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COP25報告:パリ協定 積み残されたルールの議論が紛糾

この記事のポイント
平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満(できれば1.5度)に抑えるという長期目標を持つ「パリ協定」が2020年から本格的に始まります。その実施を前に、国連の温暖化防止会議(COP25)が、2019年12月2日から2週間の会期で、スペイン・マドリードにおいて開催されました。ハイライトは、積み残されたパリ協定のルールに合意すること、そして各国が提出した温室効果ガスの削減目標を引き上げる機運が強く打ち出せるかでした。COP25にはスウェーデンの16歳のグレタ・トゥーンベリさんをはじめとした世界の若者たちも参加し、大人たちに対策の強化を訴えました。会期を2日延長した末、COP25はギリギリのところで、各国に対して対策強化のメッセージを打ち出すことができましたが、それは決して、湧き上がる若者たちの叫びに充分に応えたものとはいえません。日本も石炭火力推進姿勢を強く非難されているにも関わらず、応えることもありませんでした。

COP25の3つのハイライト

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今回の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)では、主に以下の3つのハイライトがありました。

1)「パリ協定」の積み残しルールの詳細決定
2)各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げ
 2-1)グレタさんをはじめとする若者の声
 2-2)石炭に固執する日本に対する世界の声
 2-3)COP25における野心の引き上げに関する議論
3)非国家アクターの動き

1)「パリ協定」の積み残しルールの詳細決定

まず一つ目は、積み残されたルールについて合意すること。
実は、2018年12月のポーランド・カトヴィツェでのCOP24において、パリ協定の実施に必要な大筋のルールは、詳細が決められていました(図参照)

パリ協定の主なルール

パリ協定の主なルール

しかし、積み残されたルールがいくつかあります。
その中で代表的かつ最も注目を集めているのは、「市場メカニズム/非市場メカニズム」と呼ばれる論点(パリ協定6条:協力的アプローチ)です。
これは、2カ国以上の国が協力して温室効果ガス排出量の削減を行ない、その削減分を国際的に取引する仕組みのことです。

その他の論点としては、温暖化の影響が、社会の適応できる範囲を超えた時に発生してしまう「損失と被害」への対応を、パリ協定の下でどう扱っていくのか、またパリ協定の下での目標の期間の長さを5年にするのか、10年にするのかといったことがありました。

1-1)市場メカニズム(6条)のルールについて

市場メカニズムと呼ばれる仕組みは、「削減量」を国際的に移転・取引する仕組みです。
ルール形成のやり方を誤れば、パリ協定の下での各国の削減目標に抜け穴が生じることになり、それでなくても足りないパリ協定の各国の削減目標がさらに不十分なものになってしまいます。

これも本来は、2018年のCOP24で決められる予定だったのですが、技術的に非常に複雑であり、各国によって思惑が大きく異なるために、翌年のCOP25に積み残されてしまいました。
そのため、各国の利害を調整して、可能な限り抜け穴のないルールに合意できるかが問われていました。

結論から言うと、この6条に関しては合意に至ることができずに、2020年にイギリス・グラスゴーで開催されるCOP26に再び先送りされました。

「6条再び合意に至らず延期」と聞くと、このCOPは失敗だったように聞こえるかもしれません。
しかし、むしろ変にこのCOPで妥協して、抜け穴のルールが、永続的に続くパリ協定で固定化されるよりも、一旦、結論を先送りし、きちんとしたルールを整える方が、賢明であったとみることもできます。

2020年から実施されるパリ協定のルールは前述した通りすでにほとんどが決まっており、国同士で排出枠を取引するこの6条が決まらなくても運用に大きな支障はないからです。

この6条には3つの異なる仕組み(メカニズム)があります。

パリ協定6条3つのメカニズム

この議論には、4つ、各国によって激しく主張が分かれる論点がありますが、中でも問題となっている二つの「抜け穴」交渉について解説します。(詳しくはスクールパリ協定資料参照

①排出量の2重計上(ダブルカウンティング)を防ぐこと

A国で10トン削減した分を、B国に移転する(すなわちB国が削減したとみなすこと)ならば、両方の国で10トン削減した、と主張すれば、これは削減量の2重計上になります。2重計上するならば、世界全体としての削減量は減るどころか増えてしまうことになります。
そのため、削減した相当分を二国間、あるいは多国間で調整して、二重計上を防ぐルールが必要なのです。

