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COP24「パリ協定のルール作り」交渉の1週目はどうなったか?

この記事のポイント
2015年に開催された、国連の気候変動に関する会議「COP21」において、すべての国を対象とした地球温暖化対策の国際協定「パリ協定」が成立しました。産業革命前から比べて気温上昇を2度未満(可能な限り1.5度未満に抑える努力)に抑えることを目的とした「パリ協定」。世界の国々は、これをどのように実施していくのか。そのルール(実施指針)は、2018年12月2日から14日までポーランドのカトヴィツェで開催される国連の会議「COP24」において決めることになっています。そのCOP24の1週目は、各国の交渉官レベルで行われ、なんとかルール集のドラフトに合意して、2週目の大臣級会合に送ることができました。

「パリ協定」のルール作りとは何か?

2015年に、フランスのパリで国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、すべての国を対象とした地球温暖化対策の国際協定である「パリ協定」が成立しました。

パリ協定は、産業革命前から比べて気温上昇を2度未満に抑える(可能な限り1.5度未満に抑える努力をする)ことを目的として、21世紀後半に、世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、という目標を世界全体で共有する、画期的な協定です。

そのパリ協定をどのように実施していくかの詳細なルール(実施指針)は、2018年12月2日~14日にポーランドのカトヴィツェで開催されるCOP24において決められることになっています。

パリ協定は、温室効果ガス排出量の「削減」から、温暖化の悪影響に抵抗力をつける「適応」、世界すべての国が取り組むために必要となる途上国への「資金と技術支援」、「森林伐採によって発生するCO2排出の防止」まで、あらゆる温暖化対策を含んだ総合的な国際協定です。

そのため、その実施のためのルールも多岐にわたります。2015年から3年間 にわたって、国連では、これらのルール作りのための交渉が急ピッチで続けられてきました。

パリ協定の始まる2020年を前に、いよいよこのCOP24において、その膨大なルール集に合意しなければなりません。

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開会式の様子
©WWFジャパン

開会式の様子

COP24の1週目にルール作りはどのように進展したか?

先進国と途上国の温暖化対策に明確な差を設けていた京都議定書時代から、すべての国を対象とするパリ協定に移行することにはなりましたが、引き続き、歴史的な排出責任を巡って、先進国と途上国の深刻な対立が続いています。

決めなければならないルールは多岐にわたりますが、そのすべてに、この先進国対途上国の対立が形を変えて表出し、交渉は困難を極めています。

COP24の1週目は、各国の交渉官レベルで議論が行われ、2週目に大臣などのハイレベル会合が予定されています。すなわち、3年にわたった交渉官レベルの会合をいよいよ1週目には決着させて、対立点は選択肢や括弧書きの形に整理した決定文書の草案を準備し、それをハイレベル会合にあげるというのが、1週目の焦点でした。

緩和(削減)、適応、透明性、グローバルストックテイク、遵守、資金、技術移転、市場メカニズムなどの主要議題項目ごとに分かれて議論がされ(下の一覧参照)、1週目の間に、各国の意見を取り入れた交渉テキスト(決定文書の草案)が2回から3回にわたって矢継ぎ早に出され、交渉が急ピッチで進みました。

パリ協定実施指針の主要議題項目

  • 国別目標(NDC)に関するガイダンス (パリ協定 4 条))
  • 適応報告 (パリ協定 7 条:適応の情報について)
  • 透明性フレームワーク (パリ協定 13 条:緩和と支援の透明性の方法や手法、ガイドラインについて)
  • グローバル・ストックテイク(パリ協定14条:全体の進捗評価)
  • 促進および遵守(パリ協定15条:遵守を推進し、実施を促進する委員会の効果的な運営のための様式や手順について)
  • その他(適応基金の扱い、各項目のリンケージについて、パリ協定9条5項など)
  • (市場)メカニズム(パリ協定・6条)
  • 先進国の支援の予定の報告(パリ協定9条5項)

各国は、新しい交渉テキストが出るたびに、吟味する時間もあまりない中でも、それぞれの言い分を強く主張し、「これでは自国の意見は反映されていない」「各国の主張の取り入れ方がバランスがとれていない」などと不満をぶつけて、先鋭化した対立を見せていました。
しかし、結果として、すべての主要議題項目について、進捗の差はあるものの、なんとか決定文書の形に整理された草案がまとめられました。合意ができなかったところは、複数の選択肢として整理されたり、括弧書きで書かれたりしています。

