© Shutterstock / Guido Montaldo / WWF

WCPFC2021閉幕 太平洋クロマグロ漁獲量増枠 熱帯マグロ漁獲戦略先送り 深刻な機能不全を懸念

この記事のポイント
2021年11月29日から9日間にわたりオンラインで開催されていた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合が閉幕しました。資源が未だ歴史的低水準にもかかわらず、太平洋クロマグロ成魚の漁獲量を15%増枠することが決まったことに加え、資源低下が懸念されている熱帯マグロ類(カツオ、キハダ、メバチ)については、その漁獲戦略の導入が延期されるなど、持続可能な資源利用に向けた合意としては、懸念の残る結果となりました。
目次

太平洋クロマグロ成魚の漁獲量を15%増枠することに

2021年11月29日から12月7日まで、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の第18回年次会合がオンラインにて開催されました。26の加盟国・地域が参加したこの会議では、マグロ類を中心とした漁業資源の保全と利用について話し合いが行なわれました。

今回2021年の年次会合では、10月に開催されたWCPFC北小委員会で提案された、太平洋クロマグロの漁獲量の増枠について話し合いが行われました。

寿司や刺身として高値で取引されることから「海のダイヤ」とも言われる太平洋クロマグロ*(標準和名:クロマグロ 学名:Thunnus orientalis)、別名「本まぐろ」は、長年続いた過剰な漁獲により、その資源量は危機的な状況に陥っています。

近年の漁獲規制の効果により、2018年には初期資源量(漁業が開始される以前の推定資源量)の4.5%までに回復したものの、世界的には20%を下回ると禁漁を検討しなければならない危険水準であることを考えると、太平洋クロマグロ資源は、依然として枯渇状態にあり、予断を許さない状況です。

*:この記事では便宜上クロマグロを太平洋クロマグロとしております

【関連情報】マグロという生物

しかし、2021年10月に開催されたWCPFCの北小委員会では、2018、2019、2020年と同様、日本から、現状で設定されている太平洋クロマグロの漁獲枠を増枠するよう求める管理措置の改定が提案されました。

これは、資源が回復傾向にあることに加え、資源の将来予測シミュレーションにおいても、増枠することは資源回復計画に大きな影響を与えないという結果をうけた提案です。

【関連情報】WCPFC北小委員会会合2021閉幕

それらの提案に対しアメリカは、2020年までは一貫して反対、増枠は見送られてきましたが、今回の会合では一転して賛成を表明。

そして、今回の年次会合では追加の議論がなされ、EUや島嶼国から懸念の声もありましたが、最終的には成魚の漁獲量が15%増枠されることで合意されました。

© Michel Gunther / WWF

進まないIUU漁業対策

持続可能な漁業の確立のためには、正しい漁獲データのもと、科学者が正確に資源量を評価し、それに基づいた漁獲量や漁獲努力量の管理が必須です。

しかし、世界中の海ではIUU(違法、無規制、無報告)漁業が多く存在しており、科学者の想定以上に魚が多く漁獲されている可能性があります。

よって、IUU漁業根絶のための対策を強化し、正確に漁獲実績を把握することが、持続可能な漁業確立のために必要とされています。

【関連情報】IUU漁業について

IUU漁業対策として効果的な制度の一つに、漁獲証明制度(CDS)があります。

この制度は、漁獲された水産物が違法でないことを示すための制度で、漁獲物に対し、いつ、どこで、だれが、どのように漁獲したかを記録することを義務づけるものです。

すでに大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の大西洋クロマグロやみなみまぐろ保存委員会(CCSBT)のミナミマグロなど、他の地域漁業管理機関(RFMO)には導入されていますが、WCPFCにおいては、太平洋クロマグロをはじめ、すべての魚種に対して未導入の状況です。

何年も前から漁獲証明制度導入についての議論がされていますが、今年の年次会合では、漁獲証明制度についての議論自体がなく、進展は全くありませんでした。

© James Morgan / WWF-US

熱帯マグロの漁獲戦略導入は先送りに

熱帯マグロ類とは、赤道付近の熱帯域に産卵場があるカツオ、メバチ、キハダの3種の総称であり、日本が位置する中西部太平洋は最大の漁場です。

これら熱帯マグロは、海外では主にツナ缶材料として重宝され、安価なタンパク源として発展途上国を中心に漁獲量が増大。その結果、資源量が減少傾向に向かい、中西部太平洋のカツオにいたっては近年、過去最低レベルまで低下してしまいました。

熱帯マグロ資源の枯渇を防ぐため、WCPFCの会合において、日本など加盟する国々が、漁獲戦略の導入に合意することが必要とされてきました。

【関連情報】カツオという生物~その特徴と漁獲・消費量

2021年、WCPFC加盟各国は、熱帯マグロの漁獲戦略に関する追加のワークショップを2回開催。年次会合での合意に向けて、事前の協議を行なってきました。

また2021年11月、世界有数のマグロ消費国である日本の18の企業・団体は、連名で持続可能な熱帯マグロの資源管理をもとめる要望書を、WCPFCと水産庁に提出。

世界有数のマグロ消費国である日本のマーケットが、国際交渉の場に対して直接要望したこともあり、年次会合での漁獲戦略の合意へ期待が高まっていました。

【関連情報】マグロの持続可能な資源管理を日本企業が要望

しかし結果的に、熱帯マグロの漁獲戦略については合意されることはありませんでした。

年次会合では、熱帯マグロの管理を最重要課題として、ほぼ毎日、熱帯マグロの漁獲戦略について議論が行なわれましたが、結局は現存の保全管理措置を延長することで、年次会合は終了しました。

© Jürgen Freund / WWF

予防原則に従った持続可能な管理の欠如

会合に出席したWWFジャパン海洋水産グループサイエンス&テクノロジー担当の植松周平は、今回の結果について次のように述べています。

「太平洋クロマグロの資源量が回復傾向となった現在、厳しい資源管理の見返りとして漁獲量を増やしたくなる気持ちはわかります。しかし、未だ資源量は歴史的低水準かつIUU漁業対策が不十分な状況であることから、今回の増枠が太平洋クロマグロを再び絶滅の危機に追いやる危険性があります。WCPFCがリスクより利益を重視した決定を下したことは、非常に残念な結果です。

また、熱帯マグロの漁獲戦略については、2021年に2回の追加のワークショップを開催しておきながら、合意できなかったことに深く失望しております。

太平洋クロマグロの漁獲量増枠というリスクある提案に対しては、提案からわずか4年で合意できていながら、持続可能な漁業管理に必要な熱帯マグロ漁獲戦略については、7年以上前から議論しているにも関わらず未だ合意できていません。このような状況では、WCPFCによる漁業管理が、機能不全に陥っていると疑わざるを得ません。予防原則に従った持続可能な管理を強く求めます」。

2021年の年次会合は、失望のまま閉会することになりました。

しかし会議中、カツオの管理基準の合意に向けて、日本代表団から島嶼国に対する積極的な働きかけがありました。

このような行動は、水産大国日本として、その責任を果たす重要なものです。

WCPFCによる持続可能な漁業管理を実現させるため、WWFジャパンは引き続き活動してまいります。

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP