©Shutterstock / kviktor / WWF-Sweden

コロナ禍で森林破壊は悪化したか?


結論から言うと、熱帯の原生林は2020年に420万haが失われ、2019年より12%増加していました(*1)。

©World Resources Institute

熱帯原生林の減少量。緑の棒グラフは年ごとの減少量、黒の曲線は3年移動平均。

新型コロナウイルス感染症によって、森林破壊が激増するのではないか。

そんな懸念が私たちWWFスタッフの間でも広まっていました。

ロックダウンにより、保護区の維持管理を支える重要な財源であるエコツーリズムが激減したことに加え、財政難に陥った各国政府が保護区への予算を削減していたからです(*2)

ブラジルなどでは、経済回復のために森林保護に関わる法律を弱める動きもありました。

©Andre Dib / WWF-Brazil

年間420万haもの熱帯原生林の消失は、2016年と2017年を除けば2002年以降で最悪の記録。この事実は、依然として世界の森が危機的状況にあることを示しています。

12%増を、多いと見るか少ないと見るかは、意見の分かれるところかも知れませんが、データを発表したWorld Resource Institute(世界資源研究所)は、コロナとの明瞭な因果関係を認めていません。

しかし、コロナの影響がこれから現れてくる可能性はあります。

保護区への予算削減などが、その影響を及ぼし始めるのは、まさにこれからとなるからです。


何より、多くの専門家が繰り返し警告してきた通り、森林減少が続けば、次のパンデミックのリスクも高めることになります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収まらないうちに、次のパンデミックが起こらないとも限らないのです。

グリーン・リカバリーを進め、いかに森林破壊を伴わない社会のあり方、生産と消費の仕組みを実現できるかに、人とこの惑星の未来がかかっています。

©Shutterstock / A3pfamily / WWF

参考文献
*1 https://research.wri.org/gfr/forest-pulse?utm_medium=media&utm_source=article&utm_campaign=globalforestreview
*2 IUCN WCPA (2021). PARKS. The International Journal of Protected Areas and Conservation, Volume 27 (Special Issue), Gland, Switzerland: IUCN.

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森林・野生生物室 森林グループ
岩渕 翼

博士(生命科学・東北大学)
カリフォルニア州立大学卒業。学位取得後、大学のポスドクや助教として生物と環境の相互作用や、生物多様性の保全や評価手法の開発、企業緑地の生物多様性配慮等に関する研究を行う。研究の傍ら、栃木県環境審議会専門委員として行政支援を行うほか、東日本大震災後には人と自然の復興を目指すグリーン復興の活動に関わる。その後、環境保全NGOに勤務し森林や湿地の保全プロジェクトを担当。WWFジャパンでは東南アジアを中心に、森林や野生生物の科学的なモニタリングから天然ゴムなどの森林コモディティの持続可能な生産の推進など、多角的な活動を展開。

小学生の頃にファーブル昆虫記を読んで感激し、その頃から将来は生き物に関わる仕事をすると心に決めていました。さらに中学生の頃に「沈黙の春」を読み衝撃を受け、環境保全を意識するようになりました。そのあと生態系の仕組みを調べる研究者になり、科学に基づいた保全を追求するために保全の現場に関わるようになりました。森林保全プロジェクトと同時に子育てプロジェクトも進行中。

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