© Yadira Ansoar Rodríguez / WWF-Brazil

「ワンヘルス(One Health)」~次のパンデミックを防ぐカギ

この記事のポイント
世界の感染者数がついに1億人に近づき、200万人を超える犠牲者をだしている、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。ワクチンの開発や普及が期待を集めていますが、こうした感染症は、実は毎年、新しい種類が確認されています。新型コロナウイルスに続く第二、第三のパンデミック(世界的感染)は、どうすれば防げるのか。そのキーワードとして今、注目されているのが「ワンヘルス(One Health)」という考え方です。人、動物、生態系、この3つの健康を、1つのものとみなし、守っていくことを訴えるこの「ワンヘルス」をどう実現するのか。ぜひ考えてみましょう。

人、動物、生態系の「健康」はどう関係している?

増え続ける「動物由来感染症」

今、世界の経済、社会、あらゆる側面に大きな影響を及ぼしている、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、動物から人に感染する「動物由来感染症(人獣共通感染症)」の一つです。

実は、過去100年間に、動物由来感染症は急激な増加の一途をたどってきました。

SARS(重症急性呼吸器症候群)やエボラ出血熱など、新型コロナウイルス以前に世界を震撼させた感染症も、近年新たに確認されたこれらの「新興感染症」です。

この感染症の増加は、他のさまざまな傾向とも一致しています。
たとえば、世界人口の増加、人やモノの移動距離の総数、そして森林破壊など進行する自然破壊の深刻さ、などです。

過去100年に発生したウイルス性の感染症の数
(WWF-International (2020), COVID 19: Urgent Call on protect people and Nature)

世界人口の増加(左)と、人、モノの移動・輸送の増加。

森林破壊が感染症発生の引き金に!

とりわけ、野生動物から家畜や人に感染する動物由来感染症は、自然破壊と深いかかわりを持っています。

それは、次のような「段階」によって生じ、拡散していると考えられています。

  1. 大規模な開発によって、森林などの自然が広く消失
  2. それまで人が立ち入らなかった自然の奥地にまで人が侵入
  3. そこに敷設された道路や農地で、人や家畜が感染症の病原体を持つ野生動物と接触
    ★新たな動物由来感染症が発生!
  4. 感染した人や家畜、また密猟された野生動物が別の場所に移動・移送
  5. 移動した先で、新たな感染を広げ、ウイルスも変異する
    ★アウトブレイク(集団発生)、エピデミック(流行)、パンデミック(世界的な流行)の発生!
  6. 世界の森林破壊が止まらないため、上記の繰り返しが生じる危険が増大
  7. さらに、気候変動(地球温暖化)の影響も加わり、社会的な被害が拡大
© Soh Koon Chng / WWF © WWF-Sweden / Ola Jennersten © Traffic SE Asia / Chris R. Shepherd © Global Warming Images / WWF

つまり、環境問題が深刻化した結果として、新興感染症の多発が起きるようになったと考えられているのです。

今後も地球上の各地で自然破壊が進めば、新型コロナウイルス感染症に続く、新たな感染症のパンデミックが、再び世界を襲う可能性が十分にあるということです。

多様な分野にかかわる「ワンヘルス」

新たな感染症の発生を抑えるためには、またそのパンデミックを防ぐためには、何が必要なのか。

人の病気の治療や予防にはワクチンや治療法の開発が欠かせませんが、これだけでは、そもそもの感染症の発生を抑えることはできません。

また、発生原因となっている野生動物の生息環境の破壊を防ぐとしても、開発が行なわれる背景には、経済や現地の社会的な課題があります。

さらに、ウイルスを媒介するのは人だけでなく、世界中で飼育されている家畜も同様です。

こうした視点で考えた時、自然、すなわち生態系と、野生動物や家畜、そして人間の健康を、等しく健全な状態に保ち、守っていくことが必要となります。

しかしこれは、単に人や家畜、自然の健康が、それぞれ守られればよい、ということではありません。

3つの健康を重ねて一つにしてみると、その周辺には関係するさまざまな課題が見えてきます。

WWFジャパン メディア勉強会「コロナ後の国際動向〜生物多様性とワンヘルス」動物由来感染症とワンヘルスを巡る世界と日本の動向(2020年12月17日)村田浩一(日本大学生物資源科学部/よこはま動物園ズーラシア)発表資料を基に作成

これらは、一つの健康、すなわち「ワンヘルス」が、地球環境はもとより、人の社会や経済、その舵取りを担う政治や、大きな影響力を持ったビジネスなど、さまざまな分野に関わりを持っていることを示すものです。

