日本版レッドデータブック30周年!
2019/02/01
世界にはどれくらい、絶滅の危機に瀕した野生生物がいるか、ご存知でしょうか?
その数、約2万6,000種。
その種名は全て、IUCN(国際自然保護連合)が発表している「レッドリスト」にまとめられています。
このレッドリストやレッドデータブック。
実は他にも、各国版や各自治体版などがあります。これは、野生生物の危機を、世界全体で見るだけでなく、地域や国という視点からも評価し、保全の足掛かりを提供してくれる、重要なものです。
その「日本版」が初めて作られたのは、実は今からちょうど30年前。1989年のことでした。
当時、日本にはまだ、国が作ったレッドデータブックがありませんでした。
そこで、私たちWWFジャパンが寄付を募り、日本自然保護協会が多数の専門家を集め、日本初のレッドデータブックを作ったのです。
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『我が国における保護上重要な植物種の現状』。現在、環境省のレッドリストには、1,786種の維管束植物が絶滅危機種としてリストアップされていますから、30年前と比べて約900種増えていることがわかります。
正式な名称は『我が国における保護上重要な植物種の現状』。日本産の植物の危機的な状況と、早急な保護策の必要性を広く訴えたものです。
作成にあたり、私たちは特別な研究委員会を立ち上げ、絶滅種を含む895種の植物を、減少の要因と共に掲載しました。
そして、この植物版レッドデータブックをきっかけに、1991年5月、環境省が国としてのレッドデータブック『日本の絶滅のおそれのある野生生物-脊椎動物編』を発表したのです。
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ユワンツチトリモチ 準絶滅危惧種
キノコに見えますが、菌類ではなく双子葉植物で、イジュなど常緑樹の根に寄生しています。地上へは花序(花茎)だけが顔を出し、花序は、丸い頭のような部分に小さな花を密集させます。大きいのは4cmほどに成長します。
奄美大島の最高峰・湯湾岳(宇検村 694m)の山頂周辺だけに自生する奄美大島の湯湾岳にのみ見られる固有な植物です。
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ムニンノボタン 絶滅危惧ⅠA類(環境省第4次レッドリスト)
東京都にある神代植物園には、「大温室」があり、「小笠原植物室」で小笠原の植物を鑑賞することができます。
被子植物の双子葉類でノボタン科のムニンノボタン。小笠原諸島父島にだけ生育する日本固有種です。「ムニン」は小笠原(Bonin)諸島を指しています。恐らく「無人」に由来しているのだろうと言われています。
レッドリストは、名前が掲載されても、必ず保護が約束されるわけではありません。保護活動はまた、別の取り組みになります。
それでもレッドリストは、何が今、守るべき貴重な自然であるかを、私たちに明らかにしてくれます。
危機の現状を明らかにしながら、リストの厚みがこれ以上増えないように、これからの30年を目指し、活動を続けていきたいと思います。(自然保護室 草刈)