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アマゾンにおけるジャガー保護 活動報告(~2026年6月)

この記事のポイント
南米の生態系の頂点に立つジャガーは、アマゾンをはじめとする貴重な自然環境の健全性を示す重要な存在です。しかし近年は森林破壊や、家畜への被害などをきっかけにジャガーが害獣扱いされ、人との間で軋轢(あつれき)が生じる問題が発生。地域社会と野生生物の共存が大きな課題となっています。WWFブラジルではWWFジャパンの支援のもと、ジャガーの保護と地域住民の暮らしの両立を目指し、行政機関の能力強化や地域調査、住民との対話を進めてきました。2026年6月までの1年間に取り組んだ活動の内容と成果について報告します。
目次

アマゾンをめぐる環境問題の現状

世界最大の熱帯雨林であり、生物多様性の宝庫でもある、南米アマゾンの森。

この森の生態系の頂点に立つ野生動物が、大型の肉食獣ジャガーです。

2026年6月までの1年間を振り返ると、ブラジル政府の取り締まり強化などにより、2025年のアマゾン全体の森林面積の減少は、過去最低水準まで低下。

また、2025年11月には、ブラジル東部のパラ州ベレンの町で、国連の気候変動会議(COP30)が開催され、気候変動対策と森林保全の一体性が強調されるなど、アマゾンの自然を守る上でも追い風となる出来事がありました。

しかし、アマゾンを襲う危機が、これで解消されたわけではありません。

2023年から2年間続いた深刻な干ばつは解消したものの、上流部のパラナ州などでは逆に洪水が頻発。多くの野生生物と、自然の豊かさを頼って生きる人々の暮らしに、深刻な被害をもたらしました。

また、アマゾンの中でも比較的、森林環境がよい状態で保たれているブラジル北部のアマパ州でも、地域の住民とジャガーなどの野生動物との間で、さまざまな「あつれき(軋轢)」、すなわち衝突が生じています。

アマゾン川流域の森と川。特にアマゾンの北部は、豊かな森が今も残り、ジャガーにとって重要な生息域となっています。
©WWF-Japan

アマゾン川流域の森と川。特にアマゾンの北部は、豊かな森が今も残り、ジャガーにとって重要な生息域となっています。

ジャガーと人との間で生じる「あつれき」の問題

WWFジャパンの支援のもと、このアマパ州でジャガーの保護・調査活動に取り組んできたWWFブラジルでは、現在この住民と野生動物の「あつれき」の問題の解消に向けた活動を展開しています。

現場では、ジャガーなどが家畜を襲う例が生じている一方、ジャガー以外の動物(野犬など)による被害もジャガーのせいにされたり、住民が対応に苦慮するケースが起きています。

WWFブラジルでは、2026年6月までの1年間の活動でも、ジャガーを含む10種の野生動物が関与する16件の「あつれき」事例を確認しました。

報告された事例は、家畜被害や漁業活動への影響、人との衝突事故など。特にジャガーについては家畜のウシやスイギュウ、ブタなどに被害が起きており、地域住民にとって切実な問題となっていることがわかりました。

こうした被害は、時に野生動物への恐怖や反感を生み、報復的な捕殺につながります。

ジャガーについても害獣としての駆除が進むと、これまで守られてきた個体も失われ、保護活動の成果も無駄になってしまいます。

ジャガーを守るためには、保護区などの整備を進めるだけではなく、地域社会が抱える課題を理解し、被害を減らしながら共存できる仕組みをつくることが欠かせないのです。

共存を目指して ~アマパ州でのWWFの取り組み

こうした状況の中、WWFブラジルでは、アマパ州で次のような活動を展開。それぞれの取り組みの中で、進展と課題を手にしました。

1.地域住民とともに進める共存に向けた現地調査

アマパ州内の複数の地域コミュニティで、住民を対象としたインタビューや参加型のワークショップ等を実施。人と野生動物の関係や被害の実態を調査しました。
この取り組みでは、地域住民の知見を取り入れながら、人と野生動物の間で生じている衝突の発生要因や、地域ごとの特徴を整理しました。

成果:
調査対象としたエリア内で、特に人と野生動物の「あつれき」が発生しやすい地域や、そのパターンを把握。被害に遭っている家畜の放牧方法など、被害のリスクを高める要因を特定しました。
こうした情報を基に、地域住民の声を反映した共存策の検討基盤を整備。ジャガーをはじめとする野生動物の保全活動に、地域社会が参画できる仕組みづくりを促進しました。

課題:
交通手段の乏しい奥地などでは、継続的な情報収集や支援が難しいため、適切な対応が十分に取れていません。こうした地域を含め、ジャガーの生息エリアをカバーする視野で、長期的な取り組みを継続することが求められています。

たくさんの参加者を得て行なわれた共存のためのワークショップ。具体的な衝突の事例や必要とされる対策について話し合いました。
© WWF-Brazil

たくさんの参加者を得て行なわれた共存のためのワークショップ。具体的な衝突の事例や必要とされる対策について話し合いました。

2.地域での啓発活動と意識向上

地域の現状や住民を対象とした調査やワークショップにあわせて、ジャガーやピューマと遭遇した際の適切な対応方法や安全対策を伝える啓発活動を実施しました。
特に、専用の教育資料の配布や住民との対話を通じて、野生動物と保護活動への理解促進を図りました。

