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中高生が熱く議論!2030年エネルギーミックスを考えるワークショップ開催

この記事のポイント
2023年3月19日(日)、WWFジャパンが東京・品川で実施したワークショップ「選ぶ!私たちの未来とエネルギー」に計30名の中高生が全国から参加しました。対面での開催はおよそ3年ぶりです。地球温暖化対策の鍵をにぎる「エネルギーの選択」について、住んでいる地域や学年の枠を超え、顔と顔を合わせ、熱く意見を交わしました。
目次

全国から集まる中高生がエネルギー問題について考え意見を交わす

「気候の時限爆弾が刻々と針を進めている」
「私たちの世界はあらゆる面から気候変動に取り組む必要がある―everything, everywhere, all at once」(*1)

国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、2023年3月20日に発表されたIPCC第6次評価報告書 統合報告書の発表記者会見に際し寄せたコメントです。

これから10年の行動や選択がこの先数千年に渡り人類や地球に影響をあたえると言われるほど重要な時期である今、生活者一人ひとりが気候変動問題を「我が事」として捉え、対策に取り組んでいく必要があります。

大人はもちろんのこと、これから社会に出て活躍していく若い世代にも、知り・考え・行動できる力を身につけてほしい――

WWFはそのような思いから、中高生を対象としたワークショップを2019年より開催。

気候変動の現状を理解してもらいながら、実際にその解決にかかわる人たちの立場を体験・交渉する機会を提供してきました。

2020年からはオンラインで実施。最近は、2022年12月と2023年1月にオンラインで開催しましたが、「せっかくならば、直接会って議論する機会を」と考え、今回はおよそ3年ぶりの対面開催としました。

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当日の参加者は、計30名の中高生たちです。学年は中学1年生から高校2年生と幅広く、北は北海道、南は九州までの全国各地から集まってくれました。

レクチャーでは地球温暖化の現状を、交渉では自分や相手が大事にしたい部分を知る

ワークショップは、地球温暖化とエネルギーに関する基礎知識を得るための「レクチャーパート」と、2030年のエネルギーミックスをテーマに参加者自身が考えをまとめ、グループに分かれて議論する「交渉パート」の2部構成です。

レクチャーパートの講師は、WWFジャパンが務めます。前半では、地球温暖化の現状や世界の動きについて学びます。日本でも急増する夏の熱中症死亡者数や従来の対策では間に合わない深刻化する現状に、温暖化対策は待ったなしであることの危機感を共有します。

レクチャーパートの講師はWWFジャパンが務める
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レクチャーパートの講師はWWFジャパンが務める © WWFJapan

また、温暖化対策をめぐる各国の話では、2015年に成立した温暖化の国際協定「パリ協定」のほか、2022年11月に行われた温暖化に関する国際会議COP27の様子、最新の国際情勢の話を伝えます。WWFジャパンとして、実際にCOPの会場に出向いて体験した様子を交えながら、多様な立場の国がいる中では「対話と交渉」が重要であるものの、決して一筋縄ではいかない難しさを真剣に語りました。

レクチャーパートの後半は、各エネルギー源のメリット・デメリットなどの特徴を学びます。各エネルギー源について知ることは温暖化対策の鍵をにぎる「エネルギーの選択」を考える上では欠かせません。参加者は、自分が考えるエネルギーミックスとして、2030年にどのエネルギー源をどの割合で作るのかをまとめていきます。

各エネルギー源の特徴を踏まえ、2030年のエネルギーミックスを考える参加者たち
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各エネルギー源の特徴を踏まえ、2030年のエネルギーミックスを考える参加者たち

休憩を挟み、いよいよ交渉パートです。まず、参加者は目指すエネルギーミックスの方向性が近い者同士でグループを作り、グループでのエネルギーミックスをまとめます。続いて、異なるエネルギーミックスを持つグループとの交渉を実施。互いの主張を聞くなかで、自分たちの主張を譲れる部分、逆に大事にしているからこそ曲げられない部分などを整理しながら、合意に向けて一人ひとりが真剣に議論に臨んでいました。

グループに分かれてひとつのエネルギーミックスをまとめあげ、続く交渉で相手のグループに主張するポイントを準備
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グループに分かれてひとつのエネルギーミックスをまとめあげ、続く交渉で相手のグループに主張するポイントを準備

議論では、二酸化炭素や環境汚染物質の排出などの環境面だけでなく、安全性や電気代などの経済面、安定的に供給される電力なのか、輸入に頼りすぎていないかなど、さまざまな角度からの意見が交わされました。また、「数年後には多くのひとがEV(電気自動車)に乗り換えているだろうから……」など、現状を見つめるだけでなく、少し先の未来を想像しながらの意見も出ていました。

地域や学年を超えて真剣に交渉する参加者たち
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地域や学年を超えて真剣に交渉する参加者たち

地元も、年齢も、意見もちがう人と話して価値観が変わった

はじめは初対面同士での議論に「緊張する」と不安そうにしていた参加者たち。しかし、イベントが終わる頃には、エネルギー問題以外の関心事についても意見交換をしたり、連絡先を交換したりと完全に打ち解け、イベント終了後も集まって和気あいあいと過ごしている様子がとても印象的でした。

「人脈が広がった!」「学校以外の人とリアルで交流したのが初めてですごく刺激を受けました。本当に感謝です!」と、わざわざ私たちスタッフに話しに来てくれる参加者も。スタッフが介入しない場で参加者同士がつながりコミュニティが広がっていく対面実施ならではの光景で、有意義な時間となったようです。

また、実際に交渉パートで、「みんなの視点を持ち寄って対話する」、「さまざまな考え方に触れ、互いの意見を高めあう」経験をしたことで、環境問題に対する考え方・価値観や、向き合い方が変わったとの意見が多く聞かれました。

未来に向けて自分は何ができるか?ワークショップ終了後の宣言

最後に、参加者たちが自分には何ができるのかを考え、ホワイトボードに書いてくれた『未来に向けての宣言』をいくつか紹介します。

参加者が残した「これから実践したいこと」がホワイトボードに並ぶ
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参加者が残した「これから実践したいこと」がホワイトボードに並ぶ

  • 知識を身に付ける。勉強し続けます!
  • 自分の意見をしっかりと持ち、相手に自分の考えを伝え、相手の考えを受け入れ、互いに高めあう。
  • まず周りの人(学校)で広めて興味を持ってもらう。
  • 小中学校で地球温暖化を学べるようにする!!
  • 地産地消を心がけて輸送エネルギーを減らす。

今回のワークショップで中高生が自分には何ができるか一生懸命に考え行動を宣言してくれたように、大人も含めた私たち全員が地球温暖化(気候変動)の当事者として考え行動することが必要です。

その未来の実現に向けて、WWFジャパンはこれからもさまざまな活動に取り組んでいきます。


※本プログラムは上田記念財団の御支援を受けて、実施いたしました。また、本ワークショップで使う動画やワークシート、実施者向けインストラクションガイド等は、学校等でも自主的に開催ができるよう、WWFジャパンのウェブサイトで公開しています。ぜひ、下記ページをご覧ください。

気候変動・エネルギー問題を議論する!中高校生向けワークショップ「選ぶ!私たちの未来とエネルギー」【情報・資料の提供ページ】

日時:2023年3月19日(日) 13:00〜16:00
参加者数:30名
主催 :WWFジャパン

(*1)
https://press.un.org/en/2023/sgsm21730.doc.htm

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