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企業の枠組み「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」による「みらいへの約束」イベント開催報告

この記事のポイント
2023年6月29日、WWFジャパンの呼びかけで発足した、企業によるプラスチック対策の加速に向けた枠組み「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」のイベント「みらいへの約束」が開催されました。イベントでは参画企業全12社より自社の具体的目標や取り組みを発表し、海外から国レベルの企業枠組み「パクト」を紹介。そして、研究者や政府関係者もまじえ、野心的、包括的コミットメントを透明性を持って掲げた上で、ステークホルダーが連携して取り組みを進めることの重要性についてディスカッションを行ないました。
目次

プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025

今も、プラスチックの大量生産・大量消費・大量廃棄に起因する問題が、地球規模で脱炭素社会の実現、生物多様性の回復を阻害し、人の健康をも脅かしています。

さらに、現状の対策のままだと、2040年までに世界のプラスチックの年間生産量は2倍に増加し、海洋へのプラスチックの年間流出量も3倍になると推定されています。

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こうした危機的状況の中、2022年3月に開催された国連環境総会では、「プラスチック汚染を根絶するための法的拘束力を持つ国際条約の制定に向けて、政府間交渉委員会(INC)を設立し、2024年末までの条約内容の確定を目指す」という歴史的な決議がなされました。2023年5月にはパリでその第2回会合が開催され、2023年11月の第3回会合に際し条約素案(ゼロドラフト)を策定することが決定するなど、条約発足に向けた議論が進んでいます。

また、日本でも、サーキュラーエコノミーへの転換による環境汚染や地球温暖化への対応を目的とした「プラスチック資源循環法」が2022年4月に施行され、2023年3月には「成長志向型の資源自律経済戦略」も公表されています。

また、世界各国でWWFが主導的役割を果たし、企業によるコミットメントをベースとした解決枠組み「パクト」が立ち上がっています。このような国内外の状況を背景に、WWFジャパンは2022年、日本で食品、飲料、日用消費財、運輸・飲食など、容器包装や使い捨てプラスチックを取り扱う幅広い業種の主要企業に呼びかけ、持続可能なサーキュラーエコノミーを共に目指す企業枠組み「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」を発足。

野心的で包括的な目標を掲げ、透明性を持って取り組むことの重要性をWWFジャパンと共有した企業は、参画に際し、WWFジャパンが示す2025年をマイルストーンに据えた共同コミットメントを掲げることを発表しました。

そして、2023年6月29日、同枠組みの参画企業による具体的な目標や取り組みの発表や、アメリカとインドにおける国レベルの企業の枠組み紹介、さらに、専門家や政府関係者を交えて今後の更なる進展に向けたディスカッションを行うイベント「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025 みらいへの約束」を開催しました。

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企業各社による野心的コミットメント公開の重要性

三部構成で行なわれたこのイベントでは、まず冒頭の第一部で、「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の主催者であるWWFジャパンより、この枠組みの概要について解説。

続いて、今回新たに参画した、Uber Eats Japan 合同会社と江崎グリコ株式会社を含む12社が、同日に一斉公開した包括的かつ具体的な目標と取り組みについて、それぞれ発表しました。

「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」参画企業(特設サイトより)

「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」参画企業(※特設サイトより)

「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」特設サイト

続く第二部では、海外で企業のコミットメントに基づくプラスチックの問題解決のための国レベルの枠組み「パクト」を主催するWWF USとWWFインドよりキーパーソンがオンラインで登壇し、それぞれのパクトの概要や進捗、成功事例などを紹介しました。

最後の第三部では、「企業に求められるコミットメントと透明性」と題したパネルディスカッションを実施。参画企業の代表、研究者、政府関係者をまじえた形で、企業が「使い捨てプラスチックの取り止め」「段階的削減」「代替素材の持続可能性」「リユース」「リサイクル素材」「デザイン」「ステークホルダーとの協力」といった包括的な項目で、野心的コミットメントを公開し、政府や消費者を含め、ステークホルダーを巻き込んで社会全体で協力していくことの重要性について討議しました。

当日は企業、メディア関係者を中心に、59名の方にご参加いただきました。イベントを通じて、日本でもプラスチック問題の解決において、企業が包括的、野心的目標を設定の上、透明性を持って開示することが求められていること、そして企業が業界を超えて生活者や自治体等の幅広いステークホルダーとの協働を主導することの重要性が共有されました。

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WWFジャパンは、プラスチックの大量生産を前提に環境破壊をもたらす社会から、プラスチックが適正な量で持続可能に循環する社会への転換に向けて、これからも「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」やその他の企業との協働を推進していきます。

イベント概要「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025 みらいへの約束」

プログラム(講演者、敬称略)

第1部「日本における企業のコミットメント取り組み発表」

● 「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の紹介 
  WWFジャパン 三沢行弘
● コミットメント抜粋に基づく発表
  サントリーホールディングス株式会社 渡辺雄太 氏
  日本コカ・コーラ株式会社 飯田征樹 氏
  キリンホールディングス株式会社 別所孝彦 氏
  ネスレ日本株式会社 山口恵佑 氏
  株式会社ニッスイ 西昭彦 氏 
  株式会社資生堂 大橋憲司 氏
  ライオン株式会社 中川敦仁 氏
  ユニ・チャーム株式会社 矢沢智子 氏
  日本航空株式会社 小川宣子 氏
  Uber Eats Japan合同会社 タオ・ジンウェン 氏
● 自社のコミットメント、具体的取り組み、課題の発表
  江崎グリコ株式会社 森田裕之 氏
  ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 北島敬之 氏

第2部「海外のコミットメント枠組み紹介(アメリカ/インド)」
● 「US プラスチック・パクト」の設立意義や概要、進捗の紹介 
  WWF US Cam Pascual
● 「インド・プラスチック・パクト」の設立意義や概要、進捗の紹介
  WWFインド Vishal Dev

第3部「企業に求められるコミットメントと透明性」
● プラスチック汚染にどう立ち向かうのか 社会的営業免許(SLO)の可能性
  同志社大学 原田禎夫 氏
● プラスチック資源循環政策と企業に求められる役割」
  環境省 水谷努 氏
● パネルディスカッション 
  同志社大学 原田禎夫 氏
  環境省 水谷努 氏
  ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 北島敬之 氏
  江崎グリコ株式会社 森田裕之 氏
  WWFジャパン 三沢行弘(ファシリテーター)

アーカイブ映像(11月30日まで期間限定公開)

各講演の抄録

第1部「日本における企業のコミットメント取り組み発表」

「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の紹介 
WWFジャパン プラスチック政策マネージャー 三沢行弘

まずWWFジャパンの三沢より、WWFの呼びかけで2022年2月にスタートした「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の概要について紹介しました。

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ここでいうサーキュラーとは、持続可能なサーキュラーエコノミーのこと。そして持続可能とするためには、地球の限界の範囲内で循環的に経済活動を行う必要があります。
三沢は、「企業が個別に設定するべき目標は、必ず達成できるようなものではなく、少しストレッチした野心的なものであることが重要です。これを透明性を持って公開することで、その意思が社会に伝わり、たとえ目標が未達成の場合でもその理由を分析して改善に活かすことが、企業としての評価につながります」と述べ、参画企業が、野心的なコミットメントを設定し公開する動きを日本で主導していくことに期待を示しました。


参画企業からのコミットメント(目標・取り組み)の抜粋発表
続いて、「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の参画企業の内の10社からそれぞれ、当日公開したコミットメント(目標・取り組み)から一項目ずつを抜粋して発表いただきました。以下はその要約となります。

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サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部課長 渡辺雄太 氏
【対応コミットメント:4】リサイクル素材の意欲的な使用目標を設定する