「相当調整」と呼ばれるこのルールをいかに厳格に作るかをめぐって、意見が分かれています。一部の新興途上国、特にブラジルが、この相当調整は、二国間で取引する6条2項のメカニズムだけに適用されるもので、国連管理型の6条4項には適用しない、と主張して、他の国々と対立を深めています。

会期延長されての議長提案では、この二重計上を期限と条件をつけて認める、という妥協案が提示されましたが、最終的に合意は流れて、COP26へ先送りされました。

② 京都議定書時代のクレジットをパリ協定でも使えるようにするか

もう一つ、国によって大きく主張が異なる点が、2008年から実施されている京都議定書の時のクレジットを、パリ協定でも使えるようにするかどうか、です。

京都議定書の下で、初めて国を超えて削減量(排出クレジット)を国際移転する仕組みが出来上がったのですが、京都議定書においては各国は削減目標を容易に達成できたため、多くの排出クレジットは未使用のまま残る結果になりました。
その未使用の排出クレジットを、パリ協定の下で使えるようにしてほしいと、ブラジルやインドなどの新興途上国が強く主張しているのです。
これをそのまま使えるようにするならば、それでなくても足りないパリ協定の削減量が、さらに不十分になってしまうために、多くの国は反対しています。

この論点は2018年のCOP24の時からずっと交渉が難航し、今回のCOP25に持ち越された最大の要因となった点です。特に強硬だったのは、ブラジルとインドで、さらにCOP25では中国も主張して、交渉が遅れる最大の要因となりました。

それに対して、スイスや欧州連合、小さな島国連合などは、「抜け穴を作るくらいならば、6条合意はなし」との態度をCOP25当初から貫いていました。

こちらも期限をつけて認める案や、条件を緩める案など妥協案が出されましたが、妥協案が検討されたものの、最終的には折り合わず、COP26へ持ち越される要因となりました。

1-2) 「市場メカニズム/非市場メカニズム」以外の論点

市場メカニズム/非市場メカニズムを扱う「6条」以外にも、いくつか重要な議題がありました。

1つは、「損失と被害(loss and damage)に関するワルシャワ国際メカニズム」のレビューという議題です。
この議題は第2周目に大臣レベルでの非公式協議の中で交渉が続けられました。

「損失と被害」とは、気候変動の影響が、適応対策が対応できる範囲を超えて発生し、実際に「損失と被害」が発生してしまった時に、どのような対応を国際的に協力してできるのか、という課題です。

交渉が難しかった理由は、この「メカニズム」の果たすべき機能の1つとして、資金支援を含めるかどうかについて、先進国と気候変動影響に脆弱な途上国の意見が対立していたためでした。

この議題については、最終的には対立の溝がうまらず、先進国に対して気候変動影響に特に脆弱な国々への支援(資金を含む)を行なうことを要請する一般的な文言が入った他は、GCF(グリーン気候基金)など既存の資金メカニズムとの連携を深めるための専門家グループの設立を決定するなど、部分的な取り決めのみとなりました。

もう1つは「共通タイムフレーム」と呼ばれる議題です。
パリ協定の下で、各国は国別目標(NDC)と呼ばれる目標を掲げており、日本も「2030年までに温室効果ガス排出量を2013年と比較して26%削減する」という目標を掲げています。
「共通タイムフレーム」というのは、現行の各国の2030年目標の次、つまり、2031年以降の期間に関する国別目標(NDC)が、2035年までの目標となるのか、それとも2040年までの目標になるのかを決めるという議題です。

「共通の」目標年を定める、ということ自体は既にパリ協定で決まっていますが、それを「5年」=2035年、「10年」=2040年にするのか、それとも、「5+5年」=2035年+2040年にするのかについて、各国の意見が対立しており、決まっておりません。

この議題については、今回の会議でも結論を得ることができず、第2周目冒頭に次回の6月の補助機関会合に議論が延期されました。

さらに「第2次定期レビュー」と呼ばれる議題もあります。
これは、基本的に最新の科学をどのようにこの体制の中に取り入れていくのか、という課題です。

あまり知られていませんが、前回の第1次レビューの結果として、パリ協定の有名な長期目標である「2℃より充分に低く、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標は作られました。

今回は特に、このレビューのもう1つの役割である、「長期目標への進展をレビューする」という部分について、気候変動枠組条約の下の全ての約束を対象として、2020年までの(先進国からの)資金・技術・キャパシティビルディングなどの取り組みの不充分さを指摘したい一部の途上国と、それを避けたい先進国との間で議論が対立しました。