成果:
実施した地域では、ジャガーに対する理解が深まり、ジャガー以外の動物による被害をジャガーによるものと誤解する問題の解消に貢献しました。
また、野生動物との遭遇時に、地域住民の安全確保に役立つ知識の普及も推進。共存に向けた前向きな対話の機会を創出しました。

課題:
啓発だけでなく、実際の被害軽減につながる具体的な対策の導入が、現場ではまだ不十分です。今後の対応として、そのためのルール作りやツールの導入などが求められます。

啓発活動用に制作したパンフレット。ジャガーの生態や適切な対応などについて解説しています。
© WWF-Brazil

啓発活動用に制作したパンフレット。ジャガーの生態や適切な対応などについて解説しています。

3.ジャガーと人との衝突に対応する人材育成

アマパ州の環境事務局と協力し、ジャガーやピューマによる家畜被害への対応や予防策を学ぶ専門研修を実施。
特に、州・市町村の環境機関、保護区職員、研究者など35名以上の参加を得て、地域の対応力の強化と被害の軽減を目指しました。

成果:
関係者の間で、捕食被害の原因となる動物を正しく識別する技術が向上しました。
また、野生動物を報復的に捕殺する行為の防止につながる知識も共有。
結果として、行政機関や研究者間の連携が強化され、州全体での対応体制づくりが前進することになりました。
専門家ネットワークの基盤の構築は、人と野生動物の将来的な共存施策を支える上で欠かせない取り組みです。

課題:
北海道よりも広大なアマパ州で、より広範な地域を対象とした迅速な対応を実現するためには、さらなる人材の育成とネットワークづくりを、継続的に行なっていく必要があります。

アマゾンの森の中での調査活動。こうした活動に取り組む人たちのスキルや経験が、保全活動の成否を握っています。
© WWF-Brazil

アマゾンの森の中での調査活動。こうした活動に取り組む人たちのスキルや経験が、保全活動の成否を握っています。

4.将来の保全政策に向けた基盤づくり

アマパ州政府と共に、州内に分布するジャガーなどの大型ネコ科動物の保護と共存を推進するため、州レベルの行動計画の策定に向けた検討を実施。
州政府との協議を通じて、まずは制度的・技術的な基盤強化を優先する方針を確認しました。

成果:
今後必要となる能力強化や関係者連携の課題を整理すると共に、研究成果の質を高めるための追加データ収集を実施しました。これは、州政府との連携による、将来的な政策形成に向けた関係強化にもつながりました。

課題:
州政府との協議の結果、行動計画の策定は時期尚早と判断され、延期されることになりました。ジャガーの生息状況を評価する標準化された調査手法をまとめた科学論文も追加データの収集を優先するため、次年度(2027年6月まで)に持ち越しとなりました。
また、州全体の保全戦略を策定するために、さらなる関係者の参加と合意形成が必要です。

© Richard Barrett / WWF-UK

ジャガーの未来に向けて ~WWFの今後の取り組み

2026年6月までの活動を通じて、人とジャガーの共存は生態学的な課題であると同時に、社会的な課題でもあることが改めて明らかになりました。

WWFブラジルは今後、共存に向けた専門家のネットワークをさらに強化するとともに、野生動物による被害が発生しやすい地域で、具体的な予防策の導入を進めていく予定です。

また、地域住民、行政機関、研究者との協働を深めながら、将来的な州レベルの行動計画策定に向けた基盤づくりにも取り組んでいきます。

ジャガーはアマゾンの豊かな自然を象徴し、その生態系支える重要な存在です。

人の暮らしと野生生物の保全が両立する未来の実現に向けて、WWFはこれからも地域の人々とともに取り組みを進めていきます。

担当スタッフより:ご支援いただいた皆さまへ

野生生物グループ:岡元友実子

日本の反対側、南米のブラジルで展開されている、私たちのジャガーの保護プロジェクトは、WWFジャパンの活動をご支援くださっている、アドプト・スポンサーズの皆さまからの温かいご寄付によって継続されています。

地域住民との対話、環境行政の能力強化を実現し、人と野生生物の共存に向けた試行錯誤、現場のさまざまな苦労は、一言で言い尽くせるものではありません。

それでも、ジャガーの保護に欠かせないこうしたチャレンジを、ブラジルの仲間たちが続けられているのは、日本の皆さまからの応援が、確かに現場に届いているからです。

アマゾンの豊かな自然とジャガーの未来を守る活動は、一朝一夕に達成できるものではありません。

それでも、一つひとつの調査や対話、継続的な信頼と協力関係の積み重ねは、そのゴールに向けた道のりの確かな基礎となるものです。

長期にわたり活動を支えてくださっている、ジャガー・スポンサーズの皆さまに、この場をお借りして心より感謝を申し上げますと共に、今後もご一緒に、人と自然が調和して生きられる未来を目指していただければ幸いです。

ジャガーの画像

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