サントリーではペットボトルが主要な包材であることから、軽量化やリサイクル技術開発に取り組んできました。軽量化においては、例えばサントリー天然水のペットボトルは20年前と比べ重量を約半分にしています。リサイクルについては、2030年までにグループとして国内外で使用するすべてのペットボトルを100%リサイクル素材あるいは植物由来素材にすることを目指しており、2023年には国内飲料事業で製造するペットボトルのうち重量比50%強をこれらの素材とすることを計画しています。
そのための最も効果的な手段として、使用済みペットボトルを新たなペットボトルにする水平リサイクルを推進しています。資源循環の輪を構成する各ステークホルダーとの連携により、集める、作る、伝えるといった循環の輪のすべての段階で取り組みを進め、例えばお客様に伝えるために、小学校や商業施設などでのリサイクルについての啓発授業・イベントや企業広告・WEBコミュニケーションなどを強化しています。

日本コカ・コーラ株式会社 サスティナビリティー推進部 部長 飯田征樹 氏
【対応コミットメント:4】リサイクル素材の意欲的な使用目標を設定する

飲料の会社である日本コカ・コーラでは、ペットボトルが極めて重要な包材です。国内で2030年までにすべてのペットボトルを100%リサイクルペット、もしくは植物由来素材にする目標を設定していますが、全世界の目標は2030年までに50%以上であり、日本の目標は海外のコカ・コーラからも極めて野心的だと言われています。
2022年の第一四半期の時点で、国内でのリサイクル素材の使用率が50%を超えています。また、2023年初めには4つのブランド、44の製品について、100%リサイクルペットボトルを使用しており、これからも特にリサイクル材の使用を推進することで、CO2の削減にも貢献していきたいと考えています。

キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部 主務 別所孝彦 氏
【対応コミットメント:5】リユース、リサイクル率を向上させるためにステークホルダーと協力する

キリンホールディングスでは、お客様が自治体回収以外でいつでもペットボトルのリサイクルに参加できる場を提供するために、2022年からはドラッグストアと協力し、店頭で使用済ペットボトル回収の実証実験を開始しました。
また、鉄道会社と協力し、回収したペットボトルを確実にペットボトルへと水平リサイクルするための回収スキームを構築。現状では鉄道会社で回収されたペットボトルは事業系ごみに分類され、必ずしも再生ペットボトルに生まれ変わっていません。鉄道会社と中間処理業者、リサイクル業者、そして私たちメーカーが一連となって、水平リサイクルのインフラを構築しています。
今後も使用済みペットボトルが循環する社会の構築に向けて、分別回収やその効率化に携わっていきたいと思います。

ネスレ日本株式会社 サステナビリティ&ステークホルダーリレーションズユニット ユニットマネージャー 山口恵佑 氏
【対応コミットメント:1】代替素材への切り替えの際は、その持続可能性を十分考慮する

ネスレ日本では2025年までにバージンプラスチックの使用量を1/3削減するというコミットメントを掲げています。
一例として、2019年からキットカット製品の外装の素材をプラスチックから紙へと変更し、その翌年には、ほぼすべてで紙への切り替えを実現、2022年末までに累計1,150トンのプラスチックを削減しました。またペットフード包材や総合栄養食品のストローをプラスチックから紙素材に置き換える取り組みも推進しています。持続可能性に配慮し、これらの紙素材は、FSC認証を取得しています。
さらに、廃棄されていた紙素材をTシャツなどにアップサイクルするプロジェクトにも取り組んでいます。
そして、プラスチックのサーキュラーエコノミーも含め、中高生に向けた環境教育を推進するために、2023年5月にオンライン探究学習教材をリリースしました。

株式会社ニッスイ サステナビリティ推進部 部長 西昭彦 氏
【対応コミットメント:2】可能な限り、リユース(他の素材へのリユースを含む)へと切り替える
【対応コミットメント:3】可能な限り、リユース、リサイクル可能なデザインとする

ニッスイでは、2030年までに商品の容器包装で使用するプラスチックを30%削減する目標を公表し、様々な取り組みを行っていますが、ここではその裏側である生産工場や物流における取り組みについて紹介します。
生産工場では、さまざまな原材料が主にワンウェイのプラスチック包装で納品されています。これを、サプライヤーと協働し、包装のプラスチックの削減、リターナブルなコンテナ等のリユース可能な形態での納品へ転換することに、全工場で取り組んでいます。
また、鮮魚の輸送では主に発泡スチロールが使われますが、(生鮮まぐろにおいて)氷を詰めた通い箱を繰り返し活用する輸送への転換を推進しています。
このように、商品の容器包装に加え、工場、物流を含め、会社全体でプラスチック削減の取り組みを推進しています。

株式会社資生堂 サステナビリティ戦略推進部 マネージャー 大橋憲司 氏
【対応コミットメント:2】可能な限り、リユース(他の素材へのリユースを含む)へと切り替える
【対応コミットメント3】可能な限り、リユース、リサイクル可能なデザインとする

資生堂では、独自の容器包装開発ポリシーとして「資生堂5Rs」(リスペクト、リデュース、リユース、リサイクル、リプレイス)を策定。この方針のもと、資源の再利用の容易な設計にすること、また、「つめかえ・つけかえ」容器の配置により、繰り返し使ってもらえる容器の使用を推進しています。
中でも、化粧水の一部の「つめかえ」容器については、1回でプラスチックの使用量を7割から8割程度削減でき、資源のリデュースにもつながります。1926年に初めてつけかえ可能な粉白粉を開始して以来、メイクやスキンケアなど、様々な容器に採用しています。
こういった取り組みは、お客さまとともに行動を起こすことが重要となり、そのための啓発活動にも積極的に取り組んでいます。また、様々なステークホルダーとの連携により、環境負荷の軽減にこれからも努めていきたいと思います。

ライオン株式会社 サステナビリティ推進部 中川敦仁 氏
【対応コミットメント:3】可能な限り、リユース、リサイクル可能なデザインとする

ライオンでは、つめかえ容器や内容物の濃縮化を通し、すでにプラスチックを70%以上削減してきました。リサイクルなどは欧米が進んでいると一般には言われますが、日本は各社の切磋琢磨により、世界でも珍しいつめかえ文化を持つ国となっており、このつめかえ文化を、世界に発信していきたいと考えています。
なお複合素材でつくられたパウチ容器についてはリサイクルが難しく、競合企業と協力して回収・再生するための技術的な検討を行っています。
この5月には一部お客様から回収したパウチを使った製品も発売。こうした活動を通じてリサイクルしやすい包材への切り替えを進めていきます。

ユニ・チャーム株式会社 ESG本部 ESG推進部 E&Sグループ マネージャー 矢沢智子 氏
【対応コミットメント:4】リサイクル素材の意欲的な使用目標を設定する

ユニ・チャームでは、2015年より使用済み紙おむつのリサイクルプロジェクトを開始し、使用済の紙おむつを再び紙おむつにできる水平リサイクルの設備を2030年までに10以上の自治体で導入することを目標としています。
紙おむつに使用されるプラスチック素材のリサイクルは、今まで、RPFなどの固形燃料化に留まっていましたが、回収率向上と資源循環の促進のため、使用済み紙おむつのリサイクル過程で抽出したプラスチックを「紙おむつ専用回収袋」へと再生する取り組みを開始しました。現在、鹿児島県大崎町のご協力のもと、住民組織である衛生自治体会を通じて15の集落に無償配布するという実証実験を行っております。
2025年には配布対象エリアを拡大する予定であり、生活者の環境に対する意識醸成にも貢献してまいります。

日本航空株式会社 ESG推進部 部長 小川宣子 氏
【対応コミットメント:1】さらに環境負荷低減に向けて削減目標を設定した上で取り組む

日本航空では、2021年5月の中期経営計画で、2050年までにCO2排出量実質ゼロの経営目標と並んで、客室やラウンジでお客さまに提供している使い捨てプラスチックにつき、2025年度までに新規石油由来を全廃することを発表しました。
社内ではプラスチックのガイドラインを制定し、3R(Reduce/Reuse/Recycle)+1R(Redesign)というプロセスを通じ取り組みを進めています。
2019年にマドラーを、2022年に国内線の紙コップのフタを紙製に変更したことで、31トンのプラスチックを削減。2023年1月から国際線エコノミークラスの機内食の主菜容器やトレイのマットを紙製へと変更することで、175トンのプラスチック削減につなげています。持続可能性に配慮し、これらには森林資源に配慮された(FSC®の)国際認証紙を使用しています。
安全、衛生の面で、どうしてもプラスチックが必要な場合は、再生プラスチック等への変更を進めています。
2022年度末時点で、2019年度対比で45%(重量ベース)のプラスチック削減を実現しており、今後も取り組みを続けていきたいと思います。