最終的には、「2020年までの努力の不充分さ」を検証する場については、別にラウンドテーブルが設けられ、そこからの報告を受け取る形で、2020年後半から2022年までの実質2年間に、開催されることになりました。

2)各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げ

2つ目のハイライトは、今回のCOP25の一番の焦点である、各国の削減目標を引き上げる機運が醸成されるかどうかでした。

COPでは、この削減目標の引き上げを含む取り組みの強化を、しばしば「野心(ambition)の強化」と呼びます。
パリ協定の「ルールブック」の最後の詰めを行なうことはもちろん大事ではありますが、同時に、各国に対策の強化を促すものとならなければなりません。

先進国・途上国の枠を超えてすべての国が参加する画期的なパリ協定ですが、削減目標を含む国別目標(NDC)はそれぞれの国が国内で決めたものを国連に提出する仕組みとなっています。

しかし結果として各国がパリ協定に現状で提出している削減目標は、すべて足し合わせても、気温上昇を1.5℃はおろか、2度未満にさえ抑えることのできないレベルにとどまっています。

削減目標は2020年の2月までに、各国が再提出することが決まっているため、その際に、「強化」して持って来ることを、今回のCOPが決定として呼びかけることができるかどうかが焦点でした。

2-1) グレタ・トゥーンベリさんの到着と気候マーチ

世界中に広がった「未来のための金曜日」を始めたグレタ・トゥーンベリさんを讃えるプラカード
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世界中に広がった「未来のための金曜日」を始めたグレタ・トゥーンベリさんを讃えるプラカード

世界各地で異常気象が観測された2019年は、気候「危機」や気候「非常事態」という言葉が頻繁に使われるようになり、それを受けて、若者世代が世界各地で声を挙げ始め、学校ストライキやマーチ(行進)を行なった一年でした。
そして、「未来のための金曜日」と呼ばれるその運動の中心にいたのは、スウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんでした。

トゥーンベリさんは、第1週目の金曜日、12月6日にCOP会場に到着しました。前回のCOP24にもトゥーンベリさんは来ていましたが、その当時とは比較にならないほどの大きな注目を集め、彼女の行く先々で大量の人だかりができる事態となりました。

同日には、マドリード市内で気候マーチが開催され、主催者発表で50万人とも言われる多くの市民やNGOが、気候変動対策を訴える行進をに参加。WWFのメンバーも、「今しかない!」と対策を訴えるバナーをかかげ、サポーターやボランティアの方々と共に行進に加わりました。

トゥーンベリさんも、マーチの参加者に向かってスピーチを行ない、世界の指導者たちや政策決定者への行動を訴えました。

その他にもアフリカ・ウガンダの少女など世界中から多くの若者たちがCOP25に参加し、「若者COP」と言えるほど、若者たちが会場で活発に「野心(削減目標などの温暖化対策)の強化」を訴えました。

「今は私たちの世代は20%に過ぎないけど2050年には80%になる。私たちの将来を壊さないで」と訴える若者の声が、会議をしている政府交渉官の部屋まで届き、会場中に響き渡っていました。

2-2) 石炭に固執する日本の姿勢に批判が集まる

そうした中、日本は2回も化石賞を受賞しました。
化石賞は、地球温暖化問題に取り組む世界120か国の1300を超えるNGOのネットーワークであるCANインターナショナルが、温暖化対策に消極的な国に与える不名誉な賞。

毎日夕方に行われる授賞式は多くのCOP参加者が詰めかける一大イベントで、その様子は国内外のメディアを通して世界に発信され、SNSでも拡散されます。

石炭火力発電はどのように高効率であっても、天然ガスの約2倍のCO2を排出するため、気候変動の最大の要因のひとつです。

そのため、日本政府が国内で石炭火力発電の新設を進め、さらに公的資金で海外の石炭火力を支援している姿勢には、早くから世界の環境NGOが批判をくり返してきました。

それでも石炭火力に邁進する日本に対し、国連も警告を発し始めました。
COP25直前には、国連環境計画(UNEP)が最新の報告書で日本に対して石炭火力発電を新設しないよう促し、COP25の開会式では、グテーレス事務総長が9月の気候サミットに続いて、ふたたび石炭火力発電からの「中毒」から脱却するよう訴えました。