「ワンヘルス」とは、これらの課題が持つ「つながり」に対して、対応する各分野が連携し、取り組んでいくことを目指す考え方です。

取り組む主体も、各国政府はもちろん、各省庁、医療や環境、動物の専門家、企業や教育、市民、民間団体の関係者まで、さまざまな分野に及びます。

これらの分野の壁を越えた協力ができるかどうか。それが「ワンヘルス」実現の大きなカギの一つなのです。

注目される「ワンヘルス」の重要性

「ワンヘルス」の始まり

新型コロナウイルス感染症を機に、世界的にも関心が高まっている、この「ワンヘルス」という考え方は、どこから生まれたのでしょうか。

生態系、動物、人間、この3つの健康をつながったものとする考え方は、医療の歴史と共に、古くから伝えられてきました。

しかし、動物由来感染症が急増した近現代の問題への対応として、3つの健康を1つとする考え方が、国際的にも大きく注目されるようになったのは、SARSやエボラ熱などにより危機感が大きく高まった、21世紀に入ってからです。

きっかけは、1998年にマレーシアで発生した二パウイルス感染症。
野生のコウモリを宿主とするウイルスに感染した家畜のブタから、ヒトに感染が広がり、致死率は30%超、100人を超える犠牲者を出した感染症です。

©Chris Martin Bahr / WWF

フルーツコウモリ。さまざまなウイルスを保有していると考えられているコウモリ類は、感染症の発生源となりやすい。

その後、2004年にアメリカのロックフェラー大学で開催された「一つの世界、一つの健康」と題した会議が端緒となりました。

この会議を主催したのは、アメリカに本拠を置くWCS(野生生物保全協会)で、WHO(世界保健機関)、FAO(世界食糧農業機関)、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)などの、健康問題に関係する国際機関が参加。

すでに、世界的な問題にとなっていた、鳥インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)といった、人と家畜、野生動物がかかわる動物由来感染症の脅威について、ここで議論が行なわれました。

根本治療のカギとなる「ワンヘルス」そして分野を超えた協力

この時に重要だったのは、それまでの医療における対応の主流だった「対症療法」から、発生から拡散の経緯を含めた「根本治療」へ、パラダイムシフトの必要性が説かれた点です。

そして、この会議では12の項目からなる「マンハッタン原則」が決議されました。

この原則の第一項目には次のように記されています。

「人間、家畜そして野生生物の健康はつながっていること、感染症の脅威は人々、食料供給そして経済と関連していること、そして私たちが求める健全な環境と機能している生態系の維持のために生物多様性が必須であることを認識しなければいけない」

つまり、発生の原因となる自然環境(生態系)の健康と、病原体を保有し運ぶ家畜や野生動物の健康、そして人の健康の「3つの健康」を、同様に健全なものとしなければ、頻発するようになった動物由来感染症の予防はできない、という考え方が共通の認識とされたのです。

そして、原則の結びの言葉では、もう一つ重要な指摘がなされました。
それは、「人と動物の間で生じる新興・再興感染症を防ぐためには、政府機関、個人、専門家が、分野の壁を越えて協力することが必要である」というものでした。

この言葉は、人類全体に対する脅威である新型コロナのような感染症に相対するためには、人がさまざまな困難を乗り越え、一つになることの重要さを、あらためて指摘したものといえるでしょう。

補われる「環境」の視点 壁を越えた「ワンヘルス」

2004年の「マンハッタン原則」のもと、国連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)、世界保健機関(WHO)では、連携して「ワンヘルス」を志向してきました。

しかし、これらは主に「人」と「動物(家畜)」を専門とする国際機関。
最後の一つ「生態系(環境)」の視点から、この動きに加わり、「ワンヘルス」の実現を目指す機関は、久しくありませんでした。

もちろん、世界中で使われている医薬品の原料などの中には、自然環境に由来するものも多く含まれるため、そうした観点から、環境保全と保健の結びつきを重視する指摘は、以前からなされていました。

1992年の国連環境開発会議「地球サミット」の開催にあたって、WWF、UNEP(国連環境計画)、IUCN(国際自然保護連合)が策定した『新・世界環境保全戦略』や、2010年の生物多様性条約締約国会議(CBD-COP10)で合意された「愛知目標」などの中にも、生物多様性と人の健康への言及があります。

