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IUU漁業対策新法成立に際し、歓迎の意と提言を発表

この記事のポイント
2020年12月4日、国会で「特定⽔産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」が可決・成立しました。この法律は、IUU(違法・無報告・無規制)漁業由来の水産物を根絶するための、日本では初めての法律です。これを受け、WWFジャパンは「IUU 漁業対策フォーラム」のメンバーとして、新法の成立を評価・歓迎するとともに、2年後の法律の施行に向けた措置として3つの提言を行ないました。

日本でIUU漁業対策を進める新たな法律が成立

2020年12月4日、IUU漁業対策を目的とする「特定⽔産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」が参議院国会で可決・成立しました。

IUU漁業とは、Illegal, Unreported and Unregulated漁業、つまり、「違法・無報告・無規制」に行われている漁業のことです。

このIUU漁業は、世界の水産資源の持続可能な利用や海洋生態系の保全に深刻な影響をもたらし、正規の漁業者を不公平な競争にさらすものとして、大きな国際問題となっています。

日本は、EU、アメリカと並ぶ世界の三大水産物市場ですが、この日本市場でもIUU由来の水産物が多く流通していると推定されており、その対応が喫緊の課題となっていました。

そして今回、既にIUU漁業規制を導入しているEUとアメリカに次いで、日本が新たにIUU漁業由来の水産物の流通を規制する法律を導入。

これはIUU漁業由来の水産物の生産、流通、輸出入を、日本で根絶していく上での、重要な第一歩となるものです。

また今後、日本がこの法律に基づき、IUU水産物の流通をしっかりと防ぐ制度を導入することで、世界のIUU漁業の根絶に向けても、大きな効果を発揮すると期待されます。

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IUU漁業根絶に向けた提言

この法律の施行は2年後と予定されており、制度の詳細はこれから定められる政省令に委ねられています。

つまり、具体的にどのような基準でどのような魚種を規制の対象とするのかは、未定なのです。

さらにIUU漁業由来の水産物の流通を具体的に防ぐために、魚が漁獲されてから、陸揚げ、輸出入を含む流通、加工、販売という各過程を経て消費者に届くまでに、どの段階でどんな情報を収集し、どのように確認するのかについては、これから決めていくことになります。
さらに陸揚げされるまでに、海上で密漁船から漁獲物を取引する「洋上転載」がIUU漁業の隠れ蓑になっていることもあります。

こうした現状を受け、WWFジャパンは他団体と設立した「IUU 漁業対策フォーラム」のメンバーとして、新法の成立を評価・歓迎するとともに、2年後の施行までに行なうべき措置を指摘する、以下の3点の提案を行ないました。

1.公平で明確な基準に基づく対象魚種の選定

IUU漁業に由来する水産物の輸入・市場流通を根絶するためには、魚種の虚偽報告などの抜け道を塞ぐ観点からも、最終的には全魚種を制度の対象とすることが望ましい。対象魚種の選定に当たっては、公平かつ明確な基準に基づきIUU漁業のリスクが高い魚種(例えば輸入水産物についてはマグロ類、カニ類、ウナギ類、ヒラメ・カレイ類、イカ類など)を確実に対象に含めること。
対象魚種について議論を行う検討会は、生産者、加工業者、流通業者、消費者等のサプライチェーン上の関係者に加えて、科学者、環境保護団体など幅広い立場のステークホルダーを含めた上で、オープンなプロセスで進めること。

2.電子化による事業者負担の軽減及びトレーサビリティの推進

本法律に基づき、事業者の負担軽減を図りながらトレーサビリティを推進するためには、ICTの活用が不可欠である。国産水産物については、スマート水産業の取組と連携しながら、漁獲番号及び当該漁獲番号に係る情報を中央データベースに保存し、必要に応じて共有できる仕組みを構築することが考えられる。これにより、事業者による取引記録の作成・保存や、行政による不正の防止・検証などに係る手間やコストの軽減を図るとともに、将来的には生産者や流通関係者に相応のメリットを生じさせるような、互換性や拡張性を持たせた電子データの活用を図ること。

3.国際連携の推進

本法律の趣旨であるIUU漁業の撲滅は、国際的に連携した取組が求められる。特に輸入水産物への添付が求められる漁獲証明書の記載項目については、EUや米国と協議を行ない、できる限りの統一を図ることにより、輸出入に係る事業者の負担軽減、貿易事務の円滑化、国家間での情報共有の促進による取締り強化などに結びつけることが重要である。
また、今後、他のアジア太平洋諸国に対しても日本がリーダーシップを発揮してIUU漁業対策に関する連携を強化することにより、我が国周辺における水産資源の持続可能な利用と海洋生態系保全の推進に結びつけることが期待される。

WWFジャパンのこれまでの貢献と今後の活動

WWFジャパンは海洋保全活動の一環として、持続可能な漁業やその水産物を普及させる取り組みと同時に、IUU漁業に代表される、持続可能ではない漁業を根絶する活動に力を注いでいます。

2017年に同様の問題意識を持つ他の団体と設立した、「IUU漁業対策フォーラム」による協働活動はその一つ。

また、本法律の成立についても、2019年よりWWFジャパンのスタッフが日本政府の検討会(漁獲証明制度検討会)に参加し、新たな制度作りの議論において、海洋環境保全の観点から、先進事例の紹介や助言を行なってきました。

また、企業や業界ともIUU漁業による水産物を市場から排除するための仕組みについて協議を行うなど、連携した取り組みを推進してきました。

IUU漁業を根絶するためには、魚が漁獲されてから、 陸揚げ、輸出入を含む流通、加工、販売を経て消費者に届くまで、遡って把握する「フルチェーン・トレーサビリティ」が必要です。

WWFでは、これを推進するため、水産物を扱う世界の主要企業の参加を得たフォーラム「GDST」の取り組みを支援。

2020年3月には、このGDSTが、電子データによる水産物のフルチェーン・トレーサビリティの情報を確保するための基本データ(KDE: Key Data Elements)を取得・共有する業界標準「GDST1.0」を発表しました。

既に、世界の主要30社以上が、このGDST1.0の導入を進め、フルチェーン・トレーサビリティの推進に向け動いています。

今後もWWFジャパンは、世界からIUU漁業を根絶するために、政策提言や、企業向けの助言やサポートを行なっていきます。

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