1回目の化石賞を日本が受賞した理由は、梶山経済産業大臣が記者会見で「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と発言したこと。
この発言が、国内外のメディアに報道されるやいなや、世界の市民社会はCOP25の交渉を後退させる言動であるとして、即座に反応したのでした。

そして2回目の化石賞は、2週目に注目を集める小泉進次郎環境大臣が到着し、日本が大臣級会合でスピーチをしたときです。
小泉環境大臣は、日本の大臣としては初めてCOPにおいて「国際社会からの日本の石炭政策に対するグローバルな批判は認識している。グテーレス事務総長の石炭中毒からの脱却の訴えも、日本に対するメッセージと受け止めた。」と率直に述べられ、今までにない真摯さは感じられました。

そして「本日は日本の石炭姿勢に何も進展は伝えられないが、自分を含めて多くの日本人がより気候対策をしなければならないと信じている」として無念さを滲ませていたのが印象的でした。
しかしいずれにしてもこのCOPでは、政府としてはゼロ回答であることには変わりありません。

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実は日本は「パリ協定」の資金援助の基金に多額の資金を提供している国(累積拠出額世界第2位)で、本来は評価されることもしているのに、石炭にここまで固執することによって、石炭国としてのマイナスイメージばかりが先行しています。
これは世界の温暖化対策の推進にとって問題であるだけではなく、日本にとっても本当に得策ではありません。

2-3) 全ては「野心強化」のために:COP25で決まった野心に関する決定

COP25は、会場の内外で挙がる、気候危機とそれへの対応を訴える声に応えることが期待されていました。

COP25開会のスピーチにおいて、アントニオ・グテーレス国連事務総長も「各国は、パリ協定の下での約束を誠実に守るだけでなく、野心を大幅に強化することが必要です」と呼びかけました。議長国であるチリのシュミット環境大臣も今回のCOPを「野心の」COPにしたいと述べていました。

この「野心強化」に向けた気運を盛り上げるため、2019年9月にグテーレス国連事務総長主催で開催された国連気候行動サミットにおいて、COP25議長国チリ主導で野心のための気候同盟(Climate Ambition Alliance)が結成されました。

そのCAAに参加する国々のうち、2020年までに削減目標を強化して再提出すると宣言している国は73カ国あり、加えて、国内で検討を始めた国が11カ国あります(12月11日時点)。

この計84カ国の中に、日本は残念ながら含まれていません。
他方、国内検討を始めた「11カ国」の中には欧州各国が多く含まれており、実際に、12月11日、欧州委員会から、「欧州グリーンディール」という、削減目標引き上げ(現行の40%削減から50〜55%削減)への提案を含む一連の政策が発表されました。

会期後半には、マーシャル諸島やコスタリカなど、島嶼国や一部の中南米諸国からなる高い野心連合(High Ambition Coalition)と呼ばれる国々のグループが記者会見を開き、国別目標(NDC)強化の文言を出すことを支持。

その内外からの声に、COP25がどのように応えるかが、会議後半では注目されましたが、会期を1日延長した12月14日土曜日朝、議長国チリが出してきた妥協案に、会場内では失望の声があがりました。
野心強化に向けた文言が極めて弱い形でしか入っていなかったからです。

途中経過報告の総会では、その議長案に対して、島嶼国、後発開発途上国、EU、ノルウェー、スイス、AILAC(コロンビア、コスタリカなどの中南米国グループ)が、国別目標(NDC)強化を入れるべきだとの声を挙げました。

その後も続き、夜を徹した交渉が行なわれ、会期延長2日目12月15日の未明に出てきた議長案は、なんとか、間接的な表現ではあるものの、各国に現状の努力とパリ協定の長期目標のギャップを検討した上で、「可能な限り、最も高い野心」を反映させることを呼びかける内容となっていました。

直接的に目標引き上げを語る強い文言ではないため、決して、会議場の外から湧き上がった声に充分に応えているとはいえませんが、それでも、多国間交渉の難しさを乗り越えての、野心強化のメッセージが出された意義は大きいといえます。

3)非国家アクターの動き

そしてCOP25ハイライトの3つ目は、国連の交渉の外で、活発に繰り広げられる政府以外の主体「非国家アクター」の積極的な温暖化対策の表明です。

3-1) アメリカの非国家アクターの積極的な温暖化対策

パリ協定は、非国家アクターと呼ばれる都市や自治体、企業などが、国を超えて集まりさまざまな温暖化対策のイニシアティブを立ち上げ、野心的な温暖化対策を次々と打ち上げたことも、大きな力となったことで成立しました。