Uber Eats Japan合同会社 サステナビリティ部門 部長 Jingwen Tao(タオ・ジンウェン)氏
【対応コミットメント:1】さらに環境負荷低減に向けて削減目標を設定した上で取り組む

食品のオンラインデリバリーのプラットフォーム、Uber Eats Japanは、2016年に事業を開始し、同社のプラットフォームを利用している国内加盟店は10万以上となりました。
2023年6月、パッケージに使用される使い捨てプラスチックを減らすため、2030年までに、世界全体で受ける注文の100%について、容器包装をリユース、リサイクル、または、堆肥化可能な素材に転換するというコミットメントを発表。この中間目標として、日本を含むアジア太平洋地域全体では、2025年までに80%を達成するという目標を設定しています。
取り組みの第一歩として、まず加盟店舗がこうしたサステナブルな容器を手軽に入手できるポータルサイトを開設しました。

参画企業による自社のコミットメント、具体的取り組み、課題の発表

江崎グリコ株式会社 CSR環境部会長兼グループ調達部長 森田 裕之 氏


新たに参画した江崎グリコの森田氏からは、学童向け牛乳へのストローレス導入において過去の失敗事例をステークホルダーへのコミュニケーション向上に活かした取り組みや、新たにプラスチック・サーキュラー・チャレンジに参加を決定したことによる抱負について、以下のように発表いただきました。

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江崎グリコでは2021年、資源循環、廃棄物削減を重要な経営課題として設定した、マテリアリティ・マトリックスを作成。また「Glicoグループ環境ビジョン2050」でも、環境に関連した4つの目標を設定しています(1. 気候変動への対応、2. 持続可能な水資源の活用、3. 持続可能な容器、包装資源の活用、4. 食品廃棄物の削減)。
プラスチックについては、2024年度までに容器包装で使用しているワンウェイ(使い捨て)プラスチックを基準年比25%削減、2030年までにリサイクル可能なプラスチック包材の比率を100%、そして2050年に100%リサイクル素材を使ったプラスチックに置き換えるという目標を設定しています。

ここでは、ワンウェイプラスチック削減目標についての取り組みを説明します。
これまでもコスト低減につながる薄肉化、軽量化等の省資源に取り組んできましたが、手詰まり感が出てきていました。そこで2019年、カフェオレに付属していたプラスチックストローをお客様に十分説明することなく廃止しましたが、お客様からご理解をいただけず、販売量を減らす結果となってしまいました。
この経験を活かし、2022年4月から学童用の牛乳パックに付属していた年間2500万本のストローを廃止する際には、子供たちへの環境教育の意味を含めて行うという目的を自社内、特に自治体や学校の接点となる各工場で共有した上で、取り組みを開始。自治体や学校の生徒たちを含む、さまざまなステークホルダーに対し、なぜ廃止するのかにつき、丁寧なコミュニケーションを実施しました。結果としてお客様の共感を得ることに繋がり、メディアでも画期的な削減取り組みとして好意的に取り上げられました。
しかし、包材の大幅な値上げ、特にプラスチックを代替できる環境に配慮した素材のコストが上がっているのが主な理由となり、原単位で25%という2024年の削減目標に対し、実績はビハインドしており、厳しい状況にあります。

森田氏は最後に「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025」に参画した経緯と意気込みについて、次のように語られました。
「経済価値と社会価値創造の両立に難しさを感じています。品質においても代替素材では商品としての品質が保てないなどの課題があり、自社の知恵や経験だけでは乗り切れない課題が多いのが現実です。2022年のプラスチック資源促進法への対応もあり、企業としては難しい局面でありますが、ステークホルダーの皆さんと協力して乗り切っていきたいと思います」

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 代表職務執行者 ジェネラルカウンセル 北島敬之 氏

「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025」の発足当初から参画しているユニリーバ・ジャパンの北島氏からは、国内外でのプラスチック削減およびサステナビリティに関連した目標や進捗、社内外でどう変化を起こしていくのかについて、以下の通りお話しいただきました。

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ユニリーバでは2010年から事業戦略の中にサステナビリティを組み込んで推進しており、2021年からは、よりチャレンジングな数値目標を掲げた「ユニリーバ・コンパス」を導入しています。
「ユニリーバ・コンパス」の中で、プラスチックに関しては、企業が廃棄やリサイクルにまで責任を持つべきであるという「拡大生産者責任(EPR)」の考えに基づき、2025年までに達成を図る4つのグローバルコミットメントを発表していますが、その目標と国内外での進捗は、次の通りです。

1. 非再生プラスチックの使用量を50%削減:
2022年末までに世界で非再生プラスチックの使用量を13%以上削減しました。日本でも、パッケージの軽量化、アテンションシールというプラスチック製の商品説明用ツールの順次廃止、量り売り(実証実験)を行なっており、2019年比で100トン以上削減しました。

2. 使用プラスチックの25%を再生プラスチックに:
2022年末までに世界で21%まで切り替えています。日本でも「ラックス」「ダヴ」「クリア」など主要ブランドを中心に取り組み、PETボトルは再生PETを使ったパッケージへほぼすべて切り替え済です。

3. プラスチックパッケージを100%再使用可能・再生可能・堆肥化可能に:
2022年末までに世界で55% となっています。特に日本では詰め替え製品が普及していますが、詰め替え用のパウチは通常複合素材で作られているため、分別やリサイクルが難しいという課題があります。そこで日本でも単一素材のパッケージを発売しました。幅広い製品への応用を検討中です。

4. 販売量より多くのプラスチックパッケージの回収と再生を支援:
2022年末までに世界での回収・再生は販売量の58%となっています。日本においては日用品のパッケージの分別回収の仕組みや水平リサイクルの技術がまだ確立されていません。そこで、東京都などの自治体や複数の企業で自主的に協力しながら、使用済みパッケージの回収プロジェクトを推進しています。さらに、使用済みパッケージをきれいに洗って乾かし、小売店などの回収ボックスに返してくださったユーザーにポイント付与する「UMILE(ユーマイル)プログラム」を立ち上げ、導入後約1年で登録者は100万人を超えています。

これらを社内外に伝え、変化を起こしていくためには、透明性を持って目標や進捗を示すことや、マネジメントのリーダーシップも大切ですが、社員がサステナビリティに関するプロジェクトを立ち上げて推進することを支援できるような企業文化の構築が必要です。「UMILEプログラム」も営業部門の若手有志のアイデアから始まりました。
 違った結果を出すためには違ったことをしていかなければなりません。これまで通りではプラスチックがごみにならない未来をつくることはできないことを認識し、企業自身がさまざまな変化をリードする立場にあることを社内外に示し、実行していく必要があります。

北島氏は最後に、「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025」のような取り組みに参画し、野心的なコミットメントを公開した上で挑戦し続けていくことの意義として、次の点を指摘されました。
「野心的な目標を公開するのは怖いことです。万が一できなかったらどう責任をとるかを考えてしまう。ですが、失敗は悪いことではなく財産。厳しい目標を立てて、失敗を乗り越えながら進んでいくことが、ブランドの成長、社員の働き甲斐、優秀な人材の確保、さらには新たなイノベーションや、コスト削減やリスク低減にも貢献し、企業全体の活性化につながっていきます」

質疑応答、まとめ
その後、江崎グリコ、ユニリーバへの質疑応答セッションがあり、目標の設定や改善を進めるための社内調整の仕方について、サステナビリティ部門のような核となる部門を設けそこから各部門に働きかけるパターンの他に、各部署から人を集めて委員会方式のような横軸連携で参加して行うパターンがあるとの見解をいただきました。