しかしこれらは、感染症の予防という観点から、環境保全と「ワンヘルス」の必要性を、明確に指摘したものではありませんでした。

そうした中、2016年に開かれた、生物多様性条約の第13回締約国会議(CBD-COP13)において、生物多様性と人間の健康という課題に横断的に対処する手段として、「ワンヘルス」アプローチを、エコシステム・アプローチと一貫性のある統合的なアプローチとして導入すべきことが提唱されました。

しかも、この決定には、「生息地のかく乱、及び人と野生生物の接触を含む、生物多様性、生態系の劣化、及び感染症の出現との間の関係性」についても言及があり、WHOとの協力についても明記。

その後、開催された生物多様性条約の第21回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA-21)などでもこのテーマは取り上げられてきましたが、新型コロナのパンデミック以降、「生態系(環境)」観点の動きはさらに加速することになります。

2020年の後半だけで、次のような「ワンヘルス」をめぐる進展がありました。

  • 2020年7月:UNEPが国際家畜研究所(International Livestock Research Institute)と共に、『Preventing the next pandemic(次のパンデミックを防ぐために) -Zoonotic diseases and how to break the chain of transmission』を発表。OIE、FAO、WHOと共に、WWFも制作に参加。新型コロナや過去に発生した動物由来感染症の原因を検証し、次のパンデミックの発生に警鐘を鳴らした。さらに、その予防のため、早急な「ワンヘルス」の実現が必要であると訴え、衛生管理政策の改善を求めた。
  • 2020年9月:生物多様性条約の「愛知目標」の達成状況を分析した報告書「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」が発表される。この中で、SDGs(持続可能な開発目標)の達成と、人と自然の共生する社会を目指すため、重要なテーマのひとつとしてワンヘルスが位置づけられた。
  • 2020年9月:28日に開催された国連「自然と人々のためのリーダーズ・イベント」で、約70カ国の各国リーダーたちが「自然回復の誓約」に賛同。持続可能な健康と環境の実現を目指す統合的な取り組みについて、あらゆるレベルでの関連政策や意思決定のプロセスに、「ワンヘルス」アプローチを取り入れることを発表。
  • 2020年10月:IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が、「WORKSHOP ON BIODIVERSITY AND PANDEMIC」を開催。パンデミック防止のため、関係セクター間での調査、および感染症の発生コントロールのため、各国政府にワンヘルスの制度化などを提言。
  • 2020年11月:それまで、中心的に「ワンヘルス」を推進してきたWHO(世界保健機関)、FAO(国連食糧農業機関)、OIE(国際獣疫事務局)のハイレベルな専門家会議に、UNEPが新たに参加。従来の3機関だけでは対応できていなかった「環境」、すなわち生態系の健康を守る視点が強化される。

「ワンヘルス」に期待される効果と試み

「予防」のコストは被害額の2%

こうした自然環境や生物多様性の保全を通じた「ワンヘルス」がもたらす効果ついては、経済的な面からも注目されています。

新たな感染症を「予防」する上で重要な「ワンヘルス」の取り組みにかかるコストは、新型コロナが経済に及ぼす打撃と比べ、はるかに小さいためです。

新型コロナのパンデミックが世界経済にもたらした損失については、すでにIMF(国際通貨基金)がパンデミック前の予測と比較した生産高の累積損失を「2020~2021年の合計で11兆ドル(約1,180兆円)」と予測するなど、さまざまな発表がなされています。

その中で、2020年11月19日、ASEAN(東南アジア諸国連合)生物多様性センター(ACB)は、ベトナムの天然資源環境省、ASEAN事務局、国際獣疫事務局(OIE)、野生生物保護協会(WCS)と共催した、オンラインセミナー「野生動物保護と動物由来感染症:ASEANにおける種の保全および公衆衛生への取り組み」において、「ワンヘルス」を通じた「予防」にかかるコストが、新型コロナのもたらす被害額よりも、はるかに小さいことを指摘しました。

登壇者の一人、世界保健機関(WHO)の東南アジアの地域顧問を務める、ギャネンドラ・ゴンガル博士は、2020年7月時点で、11兆5,000億ドル(約1,189兆円)と推定された新型コロナのパンデミックによる被害総額に対し、「ワンヘルス」アプローチなどを適用した、パンデミックの予防にかかるコストは、被害総額の2%に過ぎないことを指摘。

