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アメリカの気候変動対策を主導する非国家アクターたち


アメリカ合衆国のトランプ大統領が、パリ協定から2度目の離脱を表明したのは2025年の1月でした。正式な離脱は表明から1年後の2026年1月、つまり今年のCOP30では、同国はまだパリ協定の締約国です。しかし、現地ベレンではアメリカ連邦政府の参加はありません。

一方、COP30開催前の11月3日から5日にかけてリオデジャネイロで行なわれた、各国都市の首長や州知事らを集めた「COP30ローカル・リーダーズ・フォーラム」に始まり、ベレンのCOP30会場においても存在感を発揮したのは、アメリカの州政府をはじめとする非国家アクターです。

11月11日、あるイベント会場で開催された、アメリカの州知事、企業や都市、大学などを集めたイベントには、入りきれないほどの人が殺到。主催は気候変動対策に積極的に取り組む、アメリカのGDPの7割以上に相当する非国家アクターが5,000以上参加するネットワーク「America Is All In」です。

登壇者の話を聞き漏らすまいと、通路にあふれるほどに集まった参加者たち
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登壇者の話を聞き漏らすまいと、通路にあふれるほどに集まった参加者たち

冒頭にはニューメキシコ州のミシェル・ルーハン・グリシャム知事が登場。前述の「COP30ローカル・リーダーズ・フォーラム」に触れ、参加した世界中の都市・州のリーダーたちは、過去に開催された同フォーラムにも増して、気候変動対策への熱意を示しており、アメリカ連邦政府の不在中も地域のリーダーたちが担うのだと意気込みました。

開会あいさつをするニューメキシコ州のミシェル・ルーハン・グリシャム知事
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開会あいさつをするニューメキシコ州のミシェル・ルーハン・グリシャム知事

続くパネルセッションでは、アメリカの企業、大学、都市、研究機関が集まり、アメリカでも深刻化する気候変動による生活や健康への影響を共有。その解決に向けた挑戦と、分野を超えて社会全体で協働を進めることの意義を議論しました。

多様な分野から集まったAmerica Is All Inのメンバー
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多様な分野から集まったAmerica Is All Inのメンバー

最後は、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が、パリ協定成立のCOP21当時のUNFCCC事務局長クリスティアーナ・フィゲレス氏と対談をしました。ニューサム知事は、「気候変動対策を議論するために集まったベレンにおいて、カリフォルニア州がアメリカ連邦政府に代わり、その対話をリードし続ける」と述べ、会場を湧かせました。

対談をするカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(右)と前UNFCCC事務局長のクリスティアーナ・フィゲレス氏(左)
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対談をするカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(右)と前UNFCCC事務局長のクリスティアーナ・フィゲレス氏(左)

「アメリカの気候変動対策は、非国家アクターが主導する。」その揺るぎない決意は、COP30会場に集まった他国の非国家アクターをも巻き込む力強さを感じさせます。

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自然保護室(気候・エネルギー)
田中 健

修士(理学・九州大学)
福岡県庁、経済産業省で廃棄物管理やリサイクルなどの環境保全行政に従事、日本のリサイクル企業の海外ビジネス展開を支援。その後、日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして、国内外の科学館、企業、研究機関などと連携し、科学技術や研究者と一般市民をつなぐ様々なプロジェクトを担当。2018年8月から現職。気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)等、企業や自治体など非国家アクターの気候変動対策の強化に取り組む。

子どもの頃から、自然や生き物の「なぜ?」を探るのが好きでした。自治体や国で環境保全に10年取り組むも、「もっとたくさんの人に環境問題を伝えたい!」と思い、一念発起。科学館スタッフとして環境・社会・教育など様々な分野のプロジェクトを通じて科学コミュニケーションの経験を積み、WWFへ。これまでの経験をまとめて生かし、地球温暖化という大きな課題にチャレンジ精神で取り組みます。

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環境保全団体です。

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