プラスチック対策は主要な経営課題であり、会社全体の事業戦略に確実に落とし込み、ビジネスがうまくいけばプラスチックも削減していくという状態にしていくために、各社それぞれの特性を踏まえつつ、最適な組織の在り方にまで踏み込んで考えていく必要がありそうです。

第2部「海外のコミットメント枠組み紹介(アメリカ、インド)」

「USプラスチック・パクト」の設立意義や概要、進捗の紹介 WWF US, Cam Pascual (Senior Program Officer, Plastic & Material Science)

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海外からのオンライン講演となる第二部では、まずWWF USのCam Pascualが、アメリカでWWFが現地NGOリサイクリング・パートナーシップと共同で発足させた、企業が主導するプラスチック汚染の解決のための「USプラスチック・パクト(以下、USパクト)」という枠組みについて、次のように発表を行ないました。

WWFのビジョンは、2030年までに自然界からプラスチックを根絶することです。しかしこの問題は、あまりにも大きく、重要であり、単独で取り組むことは不可能です。(再生ではない)バージンプラスチックへの過大な需要から、非効率的な廃棄物管理に至るまで、不適切で複雑な仕組みを修復し、政策担当者や、業界のリーダー、自治体、消費者など、全てのステークホルダーが、連携し共に取り組んでいくことが必要です。
そこで、WWF USはUSパクトを設立しました。USパクトでは、まず4つの共通目標を設定し、それぞれを達成するための国内戦略が策定され、毎年、透明性をもって進捗報告が行なわれます。参加企業は、自主的なコミットメントを集約的なレベルで行うことで、グループとしてのプラスチックフットプリントを測定し、開示します。各企業は、自分たちの事業の範囲を超えた問題を単独で解決することはできないため、USパクトは包括的なアプローチをとり、プラスチックのバリューチェーン全体から組織が参加しているのです。

USパクトで最も大切なのは、測定可能で野心的な4つの集約的な共通ターゲットを、以下の通り明確に定義していることです。
1. 根絶:「問題のある、または、不必要なプラスチック容器包装」をリスト化し、2025年までに根絶するための対策を実行する
2. リユース・リサイクル可能な設計:2025年までに100%のプラスチック容器包装をリユース可能、リサイクル可能、もしくは堆肥化可能とする
3. リユース、リサイクル:2025年までにプラスチック容器包装の50%を、効果的にリサイクル、堆肥化するために野心的な活動を実践する
4. リサイクル素材:2025年までに、平均で全体の30%に、リサイクル素材、持続可能性に配慮したバイオマス素材を使用する

そして、個々の企業の活動をこれら4つの集約的なターゲットへと紐づけるために、各企業として、またグループとして、アカウンタビリティー(結果に対する責任)を持つことが、USパクトが成功するための中核的な要素となります。USパクトでは、全ての企業に対して、実績の記録を義務付けていますが、これはアメリカにおけるプラスチック容器包装に関する自主的なバリューチェーンの取り組みの中で唯一のものです。年次報告は、WWFの「リソース・プラスチック・フットプリント・トラッカー」を使って作成します。このウェブツールは、企業がプラスチックフットプリントにおいて、何をどのように測定するかにつき、調和した一貫性のある手法を提供します。そしてUSパクトに参加する全ての組織は、ターゲットを達成するための活動に関する定性的な情報や、アメリカ市場で販売される全てのプラスチック容器包装を含む、対象に関する定量的なデータを含め、自らの進捗状況を報告します。このように可視化することは、USパクトが、目標と実績とのギャップや障壁に対処するために協働が必要な分野を特定したり、自社が同業他社と比較してどの程度成果を上げているかをよりよく理解したりするのにとても重要です。データはすべて非公開で匿名化されており、メンバーであっても、他のメンバーのデータを参照することはできません。USパクトの目標達成状況を、透明性を持って追跡できるように、目標に対する実績は集約した形で毎年公表されます。

そして、この4つのターゲットを実現するために、明確なロードマップを作成しています。このロードマップは随時更新することを前提としており、戦略として機能するものです。このロードマップは、USパクトに参加する企業や団体が管理する、以下の一連の優先的ワークストリームによって支えられています。
• 問題のある容器包装
• 循環可能な設計
• リユース
• リサイクル
• 堆肥化
• リサイクル素材
• 政策提言

各ワークストリームには、それぞれ目指すべき成果物があります。ワークストリームは、各ターゲットを達成するために必要であると特定した主要な活動をサポートするために設置され、連携の確立、能力開発、ツール開発や、社内外にあるリソースや先行事例の共有などが中心となっています。

例えば、リユースのワークストリームでは、リユース可能、詰め替え可能なモデルに関するパイロットプログラムへのニーズと、リユースモデルに関する透明性のあるデータを特定しています。消費者の受け入れ状況はどの程度なのか、企業が新たにリユースモデルに投資するかどうかを決定するために必要な統計やKPIは何なのか。「US パクト・リユース・カタリスト」というツールを作成し、そこで共有された知見、専門知識、USパクトのメンバーのネットワークを通じてパイロットプログラムを支援することで、リユース可能、詰め替え可能な容器包装の業種横断的な普及を促進しています。

政策提言については、USパクトは、参加企業に、国、州、市の政策担当者へ情報を伝えるために、共通でアプローチする機会を提供しています。USパクトの活動は、企業が何を求めているのか、何が企業に役立つのかということについて、政府に重要なシグナルを送るものであり、企業がプラスチックのシステムを修復するために、野心的な変革を約束しているということを政府に知らせるものでもあります。それは、現在発足に向けて世界で議論しているプラスチック国際条約の下で、アメリカ政府が行動計画を策定する際のひな形作りに役立ちます。

USパクトのこれまでの活動で、特に成功を収めた成果の一つとして、「問題のある、または、不必要なプラスチック」のリスト策定を挙げたいと思います。「ターゲット1:根絶」をサポートする、「問題のある容器包装ワークストリーム」で、さまざまなメンバー全員の合意の下で、デシジョンツリーを用いて、容器包装を廃止するべきかどうかを評価する基準を、透明性を持って明確に定義しました。そして、USパクトの全てのメンバーが報告を求められる、11種類の「問題のある、または、不必要なプラスチック」について合意しました。このリストは、アメリカの政策担当者や市場全体に対して、禁止するか、段階的に根絶すべき素材、あるいは、企業の賛同を得て、より持続可能な代替品に置き換えるべき素材を示しています。これもまた、USパクトの自主的なアプローチを活用して、政府や政策担当者と民間セクター全体との連携を構築することで、法規制のような義務的なメカニズムを推進する際に、有用な情報を提供している事例となります。

Cam Pascualは最後に、次のような言葉で講演を締めくくりました。「WWFが企業と協働する際の、3つの基本的な要請は、まず、『問題のある、または、不必要なプラスチック』を根絶した上で、次に、どうしても必要とされるプラスチックは持続可能な素材へと移行し、そして最後に、生産した全てのプラスチックを回収、再利用、堆肥化するために、素材のシステム全体を改善することです。これらのステップを経て、企業に対して、素材が循環するシステムやポートフォリオ設計への転換を支援する政策提言をすることを求めています。USパクトは、個々の企業の行動を支援すると同時に、共通の課題に対する共通の解決策を策定しているのです。」

「インド・プラスチック・パクト」の設立意義や概要、進捗の紹介 WWFインド, Vishal Dev (Director - Sustainable Business)

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次に、WWFインドのVishal Devより、WWFインドが現地の産業界が参加する非営利組織Confederation of Indian Industry (CII)と2021年9月に立ち上げた「インド・プラスチック・パクト(以下、インド・パクト)」につき、次のような発表を行いました。

プラスチックの問題の主要ステークホルダーとしての企業には、ライフサイクル・アセスメントにより自らの環境フットプリントを把握し、プラスチックが資源循環の輪から外に出ることがない閉じたループを確立できるように、廃棄物の収集と分別を大幅に拡大することが期待されています。

