野生動物と共存する建築
2026/10/14
今年の初め、スコッチウィスキーで有名な英国のスコットランドで新築の建築物には、アマツバメ営巣用のレンガを設置するというルールの導入が決まりました。
この背景にはアマツバメの減少があります。昔から欧州で初夏の到来を告げる鳥として認識されている鳥ですが、都市部を中心に、1995年から60%も個体数が減少し、近年、絶滅のおそれが高まっています。

6月の空を舞うアマツバメ。
その理由のひとつがエサとなる昆虫の減少です。これには、殺虫剤の利用や気候変動が影響していると考えられています。
また、営巣地の喪失も大きく関係しているとされています。従来、アマツバメは、人家の屋根裏などの隙間を利用して巣作りをしていましたが、現代の建築ではこうした隙間がなくなっているのです。
今回の新ルールの導入は営巣地の不足という課題へ対応するためのものです。
設置が義務付けられることとなった営巣用レンガは、内部が空洞になっていて、中に巣をつくることができます。アマツバメだけでなく、スズメやムクドリにも利用されることでしょう。

英国で市販されている様々なアマツバメ用レンガ。レンガの中は空洞になっていて、この空間に営巣でき構造になっています。感染症の発生を防ぐため、古くなったら、取り外し、新しいものに交換します。
建築物の変化が野鳥に影響を与えているのは、スコットランドだけではありません。

私たちがWWFインドの仲間と共にユキヒョウをはじめとする野生動物と地域住民の共存プロジェクトを行なっている西ヒマラヤでも、同じようなことが起こっています。
これまで地域住民の暮らす家の多くは、日干しレンガや石積みの壁、木材の梁と粘土・土と植物を層にした断熱構造の屋根から成っていて、こうした隙間に野鳥が巣作りをしていました。
しかし、だんだんとコンクリートやトタン屋根の建物が増えてきて、野鳥が子育てをする場所が減ってしまい、結果、野鳥の個体数自体が減っているというのです。

ラダックの伝統的な家屋(1994年撮影)
スコットランドで決まった規制を他地域にも広めようという動きが英国内であるそうです。
生物多様性を回復させていく取り組みの一環としても、こうした野生動物との共存を実現できる取り組みやアイデアの実現を、私たちも目指していきたいと思います。
CC BY-SA 4.0: https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0