「10年間で約2,660億ドル(約27兆5,000億円)を投じれば、次のパンデミックのリスクを大幅に軽減できる」と強調しました。

この予防の支出は、早期警告および監視システムへの技術的な対応、適切な資金提供、さらに法律の執行や、「ワンヘルス」を実現する政策提言などの取り組みに割り当てるとしています。

環境保全を通じたパンデミックの「予防」を

また、ASEAN生物多様性センター(ACB)のテレサ・ムンディタ・リム事務局長は、「新型コロナのパンデミックは、自然に基づいた問題の解決と、分野を横断した行動の必要性に対する認識の高まりを促した」と述べました。

リム事務局長は、ASEAN地域においてACBが支援してきた、保護区や野生生物保護、生態系の回復、渡り鳥飛来地のネットワーク活動などの生物多様性関連のプログラムが、公衆衛生や福祉の確保に貢献していると指摘。

「野生生物とその生息地を保護することで、ウイルスの波及を抑止できる」ことを説明しました。

これについては他の専門家も、動物由来感染症の病原体が発生するリスクが大きな「野生生物取引」の管理について、ASEANが協力した政策の枠組みと、法律の重要性に言及。

保護地域を拡大、結び付け、改善することで、人間と動物、生態系を守っていく取り組みが強化できるとしました。

これは、自然環境は破壊するのではなく、保全し、そこで得られる生態系サービスを活用する方が、人の暮らしや健康を守ることにつながり、経済効果も大きなものにする、という考え方にも通じるものと言えるでしょう。

国際社会が取り組む「ワンヘルス」

東南アジア諸国の取り組み

ASEANは、また東南アジア地域諸国に影響力を持つ国際組織として、新型コロナウイルス感染症に関するASEANの特別首脳会議での宣言や、緊急事態のための戦略的枠組み、さらに回復に向けた包括的枠組みとその実施計画などについて、パンデミックと闘うための措置を講じてきました。

この中において、ACEAN生物多様性センター(ACB)は、域内の生物多様性保全のネットワークの中核として、「ワンヘルス」アプローチの推進にも重要な役割を果たしています。

また、ASEANに加盟している各国も、現在「ワンヘルス」を通じた新興感染症への対策を推進。

2003年以降、鳥インフルエンザやSARSの影響と損失を被ってきたベトナムでは、2016年に「動物由来感染症のためのワンヘルス・パートナーシップ(The Viet Nam One Health Partnership for Zoonoses)」を設立し、政府機関と市民社会の連携を強化してきました。

このパートナーシップでは、明確に「人間、動物、野生生物の健康を保護し改善を強化」することが目的に設定されており、ベトナムにおけるワンヘルス政策や研究プロジェクトに関する助言や、公衆衛生保護のための制度強化や政策提言活動を推進。

さらに、教育や国内のパートナーシップの促進に加え、海外との情報共有やコミュニケーションにも貢献しています。

また、フィリピンでも、野生生物取引の共同監視を行なうための取り組みや、感染症に関する教育、国民の意識向上キャンペーンを展開。さらに、そのために必要な、省庁間の調整も行なっています。

アメリカの取り組みと今後の国際社会の動き

新興感染症に対する対策については、アメリカでも早期から取り組みが行なわれてきました。

1975年に、合衆国内務省に設置された国立野生生物衛生研究所(NWHC)では、アメリカ全土を対象とした野生生物の疾病に関する情報を収集。

動物の死体などを発見した場合の対応を定め、各地から届けられた動物の死体を解剖して、鳥インフルエンザや西ナイルウイルスなどの感染症の調査を行ない、その情報を公開すると共に、国としてのバイオセキュリティも担う機関として活動しています。

同じく、アメリカ国際開発庁(USAID)も、国民の健康や国家安全を守るという観点から、2009年より世界規模での新興感染症の早期警戒システムの使用を開始。また、野生動物の衛生管理についても、アメリカでは連邦政府と州政府が連携し、各研究機関と協力しながら、対応する体制が整っています。

新型コロナウイルスのパンデミック以降は、各国での取り組みに加え、国際機関においても連携が強化されてきました。

2020年11月には、それまで「ワンヘルス」中心的に主導してきた世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)という、人と家畜の健康を専門とする国際機関の集まりに、環境を専門とするUNEP(国連環境計画)が新たに参加。

世界動物園水族館協会(WAZA)も2020年に、今後の10年に向けた新たな戦略を打ち出し、その中で生物多様性の保全と、そのための教育、さらに持続可能な社会に貢献する方針を明らかにしました。これは希少種の保護や動物福祉といった、動物園や水族館が従来担ってきた社会的な役割を、大きく押し広げることを宣言したものといえるでしょう。

感染症にかかわる世界中の多くの機関や専門家の間からも、「ワンヘルス」の必要性が訴えられる中、こうした国際社会の動きが今後、各国政府の政策にも強く影響することは間違いありません。

次のパンデミックを防ぐために

日本でどう「ワンヘルス」を実現する?