ほとんどの企業は、様々な規制への対応について貴重な知見を持っているはずです。そして、すべてのステークホルダーが自主的なコミットメントによって団結するためのプラットフォームが、この問題の実際の解決に役立ちます。企業は日々事業を実践していますが、使用後のプラスチックが最終的にどうなるのかについての考慮が不足しがちで、プラスチックや容器包装をリサイクルして活用することにつき、まだ自信を持てていません。再生プラスチックについては常に市場経済を考慮しなければならず、バージンプラスチックの価格と比較されるため、(それよりも高コストの)再生プラスチックの需要は低く、市場は限られています。また、この分野における新しいビジネスモデルの適用機会や活性化策が不足していることも課題です。そこで、需要を増やすべく、使用、再利用、リサイクルに対する消費者の意識向上にさらに取り組む必要があります。

インドでは2021年9月に企業による自主コミットメントを核とした枠組み「インド・パクト」が設立されました。これは、バリューチェーン全体のプラットフォームとなるものであり、主要ステークホルダーが参加してイノベーションと相互の競争を促進し、企業や地域のリーダーシップを発揮する場を提供します。参加企業自らがターゲット設定に関与することから、データの提供が求められますが、データは定められた形式で使用され、それぞれのデータの機密性は保持されます。現在、48の組織がメンバーまたは支援組織となっており、バリューチェーンに大きな影響力がある主要ブランド全てが参加しています。

私たちはインド・パクトのビジョンを、「プラスチックが本来の価値を発揮し、環境を汚染しない世界の実現」であると定義しています。
そして、2030年を目標とした4つのターゲットを掲げています。
1. 「問題のある、または、必ずしも必要のない」プラスチックの容器包装や製品を定義し、再設計やイノベーションを通じて対処する
2. プラスチック容器包装の100%をリユース、リサイクル、堆肥化が可能なものとする
3. 50%のプラスチック容器包装を効果的にリサイクルする
4. プラスチック容器包装の平均25%に再生素材を使用する

そして、上記のターゲットそれぞれの達成に向けて、協働活動グループを結成しています。

これらの活動を通じて得られた知見をレポートとしてウェブサイトで公開しています。インドでは、特に小袋や小型のプラスチックの環境フットプリントが大きいことが問題となっています。インドにおいて、これらの収集とリサイクルは、非常に困難ですが、なんとしても解決策を見つけなければなりません。 私たちは食品の容器や包装プラスチックへの対策も進めており、コカ・コーラなどのブランドによる解決事例も出はじめています。

野心的な自主コミットメントに基づくインド・パクトが現在直面している課題は、次の通りです。
● メンバーが大企業により構成されているため、活動が製造システムの大部分を担っている中小企業に広がっていない
● 企業が主要メンバーであるために、政府の連携が難しい
● 活動が、特定の企業の利益に影響を受けないように、強固な統治体制を築くことが必要

次に、成功事例をご紹介します。Zomatoはインドの主要なフードデリバリープラットフォームで、インド・パクトに参加しています。Zomatoは、認定された廃棄物管理業者の協力の下、16,700 トンのプラスチック廃棄物の回集とリサイクルを実現しました。プラスチック製が多いカトラリーの提供はユーザーからの要請があった場合のみ行うなど、さまざまな手法を採用しています。

最後にDevは、インド・パクトで学んだヒントを、以下の通り日本企業に共有しました。
「必要な仕事を完了させることが目標達成にとって重要である一方、プラスチックが循環する社会を構築するために将来を見据える必要もあります。それぞれが別個に取り組むのではなく、より大規模に適用するためにプラスチック・パクトのような包括的な協働プラットフォームを形成することが重要です。規制が強化され、市場が大きく拡大しない中で、持続可能な手法以外に進む道はありません。また、消費者の間で持続可能性への意識が高まり続けており、例えば、バージンプラスチックと比較すると高コストの再生プラスチックの導入についても、より多くの企業が取り組んでいくことで規模の経済が生まれ、実現可能性がさらに高まることでしょう。」

質疑応答
その後、参加者との間で質疑応答がありました。要約は以下の通りです。

Q:目標やロードマップの設定について。各社の事情がある中、どう目標を設定しているのか。ロードマップは、バックキャスティングして作るのか、現状の積み重ねで作るのか。

A: (USパクト) 予め野心的なターゲットを設定した上で、各ターゲットの達成に向けた一連の会議を開き、課題、障壁、バリューチェーン全体にわたって最も広範囲に適用できる対応方法を検討し、ロードマップを策定した。状況の変化に合わせてロードマップの見直しを随時行う。全員の合意に基づいて行動することが最も重要。

A:(インド・パクト)デッドラインを 2030 年とし、ターゲットとする領域も予め決めていた。ターゲットの数値化については、メンバー企業とディスカッションし、実現可能性を検討した上で行なった。2030年までにこれらの野心的ターゲットを達成することは、インドのような発展途上経済にとっては困難であるが、このターゲットを堅持するつもり。

Q:政府との連携について。日本でも、消費者の意識や政府の規制はまだまだ十分ではなく、持続可能性を向上させる取り組みを熱心に行なっている企業が損をする場面もあると感じるが、NGOから政府への働きかけは心強い。例えばインドにおいて、政府との連携が難航している背景や、今後考えているアクションは?

A:(インド・パクト)インド・パクトのターゲットは州政府や連邦政府の政策と比較して非常に先進的で、たとえ政府にフィードバックしたとしても、それによって政府が規制を導入することは、少なくとも現時点では難しい。しかし、インドの企業が国際市場で活動していくためには、グローバルな状況に合わせていくことが重要で、そのためにパクトが貢献できると考える。

A.(USパクト)アメリカもインドと同様、多くの企業が州レベルで異なる規制があり、混乱が生じている。連邦政府レベルでの統一した規制が必要だと考え、それにUSパクトで先行して取り組んでいる。

Q: プラスチック・パクトに加盟している企業全体で、どれくらいのプラスチック製容器包装を扱っているのか。

A:(USパクト)おそらく国で扱うプラスチック容器包装の30%くらいだが、容器包装のバリューチェーン全体から企業が参加していることから、十分に市場を代表していると考える。

A:(インド・パクト)インドではプラスチック全体において容器包装として使用されている割合が世界平均より高く、5割以上に達する。そして、インド・パクトの参加企業が、インド国内の容器包装の5割以上を扱っている。

第3部パネルディスカッション「企業に求められるコミットメントと透明性」

「プラスチック汚染にどう立ち向かうのか 社会的営業免許(SLO)の可能性」
同志社大学 経済学部 准教授 原田禎夫 氏


第3部のパネルディスカッションでは、冒頭、同志社大学の原田氏より、プラスチックごみが引き起こしている問題をどう受け止め、理解し、これからの対策を立てていくべきかにつき、「社会的営業免許」の可能性をお話しいただきました。ご発表内容を、要約して以下にお示しします。

© WWFジャパン

日本ではいまだ「プラスチックごみ問題」という言い方がされていますが、海外では水質や海洋、大気の汚染と並ぶ地球規模の汚染問題と位置づけられており、プラスチック汚染と呼ばれています。
また、私たち全員が加害者であり被害者であること、発生地と被害地が必ずしも一致しないことから、世界中でとにかく量を減らさなければならず、気候変動問題と同じ枠組みで考えていく必要があります。しかし、プラスチックを使わない人はいません。国の規制を待つだけではなく、企業が自主的な取り組みをスピード感を持って進めることは非常に意義があります。
また、ごみの処理までを考えると、ステークホルダーは、消費者や株主だけでなく、自治体との連携も視野に入れることも必要となります。しかし、日本にある自治体は1700以上。連携と一言でいっても困難であり、インドやアメリカのように、いろいろな人が集まって共通のプラットフォームを作っていく必要が出てきます。

プラスチック汚染は、ハーディンの言う「コモンズの悲劇」、すなわち、誰のものでもない皆の場所は放っておくと皆が過剰な使い方をしてしまいやがて荒廃するという問題ととらえることもできます。これには、政府による管理や完全なる私有化による解決が考えられますが、広大な世界の海を誰かのものとすることはできず、コストを考えると不法投棄を完全に監視することもできません。また、海に流れ込むプラスチックは全部が故意に捨てられたものでもありません。海は今、誰も責任を取らないゴミ箱になってしまっており、大気中にもプラスチックが存在しています。

