やさしい林業がマルミミゾウを守っているというおはなし
2024/09/19
アフリカ中西部の熱帯林に生息する、ミミが可愛らしいマルミミゾウ。
高値で取引される象牙を狙った密猟と、熱帯林の農地転換、1990年以降の31年間で、個体数が86%も減少してしまいました。

果実を好んで食べ、移動と排泄を通じて植物の種をまくことで豊かな森を作りだすことから、「森にすむ巨大な庭師」とも呼ばれるマルミミゾウ
アフリカ中部の熱帯林は21%が保護区に指定されていますが、マルミミゾウの生息域は、半分以上が保護区ではなく、林業用地に重なっています。
しかし、林業用地で野生動物の保全ができるのでしょうか?
実は、持続可能な森林管理である「FSC®認証」を取得した森林であれば、それができることが調査で分かりました。
WWFカメルーンも参加したユトレヒト大学の調査では、FSC認証林と非認証林における動物の出現率を比較。
その結果、FSC認証林マルミミゾウの出現率は、非認証林と比べ4.4倍も高かったことが示されました。
また、ニシゴリラなどを含めた絶滅危惧種は2.7倍、チンパンジーなど体重が10kg以上の中型・大型の哺乳類は2.5~3.5倍も出現率が高かったのです。


アフリカ中西部の14カ所の森で4年間に渡り行なわれた調査では、474地点のカメラトラップより、約130万点の画像データを取得。FSC認証林による野生動物保全の有効性を示す、世界初の大規模な調査となりました
FSC認証を通じたやさしい林業は、アフリカ中西部で哺乳類に不可欠な生息地を提供しています。
では、日本の場合はどうでしょう?

入局後の初出張で訪れた南三陸。右側がFSC認証林、左側が商業用に植林された放置林。FSC認証林は太陽が差し込み、豊かな下層植生が広がっている一方、放置林は密集した木々が日差しを妨げ、下層植生が育ちません
日本では森林全体のたった1.7%しかFSC認証を取得していません(2022年12月時点)。
一方、管理が放置された森林が拡大。こうした森は、野生生物が乏しいだけでなく、土砂災害の可能性が高まるといった懸念があります。
そこでWWFジャパンでは今年、宮城県の南三陸森林協議会と「日本のFSC認証林推進協定」を締結しました。
森林管理を通じて、野生動物と人の共生を実現する ―これは、生物多様性の回復、すなわち「ネイチャー・ポジティブ」が目指す姿そのものです。
まずは南三陸の森林から、日本のネイチャー・ポジティブを実現したいと思います。
(森林グループ 田沼 )