一方、日本には現状、「ワンヘルス」の実現そのものを、明確に目的として定めた法制度がありません。

感染症や畜産、自然保護など、「ワンヘルス」に関係するところの法制度はもちろん存在しますが、これを所管する省庁も、厚生労働省、農林水産省、環境省と分かれており、連携も現状では部分的な内容にとどまっています。

また、海外からペットとして輸入される野生動物の規制や流通の把握についても課題が多く、こうした野生生物取引が感染症を広げる一因となる可能性も考えられます。

こうした状況の中で、「ワンヘルス」を実施するには、教育や物流、人の動きなどもかかわることから、より多くの省庁や民間の協力、関与が求められることになるでしょう。

日本では日本獣医師会と日本医師会が、2012年にいち早く、「ワンヘルス」の理念のもと、連携することを表明した覚書を締結。

2016年にも、福岡で開催された、第2回世界獣医師会で採択された「福岡宣言」で、「ワンヘルスの概念の理解と実践を含む医学教育及び獣医学教育の改善・整備を図る活動を支援する」表明がなされました。

この時点では、「ワンヘルス」の対象は、人と動物に絞られていましたが、新型コロナのパンデミックを受け、抜け落ちていた「地球環境や生物多様性の健康」という観点が、今まさに大きく加えられようとしています。

しかし、現在の日本では、「ワンヘルス」を実現する上でのカギとなる、生物多様性の保全の重要性が、今も十分に理解されておりません。

新型コロナウイルスのような感染症が、世界の自然破壊と深く関係していること、そしてその破壊につながる開発の一因に、日本が輸入・消費している大量のモノや資源の生産があることを、日本の社会が広く認識することは、重要な一歩です。


そして、環境保全、保健、衛生、畜産、また教育から経済まで、さまざまな分野に広くかかわる「ワンヘルス」を実現し、人、動物、生態系の健康を守るためには、取り組む人の側も、それぞれの分野、管轄の壁を越えた、連携と協力が欠かせません。

WWFジャパンも日本で「ワンヘルス」を実現していくために、医学や獣医学の専門家の方々と協力した取り組みと認知の拡大を、これからも進めていきます。

© Peter Caton / WWF-UK

参考:人と動物、生態系の健康はひとつ~ワンヘルス共同宣言(2021年1月)

WWFジャパンは、次なるコロナの発生を防ぐため、人と動物の医療や公衆衛生、環境保全に携わる12の機関・団体の一つとして、「人と動物、生態系の健康はひとつ、ワンヘルス共同宣言」を発表しました。

この宣言では、感染症の予防的アプローチとして、「人」「動物」「生態系」の健康をひとつと考え、守っていく「ワンヘルス」の実現が不可欠であることを訴求。

この3つの健康を守るため、WWFは日本医師会、日本獣医師会などの各機関・団体と協力し、それぞれの立場や分野の垣根を超えて、ワンヘルスにかかわる課題や知見を共有しながら、次のパンデミックを防ぐために連携して取り組む意志を明らかにしました。

人と動物、生態系の健康はひとつ~ワンヘルス共同宣言

また、2021年2月には、共同宣言を発した主な諸団体と共に、ワンヘルスをテーマにしたシンポジウムを開催。ワンヘルスを日本でも広く認知してもらう、その一助として実施に取り組んでいます。

参考資料

COVID 19: URGENT CALL TO PROTECT PEOPLE AND NATURE(新型コロナ危機:人と自然を守るための緊急要請)

WWF報告書:失われる自然とパンデミックの増加「The Loss of Nature and Rise of Pandemics」

ASEAN’s ‘One Health’ Approach: Cost of preventing pandemics is 2% of COVID-19 damage(2020年11月)

WWFジャパン メディア勉強会シリーズ「コロナ後の国際動向〜生物多様性とワンヘルス」発表資料 動物由来感染症とワンヘルスを巡る世界と日本の動向 村田浩一(2020年12月)

「欧米各国・地域の野生動物疾病センターの活動」門平睦代
第 18 回日本野生動物医学会大会 学術集会シンポジウム資料(2012年)

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