2019年「レッドリスト」更新 世界の絶滅危惧種は28,338種に

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2019年7月19日、IUCN(国際自然保護連合)は絶滅の危機にある世界の野生生物のリスト「レッドリスト」の最新版を公開しました。この最新のリストで、絶滅危機種とされた種の数は28,338種。更新前の26,840種を大きく上回る結果となりました。今回の更新で、特に注目されたのは、日本産の淡水魚を含む、魚類の掲載種が増加したと。そして、アフリカ西部をはじめ森林破壊の深刻な地域の霊長類などが、危機の度合いを増していることです。これは従来知られていなかった、海や川、森への深刻な脅威が、あらためて明らかになり始めていることを示すものといえます。
目次

10万種を検証した新しい「レッドリスト」

今回の新しいレッドリストで、絶滅の危機が特に深刻な3つのカテゴリー「CR:近絶滅種」「EN:絶滅危惧種「VU:危急種」に該当する、絶滅危機種の総数は、28,338種にのぼります。

IUCNではこのリストの改定にあたり、地球上の多様な自然環境に生息する、10万5,732種にのぼる野生生物の危機を検証しました。

現在レッドリストで使われている、絶滅危機の評価方法が1996年に確立され、2000年に初めてデジタル化された当時、検証されていた野生生物の種数は2万種以下。

この変化を考えると、過去20年余りの間に、世界中で自然や野生生物に関する研究が、大きく進んできたことがわかります。

それは同時に、深刻化するさまざまな野生生物と、地球の自然環境の危機をも明らかにするものです。

IUCN(国際自然保護連合)のウェブサイト

IUCN(国際自然保護連合)のウェブサイト

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日本の淡水魚の危機

今回のレッドリストで注目された点の一つは、魚類の危機です。
ほぼ全種が調査対象となっている、哺乳類や鳥類などと比べ、魚類に関してはこれまで、分類も定まっていない種も多く、その危機もよく知られていませんでした。

その中で今回、日本とメキシコの魚類が、新たに多数、このレッドリストに絶滅危機種として記載されることになりました。

アリアケスジシマドジョウ。世界で九州北部の水田地帯にのみ分布する日本の固有種。水田環境の改修により、生息域が減少。絶滅の危機が指摘されている。
©Nature Works

アリアケスジシマドジョウ。世界で九州北部の水田地帯にのみ分布する日本の固有種。水田環境の改修により、生息域が減少。絶滅の危機が指摘されている。

日本に関しては33種が加わりましたが、その大半は淡水魚です。
特に目立つのは、ゲンゴロウブナやワタカ、イタセンパラ、イワトコナマズといった固有種を含む琵琶湖水系の淡水魚や、ミヤコタナゴ、ゼニタナゴといった東日本の里山・里地に生息する魚類、さらにアカメやミナミアシシロハゼ、ドウクツミミズハゼなど、限られた地域にだけ分布する魚類です。

また、川や水田地帯の水路などをすみかとする、シマドジョウの仲間も5種が記載されました。
この中には、WWFジャパンが現在その保全に取り組んでいる、九州の水田地帯にのみ生息する、アリアケスジシマドジョウも含まれています。

今回の一連の記載により、国際的にもこうした魚類が生息する日本の水環境が、開発や外来生物などの影響によって、深刻な危機にあることが、あらためて示される形となりました。

クニマス。秋田県の田沢湖にのみ生息していた固有種だったが、1940年代に絶滅。しかし2010年、過去に放流されていたものが山梨県の西湖で再発見された。2019年のレッドリストではこれが「EW:野生絶滅種」のカテゴリーに新たに記載された。
©WWFジャパン

クニマス。秋田県の田沢湖にのみ生息していた固有種だったが、1940年代に絶滅。しかし2010年、過去に放流されていたものが山梨県の西湖で再発見された。2019年のレッドリストではこれが「EW:野生絶滅種」のカテゴリーに新たに記載された。

森、海、明らかにされる世界各地の自然への脅威

この他にも近年、森林伐採が進む西アフリカ諸国や、インド洋の深海などの野生生物の名前も、今回のリストに加えられました。

西アフリカでは開発による野生動物の生息環境の消失に加え、昔から野生動物を「ブッシュミート」として食用にする習慣が広くあり、これらの影響があいまって、絶滅の危機を深刻化させています。

ロロウェイモンキーやシロエリマンガベイといった、世界でアフリカ中西部の森にしか生息していない、数の少ない貴重な固有種は、とりわけそうした影響を強く受けていると考えられ、今回も危機レベルが上げられる結果となりました。

また、インド洋の深海からも今回初めて、絶滅危機種が存在していることが報告されました。
これは、深海にある熱水噴出孔の周りにすむ、ウロコフネタマガイ(Chrysomallon squamiferum)と呼ばれる巻貝の一種です。
この種は、足の部分に鱗を持つ不思議な姿の巻貝で、生息地は最大2,900メートルの深さにもなる深海の3カ所が知られているのみ。しかもそのうちの2か所で、採掘計画が持ち上がっています。

他にも、レッドリストには今回、約500種の深海魚が、新たに絶滅危機種として掲載されましたが、このような地球上の特殊な環境や、そこに生息する野生生物種についても、危機が詳しく明らかにされ始めています。

アフリカ中西部ガボンの熱帯林。希少な野生生物のすみかでもある
©Michel_Gunther_WWF

アフリカ中西部ガボンの熱帯林。希少な野生生物のすみかでもある

レッドリストの意義と、これからの保全に向けて

IUCNのレッドリストは、絶滅の危機にある野生生物を明らかにするものであり、名前が記載されても、法的な保護の対象となるわけではなりません。

個々の絶滅危機種の保全のためには、さらなる調査と、それぞれに必要とされる保護計画、さらにその実施に必要な人材や資金の確保が必要になります。

こうした取り組みを今後、世界でどう連携し、実現していくのか。
これは、2011年から2020年までの「Aichi Target:生物多様性戦略計画」の目標12の中でも、国際社会に対し、問われ、求められている点です。

目標12:2020年までに、すでに知られている絶滅危機種の絶滅が阻止され、それらが保護され、特に最も減少しているものの保全状況が改善され、持続されていること。

今回、特に淡水魚の危機が改めて示された日本においても、これは大きな課題です。
WWFも世界はもちろん、日本の自然と希少な野生生物の保全にも、注目し、取り組みを進めていきます。

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