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ここが知りたい!再生可能エネルギーの疑問に答えるQ&A

この記事のポイント
年々深刻化する気候変動。世界の平均気温は産業革命前と比較して既に約1.1度上昇しており、現状の政策のままでは、今世紀末には3度上昇すると言われています。まさに、気候変動対策のさらなる強化は待ったなしの状況です。対策のカギを握るのが、発電時に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギー。このページでは、再生可能エネルギーに関する疑問にQ&A方式でお答えします。
目次

再生可能エネルギーの疑問に答えるQ&A

日本では、排出される温室効果ガスのうち8割以上を、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料を使うことで発生する二酸化炭素が占めます。

その削減に向けて、化石燃料に頼らない形でエネルギーをまかなっていくことが求められます。

発電時に温室効果ガスを排出しない、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)は、気候変動対策のカギと言われています。それだけでなく、より安全に、自国の資源で発電できる分散型の電源として、また経済コストの低い電源としても注目されています。

ここでは、再エネについてのさまざまな疑問にお答えします。

Q:森林や農地を切り開いて設置するメガソーラーが、かえって環境破壊につながっているというのは本当ですか?

A:2009年の固定価格買取制度(FIT制度)導入時に、太陽光発電に高い買取価格が設定された結果、一部の事業者が利益のみを追求して、環境負荷を配慮せずに導入を進めたケースが確かにありました。

現在は、林地開発の許可取得がFIT支援の要件とされ、法令違反があった場合には支援が留保されるなどの事業規律が強化されています。さらに、地域の自然・社会環境に配慮して開発適地を誘導する「再エネ促進区域制度」の導入など、制度的な改善が図られています。

なお、2024年3月末時点でのFIT新規認定件数のうち、設備容量が1,000kW以上のメガソーラーが占める割合は、わずか1.2%ほどに過ぎません。さらに、それらの多くが既に開発済みであり、今後問題になる可能性は低いと言えます。

また、太陽光発電協会は太陽光発電を導入できるポテンシャルを算定していますが、山林等での新規開発によるものは除外されています。それでもなお、これまでに導入された容量の約27倍に相当する、2,380GWもの導入ポテンシャルが見込まれているのです。


Q:日本は国土が狭いので、再エネを設置するスペースがなく、これ以上増やせないと聞きます。

A:これまでにも再エネの導入は着実に進められてきましたが、日本には依然として、多くの導入ポテンシャルが残されています。

例えば、太陽光は上述のとおり2,380GWの導入ポテンシャルがあるとされている一方で、これまでの導入実績は87GWと、わずか3.6%に留まります。
また風力については、日本風力発電協会によると、陸上風力・洋上風力合わせて711GWの導入ポテンシャルがあるとされています。他方、これまでの導入実績は4.5GWであり、風力のポテンシャル全体の0.6%を占めるに留まります。

こうした状況を踏まえると、日本に豊富に残された導入ポテンシャルを実現させることが急がれます。

まずは従来型の太陽光パネルや陸上風力など、既に確立した技術による再エネを、大幅に増やすことが必要です。それと並行して新しい技術を開発し、それらを大規模に社会実装していくことで、さらなる再エネ導入の加速が期待されます。

以下では、再エネを導入していくうえで有力視されている方法のいくつかをご紹介します。

① 新築家屋の屋根への太陽光パネル設置の標準化

上述の太陽光発電協会によるポテンシャル算定では、住宅の屋根も導入場所として見込まれており、その中では特に戸建住宅が多くを占めています。
東京都や川崎市などでは、新築家屋の屋根に、太陽光パネルの設置を標準化することが決まっています。こうした施策により、自宅でエネルギーをまかなえる上に、防災にも役立ちます。

© Adam Oswell / WWF

② ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)

太陽光発電の導入ポテンシャルのうち最大のものが、農業関連です。耕作地や荒廃農地などが含まれ、それらへの導入は再エネを大幅に増やす上で不可欠です。
そこで有効となるのが、農地の上に3メートルほどの支柱を立てて太陽光を設置し、農業を行ないながら発電する、健全なソーラーシェアリングです。農業者は発電した電力を売却したり自身で消費したりして活用しつつ、作物の成長に必要な光を確保できます。
また、日本の耕地面積の 2 割弱にソーラーシェアリングを導入すると国内の電力需要とほぼ同じだけ発電できる可能性があります。

③ ペロブスカイト太陽電池

日本発の次世代の太陽電池で、今まで太陽光パネルを設置できなかった壁などにも設置できます。実用化すれば、マンションのベランダやビルの壁、信号機、車の天井・・・など、「町中どこでも発電所」が実現すると言われています。また、ペロブスカイト太陽電池の主な原材料は国産でまかなえる「ヨウ素」という点も注目です。

