な課題となっています。

© Goran Šafarek / WWF

5 カ国にまたがる生物圏保存地域の登録は、世界初の事例となった

韓国で進むクマの再導入計画

韓国に生息するツキノワグマは、長年にわたる狩猟によって、1990年代にはほぼ絶滅の状態となっていました。そこでWWFは、中国や北朝鮮などに生き残っているツキノワグマを、韓国南部のチリ山国立公園に運んで放獣する「再導入プロジェクト」を開始しました。

ツキノワグマに関する住民への教育プログラムの実施などを通して地域社会と連携することで、プロジェクトは幅広い層からの理解と支援を獲得。2004年のプロジェクト開始から約20年で、保護区内のクマは、当初の6頭から70頭にまで増加しました。

一方で、昨今、クマへの餌付けや、クマに危害を加える形での違法な捕獲が確認されるなど、新たな問題も発生。プロジェクトは今後の取り組みにおける重要な局面を迎えています。

© Jed Weingarten / Wild Wonders of China / WWF

韓国では、ツキノワグマに続き、アカギツネや絶滅危惧種のチョウセンカモシカの再導入も計画されている

オーストラリアで大規模な海洋保護区を設立

世界中の海で、日々さまざまな手法によって行なわれている漁業。野生生物の保護の観点からは、海洋生物や海鳥などの、本来、漁の対象ではない生きものが誤って漁網にかかってしまう「混獲」の問題も、早急な対策が求められます。

世界最大のサンゴ礁群であるグレートバリアリーフ沿岸では、近年、サンゴ礁生態系に悪影響のある漁業に起因するとみられる、ジュゴンやウミガメなどの野生生物の混獲被害が深刻化。

そこでWWFオーストラリアは、この海域の漁業権を地元漁師から買い上げるという大胆な策に踏み切り、10万平方キロメートルに及ぶ、事実上の海洋保護区を設立しました。今後は、このエリアに特別な漁業管理地域を設置するよう、国や州政府への働きかけを行なっていく予定です。

© naturepl.com / Doug Perrine / WWF

グレートバリアリーフ周辺は、ジュゴンの主要な生息地のひとつとなっている

ウガンダのコミュニティを支援

開発途上国の国立公園周辺は、豊かな自然が残る一方、経済的に貧しい住民が、森の貴重な天然資源に頼る形で不安定な暮らしを営んでおり、時には違法な狩猟や伐採に加担してしまうといった事例もあります。WWFは、こうした地域の自然環境を守る上での欠かせない取り組みとして、地域コミュニティの収入を安定させつつ暮らしを持続可能な形へと変容させていく支援を行なっています。

この取り組みの一環として、ウガンダのルウェンゾリ山地国立公園周辺では、この地で暮らすブソンゴラ族に向けたコーヒー豆生産性向上プロジェクトを展開中。支援開始から8年を経た現在では、質の高いコーヒー豆が安定的に生産され、自然環境と共存した安全で持続可能な暮らしへの移行が進んでいます。

© Victor Nyambo

ブソンゴラ共同農業組合に所属するコーヒー農家のマティアスさん

EARTH HOUR 2022:192の国と地域でつなぐ地球環境への思い

2022年3月26日、WWFが主催する世界最大規模の環境アクション『EARTH HOUR(アースアワー)』が世界各地で実施されました。

現地時間の20時30分から1時間を消灯することで「地球温暖化を止めたい」「地球環境を守りたい」という意思表示をするこのイベント。2022年は、世界192の国と地域が参加し、シドニーのオペラハウス、パリのエッフェル塔、台北101などの各地域を象徴するランドマークが、次々と消灯されました。

さらに各地域では、このイベントをより意義のあるものにしようと、植樹やゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)ピクニック、子どもたちによるパレードなど、趣向を凝らしたさまざまな取り組みが実施され、アースアワーを盛り上げました。

<各地の消灯の様子>

© Emanuele Coppola / WWF-Italy

コロッセオ(イタリア)

© Alexandros Maragos / WWF-Greece

パルテノン神殿(ギリシャ)

© Amanda Stevens / WWF-US

エンパイアステートビル(アメリカ)

EARTH HOUR 2022 in JAPAN 日本のアースアワーには昨年の3倍以上の企業や名所が参加!

日本でのアースアワーには、昨年の3倍以上となる国内過去最多の7,836カ所の施設やモニュメント、企業が参加。東京スカイツリー®、東京タワー、広島城、横浜みなとみらい地区、北海道の五稜郭タワー、大分の別府タワーなどをはじめ、日本全国のオフィスや店舗などが多数、消灯に参加しました。

また当日は、インスタグラムのライブ配信を通じてカウントダウンイベントを開催。1,000人以上の方にご視聴いただき、世界中の人々と共に地球環境を守りたいという思いを高める上で、意義深いアースアワーとなりました。

©T. Uehara

広島市の原爆ドーム

EARTH HOUR 2022 in JAPANは、下記の企業・団体の皆さまのご支援により実施されました。この場を借りて、改めてお礼を申し上げます。

【特別協賛】ソニーグループ株式会社、デル・テクノロジーズ株式会社、日産自動車株式会社、パナソニック株式会社、株式会社b-ex
【協賛 】キリンホールディングス株式会社、西武造園株式会社
【協力】特定非営利活動法人Heart of Peaceひろしま、マツダ株式会社
【後援】環境省、消費者庁、墨田区、東京都環境局、広島市、広島県(広島開催のみ)、横浜市 他
【メディアパートナー】ELEMINIST、J-WAVE(81.3FM)

Many thanks!

皆さまからのご支援が、世界100カ国以上で展開されているWWFネットワークの活動を推進する大きな力となっています。

FY2021
個人サポーター総数 : 約600万人
SNSフォロワ-総数 : 約3,000万人
ネットワーク全体の収入 : 約11億900万ユーロ
ネットワーク全体の支出 : 約7億7,600万ユーロ
*FY2022については現在、WWFインターナショナルにて集計中です

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生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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