©天野陽介/WWF-JAPAN

コアラの絶滅危機がより深刻に!

この記事のポイント
オーストラリアに生息する有袋類の一種コアラの絶滅危機が高まっているとして、同国政府は2022年2月12日、国内版レッドリストで、コアラを「絶滅危惧種(EN)」に選定しました。背景にあるのは、生息環境の破壊、さらに近年深刻化している、気候変動の影響による干ばつや森林火災の拡大です。今回、政府は これらの危機を指摘するWWFなど環境保全団体の要望を受け、コアラの絶滅危機の評価を改訂。同時に、森林の回復などを視野に入れた、保全活動への資金拠出も決定しました。今後の取り組みの強化が注目されます。

2022年2月12日、オーストラリア政府は、自国の国内版レッドリストで、コアラをこれまでの「危急種(VU)」から「絶滅危惧種(EN)」にランクアップすることを決定しました。

これは、IUCNの世界の「レッドリスト」とは異なる、オーストラリアの環境・生物多様性保護法(EPBC法)で選定したもので、オーストラリア国内の野生生物の危機を、より詳細に反映したものです。

今回は、絶滅危惧種として、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、首都特別地域の3地域に生息するコアラが選定されました。

オーストラリアの代表的な動物で、大切に守られているイメージが強いコアラが、なぜ!?と驚く方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実際には、生息地が失われていることなどが原因でコアラは減少しています。

またそれに伴い、ストレスで病気にかかりやすくなったり、交通事故や犬やキツネに襲われるケースが多発しています。

さらに近年深刻なのは、気候変動(地球温暖化)による干ばつと熱波。

特に2019年末に発生した大規模な森林火災は、コアラの重要な生息域に大打撃を与え、減少速度を加速させました。

WWFでも、2001年から20年の間で、クイーンズランド州のコアラは半分に、ニューサウスウェールズ州では最大62%減少したと推計しています。

伐採された丸太の上に避難するコアラの親子
© Briano / WWF-Aus

伐採された丸太の上に避難するコアラの親子

2020年3月、WWFは国際動物福祉基金(IFAW)やヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(HSI)と共同で、連邦政府にコアラを国内版レッドリストの「絶滅危惧種」に引き上げ、保護の強化を訴えてきました。

今回の決定は、政府が耳を傾け、保護の重要性が認識されたという意味では大きな一歩です。

豪州連邦政府追加予算の内訳案。政府は今回、保護強化のため今後4年間で5,000万ドル(約41憶円)の追加予算も決定しました。(豪州連邦政府の声明を参考に編集)©

豪州連邦政府追加予算の内訳案。政府は今回、保護強化のため今後4年間で5,000万ドル(約41憶円)の追加予算も決定しました。(豪州連邦政府の声明を参考に編集)©

EPBC法に掲載される、オーストラリア版レッドリストの絶滅危機カテゴリーの基準表(豪州絶滅危機種科学委員会のガイドラインを参考に編集)。コアラはたった10年の間にVUからENへと警戒レベルが引き上げられました。なお、コアラはIUCN(国際自然保護連合)の世界のレッドリストでも「VU」に選定されています。 ©
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EPBC法に掲載される、オーストラリア版レッドリストの絶滅危機カテゴリーの基準表(豪州絶滅危機種科学委員会のガイドラインを参考に編集)。コアラはたった10年の間にVUからENへと警戒レベルが引き上げられました。なお、コアラはIUCN(国際自然保護連合)の世界のレッドリストでも「VU」に選定されています。 ©

コアラの急速な減少を食い止めていくために最も大切なのは、政府の資金的支援の配分比が示す通り、生息地である森林の保全です。

こうした取り組みを通じ、WWFは2050年までにコアラの数を2倍にすることを目標としています。

目指すのは単にコアラがかろうじて生き残れるような世界ではなく、いきいきと生きていける、豊かな森がよみがえった環境です。

絶滅危機レベルのアップ、という今回の厳しい決定が、回復へのターニングポイントとなることを期待しています。

アンディと名付けられたコアラ。犬に襲われたところを保護され、4か月のリハビリを終えて自然に戻った瞬間
© RSPCA QLD / Peter Wilson

アンディと名付けられたコアラ。犬に襲われたところを保護され、4か月のリハビリを終えて自然に戻った瞬間

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