象牙密輸関与の疑いで国内の販売業者が逮捕


2018年1月31日、象牙の密輸(違法な輸出)に関与した容疑で、日本の象牙販売業者が逮捕されました。報道によれば、2017年11月末に中国に密輸されようとした象牙の販売に関与したということです。2017年の調査で、WWFは日本国内の象牙が、中国など海外へと違法に流出している事実を明らかにしましたが、今回の事件は、そうした事実の深刻さを裏付けるものです。日本政府には象牙の違法輸出と、国内取引の問題に緊急の対策を講じることが求められます。

中国への違法な輸出ルートの存在

2018年1月31日、象牙の密輸(違法な輸出)に関与した疑いで、東京都台東区の象牙販売業者の役員が警視庁により逮捕されました。

報道によれば、容疑は関税法違反。

逮捕の容疑は、取り扱っていた象牙の印材が、日本から中国へ持ち出されることを知りながら販売したこと、それを計画的に行なった疑いがあるためと考えられます。

日本では国内での象牙の販売は合法的に認められていますが、日本から海外への持ち出しは、「ワシントン条約」の取り決めに基づき、禁止されています。

ただ販売するだけでは、現行の法律では違法行為になりませんが、今回のように明らかに、海外への持ち出しを理解・想定し、密輸者との繋がりが疑われる場合は、十分な検挙の理由になります。

今回の事件で問題となった象牙の印材は、2017年11月30日に東京港で発覚した密輸事件で押収されたもので、中国向けのコンテナ船に乗り込もうとしていた中国籍の男性が抱えていた荷物の中から見つかりました。

その量は、605本(合計7㎏)にのぼり、また本人が一般旅行客ではないことから、個人がおみやげ品としてうっかり購入したものなどでないことは、明らかでした。

また、警察の話では、この中国籍の男性は日本語が全く話せず、これらの点からも、日本国内の事業者の関与と、中国内の組織的な犯行の一端である可能性が考えられていました。

WWFジャパンの野生生物取引の調査・監視部門であるトラフィックでは、2017年に実施した調査の中で、日本のオークションハウスや中古の象牙製品を買取る業者間で、過去に中国へ違法輸出する事例やルートがあったという情報や、象牙を取り扱う骨董品などの販売業者が、アジア各国に日本から持ち出されることを承知の上で、販売していた事例を数多く確認しています。

今回の事件もまた、こうした日本から中国への違法な輸出ルートが、国内外に広がり、動いている深刻な現状を浮き彫りにしたものと言えます。

日本が抱える象牙の問題と求められる取り締まりの強化

日本から違法に輸出された象牙は、押収が報告されただけでも、2011年~2016年の6年間に2.4トン以上。

中には犯罪組織が関わったとみられる大規模な事例も報告されています。

さらに、これら日本から持ち出された象牙のうち95%が中国向けであったことが、象牙の押収事例のデータを分析しているETIS(ゾウ取引情報システム)により明らかになりました。

一方で、これまで日本側が摘発した違法輸出の事案は少数にとどまっています。

こうした現状の中、日本国内で今も認められている象牙の合法的な取引が、国境を越えて広がる象牙の闇市場の拡大に関与、助長する一因となっている可能性は十分にあるといえます。

また、今回の事件で逮捕された販売業者は、経済産業省に正式に届け出を行なって営業している事業者。また、国内の象牙関連の業界団体の代表格である組合の一員でした。

象牙の印材とハンコ製品

業者の届け出の義務付けは、日本政府が国内の象牙取引規制を目的として行なっている管理の一環ですが、そうした事業者の中にも、違法行為に関与している例のあることが、あらためて明らかになったといえます。

日本政府は現在、国内の象牙市場が違法輸出の温床になっているとは認識していない、との見解を示していますが、海外の水際で日本由来の象牙が押収されている事実と、国内の取引業者が密輸に関与している事態は、重く受け止めなければなりません。

WWFジャパンでは日本政府に対し、象牙の違法輸出の阻止に向けた緊急措置の実施を訴えると共に国内の現状をふまえ、狭い例外を除く象牙の国内取引を停止するよう、強く求めています。

現在、1年間に密猟の犠牲になっていると考えらえるアフリカゾウは、およそ2万頭。

その密猟による大量の違法象牙が、現在日本に直接密輸されているとは考えられていませんが、国際的な規模で続く違法取引の根絶を実現するためには、日本も積極的に協力し、国内の取り組みを強化する責任があります。

2017年12月末には、世界最大の象牙の国内市場を有し、違法象牙の一番の仕向地である中国が、国内の象牙製品の製造や販売、取引を禁止とする政策を実行しました。

他の国・地域でもこれにならった動きが今、国際的にも強まっています。

日本からの違法な輸出を通じて海外のこうした取り組みを阻害しないように、そして密猟の引き金につながる事態にならないように、日本政府には柔軟な政策の転換と、厳しい取り締まりのための実効性のある政策が強く求められます。

関連情報

 

 

 

【関連資料】各省への要望書(PDF形式)

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