アユモドキのふるさとでのスタジアム建設計画が1年延期に


草刈です。
先日、京都新聞に、亀岡市で2016年4月に予定されていた「京都スタジアム(仮称)」の着工が、京都府の決定により延期された、という記事が掲載されました。

延期の理由は、計画予定地に生息する希少な淡水魚アユモドキに、建設計画がどのような影響を及ぼすのか、慎重な調査と分析が求められたためです。

アユモドキは日本固有のドジョウ科の淡水魚で、世界中でこの亀岡市と岡山県の一部にしか生息していません。

もともとは、水田環境を中心に生息するありふれた魚の一種でしたが、圃場整備や水辺環境の開発が進んだ結果、絶滅寸前となってしまいました。

アユモドキ。IUCNのレッドリストでは、絶滅危機が最も高い「CR(近絶滅種)」にランクされている

計画を推進する京都府や亀岡市は、アユモドキ保護のため人工池を使った繁殖実験などを行なっていますが、専門家会議も認めた通り、その効果は不十分なものとなっています。

私は、その背景の一つとして、これらの保護策がアユモドキという「一つの種」という単位で組み立てられ、「この魚さえ守れればいい」という発想から抜け出せていないことにあると考えています。

アユモドキを真に守るためには、その生息地にある生態系や食物連鎖など、自然のサイクルと生きものたちの「つながり」を考慮しなくてはいけません。

実際、実験でアユモドキの産卵環境や仕組みは、分かってきたようですが、稚魚が成魚になるまでに必要な環境や過程など、分からないことはまだまだ多く、それを実験で再現するのは非常に困難といえるでしょう。

新聞報道によれば、今回の決定により、着工は最短でも1年は遅れる可能性があるそうです。

その間に、日本の原風景を象徴する動物の一種といっても過言ではないアユモドキと、私たち人間がどのように共生していくべきなのか、より真剣に考えてゆかねばと思います。

京都府亀岡市のアユモドキの生息地

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自然保護室 国内グループ所属
草刈 秀紀

日本の自然保護にかかわる法制度の改善をめざす取り組みを行なっています。

子どもの頃から動物が好きで、農業者でもないのに農業高校の畜産科に行き、上京して大学時代に多くの自然団体の会員になりました。野生のエルザのゲームワーデンにあこがれ、32年前に職員になりました。最近は、永田町を徘徊しています。

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