そこで、皆で問題を共有し共有の規範を育てていく、オストロムが言う「コモンズのガバナンス」という考え方が、一つの解決策となり得ます。

企業個別の取り組み、産業界としての取り組みも大事ですが、それが生み出す消費者の意識の変化が、企業の取り組みを進めるエンジンになる。そのために事例を共有し、例えライバル関係の企業であっても社会の利益になることについては、共通で取り組んでいくことや、商品の宣伝に留まらず、なぜこのことをやるのかについて教育や、文化に働きかけていくことが非常に重要なのです。

ここで、「社会的営業免許」、簡単に言えば、企業の活動や存在そののものが社会欠かせないものとして認められている、という考え方があります。
企業が活動するためには、国内法規や国際法規の遵守といった「法的免許」、自治体との連携といった「政治的免許」、そしてNGOや消費者といったステークホルダーから信任を付与される「社会的免許」の3つの免許を獲得する必要があります。
社会的営業免許は、利益や給料のような「便益」をもたらし、いろいろなステークホルダーから「同意」をしていただき、説明責任や透明性といった「正義」を担保し評価してもらうという要素からなる、レジティマシー(正当性)を獲得するという概念です。

企業活動における、この社会的営業免許には低い順に次の4つのレベルがあります。
● 拒否・取り消し:不買運動など
● 需要・許容:疑いを持たれながらも少しずつ認めてもらえる
● 承認・支援:良き隣人としていい会社だと認めてもらえる
● 共同所有:社会と一緒にやっていく、社会が味方となり応援してもらえる
もし、「共同所有」の段階にあり、消費者や自治体の理解や協力があれば、プラスチックごみ対策を進めていく大きな力になっていきます。

本日各企業が発表したコミットメントがさらに進化していくことで、社会にとって必要な企業となり、困難に直面した時には社会が応援してくれることになり、日本のプラスチック対策が進むための大きな力となると思っています。

社会的な免許を得るには様々な場面があります。例えば、食品メーカーでは安全を担保することが求められ、包装を変えることは大変ですが、商流の川上や川下に注目し、工場からの出荷や納入の際のプラスチックの削減にもパートナーシップを組んで取り組みの幅を広げることも大事です。また、設計段階から研究者と連携するなど、いろいろな人と連携することで味方を増やしていただきたい。

プラスチック問題は、まだ新しい環境問題であり、CSV、すなわち共通価値の創造を行なっていくために、なぜプラスチックを減らすための対策が重要なのかを企業から発信し、その理由を関係するステークホルダーがきちんと理解し、納得してもらうことが重要です。

原田氏は最後に、以下の言葉で発表を締めくくられました。
「アジアはプラスチック問題が世界で最も深刻な地域であり、日本を代表する企業が取り組むことで、アジアの問題解決に貢献してほしいと願っています。一社一社でできることは限られており、ステークホルダーを再定義し、協力して取り組んでいただけることを期待したいと思います。」

プラスチック資源循環政策と企業に求められる役割
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室長(兼 循環型社会推進室長) 水谷 努 氏


続いて登壇いただいた、環境省の水谷氏からは、プラスチックと資源循環に関連した日本の政策の現状や企業への期待について、次の通りお話をいただきました。

© WWFジャパン

現在の日本政府の政策の骨子となっているのは、2019年のG20大阪サミットを前に、政府の取り組みをまとめた「プラスチック資源循環戦略」で、3R+Renewable(再生プラスチック・バイオプラスチックへの置き換え)を基本原則とし、ここで2020年7月から実施されたレジ袋有料化も位置づけられました。これらに取り組むことが、資源環境問題の解決のみならず、経済成長や雇用の創出にもつながるという方向性も明示されています。
そして2022年4月には、取り組みを促進するための「プラスチック資源循環法」が施行。それまで容器包装リサイクル法に基づき容器包装の排出・回収・リサイクルに限られていたものを、プラスチックの設計・製造、販売・提供にまで広げ、ライフサイクル全体で資源循環を進めていく形となりました。
この法律では、企業の取り組みを促進するため、設計・製造段階では国が環境配慮設計の指針を示し認定する制度、販売・提供段階ではワンウェイプラスチックの使用合理化の判断基準を示し取り組みを促す制度があり、また、排出・回収・リサイクル段階では、市区町村の分別収集・再商品化を進めるための計画を市区町村と事業者が共に作り認定を受ける制度、製造・販売事業者が自主回収計画の認定を受ける制度、排出事業者の判断基準を策定し再資源化事業計画の認定を受ける制度を設けています。
販売・提供段階における、使い捨てプラスチックの使用合理化については、特定プラスチック使用製品について、事業者にポイント還元や有料化、代替素材への転換を促す為、政令で12品目を指定しています。排出・回収・リサイクル段階では、これまで多くが燃えるごみとして処理されていたプラスチック製品を、分別をわかりやすくして、リサイクルしていくことが市区町村に求められており、先ほど述べた、新たに設けた市区町村と事業者が再商品化計画の認定を受ける仕組みと容器包装リサイクル法の指定法人に委託する仕組みがあります。
プラスチックの地産地消を推進し、市民にとっても自分たちが出したプラスチックごみがどこでどうリサイクルされるのか見えやすくなるこの再商品化計画については、既に宮城県仙台市、愛知県安城市、神奈川県横須賀市の3自治体が事業者と認定を受けており、2023年度中にスタートする予定です。2024年度には更に10前後の自治体が認定を受けるとみられます。指定法人ルートも2023年度中に35自治体が取り組みをスタートします。
また、企業についても、自主回収計画の認定を推進しており、新型コロナ対策の見直しを受け、今後増えていくだろうアクリル板を回収・リサイクルする事業の認定事例があります。排出事業者からの再資源化事業計画についても、事例が今後も増える見込みです。
他にも、同業他社と連携した環境配慮設計製品が出てきており、さらに、特定プラスチックを使用した製品に大阪市や福岡市といった自治体が補助金を出している事例、自主回収が環境教育の機会となっている事例もあります。

内閣府が2022年9月に実施した、プラスチックごみ問題に関する世論調査では、プラスチックの削減につき具体的な行動をとる人の割合は2割から8割へ増加し、また、レジ袋を辞退する人の割合はもともと16%であったところ、有料化後には85%以上となるなど、各種施策により、予想を超える成果が出ています。

水谷氏からは、「国民の関心、行動の変化が起きつつある中、政府や自治体、企業が、どのような具体的な行動をとっていくかが重要です。法律でも企業に目標の設定を促していますが、あらゆる企業が、温暖化だけでなく、プラスチックについても、自主的な目標を設定し、情報の開示を進めていくことが求められています。環境省としてもそうした取り組みを後押しする政策がまだまだ必要で、リサイクルの受け皿の整備やGXの活用などを通じて後押しをしていきたい」との発言があり、企業のコミットメントを重視し支援する強い意思が示されました。

パネルディスカッション「企業に求められるコミットメントと透明性」

最後に、専門家や政府関係者、また「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の参画企業が、海外の知見を活かしつつ、サーキュラーエコノミーの実現による、プラスチック汚染や温暖化対策を、どう実現していくのか。そのための、野心的なコミットメントや情報公開の重要性や課題について、ディスカッションを行ないました。

パネリスト
● 同志社大学 経済学部 准教授 原田禎夫 氏
● 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室長(兼 循環型社会推進室長) 水谷努 氏
● 江崎グリコ株式会社 CSR環境部会長兼グループ調達部長 森田裕之 氏
● ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 代表職務執行者 ジェネラルカウンセル 北島敬之 氏
● WWFジャパン サーキュラーエコノミー・マネージャー 三沢行弘(ファシリテーター)

© WWFジャパン

(以下、敬称略)

三沢:
「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の基本的なコンセプトは、企業が野心的なコミットメントを期限付きで設定し、透明性をもって開示することです。
野心的なコミットメントを公開するのはとても勇気がいることですが、それが必要であるということも、ここまでのお話の中で触れていただいてきました。ここで改めて、何か成果があったときにだけそれをアピールするのではなく、予め野心的コミットメントをした上で取り組むことがなぜ必要なのか。まず北島さんにお聞きしたいと思います。

