©Marizilda Cruppe_WWF-UK

森は感染症を防ぐ防人 しかし世界の森で起きていることは…

この記事のポイント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るい続ける中、専門家や国際機関の間では次のパンデミックを危惧する声があがっています。このような動物由来感染症の発生リスクを高める要因は、人間による自然への圧力にあることが分かってきたからです。その中でも森林破壊はとくに大きな要因の一つと考えられています。WWFは最新の報告書『森林破壊の最前線』において、森林破壊が熱帯・亜熱帯の24地域に集中していることを指摘。これには、日本の輸入や消費も無関係ではありません。感染症の脅威を防ぐ上でも重要な、森林という環境をどう守り、共存していくのか。人類は現在の社会のあり方を、大きく変換しなければならない時に来ています。

次のパンデミックはいつ起きてもおかしくない

世界で猛威をふるい続ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。

感染者数は世界で2億人に迫り、その勢いは衰えることなく、むしろ拡大を続けています。

一方、ワクチン接種も一部地域では始まっており、その効果の評価が待たれるところです。

そうした中で、新型コロナに続く、次の感染症をいかに防ぐか、ということも考え始められています。

というのも、次の感染症はもうすぐそこまで来ていて、いつ起こってもおかしくないとの警告が国際機関や専門家から上がっているからです。

たとえば、WHO(世界保健機関)(*1)やIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)(*2)、そして、エボラ出血熱を発見し2019年に野口英世アフリカ賞を受賞しているジャン-ジャック・ムエンベ・タムフム博士(*3)らの指摘がその例です。

また、次のパンデミックはアマゾンで起こるリスクが高いと見る専門家もいます(*4)。

人は自らの手で森の「防疫機能」を傷つけている

近年、世界では、毎年3~4種類の新たな感染症が見つかっておりそのペースは近年上昇しています。

そのうち6~7割は、新型コロナウイルス感染症と同様に動物由来感染症(人獣共通感染症:zoonosis)であると言われています(*5)。

ではなぜ動物由来感染症が増えているかというと、下の図のようなことが原因とされています。

動物由来感染症を引き起こす主な要因 ©WWF

これら5つの原因につながる人の行動は、今も拡大し続けており、特に森林破壊など土地利用の転換は、動物由来感染症の約半分の原因になっているとの研究報告(*6)があります。

この森林破壊は、人と野生生物の接触機会の増加や、病原体を運ぶ一部の動物の増加、間接的には地球温暖化による病原体の分布拡大などを引き起こすことで、感染症の発生リスクの増大を招きます。
裏返せば、健全な森が十分あれば、こうした変化は抑えられ、感染症のリスクも下がるのです。

森林はまさに、人の健康を守ってくれる防人(さきもり)なのです。

【森林と感染症についての関連情報】

世界の森林の現状:森林破壊の最前線

では、世界の森林の状況は今、どうなっているでしょうか?

WWFは世界でも森林破壊がとくに集中している地域を「森林破壊の最前線(Deforestation Fronts)」と呼び、2021年1月、その最新版を新たな報告書にまとめ、発表しました。
 
最前線エリアでは、2004年から2017年の間に、日本の面積(3,779万ha)よりも広い4,300万haの森林が失われ、さらに残った森でも分断化などの劣化が進んでいます。

そして世界全体で見ても、毎年1,000万ヘクタールの森が失われています(*7)。

人類は自らの手で、自分自身を守ってくれる森を壊し、感染症リスクを高めているのです。

森林破壊の最前線(赤で示したエリア) ©WWF

次のパンデミックを防ぐカギとなる「持続可能な森林の利用」と「ワンヘルス」

世界の重大な森林破壊の多くは、熱帯や亜熱帯で起こっていますが、決して対岸の火事ではありません。

森林破壊を止める責任は、現地の人々だけにあるのではなく、森林を破壊して生産された紙や木材、さらに破壊的な開発によって造成された農園で作られる、パーム油や天然ゴムを使った産品を利用している世界中の国々の消費者にもあるのです。

日本での暮らしの中で、日々手にしている商品は、どれくらい森林破壊に関連しているでしょうか?

そうしたことが分からないまま、大量の輸入や消費を続けていることが、現代の社会が抱えている大きな問題です。

これからは、生産地から消費者までをつなぐ「サプライチェーン」全体の透明性を確保し、森林破壊に寄与しない「持続可能」な製品の生産と利用を当たり前のものする社会を築いていかなければ、この問題は解決できません。

何より、森林破壊の影響は、感染症のパンデミックのリスク拡大という形で、人間自身の健康を脅かすまでになりました。

これは、熱帯林の大規模な破壊が始まった20世紀前半には考えられていなかった、現代の森林破壊をめぐる大きな変化です。

壊れてしまった自然との関係を修復し、健全な未来を築くためにも、今こそ、人と自然、野生生物の健康を一体と考える「ワンヘルス」の考え方に立った、環境を守る取り組みを実践しなければなりません。

これからの10年は、人類の行く末を決める決定的な10年になると言われています。

国連のSDGs(持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない」ことを唱っていますが、世界の経済、消費や生産が、これだけつながるようになった現代においては、すべての人が参加しなければ実現できないこともあります。

普段の生活の中で、仕事場で、できることは何でしょうか?

森林の保全と、「ワンヘルス」の実現にもつながる、持続可能な林産物の選択と利用は、どうすれば広げてゆけるでしょうか。

さまざまな立場や、社会的な役割の中で、果たすべき責任を意識し、実際に行動に移してみることが必要とされています。

© Brent Stirton - Getty Images

ペルー・ロレート県の森

参考文献
1. https://news.un.org/en/story/2020/12/1080922
2. IPBES (2020) Workshop Report on Biodiversity and Pandemics of the Intergovernmental Platform on Biodiversity and Ecosystem Services. Daszak, P., Amuasi, J., das Neves, C. G., Hayman, D., Kuiken, T., Roche, B., Zambrana-Torrelio, C., Buss, P., Dundarova, H., Feferholtz, Y., Földvári, G., Igbinosa, E., Junglen, S., Liu, Q., Suzan, G., Uhart, M., Wannous, C., Woolaston, K., Mosig Reidl, P., O’Brien, K., Pascual, U., Stoett, P., Li, H., Ngo, H. T., IPBES secretariat, Bonn, Germany, https://doi.org/10.5281/zenodo.4147317
3. https://edition.cnn.com/2020/12/22/africa/drc-forest-new-virus-intl/index.html
4. https://www.reuters.com/article/us-brazil-disease-amazon-deforestation-t-idUSKBN2741IF
5. Jones, K., Patel, N., Levy, M. et al. Global trends in emerging infectious diseases. Nature 451, 990–993 (2008). https://doi.org/10.1038/nature06536
6. Keesing, F., Belden, L., Daszak, P. et al. Impacts of biodiversity on the emergence and transmission of infectious diseases. Nature 468, 647–652 (2010). https://doi.org/10.1038/nature09575
7. FAO. 2020. Global Forest Resources Assessment 2020: Main report. Rome. https://doi.org/10.4060/ca9825en

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