世界のレッドリスト更新 絶滅危機種が4万9,000種に
2026/07/10
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- 2026年7月9日、IUCN(国際自然保護連合)は、絶滅のおそれのある世界の野生生物の「レッドリスト」を改訂。4万9,505種が、深刻な絶滅の危機にあることを指摘しました。今回の改訂で大きくその掲載種数を増やしたのは、熱水噴出孔のある深海の海底に生息する貝類などの軟体動物です。また、オーストラリアの一部の有袋類の絶滅が認定されたほか、気候変動の影響を受ける絶滅危機種も500種あまり増えるなど、その評価は世界的な生物多様性の危機をあらためて示すものとなりました。
深海の生きものたちを脅かす危機
今回、IUCNが公開した最新版の「レッドリスト」に、絶滅の恐れが高い種として掲載された野生生物は、更新前の4万8,646種を大きく上回る、4万9,505種となりました。
特に深刻さが特に目を引いたのは、水深5,000mに届く深海にある、摂氏400度を超える水を噴出している、熱水噴出孔の自然の危機です。
今回、この自然に生息する、貝類などの軟体動物201種のうち、125種が絶滅危機種として選定されました。
危機の原因は、深海で近年各国により行なわれるようになった、鉱物資源の採掘です。その作業により、生息環境の攪乱が生じ、特定の熱水噴出孔の周辺だけに生息する、固有種の貝類などを脅かしていると考えられています。
こうした危機は、保護区に指定されている海域では、ほぼ認められていないことから、保全のルールが存在しない、公海での多くの国々による採掘が影響を及ぼしていることは、間違いありません。
オーストラリアの有袋類の絶滅
今回のレッドリストでは、オーストラリアに生息していた5種の有袋類(お腹の袋や皮膚のひだの中で赤ちゃんを育てる哺乳類)の絶滅も認定されました。
5種のうち4種は、ネズミクイ類(Dasycercus.sp)に分類される、ネズミのような姿をした小さな有袋類のグループで、過去60年間、生存が確認されていませんでした。
絶滅種となった4種は、かなり以前に姿を消した可能性もありますが、これらの動物たちは、いずれも人がオーストラリアに持ち込んだ、アカギツネやネコなどの外来生物の影響を強く受けたと考えられます。
オーストラリアに生息する有袋類の絶滅は、これで40種を超え、外来生物問題の深刻さを浮き彫りにする結果となりました。

ネズミクイの一種(Dasycercus blythi)。これは今も生息している種。ネズミクイ類は小型の動物を襲って食べる肉食獣で、太い尾にラクダのコブのように脂肪を貯めることで、極度に乾燥した地域でも生きることができます。ネコやキツネなどに捕食されている有袋類の一種です。
一方で、こうした外来生物の影響を受け、絶滅が心配されてきたフクロアリクイが、今回のレッドリストの改定で絶滅危機種の「危急種(VU)」から「準絶滅危惧種(NT)」に、危機ランクが下げられることになりました。
1970年代には300頭ほどまで減少したこのフクロアリクイは、長年の保護活動の結果、現在では2,000頭以上まで回復。絶滅の深刻な危機は回避したと評価されました。
しかし、現在の生息エリアの広さは、かつての1%にも満たず、今もキツネやネコの脅威が続いていることから、保護活動の継承が今後も重要な課題となってきます。

フクロアリクイ(Myrmecobius fasciatus)。アリやシロアリに、ほぼ完全に食物を頼る、珍しい食性を持つ有袋類の一種です。長年の保護活動により、絶滅の危機を脱することになりました。ネイチャーポジティブ(自然の回復)が実現した事例の一つといえます。
気候変動の影響も
オーストラリアの有袋類を脅かしている、もう一つの大きな脅威は、地球温暖化(気候変動)です。
これは、他の地域、他の分類群の野生生物においても同様で、毎年、その影響を受けているとされる絶滅危機種は増加の一途をたどっています。
前回2025年11月のレッドリストの改訂時に、絶滅危機種の中で、気候変動がその危機の原因の一つとされていた種(しゅ)は、8,221種でしたが、2026年7月の改定後は、8,726種に増加しました。

今回のリストの改訂では、哺乳類や鳥類、爬虫類といった代表的な脊椎動物の絶滅危機種の種数はほぼ変化がありませんでしたが、こうした生きものたちの中にも、気候変動による影響を受けていることが、新たに確認される例が増え続けていると考えられます。
今回の改訂ではまだ反映されていませんが、2026年4月に、絶滅危惧種となることが発表されたコウテイペンギンも、その代表と言える野生動物です。

求められる生物多様性の保全強化
世界の野生生物の危機は、地球上の多様な自然環境の危機、そのものと言っても過言ではありません。
そしてその危機は、今や開発や乱獲だけでなく、気候変動のような大きな脅威により、さらに深刻化の度合いを深めています。
これを解決し、絶滅のおそれのある野生生物を救うためには、生息地の現場の取り組みだけでなく、国際的な保全のルールを定め、各国が協力してその実現を図っていかねばなりません。
2026年10月には、アルメニアのエレバンで、生物多様性条約の第17回締約国会議(COP17)が開催されます。
この会議では、世界の生物多様性保全の目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)」の進捗を評価する、グローバルレビューが行なわれ、目標達成に向けた世界の環境保全の状況が明らかになる予定です。
各国のWWFも現地にスタッフを派遣し、この議論を追いながら、取り組みの促進を求める活動を行なう予定です。