北島:
今回、インドとアメリカの例をご紹介いただきましたが、野心的にならざるを得ない。そうでないと意味がない、というところまで来ているという危機感があります。結果的に野心的に見えるが、それを設定するのが究極の目標ではなく、そもそもどういう世界でありたいかというところから、野心的なコミットメントが出てくるのだと思います。

三沢:
先に、目指すべき世界のイメージがあって、それを達成する手段として、野心的な目標の設定が必要だ、ということですね。森田さんはいかがでしょうか。野心的なコミットメントは、どういう形で御社の目指すビジョンに貢献するのか、お話しいただけますか。

森田:
私の記憶では、日本の企業がプラスチックの問題に真剣に取り組み始めたきっかけは、2018年にカナダのシャルルポアで開催されたG7のアジェンダとなった海洋プラスチック憲章に日本がアメリカと並び署名しなかったことに対するプレッシャーであったかと思います。そして当時、国際的イニシアティブに参加していた日本企業複数社は、2018年中にプラスチックに関する何らかの宣言を公開しました。これが日本企業のプラスチックに関する最初のコミットメントだと思います。プラスチックに限らず、すべての環境や社会課題について、これまでのように公にせずに良いことするのではなく、野心的な目標を掲げ宣言をした上、実行していくというのが、日本企業にとっても常識になりつつあります。
わが社も2024年の目標達成は困難な状況ですが、説明責任を果たすことで、目標に対しても責任を負っていくことになります。有言実行という意味で、野心的な目標を設定することは大変重要だと思っています。

三沢:
日本政府としては、プラスチック新法、プラスチック資源循環戦略などいろいろな政策を出されていますが、企業の自主的コミットメントを推進する政策も考えていきたいとお話しいただきました。政府の立場から、企業が自主的に高い目標を立てて取り組みを進めていくことについて、どのように見ていらっしゃいますか?

水谷:
プラスチック資源循環法でも企業の目標設定を推奨していますが、それ以外でも企業が法律の枠を超えて自主的目標を設定することで、消費者や投資家が比較することが可能になります。それが企業同士の競争につながり、大きな効果があると思います。これを政府がどう後押ししていくのかについては、例えば温暖化に関しては、目標を設定する企業に、資金やノウハウを提供するなどして後押ししています。プラスチックに関してはまだその段階には至っていませんが、今後同様の施策をというのは考えられると思います。

三沢:
いろいろな手法がある中で、企業が野心的なコミットメントを設定し、その進捗を社会に伝えていく、そこには社会的にどのような意義があるのか、原田さんにお伺いできますか。

原田:
まずコミットメントを公開した企業は、それが大きく報道されることで、ある種の先行者利益を得ることに当然つながり、社員の意識を変えることにもつながる。さらに、外部に対しても、影響力を発揮できるでしょう。内容が野心的であればあるほど、消費者や自治体の協力が不可欠になるからです。影響力のある企業の皆さんが野心的目標を設定して実行することで、消費者の意識をよりよい方向に変え、変化に対する抵抗感をなくしていく。そのプロセスの一つ一つが社会との対話であり、今までにないマーケティングの手法や、新たな知見が、企業側にも蓄積されていくということで、長期的に見れば企業にとっていいことばかりだと思います。政府もプラスチック国際条約の野心連合に加わりましたので、企業も負けずに取り組んでいただきたいと思います。

三沢:
原田さんのおっしゃった野心連合とは、プラスチック国際条約を野心的な内容で2024年末までに取りまとめようと行動している国々の自主的な集まりですね。2023年5月からパリで開催された会議の直前に、日本政府もこの野心連合に加入しましたが、この判断は国際的にも高く評価されています。
企業が野心的な目標を掲げることの重要性は共有できましたが、プラスチックの問題は、企業だけが頑張っても解決できません。他にも、関係するステークホルダーは数多くいて、野心的なコミットメントを達成するには、それらを巻き込んでいかなければなりません。企業の政策提言に期待しているという声もありましたが、企業が自社で頑張るという立場を超えて、どのようにステークホルダーに影響をもたらし、社会を変えていけるのか。この点についてコメントをいただけますか。

森田:
先ほど、包材の価格の高さが理由で、取り組みがなかなか進まないというお話をしました。コスト上昇に伴い販売価格が上がり、それを消費者の方にご負担いただくケースが増えています。例えばお買い物の際に1円でも安いものを籠に入れようとするお母さまに対して、お子様の方から「こちらの方が環境にやさしいよ」と言ってくれたりすることで、変化が起きます。このように消費者の知識のレベル、社会課題に対するアンテナはとても高いと感じています。企業は情報提供を続けていきますがそれには限界もあり、影響力のあるメディアによる発信にも期待したい。そして、環境配慮コストの価格転嫁やお客様の意識変革に私たち企業だけでなくいろいろな方々に携わっていただきたいと思っています。

© WWFジャパン

三沢:
北島さんにお聞きします。グローバル企業として各国で様々な規制に対応するのも大変だと思います。「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」のようなプラットフォームは、政策の改善にどのような可能性を見出せるのでしょうか。

北島:
グローバルではアドボカシー(政策提言)を大事にしています。企業の自主努力だけではなく、政府、立法機関、その他の(法的)枠組みに沿って対策を推進していかなくてはならず、企業の側から政府に対し問題提起や提案をするアドボカシーは非常に重要です。ユニリーバ・ジャパンではまだそこまでできていませんが、企業も野心的なコミットメントを持つだけではなく、アドボカシーを通じて積極的に発信し、政策にかかわっていくことが必要だと思います。それが世の中を動かしていく、一つの要素になると思います。

三沢:
サステナビリティについては、日本ではなかなか企業による政策提言活動が目立ちませんが、WWFでもそれが課題と考えており、「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」のようなプラットフォームを活用して、このような取り組みの底上げを図りたいと考えています。そこで原田先生にお聞きします。企業の思いが消費者に伝わり、政策に反映されるように、社会をどのように変えていけばよいのでしょうか。

原田:
環境配慮品のコストが上がっていますが、たとえばイギリスのプラスチック税のような、バージンプラスチックにより高い税をかける、といった政策的手法も有効かと思います。そのためには、社会の理解を得る必要があります。そこで、まずは地方自治体と連携して小さくてもいいので一つ一つ良い事例を作っていくこと。自治体はどこも財政難で廃棄物処理で困っていると思うので、やがて大きな力となっていくのではないでしょうか。
また、例えばペットボトルについて、日本では現状、異物の混入しないきれいな廃ペットボトルは限られていて、その回収が各社で取り合いのような形になっています。ヨーロッパのデポジット制度など、個々の企業の努力だけに委ねない仕組みや組織を構築すること、頑張っている企業が損をしないような社会の制度や仕組みを作っていくことが、これからは求められていくのではないでしょうか。

三沢:
今、「地方自治体との連携」というキーワードが出ました。地域レベルで企業と自治体の取り組みを作っていくことは必要ですが、一地域に留まらず、自治体間の横展開もできると思います。環境省では現在の取り組みと今後の展開についてどのように考えていますか?

