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日本国内での象牙取引で違法事例 古物商ら27人が書類送検

2017年6月20日に象牙18本を違法取引した容疑で、都内の古物商と従業員、その顧客ら27人が書類送検されるという大規模な事件が報道されました。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内の違法取引が意味するところとは何か。国内市場管理の問題点と、WWFジャパンとトラフィックが提言する国内違法象牙ゼロに向けた課題を紐解きます。

象牙をめぐる「種の保存法」違反での摘発

2017年6月20日、無登録の象牙18本を違法に取引した疑いで、東京都台東区の古物商の社長と従業員、顧客ら計27人と同法人が警視庁により書類送検されました。

容疑は「種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)」で義務づけられる国への「登録」をしていない象牙を取引したもので、象牙の本数と容疑者人数の両方において、国内ではかなり大規模な摘発といえます。

今回の容疑は2015年12月から2016年2月にかけておこなわれた違法取引に関するものですが、報道によると、古物商は5年ほど前から400本以上の象牙を、所有していた個人などから買い取っていたとされます。

日本では近年、こうした古物商やリサイクルショップなどによる、個人所有の象牙の違法取引が後を絶ちません。

特に、個人の所有する全形象牙は、国内にどれくらのストックがあるのかも分かっていないのが現状です。

種の保存法に違反して登録をおこなわずに取引をした場合、個人で5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(または併科)、法人では1億円以下の罰金という重い罰が科せられています。

ただ、これらの違法取引の摘発に、警察も力を入れる一方で、過去には容疑者が不起訴処分になったケースもあるため、今回の摘発が厳格な処罰につながるかどうかは、今後の違法取引の抑止力を測る上でも重要なポイントになります。

床の間象牙とも言われる、全形象牙

甘さが指摘される日本の国内管理制度とその運用

今回の事件で、違法取引行為そのものに加えて、もうひとつ注目されているのは、国の登録制度の運用の甘さです。

本来、「種の保存法」では、日本に合法的に輸入されたことが証明された象牙に限り、環境省に「登録」して取引することを認めています。

これは、象牙に限らず、海外から輸入される「国際希少野生動植物種」の国内取引を適正に管理することで、野生生物を過度な取引から守るための国際条約:ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)における国際的な種の保全に寄与することを目的としたものです。

しかし、象牙については、1989年の国際取引禁止が適用される前に大量に輸入された在庫が国内に散在し、その全体量は政府も把握していません。

そんな中、合法的に輸入されたことを証明する公的書類が伴わないものについても、申請者の宣誓に基づき登録を付与するといった緩い運用が長年なされてきました。

今回書類送検された業者は、登録手続きを代行するとして無登録の象牙を買い取り、象牙の入手経路などを偽って登録申請をおこなっていたとされています。

登録票のみほん

このように、登録制度の運用の甘さに乗じて、出所の不確かな象牙の合法化が常態化していた可能性が示唆されています。

さらに、トラフィックが調べたところ、今回摘発された業者は、種の保存法が象牙を扱う業者に義務付けている経済産業省への「届出」をおこなっていました。

本来なら規制を熟知し、遵守すべき立場にある業者がこのような違法な行為に及んだ事実は、きわめて悪質性が高いのと同時に、種の保存法による国内取引管理の有効性に重大な疑問を投じています。

トラフィックでは、これまでにオンライン取引をはじめ国内における象牙取引の実態を調査し、管理体制の問題と改善策を提言してきました。今回の事件からも明らかなように、管理の緩い古物市場の実態把握と管理強化は急務であり、トラフィックでも調査を進めています。

国際的にも問われる日本の姿勢

今回押収された象牙の由来を、トラフィックが環境省に確認したところ、警察からの情報で海外からの密輸に由来するものとは考えていない、との回答がありました。

もし、その考察通りであれば、今回の件は、法に違反した「違法取引」ではあっても、近年激化しているアフリカでのゾウの密猟を、直接後押しするものではない、ということになります。

実際、国際的にも、縮小を続けてきた日本の象牙市場は、ワシントン条約における国際的な違法取引の動向分析でも、現在、密猟された象牙の流入先になっている可能性は低い、とされています。

しかし、今回の事件からも明らかなように、日本の国内市場は管理の行き届いたものとは到底いえません。

とりわけ最近、「日本から中国へ」向けた大量の象牙の違法な輸出が、相次いで発覚していることは、非常に懸念すべき点です。

間接的に、違法な象牙市場の拡大に寄与し、そこに流れ込む象牙を得るための密猟を、さらに呼ぶ可能性があるためです。

その意味でも、アフリカゾウの保護と、国際的な象牙の違法取引根絶に向けた姿勢を日本は示す必要があります。

年間2万頭が犠牲になっているとも推定されるアフリカゾウの密猟に歯止めをかけるため、主要な象牙市場である中国を含む各国政府は、すでに積極的な対策に踏み切ろうとしています。

日本も、象牙をめぐる国内の問題に、緊急かつ真摯に取り組むことは、国際的な責務であるといえるでしょう。

WWFジャパンとトラフィックは国内の違法象牙ゼロ実現を訴え、引き続き政府に対し、対応の強化を求めるとともに、これらの管理が適切に行なわれないのであれば、象牙の国内取引の禁止を含めた、厳格な措置を取ることも必要であると考えています。

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