活動トピック

流域の保全

「流域」とは、一本の川の水を取り巻く周囲の広いエリア、山林や草地といったあらゆる景観を、一つのまとまりを持った環境として捉える考え方です。 近年、世界の各地では、「流域保全」の取り組みが進められ始めています。流域の保全を実現することにより、一種一種の動植物の保護から、水資源の維持、流域の生態系の保全、さらに防災までを含む、幅広い環境保全が可能となります。

ウェットランドと「流域」の保全

河川や湖沼などの水辺を取り巻く自然「ウェットランド」。
近年、これを総合した「流域(集水域)」という考え方が広く使われるようになってきました。 水をめぐる自然環境を、この「流域」という広い視野で捉えたとき、流域全体に広がる山林や草地といったあらゆる景観が、一つのまとまりを持った環境として見えてきます。
「流域」とは、いうなれば、一本の川の水を取り巻く周囲の広いエリアを包括したもののことです。

流域を丸ごと保全するのは容易なことではありません。しかし、逆にこの取り組みを実現することにより、一種一種の動植物の保護から、水資源の維持、流域の生態系の保全、さらに防災までを含む、幅広い環境保全が可能となります。そして、この取り組みこそが、21世紀における「水」環境保全の主流に他なりません。

(C)WWF-Canon / Hartmut JUNGIUS

WWFでは1999年にコスタリカで開かれたラムサール条約会議の際、「生きている水キャンペーン」の開始を宣言し、「流域」の保全を主眼に据えたプロジェクトを世界のいくつかの大河で実施することを発表しました。これは「集水域」の保全に取り組む、世界でも最初の試みであり、具体的な保全モデルの提示を目指した取り組みです。

新たなるウェットランド保全の時代へ向けて、WWFはすでにその第一歩を踏み出しました。オランダでは堤防を開放し、干拓地で「流域」の自然復元を目指しています。アメリカもすでに流域を丸ごと水没させてしまうダムの建設をやめ、森林などを含む「流域」の保全による防災と水資源の確保に取り組み始めました。

日本にはまだ世界に誇れる例はありませんが、水に対する新しい認識を多くの人に広げていくことは、日本にも新しい水環境保全の潮流を生む、最初の一歩となるに違いありません。

「流域」の地図:ニジェール川の例

右の地図は、西アフリカに広く水系を広げるニジェール川の集水域を地図に落としたものです。数カ国にまたがって流れる大河の流域が、それ以上の国と地域に広がっていることがわかります。また、集水域の範囲内には、森林や湿地や砂漠など、さまざまな自然環境が存在し、多くの動植物を育んでいるほか、人々にも暮らしの糧をもたらしています。

これらの、「水をめぐる自然のつながり」 は、どこか一部が欠けただけでも、全体的なバランスが崩れてしまうおそれがあります。「流域保全」とは、線として見える水の流れのみならず、その水が生まれ、また育む、面としての景観を広く保全する考え方です。

WWFは、この「流域保全」の視点にたった取り組みの一つとして、ニジェール川でも地域の人々が取り組む活動を支援し、水環境と水産資源の保全を行ないました。

日本の自然の「水のつながり」

日本の場合には、人間が作ってきた水路や田、ため池など、水をめぐる「流域」の自然環境が豊富にあります。しかも、その環境が人の暮らしときわめて身近な場所に、数多く存在していました。

しかし、これらは近年、急速に失われつつあります。現在、こうした水環境の変化は、私たちの持続的な「水」の利用にも大きく影響を与えています。

コンクリートによる用水路の改変や河川の改修は、湧き水などを枯らしてしまったり、日本の古来から生息する魚たちの生息場所を奪ってしまいました。 それに加え、普段の生活なかでの「水」とのつながりが失われ、地域住民による伝統的な水環境の管理も行なわれなくなってきています。

日本の高度成長や防災や農業利水として活躍してきたダムも、近年では、公共事業自体が目的となってしまうこともあり、持続的な水資源の利用を考えた場合に「本当に必要な開発なのかどうか?」その存在意義が問われています。

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(C) WWF-Japan

「水」の世紀を生きるために

流域に広がる、さまざまなウェットランドの自然は、私たちが必要とする「水」という資源を、持続可能な形で利用していく上でも、重要な役割を果たしています。

そして今、人にとって、あらゆる生命の土台として、欠かすことの出来ない資源として、この「水」の重要性が世界的に見直されています。
これから先の時代、減少しつつある水をめぐり、地域ばかりでなく、国家間でもさまざまな問題が出てくる可能性もあり、多様な角度から「水」がクローズアップされることは間違いありません。「石油の世紀」であった20世紀に対し、21世紀が「水の世紀」と呼ばれる所以です。

(C)WWF-Canon/Elizabeth Kenf

21世紀に向かい、「水」は今、さまざまな意味で拡大しています。
まず、淡水環境の悪化が拡大。そして、それに合わせるかのように、淡水の需要が拡大していることにも注目すべきでしょう。この需要に応じた河川や湖沼の水源にあたる森林の伐採やダム開発によって、水環境の汚染や破壊が二次的に生じる例は、決して少なくはありません。

このような中で、湖や川、湿原や干潟といった環境を保全しようと考えるならば、狭いエリアで川や湖をばらばらに保全していても、決して十分ではないことが分かるでしょう。つまり、水環境の保全の在り方もまた、拡大してゆかねばならないのです。

例えば、サケのように海と川を行き来する魚類がいます。サンショウウオのように、川と周辺の山林を行き来してくらす両生類がいます。河口近く、淡水と海水の混ざる微妙な環境に生きる魚も少なくありません。
水とこれらの生き物を守ってゆくためには、川だけでなく、周辺の山林や、海と川とが混ざる河口部の自然、湧水や水田など、幅広い水の環境を保全しなければならないのです。

水辺に生きる多くの生きものを守ることは、私たちが頼る水を大切にすることと、直接結びついています。水は生きている。森、川、湖、干潟、これらの自然環境と、多くの命があって初めて存在するものです。溝に流し、ボトルに詰め込むことで維持管理できる物ではありません。このことを忘れないようにしない限り、「水の世紀」は、私たちにとって厳しいものとなるでしょう。

貴重な淡水の自然をめぐるさまざまな問題に対し、WWFジャパンは、本当に地域の人々が必要とする水の管理を行なう必要があると考えています。このことは、人の暮らしを含めた、水をめぐる環境と、そこに生きる多様な生物たちの息づく場所を保全することでもあります。

「自然の豊かなウェットランドは、きれいな水を持続的にもたらしてくれる」。WWFは、この考え方を基本として、流域単位の淡水生態系の保全と水資 源利用に関する提言などを行なっています。

 

あなたの支援で、できること。たとえば… 資源の持続可能な利用を促す WWF会員が125人集まれば、企業が自ら、違法伐採の木材商品を購入していないか、チェックできるウェブサイトを作ることができます。 「あなたの支援でできること」を見る