その後に開催されたCOPでは、実際の政府間の交渉の場と同じ大きさの会場が横に用意され、各国政府のみならず、都市や自治体、企業がパビリオンなどを出展して、「2050年(もっと早くも)に排出実質ゼロ」、「石炭火力廃止」などの積極的な約束を競って表明するようになっています。
そして今回のCOP25においても、活発な非国家アクターの動きが繰り広げられました。

中でも大きな注目を集めたのは、トランプ大統領のいるアメリカです。
トランプ大統領は今回国連に対して正式にパリ協定からの離脱を通告しました。

もっともパリ協定は離脱を通告してから1年後にしか抜けられないので、アメリカが正式にパリ協定から離脱するのは、2020年11月4日、すなわち次期大統領選挙の翌日です。
それまではアメリカ政府代表団もCOP25を含めてCOP会議に参加し、真摯にパリ協定のルール作りに参加はしています。

そのアメリカで連邦政府が不在の中でも、州政府や都市、企業の連合が「我々はまだパリ協定にいる(We Are Still In)」という連盟が拡大しており、今やアメリカのGDPの65%、排出量にして50%を超える参加を得て、ますます力を増しています。

そのWe Are Still InおよびAmerica’s Pledgeの立役者の一人、ブルームバーグ氏などが会場に登壇して、アメリカの温暖化対策の前進を次々と訴えていました。これらも交渉を後押しする大きな力となっています。

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3-2) 日本の非国家アクターの積極的な温暖化対策

日本の非国家アクターのネットワーク組織として、WWFジャパンも事務局として参加する気候変動イニシアティブ(JCI)もCOP25に参加。
We Are Still In / America’s Pledgeや、非国家アクター連合体の国際ネットワークであるAlliances for Climate Actionと共に、各種サイドイベントを出席・開催しました。

アメリカや日本だけでなく、世界各国において、非国家アクターは、時に政府よりも一歩先んじた、脱炭素化に向けた取り組みを実施しています。

今回もジャパンパビリオンにおいて、日本から東京都、横浜市、京都市の参加を得て、日本の非国家アクターもすでに排出ゼロに向けてさまざまな取り組みを行なっていることを紹介しました。
これらCOP25に関するJCIの活動については、JCIのウェブサイトにおいて報告されています。

©気候変動イニシアティブ
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4)COP26にむけて

2020年はいよいよパリ協定が始まると同時に、日本も含めた全ての国が温室効果ガス排出量削減目標を含む国別目標(NDC)の再提出を行うことになっている年です。日本は、今回のCOP25でも批判を受けた石炭火力発電所に関する海外支援および国内政策についての姿勢を見直し、国別目標(NDC)の「野心の強化」を行うことが必要です。それができなければ、日本は、今回の若者の声に強く表れていた、気候危機への対応を求める世界の潮流を無視し続けることになります。

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COP25の会議の行方を2週間、現地で追い続け、より高い着地点を目指して活動してきたWWFジャパン 気候変動・エネルギーグループの専門家二名は、その終了にあたり、次のコメントを出しました。

小西雅子

このCOP25は「野心のCOP」、すなわちパリ協定へ出している各国の削減目標の引き上げをはかることが最大の狙い。それを求める若者たちの声がかつてないほど世界中から大きく響き、「若者COP」でもありました。残念ながらCOP25の大人たちは危機感に応える行動を十分には示せませんでしたが、対策を求める機運は世界中で高まっています。小泉環境大臣が日本としては初めて世界からの石炭批判に正面から向き合ったのが鮮明だったCOP会議、石炭などのCO2高排出構造から脱却する政策がまだない日本を変えることが急務です。

山岸尚之

今回のCOPでは、これまでになく、交渉の「中」と「外」の差を強く感じました。「外」では、これまで以上に気候変動の危機が叫ばれ、若者の声が高まる一方で、交渉の「中」では「市場メカニズムをとりまとめる」議論が中心に進む様は、やや異様でした。しかし、議長国チリも含め、多くの国はその「差」に気付き、「野心の強化」を主要な成果にするべく、努力をしました。その中に日本の姿がなかったのが無念です。日本も、今後、具体的に取り組みを強化していくためには、石炭火発技術の輸出および国内石炭火発増設の問題に向き合っていくことが必要です。

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