水谷:
自治体が地元の企業と組んで、地元の特産品などをリサイクルする、こうした地域活性化は、現在策定中の国の循環基本計画でも大きなテーマになると思います。環境省には8つの地方事務所があり、この春から各事務所にプラスチック資源循環の担当職員が一人ずつつき、相談を受けるなどしているのですが、例えば中部地区では安城市の事例を他の市町村に共有するといった企画を実施しています。国としては、そういった優良事例を各地域、さらに日本全体で共有・横展開していければと考えています。

北島:
先ほどシャンプーやボディソープの量り売りの話をしましたが、これには製造業の許可の観点から法律上クリアしなければならない点がたくさんあります。そこで、まずは小さな地方自治体と組んで実証実験を行ないました。そうした自治体は意思決定が速く、限定的ではあるが、効果的に課題を洗い出し、クリアしていくことができました。このようなことが経験的に分かってきています。

原田:
マイボトル対応の自販機ができないかと思っており技術的には可能なのですが、日本の法律では、自販機一台一台に対し、喫茶店の営業免許が必要なために、出来ないということになってしまいます。結果として、現在マイボトル制の自販機は大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンとタイガー魔法瓶の本社にしかありません。法律が時代に合っていないということがあり、貴重な知見を共有しつつ、時代に即して、法律も変えていく必要があると思います。

三沢:
日本において、企業が取り組みを進めるために、ボトルネックは何で、今後どのような制度や仕掛けが必要でしょうか。

森田:
例えばCO2についてのNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の仕組みでは、環境対応設備への投資に補助金が出るため、海外の工場でも利用させていただいています。プラスチックでも同様に、改善への投資に対し補助金等が給付してもらえる制度があればいいですね。包材の値段の上昇が続いており、そういう制度があれば、どんどん取り入れたいです。

北島:
プラスチックの削減、リユース、リサイクルを進めている企業が正当に評価される仕組み、いわゆる「レコグニション」がもっとあると良いと思います。これがあればあるほど、社員にとっても大きなモチベーションにつながります。どんなに企業のトップが進めようとしても、社員が腹落ちしないと進みません。自分たちがやっていることが社会にとって良いと評価される制度があれば、そうした企業には優秀な人材が集まり、また社員も頑張って取り組みを進めますので、社会全体でもよい変化が進む期待が持てるようになります。

三沢:
原田さんが先ほどおっしゃっていたライセンスの話と、少し似ているかもしれませんね。原田さんからご覧になって、こういった制度はいかがでしょうか。

原田:
制度というと、法律や税、補助金といったものを設定することが一つの方法です。EUなどでは、自治体のリサイクル率が一定の基準を上回なかったら、ペナルティを課すなどの制度があります。また、交付税の差をつけるなどの手段も合うかもしれません。これらは日本ではすぐに実現が難しいかもしれませんが、「誰もが真剣になる仕組み」が必要だと思います。新しく制度を作るのは難しいと思いますが、きちんと頑張っている企業が、税制や補助金などの面で優遇されるなど、経済的にしっかりと評価される仕組みは大事です。また、企業によるプラスチックの削減をクレジットとし、一定の基準を超えたところはそれを買わなければならない、など、一種の排出量取引のような制度を、国レベルで作ってみるのも検討することもあり得るかと思います。いずれにしてもすぐにはできないと思いますが、まずは経済団体の勉強会などで、主要議題の一つにあげていただくことが必要なのではないかと思います。

三沢:
企業からいろいろ期待が国に寄せられていますが、水谷さん、今日の皆さんからのご意見をお聞きされた上で、改めて政府として出来ることにつきお話しいただけますか。

水谷:
原田さんがおっしゃった自治体へのインセンティブという点では、プラスチック資源循環法の施行にあわせ、プラスチック製品の分別回収やリサイクルを実施しないと、今後自治体は、廃棄物処理施設の建て替えなどの際に、交付金を受けられなくなる、という要件の変更を行ないました。自治体からの評判は良いとは言えないのですが、国の交付金は費用の1/3になりますので、分別回収やリサイクルを推進しないと、今後その交付金を受けられなくなるということで、大きなインパクトが出てきています。また、プラスチック製品の分別回収やリサイクルをする際には相当のコストがかかりますが、製品プラスチックについてそれらは自治体の負担となっています。これにつき、特別交付税措置として国が自治体の費用の半分を手当するという仕組みを設けました。
制度としては、今はまだプラスチック資源循環法が施行されて1年であり、これを確実に施行し、認定の事例を増やしていくための後押しをしていく段階です。この法律の5年後の見直し、また、今後プラスチック国際条約が成立すれば、さらに新たな対応が必要になるかもしれません。世界の状況も見ながら、政府としてどのように対応していくのか考えていくことになります。

三沢:
今日は、海外の事例も紹介させてもらいましたが、その中でアメリカもインドも、「問題のあるプラスチック」を企業が集まって自ら特定し、2025年、2030年の根絶目標を作っていますね。日本ではなかなか見られない状況です。あるべき姿から逆算した、政府の政策よりも高いレベルの取り組み、ともいえるでしょう。WWFとしてはそういったことを日本でも推進していきたいと思っているのですが、こういう取り組みの可能はありますか?

北島:
現在ユニリーバはたくさんのプラスチックパッケージを使っています。パッケージは輸送時における中身の保護や品質保持、使用時の情報提供などに必要なものです。それが使用後にごみにならないよう、プラスチックの削減やリサイクルを進めています。その中で「不要なもの」「使うべきではないもの」を特定することは可能ですし、実際に使うのをやめたものもあります。ただ、市場ごとに状況が違う場合もあるため、何を使い、何を使わないのかは、グローバルでもローカルでも継続的に検討を重ねています。また、変えることで、製品の中身が守れなくなっては本末転倒ですので、イノベーションの課題でもありますね。それらを複合的に考えていかなければならないと思います。

三沢:
ありがとうございます。最後にパネリストの皆様より一言ずつメッセージをお願いできますでしょうか。

原田:
日本は今、自信がなくなっているような気がします。でも、まだまだ日本の影響力は捨てたものではありません。アジアの人たちは日本のことをよく見ており、皆さまの取り組みが、プラスチック汚染が深刻なアジアの国々に与えるインパクトは大きいと思います。皆様にはぜひ、自信をもって取り組みを進めていただきたいと思います。

水谷:
プラスチックの国際条約は、世界にも国内にも大きな影響をもたらします。その中で、我が国はリーダーシップを発揮していきたい。企業の取り組みに関しては、国も予算、制度的な措置を進めますが、市民の皆さまやNGOの取り組みも、大きな力になっています。温暖化対策の観点から、企業の株主総会で、市民からいろいろな提案がなされています。プラスチック問題についても、まずは情報開示が必要になりますが、今後、市民の側から提案が出てくることになるでしょう。また、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)でも、プラスチックに関する情報の開示が2023年より求められるようになっていますが、政府も企業の情報公開を後押ししていきたいと思います。また、資源循環分野の地域のいい取り組みを取り上げた報道が最近某経済紙でありましたが、企業や、地域の良い取り組みを、メディアの方にももっともっと紹介していただきたいと思います。

森田:
プラスチックについては、グローバルな考え方と、日本の考え方にはギャップがあるように思います。2018年に参加したポルトガルの国際会議で、日本企業がリフィルを成功例として紹介したのですが、その後、ポルトガルの大学教授に「震災の後にコンビニに行列を作る礼儀正しい日本の国民性があってこそできるのだ」と言われました。世界ではプラスチックは根絶すべきだ、という極論もあります。グローバルの動きを見ながらも、環境に悪影響を与えない形でどのようにプラスチックを上手に使っていけるのかについて、世界が受け入れられるレベルの日本発のスタンダードを考えていくことが大事だと思います。

北島:
個人的な考えですが、この問題は次世代とどうかかわっていくか、次世代に対して、どのような地球環境、社会を残し引き継いでいくかという問題でもあると思います。我々が今やっている意思決定が、次世代の人たちから見て、「あの時こういう意思決定をしたからこそ、今があるのだ」と思われるような勇気ある意思決定やアクションをしていきたいと思います。

三沢:
パネルディスカッションでも、将来のあるべき姿を踏まえ、企業の果たすべき責任やステークホルダーとどのように協力していくべきかにつき、非常に有意義なディスカッションができたと思います。
プラットフォームを作り改善を図る、というのは特に効果的です。アメリカ、インド以外にも、WWFはいろいろな国でプラットフォーム作りや運営に関わっています。そういった動きも参考にしつつも、日本の文脈をしっかりと考え、企業の皆さんと共に、解決が非常に困難な問題であるプラスチック汚染につき、企業が主導して社会を巻き込んだ活動を続けていければと思っています。皆様にも周りを巻きこんでプラスチック汚染の解決を共に図っていただくことを期待しております。

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