全ての論点について合意が出来ていない未完成な状態ではありますが、議題項目ごとの草案をひとまとめにした結論文書を、翌週からのハイレベル会合が実施されるCOPに報告して、3年にわたってパリ協定のルール作りを担ってきたパリ協定特別作業部会は役割を終えました。

交渉官レベルで詰められることができる所はだいぶ詰まってきたので、特に難しい論点については、第2週目に到着する各国の閣僚たちによるハイレベル会合において交渉されることになります。

対立点はたとえば、すべての国を対象とするパリ協定において、開発の程度に大きな差がある途上国と、先進国との間に、どのようにその取り組みを差異化していくか、そして途上国に対する資金や技術援助の仕組みを整えていけるか、などが挙げられます。

ここで難しい点は、「途上国」といっても、その発展や開発の程度には大きな差があることです。小さな島国やアフリカ諸国、後発開発途上国など、開発が遅れている途上国に対しては、資金・技術支援を行い、彼らの緩和(削減)の取り組みにも厳格さを求めないことにはあまり異論はありません。しかし、急速に開発が進み、排出量が急増している新興途上国に対しては、先進国と同じレベルの取り組みを(今は求めなくとも)近い将来に同程度に持ってこられるような仕組みにできるかが問われています。

これらの難題をぎりぎりの妥協点でもって成立したパリ協定は、その実施ルールを決める交渉において改めて、先進国と、開発の程度や考え方によってさまざまなグループに分かれている途上国との間で、火花を散らした交渉が繰り広げられています。

パリ協定を効果的に進めていくための実施ルールが、なるべく環境十全性が高い形で採択されることが必要です。

もう一つの注目点—「タラノア対話」

パリ協定のルール策定ともに、今回のCOP24の注目点となっているのが、「タラノア対話」というイベントです。

「タラノア対話」の開催は、実は2015年のパリ協定採択時点に決まっていました。その時は「促進的対話」という名前でしたが、2017年のCOP23において開催の様式が決まり、その時の議長国であったフィジーの言葉をとって、「タラノア対話」と名付けられました。
タラノア対話は、単発のイベントとしてではなく、2018年1年間を通じて、国連、各国国内、そして各地域で開催されてきました。中には、ブラジルのように、国内で6回も開催した所もあったようです。日本でも政府がウェブサイトを開設し、関連したイベントが開催されました。

このタラノア対話の主な役割は、各国の排出量削減の取り組みをどうやって強化していけるのか、アイディアを共有し合うことです。背景には、現状の各国の削減目標を積み上げても、パリ協定の大目標である、「世界の平均気温上昇を2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標に届かない、という事実があります。

しかし、削減対策の強化という話題は、COPの場で議論するにはなかなか難しい話題です。すぐに、「先進国がやっていない」「いや、途上国がもっと頑張るべきだ」という指さし議論になってしまう傾向があるからです。このため、あえていつもの「交渉」という形式ではなく、「対話」という形式をとり、しかも、なるべく解決策を重視した建設的な話し合いをしよう、という精神でタラノア対話は行われてきました。

COP24第1週目終盤の12月6日に開催されたタラノア対話に関する会合では、これまでの1年間、国連やその他の国や地域の場で開催されてきた対話や、各国、企業、自治体、研究機関、市民団体などから提出されてきたアイディア・意見などをまとめた統合報告書の説明がされました。加えて、10月に発表されたIPCCの1.5℃に関する特別報告書の解説も行われました。その後に各国代表団が意見を述べる機会がありましたが、各国とも、「タラノア対話」が、この国連気候変動交渉に持ち込んだ新しい精神を歓迎している様子でした。

タラノア対話で1.5℃に関する特別報告書を発表するIPCC
©WWFジャパン

タラノア対話で1.5℃に関する特別報告書を発表するIPCC

これを受けて、第2週目では、このタラノア対話の集大成として、各国大臣たちによる対話が開催されます。その場で、大臣たちが、どんなアイディアや意見を持ってくるのかに注目が集まっています。

そしてさらに重要なことは、その大臣たちの「対話」を、単に「良いアイディアが共有できてよかった」という話に終わらせるのではなく、「これだけ良いアイディアがあるのだから、やはり、各国に持ち帰って、目標の強化をしよう」という決定を、COP24として出せるかどうかが大事です。タラノア対話の成果をどう受け止め、次の一歩を打ち出せるのかは、COP24で、ルールの策定と同じくらい重要なもう1つの試金石です。

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