将来期待されるペロブスカイト太陽電池の使用例

④ 洋上風力発電

日本で風力発電を導入するうえでは、陸上に残された導入ポテンシャルを実現することが重要ですが、併せて有力な方法として注目されるのが、洋上風力発電です。これは海に風車を設置するものであり、既存技術を用いた発電設備の設置や新たな技術開発が進められています。
海底に基礎を造る着床式洋上風力を導入できるような遠浅の海は、依然として日本に残されています。また、水深が50mより深い場合には、風車を海の上に浮かべる浮体式洋上風力という方式を採ることが可能です。

着床式洋上風力と浮体式洋上風力のイメージ図

Q:再エネの導入が進むと、電力の需給バランスが崩れて、停電の頻発などが懸念されるのですか?

A:系統整備を進めて電力を全国で融通することや、需要側で電力使用量を柔軟に調整する「デマンドレスポンス」の浸透、蓄電池の普及などにより、そうした懸念を減らしていくことが可能です。再エネ導入と並行して、これらを早期に進めていく必要があります。


Q:鳥が風力発電の風車に当たってしまう事故は大丈夫ですか?

A:自然度の高い森林を避け、鳥類の渡りのメインルートや生息地を避けるなどの適切な対応をすれば、開発の影響を最小限に抑えることができます。自然環境や社会への負荷が少ない場所を見極める「ゾーニング」を事前に行なうことがポイントです。

© Michel Gunther / WWF

Q:再エネ開発と自然保護は両立しないの?

A:2024年9月現在、地球温暖化の影響を受けていると考えられる野生生物の数は、7,000種を超え、その数は年々増え続けています。(※)

生態系の改変・破壊、汚染、乱獲、外来生物等と並び、気候変動が地球環境にもたらす急激な変化により、個体数に影響が出てるなど生物多様性は深刻な状況にあります。

気候変動対策は自然保護、野生生物保護に欠かせない取り組みです。それは「どちらか」ではなく、「どちらも」実現しなくてはいけないことなのです。

(※)IUCN(国際自然保護連合)が発表している、世界の絶滅の恐れのある野生生物のリスト「レッドリスト」より

© Richard Barrett / WWF-UK

参照:地球温暖化による野生生物への影響
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/286.html

Q:再エネはコストが高いのではないですか?

A:再エネのコストは、以前に比べて大幅に低下し、世界的には火力電源に比べむしろ経済性の高い現実的な発電手段として認識されるようになっています。また国内でも、太陽光発電の発電単価が化石燃料を用いた従来の電源よりも安くなるなど、コスト低減が進んでいます。

再エネ設備では火力発電のコスト(図中の灰色の帯)に比べて低くなりつつある (出典:IRENA(国際自然エネルギー機関),RENEWABLE POWER GENERATION COST IN 2022 より)

更に、「エネルギー基本計画」で高い再エネ導入量が目指されるとともに、二酸化炭素などを排出する事業者に金銭負担を課すカーボンプライシングや、技術開発への補助金などの政策を実施する方向性が示されれば、再エネの経済性がいっそう向上することも期待されます。


Q:使い終わった太陽光パネルなどの廃棄にコストがかかるほか、処理の際には環境の観点からも問題があるのではないですか?

A:太陽光パネルの廃棄処理は、ほかの事業とおなじように、発電事業者や解体事業者が責任をもつことが原則です。FITの認定を受けた事業者に、撤去・廃棄に要する費用の積み立てが義務づけられるなど、FIT制度の強化が図られています。

太陽光パネルのリユース・リサイクルを促進することも、官民挙げて取り組みを強化しています。2024年9月時点では、太陽光パネルのリサイクルを義務化する法律の制定も目指されており、2025年の通常国会への法案提出に向けて政府内で検討が始まっています。

なお、廃棄という点においては、原発もコストに換算すると莫大なものになり、将来世代にわたってその処理に重荷を背負わせるものです。再エネだからと視野を狭めるのではなく、エネルギー全体で考える必要があります。


Q:再エネ100%の未来はかなうのでしょうか?

A:WWFジャパンは2050年までに再エネ100%の社会を実現できると考えています。そのための道筋を描いた「脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ」を2024年にアップデートし、2030年までに再エネ3倍(太陽光2.9倍、風力10倍)が可能であり、その延長線上で2035年に温室効果ガス排出量を2019年比で60%以上削減できることがわかりました。また、電力増の予測もあるAI技術についても、関連する省エネ技術の開発・導入が同時に進むであろうことも、シナリオでは提起しています。

参照:脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ(2024年)
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1576.html

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