「予防原則」に基づいた希少種アユモドキの保護を


日本固有の淡水魚で、絶滅の危機にあるアユモドキ。その貴重な生息地が残る京都府の亀岡市で現在、京都スタジアム(仮称)の建設が計画されています。京都府はこの計画を公共事業評価委員会に諮り、予算化を進めようとしていますが、現状では建設予定地も明確になっておらず、アユモドキをはじめとする自然環境にどのような影響が及ぶかも十分に予測されていません。この問題について、WWFジャパンは2015年1月14日、京都府知事および公共事業評価委員会に対し、あらためてアユモドキの保護を求める申し入れを行ないました。

アユモドキの生息域で計画された「京都スタジアム」の建設

国の天然記念物であり、「種の保存法」で保護が義務付けられている国内希少種にも指定されているアユモドキは、世界で日本だけに生息する固有の淡水魚です。

かつては琵琶湖水系を中心に広く分布していましたが、生息環境である河川の改修や水田の圃場整備が進んだ結果、絶滅寸前といわれるまでに、その数が減少しました。

その中で、京都府亀岡市の水田地帯には、地域の人々が傾けてきた保護の努力により、数少ない良好な生息域が残されてきました。

この生息域に「京都スタジアム(仮称)」を建設する計画を京都府が発表したのは2012年12月のことでした。これが実現すると、国際的にも希少なアユモドキの生存に、脅威が及ぶおそれがあります。

そうした中、京都府では現在、事業費を予算化するため、計画内容を公共事業評価委員会に諮ることを検討しています。

しかし現状では、そもそも計画エリア内でのスタジアム建設自体が、アユモドキをはじめとする周辺の自然環境に悪影響を及ぼさないのか、予測を可能にするだけの調査データがそろっておらず、最終的な建設予定地も確定していません。

そのような状況で、計画を公共事業評価委員会にかけることが、時期的に果たして適切といえるのか。京都府と亀岡市がこの計画推進に当たり、諮問機関として設置した環境保全専門家会議でも、問題が指摘されています。

アユモドキ。普段、流れの緩やかな川の川底近くで身を潜めていますが、雨季になると水田や農業水路に移動して、冠水したヨシやアシ、稲などの 植物の根本で産卵します。

アユモドキ生息地のすぐそばにあるサッカースタジアムの看板。

求められる「予防原則」に基づいた保全対策

京都府ではこれについて、公共事業評価委員会では仮の位置を提示し、施設の費用対効果などを議論する、としていますが、こうした行為は結果的に、最終的な建設予定地を、現在の計画エリア内に限定してしまうことにもつながりかねません。

アユモドキや自然環境への影響が不明確なまま、委員会に諮るという判断を下すのは、時期尚早といえるでしょう。

日本の「生物多様性基本法」の基本原則では、微妙なバランスで成り立つ生物の多様性には、科学的に解明されていないことが多いこと、一度損なえば再生が困難であること、そしてその保全には、破壊する前に保全を心がける「予防的な取り組み」が重要であることが述べられています。

また現在、京都府が運用している公共事業評価システムにおいても、府が実施する大規模な公共事業については、確実な「事前評価」や「事後評価」を行ない、効率性や透明性を高めることを謳っています。

WWFジャパンは2015年1月14日、京都府知事および公共事業評価委員会委員長に対し、こうした点に言及した意見書を提出。環境保全専門家会議の意見を尊重し、予防原則に基づいた保全対策の方針の確定と、計画の見直しを行なった上で、あらためて公共事業評価委員会に計画を諮るよう申し入れを行ないました。

WWFジャパンでは引き続き、アユモドキをはじめとする環境への影響評価と、保全対策の検討の行方を注視してゆきます。

関連情報

アユモドキの生息地

サッカースタジアムの建設予定地

意見書および記者発表資料

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