「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」に関する共同声明


IUU漁業対策フォーラム
 

違法・無報告・無規制(IUU)漁業は、世界の水産資源の持続可能な利用や海洋生態系の保全に深刻な影響をもたらす脅威であり、2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)14.4において定められている「2020年までに、漁獲を効果的に規制して、乱獲やIUU漁業および破壊的な漁業慣行を撤廃し、科学的情報に基づいた管理計画を実施」を妨げる行為です。

こうした中、IUU漁業による漁獲のおそれが大きい水産物の輸入・流通を防止するための「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」が本日国会で可決・成立したことは、日本政府による大変望ましい動きとして歓迎いたします。

本法律成立の意義として、私達は三つの点が挙げられると考えます。

第一に、本法律の施行は、我が国が水産物輸入大国としての責任を果たすものです。水産物の三大輸入市場のうち既に規制を導入しているEU、米国に加え、新たに日本がIUU漁業に由来する水産物の輸入の禁止を措置することにより、世界におけるIUU漁業の撲滅に向けて大きな前進となると考えられます。

第二に、日本国内の漁業者にとってのメリットです。日本海における近隣諸国によるイカ漁船の違法操業や国内でもナマコやアワビをはじめとする密漁の増加が重大な懸念となっています。ルールに従って適正に漁業を行っている漁業者にとって、国内外で違法に漁獲された水産物の市場流通を防止することは、不公平な競争を排除し本来得られるはずの適正な収入を確保することに結びつくものです。

第三に、本法律は水産物のトレーサビリティの担保においても重要です。対象となる水産物について事業者間における情報の伝達、取引記録の作成や保存の義務が課されることにより、市場に流通する水産物への品質を含めた消費者の信頼が高まっていくことが期待されます。

本法律の施行は2年後を予定されていますが、対象魚種の選定など制度の詳細は今後定められる政省令に委ねられています。

私達IUU漁業対策フォーラムは、これまで日本におけるIUU漁業対策の推進に向けて、関連する情報の発信や啓発活動を行ってまいりました。今後も日本政府の取組を支援するとともに、新たな制度が実効性の高いものとなるよう、本法律の施行に向けた検討に当たっては、以下の事項が措置されることを提案いたします。

1.公平で明確な基準に基づく対象魚種の選定

IUU漁業に由来する水産物の輸入・市場流通を根絶するためには、魚種の虚偽報告などの抜け道を塞ぐ観点からも、最終的には全魚種を制度の対象とすることが望ましいと考えます。当初から全魚種を対象とすることは現実的ではないものの、対象魚種の選定に当たっては、公平かつ明確な基準に基づきIUU漁業のリスクが高い魚種(例えば輸入水産物についてはマグロ類、カニ類、ウナギ類、ヒラメ・カレイ類、イカ類など)を確実に対象に含めることが必要です。

また、対象魚種について議論を行う検討会は、生産者、加工業者、流通業者、消費者等のサプライチェーン上の関係者に加えて、科学者、環境保護団体など幅広い立場のステークホルダーを含めた上で、オープンなプロセスで進めることが重要です。そして、各団体の幹部職員のみならず、次世代を担う若手漁業者なども検討会に参画することが有意義と考えます。

2.電子化による事業者負担の軽減及びトレーサビリティの推進

本法律に基づき、事業者の負担軽減を図りながらトレーサビリティを推進するためには、ICTの活用が不可欠です。国産水産物については、スマート水産業の取組と連携しながら、漁獲番号及び当該漁獲番号に係る情報を中央データベースに保存し、必要に応じて共有できる仕組みを構築することが考えられます。これにより、事業者による取引記録の作成・保存や、行政による不正の防止・検証などに係る手間やコストの軽減を図るとともに、将来的には生産者や流通関係者に相応のメリットを生じさせるような、互換性や拡張性を持たせた電子データの活用を図ることなどが考えられます。

3.国際連携の推進

本法律の趣旨であるIUU漁業の撲滅は、国際的に連携した取組が求められるものです。特に輸入水産物への添付が求められる漁獲証明書の記載項目については、EUや米国と協議を行いできる限りの統一を図ることにより、輸出入に係る事業者の負担軽減、貿易事務の円滑化、国家間での情報共有の促進による取締り強化などに結びつけることが重要です。
 
また、今後、他のアジア太平洋諸国に対しても日本がリーダーシップを発揮してIUU漁業対策に関する連携を強化することにより、我が国周辺における水産資源の持続可能な利用と海洋生態系保全の推進に結びつけることが期待されます。

IUU漁業対策フォーラム

IUU漁業対策フォーラムは、持続可能な水産業への取組をしている以下の団体・企業が違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策に関して共同で活動することを目的に2017年9月に発足。

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